魔都精兵のスレイヤー   作:マーベルチョコ

16 / 29
第16話 六道の鬼

改めて鬼と対峙する剣至は木乃美だけに聞こえるように話しかける。

 

「多々良、その子は俺が持っていた簡易結界で囲ってある余程のことがない限りは安全だ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それと俺に作戦がある。それはー……」

 

作戦を伝えると木乃美は目を開いて驚く。

 

「ってのが作戦だ。乗るか?」

 

「でも、それだと武藤さんに負担が……!」

 

心配する木乃美だが剣至は目は鬼の方に向けて、木乃美を安心させるために自信のある笑みを浮かべる。

 

「大丈夫、これでも柱なんだ。安心してくれ」

 

「……分かりました。その作戦、乗ります!」

 

木乃美はその言葉を信じて剣至の作戦に乗ることにした。

 

「ヒヒっ、話しは終わりか?じゃあそろそろ死んでくれ。いけお前ら、まずは男の方だ。男はお前らにやる」

 

鬼は命令すると醜鬼たちは一斉に剣至たちに向かっていく。

 

「女は俺のもんだ」

 

そう言ってまた体を霧に変化させて周囲の霧と一体化して醜鬼と剣至たちを覆う。

すると、途端に多くの醜鬼が迫ってくる地響きのような音が一切なくなり静寂に包まれる。

 

(俺の血鬼術、霧静海(むせいかい)は俺の体を霧に変えるだけだった。だが、()()()()が連れてきた()()()のおかげで霧に包んだものの気配、音、匂いを消すことができるようになった!これで俺は六道の一員になれる!!)

 

強くなった自信とこれからのことを思い描き笑みを浮かべる。

嬲り殺される男を高みの見物にしようと霧に変化させた目で様子を見る。

霧に囲まれ、木乃美は言われたとおり全身をオーラで覆って防御に徹する。

剣至は木乃美と女児から少し離れて、目を閉じて集中する。

 

(集中しろ。血を全身に巡らせて体の感覚を研ぎ澄ませろ)

 

意識と血を全身に巡らせて感覚を研ぎ澄ませた剣至は視界が暗くても周りの状況は目以上に把握できていた。

静寂が辺りを支配するなか霧の中から醜鬼が剣至に襲い掛かる。

背後からの攻撃が当たった瞬間、剣至は身を翻して醜鬼を切り殺した。

 

(はあ!?何で!?)

 

「醜鬼の動きがわかった?」

 

様子を見ていた鬼と木乃美はまるで醜鬼の動きが分かったかのように動いた剣至に驚く。

その後も次々と襲いかかる醜鬼を剣至は切り捨てていく。

そこで木乃美はあることに気づいた。

剣至の体に傷が出来ていたのだがその傷は全て浅いものだった。

 

「もしかして自分に攻撃が当たってから醜鬼の居場所を把握して斬っている?」

 

剣至は全身の感覚を研ぎ澄ませて、醜鬼の攻撃が当たった瞬間の感触と方向で居場所を見極めて斬っていた。

 

(当たった瞬間に斬る?そんな人外じみたこと……)

 

その瞬間、鬼はまだ自分が鬼に成り立ての頃を思い出した。

共に狩りをしていただけの仲だったが自分よりも強かった鬼たちがたった1人の鬼殺隊の人間に一瞬で自分以外の鬼の首を切り落とされる光景を。

 

(アイツ、まさか柱か!?)

 

鬼殺隊最強の連中の1人だと思い一瞬逃げることも考えたが、その考えもすぐに変わる。

あの時よりも遥かに強くなった自分への自信と柱といえど血を流しながら戦う姿を見て、自分でも勝てると思った。

 

(いや、俺ならやれる!柱なんて殺してやる!)

 

そう意気込んでいるうちに剣至は最後の醜鬼を斬り殺して、刀についた血を振り払う。

身体中に小さい傷がいくつも出来ていたがどれも浅く、剣至は気にしてもいないようだった。

 

「こいつで最後か。後はお前だけだ」

 

目の前に広がる霧に向かってそう言うと今まで漂っていただけの霧が激しく動き出して剣至の周りをぐるぐると回り出す。

すると霧の中から鬼が鋭い爪で攻撃してくる。

剣至はさっきと同じで攻撃が当たった瞬間に身を翻して刀を振るうが、醜鬼とは違ってその攻撃は霧を切り裂くだけで斬った手応えがない。

 

(無駄だ!俺の体は霧に変えられる!斬撃なんて効く筈がない!)

 

得意げになる鬼だがこのまま続けても殺せないのは分かっていた。

自分の血鬼術は体を変化させるだけで攻撃力はない。

鬼の身体能力だけでも、人を殺すことは可能だが身を防御で固めている木乃美と女児は自分では殺せない。

剣至も霧の状態では力が上手く入らず強い攻撃をすることも出来ない。

 

(一度姿を戻すしかねぇな。まぁ多少斬られても首さえ無事なら何とかなる。一度霧に戻れば傷は治る)

 

鬼は死角から姿を完全に戻して切り裂こうとした瞬間、剣至は予め分かっていたかのように振り返って鬼の腕を掴む。

 

「チッ!霧に……!」

 

鬼が霧に変わる前に柄頭を相手の胸に鋭く叩き込む。

 

血の呼吸、捌ノ型 牙赫衝幻(がかくしょうげん)一突(いっつい)

 

柄頭を叩き込まれたのと同時に鬼の身体に凄まじい衝撃が走る。

 

「ゲハッ!!?」

 

鬼は血を吐いて痛みに苦しみ逃げようと体を霧に変化させようとするが、体が痺れて動けないことに気づく。

 

「体が動かなっ……!?」

 

「多々良ァッ!」

 

「はいッ!!」

 

今まで動かないでいた木乃美が鬼に一気に近づいて集めていたエネルギーと死んだ未花の無念を拳に乗せて打ち込む。

 

虎撲砕破

 

無防備な体に打ち込まれたエネルギーは鬼の体を焼いて吹き飛ばす。

 

「ギャアアアァァァッ!!!?」

 

鬼は吹き飛んで岩にぶつかって動かなくなった。

木乃美は打ち込んだ拳を見つめて、未花の無念を晴らしたことの嬉しさと未花が死んでしまったことへの悲しみを噛み締めた。

 

「やったな」

 

「………っ、はい」

 

複雑な表情を浮かべる木乃美に剣至は肩に手を置いて労わりの言葉をかけると木乃美もまだ飲み込めないがやり遂げた顔をしていた。

 

「多々良、あの子の手当とここの居場所を本隊に知らせてくれ。おれはあの鬼に用事がある」

 

「分かりました!」

 

女児の手当を任せて、剣至は倒した鬼に近づく。

倒された鬼は体に火傷を負って、四肢は腕一本だけを残して全て失っていた。

木乃美の一撃が強かったのか通常なら数秒で治り始める傷もその兆候が見られなかった。

逃げようとして残った一本の腕で這いずっている。

剣至は鬼の背中を踏みつけて逃げれないようにして首元に刀を添える。

 

「動くな。逃げようとしてまた霧に変わろうとしたら即座に首をはねる」

 

「ゥ………」

 

「質問に答えろ。誰がお前に醜鬼を操れるようした?」

 

「だ、誰が鬼殺隊のお前に……」

 

剣至は答えようとしない鬼の肩に刀を突き刺す。

 

「ギャアッ!?」

 

「答えろ。別にお前の首を斬ってもいいんだ。何も話さず死ぬか、情報を渡して少しでも生きながらえるか選べ」

 

冷酷な目で見下ろしてくる剣至に慄き、首をしきりに縦に振る。

 

「まずお前に醜鬼を操れるようにしたのは誰だ?それにこの数の醜鬼を用意したやつもだ」

 

「……お、おれに醜鬼と醜鬼を操る、力をくれたのは六道が連れてきた、『紫黒』って女だ」

 

剣至は鬼の話を聞いて頭に紫黒が怪しく嗤う顔を思い出して、眉間に皺を寄せる。

 

「(やっぱり八雷神は鬼と協力していたか。)奴らの居場所は?」

 

「そ、それは……」

 

鬼が話を続けようとした瞬間、何者かが風のように走って鬼を抑えつけていた剣至を一撃で吹き飛ばした。

吹き飛ばされた剣至は木乃美の横を弾丸のように飛んでいき、治療していた木乃美は突然のことに驚く。

 

「武藤さん!?何が……っ!」

 

木乃美が鬼の方を向くと鬼の側には刀を振り抜いた状態で、白い動きやすそうな袖無しこ着物を着て黒の仮面をつけた女性が立っていた。

仮面をつけてはいるがその体型と仮面から流れる雪を思わせる長い白髪で女性だと分かる。

更に特出すべきは仮面を砕いて額から生えている一本の角であった。

 

「あ、アンタは……た、頼む!助けてくれ!こんな状態で動けねぇんだ!!」

 

鬼が情けなく助けを求めるが、女性は鬼の方は向かずに刀身が純白の刀を下げて話しかける。

 

「何を話した?」

 

「へ?あの方が連れてきたあの紫黒って女のことだけ……!」

 

その瞬間、女性は鬼の首を刀で刎ねた。

 

「な、なんで……」

 

「グズめ。情報をもらすな」

 

鬼は鬼殺隊が装備している日輪刀で首を刎ねられたのと同じで徐々に体灰にに変わっていき消滅した。

突然の事態に驚いていた木乃美だが即座に頭を切り替えて現れた女性を警戒する。

 

(武藤さんの様子が分からないけど、アレが敵なのは確か!ならこの子を守れるの私だけ!)

 

木乃美は警戒心を高めていつでも動けるように身構えて目を離さずにいたが、視界にいた女性は一瞬で姿を決して木乃美の首めがけて刀を振るっていた。

刀が木乃美の首も刎ねようとした瞬間、剣至の紅い日輪刀が差し込まれて白い刀を防ぐ。

刀同士が鍔迫り合って、2人の間で火花が散る。

 

「っは、武藤さん!」

 

「多々良!後ろに退がれ!!」

 

さっきまでの余裕があった表情とは違って、歯を食いしばって耐えていた。

すぐさま木乃美は女児を抱えて剣至の後ろに退がると鍔迫り合っていた両者は刀を押し出して距離を取る。

 

「多々良、走れるか?」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

「なら、今すぐここから離れろ」

 

構え直してそう指示するが木乃美は納得いかなかった。

 

「私はまだ戦えます!この子も結界の張れば安全ですし一緒にアイツを」

 

「言うことを聞け。お前たちを守りながら戦うのは無理だ」

 

剣至はそこまでの強敵だと目の前の女性を認識していた。

目の前の敵と戦うのであれば、今の木乃美の実力では確実に死んでしまうし守りながら戦うのは無理だと分かっていた。

木乃美は悔しそうにしながらも先程の一撃も認識できず、剣至が来なければ死んでいたのを思い返して悔しそうにしながらも指示に従った。

 

「分かりました……。急いで応援を呼んできます!」

 

木乃美はそう言ってその場から離れた。

その間も女性は何もせず、ただ剣至を見ていた。

 

「もういいかしら?」

 

「待っててくれたのか。優しいな」

 

「お前を殺してからあの女たちを殺せば問題ない」

 

「……言ってくれるな。流石、六道の鬼ってところか?」

 

剣至の言葉に女性は仮面の中で目を細める。

 

「何故私が六道だと?」

 

「2回剣撃を受けて分かった。さっきの鬼も六道の鬼と名乗っていたがそこまで強くなかった。だがお前は別格だ」

 

剣至は最初の一撃はギリギリで受け止めることができたがその際に腕の骨にヒビが入ってしまった。

それに木乃美の助けに入り防いだが手が痺れている。

 

「そう……なら改めて。私は六道の一人、人間道・白旺(はくおう)。冥土の土産として覚えておきなさい」

 

女性、いや月ノ皇を守る六体の鬼の一体である白旺が刀の切先を剣至に向けてそう名乗った。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。