魔都精兵のスレイヤー   作:マーベルチョコ

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第20話 鬼殺の剣士になった理由

幼少期の剣至は関東のとある山間の村に両親と妹の(かおる)の4人家族で暮らしていた。

父親と母親は農業に勤しみ、特に人参と大根が人気だった。

しかし、村の人口は過疎化が進んでおり、子供は剣至と芳しかおらず常に一緒にいた。 

 

「おにーちゃん、おえかきしよー!」

 

「いいよ。こっちにおいで」

 

剣至は仕事に忙しい両親の代わりに兄として妹の面倒をみて、そんな剣至に芳はとても懐いていた。

裕福とは言えないが幸せな家族に常に笑顔があった。

しかし、そんな家族に突然の不幸が訪れた。

 

鬼が剣至の家族を襲ったのだ。

父親は家族を守るため果敢に鬼に挑んだが、腹を抉られて内臓がこぼれ落ちても鬼の足にしがみついて家族の近くに行かせまいとしたが頭を踏み潰されて死んだ。

母親は剣至たちを守るために抱きしめて、自分の体を盾にして死んだ。

鬼はそんな母親を嘲笑い背中が抉れるまで痛みつけて殺した。

鬼が剣至たちを殺そうとした瞬間、鬼殺隊の柱が駆けつけて剣至と芳は救出された。

 

その後、2人は鬼殺隊が運営している魔都災害と鬼による被害で家族を失った子供を養育する施設に預けられた。

しかし、凄惨な現場を見た芳はその一件で精神を病んでしまい誰とも馴染めず、剣至は懸命に芳の世話をしていた。

剣至も家族を失って悲しみにくれていたが芳を守らないといけないという兄としての責任感で蓋をしていた。

そんなある日、突然芳があることを言い出した。

 

「おうちにかえりたい……」

 

家族が過ごした家が恋しくなり帰りたいと言い出し、いけないことだと分かっていたが精神的に追い詰められていた剣至もそれに賛成して施設を無断で抜け出した。

 

少ないお小遣いを持って電車を乗り継いで行ったが途中で底をついて、2人は歩きで向かった。

山道の中で野宿もして何日もかけて家に向かった。

その最中、雑木林の中で身を寄せ合って寝ているとそこに潜伏していた鬼に見つかって襲われた。

芳の手を引いて必死に逃げたが追い詰められ、足を滑らせてしまい2人は崖を転がり落ちた。

落ちたときに剣至は全身を打ち付けて足が折れて酷く腫れ上がっていた。しかし、意識はかろうじてあり、芳は近くで倒れて気絶していた。

 

「か、かおる……」

 

剣至が必死で痛む体を引きずりながら芳に近づく。

鬼がここに来る前に芳だけでも逃がさないと行けないと思って動く。

しかし、その場に現れたのは自分たちを追っていた鬼ではなかった。

視界がボヤけている剣至にはその顔は見えなかったが自分たちを追っていた鬼ではないことは分かり、鬱蒼とした森の中で人がいること自体が不自然だが剣至はそんなことは考えられず縋る思いで話しかける。

 

「た、助けて、ください…!ば、化け物が……!」

 

剣至が震える声でそう言うがその人物は無言で剣至に近づき見下ろすと、うつ伏せて倒れている剣至の心臓に手を突き刺した。

 

「が……ぁ……ッ」

 

胸に突き刺した手を抜かれて、その箇所から火をつけられたような熱が広がっていく。

口から血が溢れ出て呼吸が苦しくなってしまう。

その人物は少し剣至を見て、今度は芳に近づく。

 

「かおる……!おきろ!おきてにげろぉ……!」

 

剣至が呼びかけるが芳は動かない。

その人物は芳に近づき、足で軽く蹴って仰向けにすると剣至の血で濡れた手を少女に向かって振り下ろして心臓に突き刺した。

 

「やめろ……!やめろぉぉぉ……!!」

 

その人物は手を抜くと芳を見つめて、抱き上げて歩き出す。

 

「ま、ゴフっ……まて!かおるをかえせ…!」

 

手を伸ばすが虚しくも届かず、芳は離れて行ってしまい、剣至は意識を失った。

 

その後、剣至は再び鬼殺隊に保護されたが今度は状況が違っていた。

剣至は鬼殺隊の特別牢で拘束されていた。

鬼殺隊の隊員が鬼を討伐して怪我をしていた剣至を見つけて救助しようとしたが、目の前で傷が塞がり始めてすぐに傷はなくなった。

今までにない事態に鬼殺隊は一先ず剣至を保護して、隠で検査を行なうと剣至は鬼だと判定されていたが検査の途中で人間に戻ったのだ。 

隠と隊士たちでは判断できずに柱合会議にて処遇を決めることになった。

 

産屋敷邸で開かれた柱合会議で剣至は鎖で体を縛られて広い庭で跪かされていた。

そんな彼の前で多くの柱が剣至のことで話し合っていた。

 

「殺すべきだ!人間に戻るとはいえ鬼は鬼だ!」

 

「またいつ鬼になるかも分からない。危険だ」

 

多くの柱は剣至を殺すべきだと言ったがその中でも反対を出した柱がいた。

 

「待て。いきなり子供を殺すのはどうだろうか。あまりにも非情すぎる」

 

止めたのは当時の炎柱、煉獄 杏弦(きょうげん)だった。

柱の中でも古株でまとめ役のようになっている人物だった。

 

「煉獄さん……そうは言うが鬼は殺さなければいつか一般人に被害が及ぶぞ」

 

しかし、他の柱たちが更に反論するともう1人、剣至の死刑に反対する人物が現れた。

 

「だが彼をすぐに殺すのは早計だと思います。彼は鬼になって人間に戻った。今までにないことです」

 

「時透……お前もか」

 

死刑に反対したのは優しげな表情の男性で額に炎のような模様の痣があった。

彼は霞柱、名前は時透 柊一郎。

 

「それにお館様が何も言わずにここに連れてきているということは死刑ではなく、何かお考えがあるはずでは?」

 

『……』

 

柊一郎の言葉に杏弦以外の柱が口を噤んだ。

様子を見守っていた前当主の産屋敷が口を開いた。

 

「先ずはその子がどうしたいか聞こう。武藤 剣至くん、君はどうしたい?」

 

「……アナタたちは鬼と戦っている人たちなんですか?」

 

産屋敷が質問すると縛られて動けない剣至がか細い声で聞き返す。

柊一郎が剣至の側にしゃがんで目線を合わせて返事をする。

 

「そうだよ。僕たちは鬼殺隊、鬼を倒して人々の平和を守っている」

 

「オレを鬼殺隊に入れてください……!」

 

「何を馬鹿な……っ」

 

柱が口を挟もうとするのを杏弦が手で止まる。

 

「何故だい?」

 

「オレのお父さんとお母さんは鬼に殺された……!妹の芳は鬼に攫われた……!家族を2度奪われました!!」

 

両親を殺されたとき、妹を連れ去られたときの光景を思い出して怒りと悔しさが溢れ出して涙を浮かべて叫ぶ。

 

「オレのような人が増えて欲しくない!これ以上悲しむ人が増えて欲しくない!!」

 

子供らしくない必死な叫びにその場にいる全員が見守る。

 

「鬼は俺が全部倒す!妹も見つけて連れ戻す!だから!お願いします!俺を鬼殺隊に入れてください!!」

 

剣至は頭を地面に擦り付けて必死に懇願する。

その姿を見て、産屋敷は微笑んで柱全員を見て話し出す。

 

「どうだろうか?私はこの子を鬼殺隊に入れたいと思っている」

 

「そんな……!鬼になるんですよ!?いつ人を襲うか分かりません!!」

 

「そうだね。だがこの子は月ノ皇に遭遇して血を入れられても鬼にならずに済んでいる。この子は月ノ皇に繋がる鍵だと思っている」

 

産屋敷がそう言うが杏弦と柊一郎以外の柱は不服そうだったが柊一郎が手を上げる。

 

「では僕の家で暫く預かります。そこで見定めます」

 

「柊一郎、いいのかい?」

 

「えぇ、妻も強いですし子供も4人いるので扱いには慣れています。安全だと思います。それに……あの時、この子の両親を救えなかった責任を感じているんです」

 

申し訳なさそうにする柊一郎を見て、産屋敷は任せることに決めて剣至は柊一郎の下で保護観察されることとなった。

 

 

「それで俺は柊一郎さんの家で預けられて、安全だとみなされてから鬼殺隊に入った。鬼になれるのは月ノ皇の血を注入されたからだ」

 

「……大変じゃありませんでしたか?」

 

「もちろん大変だったさ。最初の頃は鬼やら裏切者なんて言われて、酷い時は後ろから斬られたよ」

 

ハッハッハッ、と笑いながら言う剣至に木乃美は複雑そうに見る。

 

「何でそこまでするんですか?家族を失って、体を変えられて、それに妹さんももう……辛いのは武藤さんの筈なのに」

 

剣至はお茶を飲み干して真剣な表情になる。

 

「鬼のせいで悲しむ人を増やしたくないんだ。俺が経験したあんな悲惨なことを減らすために俺は全身全霊で命をかけて戦う」

 

その目を見て剣至に嘘偽りがないことを理解した。

そして、剣至のその表情を見て惚けて呟く。

 

「それに俺は妹のことは諦めていない。必ず見つけ出すれ

 

「…………凄く、かっこいいです」

 

「え?……そんなストレートに褒められると少し恥ずかしいな」

 

「そんなことないです。武藤さん、かっこいいです!」

 

照れる剣至に木乃美は尊敬の目で見る。

剣至の戦う姿勢、その心意気は木乃美にはとても眩しく、心を燃え上がらせるものだった。

 

「そこまで言ってくれてありがとうな」

 

「武藤さん、これから剣至さんって呼んでいいですか?私もっと仲良くなりたいです!」

 

「まぁ多々良さんが良いなら……」

 

「私のことは木乃美で呼び捨てでお願いします!今回の事件で剣至さんは私にとってもう1人の師匠だと思いました。これからも色々と教えて欲しいですから!」

 

木乃美の笑顔で話す表情を見て、剣至も自然と笑顔になったら、

 

「分かった。これからもよろしくな。木乃美」

 

「はい!剣至さん!」 

 

こうして今回の事件は終わり、剣至は新しく弟子ができた。

 

 

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