魔都精兵のスレイヤー   作:マーベルチョコ

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第21話 隠れ家

一番組との合同捜査を終えて、剣至は六番組に戻ってきていた。

椅子に座って私物のスマートフォンを見ており、そこには先日連絡先を交換した木乃美から連絡が来ていた。

 

『先日はありがとうございました!また稽古、お願いします!』

 

可愛らしいスタンプとともに送られたメッセージを見て、微笑んでいると突然両頬を手で挟まれて顔の向きを変えられた。

 

「ケーンーくーん?何を、見てるのかな?」

 

隣に座っていた天花が怖い笑顔をしながら聞いてくる。

 

「い、いや。この前知り合った一番組の副組長と仲良くなって連絡先交換したんだ」

 

「ふーん……その割にはだいぶ親しげだと思うけど」

 

天花はチャットのやり取りを見て、女の勘が働いて何かを訴えている。

天花の訴えかけてくる視線から気まずくなり、顔を逸らして準備を進める。

 

「よし、後は日焼け止めを塗らないと」

 

「私が塗ってあげる」

 

天花は手袋を脱いで置いてあった特製の日焼け止めを両手にとって伸ばしてから剣至の顔に塗っていく。

 

「もうちょっと休んでからにしない?そんなに急がなくていいんじゃないの?」

 

「そんなこと言ってられない。いつ俺が出動になるか分からない。日輪刀の整備は完璧にしておかないと」

 

そう言って剣至は自分の日輪刀を手に取って鞘から抜こうとするが少し抜きにくそうにする。

刃が血のように赤く、刀身が黒色の特徴の日輪刀は刃毀れが酷かった。

 

「ここまでいくと俺じゃあ整備できない。隠の本部に行かないとさ」

 

「そうだけど……いつもより外に出るのが辛いはず。いつもより顔色が悪いよ」

 

心配そうに言う天花を見て、何も話していないのに自分の些細な変化に気づいてくれることに剣至は嬉しく思う。

 

「………天花には何でもお見通しだな」

 

「彼女ですから♪」

 

微笑む天花の頬に手を添えて、剣至からキスをする。

 

「ありがとう。愛してる」

 

「……ッ♡」(いきなりはずるいッ!!)

 

天花は顔を赤くして火照りを抑えるようとするが口元はニヤけて嬉しそうなのが分かった。

剣至は立ち上がって日輪刀を腰にさす。

 

「今度休みが一緒の時にどこか出掛けよう。天花が行きたいところとかさ」

 

「……っうん、楽しみにしてるね」

 

「じゃ、いってくる」

 

「いってらっしゃい♡」

 

今度は天花からキスをして剣至を見送った。

剣至を見送ってから、さっきまでの剣至とのやり取りが新婚夫婦みたいだと思って天花は1人嬉しさに悶えていた。

 

○

六番組が管理している門から現世に着き、施設から出ようとした瞬間に足を止めた。

あと一歩踏み出せば日向に出るのに躊躇してしまっていた。

 

「………」

 

少し間をとって、一歩踏み出して陽の光の下に出ると強烈な不快感とまるで船酔いしたみたいな感覚に襲われる。

 

「ぐっ……!?」

 

日光がまるで針のように露出している肌を突き刺して火傷のような痛さが広がっていく。

意識を気合いで保ち、すぐにフードを被って日光から顔を隠す。

少し歩いて施設の側に止めてある鬼殺隊の車の後部座席に乗り込むと運転席の隠が心配そうにする。

 

「紅柱様、大丈夫ですか……?」

 

尋常でない様子の剣至に戸惑いながら隠が心配するが、剣至は冷や汗をかきながらも取り繕うように平然を装う。

 

「あぁ、大丈夫。今回の『扉』に向かってくれ」

 

「わ、分かりました」

 

隠は疑問に思いながらと車を発進させる。

それを見て剣至は一息つき、シートに体を預けた。

 

 

○

隠の本部は産屋敷邸と同じく秘匿とされており、鬼殺隊隊士、柱、隠にも知られていない。

隠の本部、通称『隠れ家』では今まで集めた鬼や鬼殺隊の情報、鬼殺隊の装備、そして日輪刀を管理と他組織との対応など様々なことを行なっており、鬼殺隊にとってはアキレス腱のような重要なものだった。

そのため隠や隊士たちが出入りするため、勿論行き来することができる。

しかし、隠れ家の所在を知られていないためどうやって行き来するのかというと、それは桃の能力を使っている。

 

「紅柱様、あれが今回の『扉』です」

 

隠が指差す先には古びたアパートの扉があった。

 

「ありがとう」

 

剣至が礼を言って車を降りて、真っ直ぐに扉に進み、そのドアノブを握ると握った手の甲に薄っすらと『柱』という文字が浮かび上がった。

そして扉を開けるとそこは古びたアパートの一室ではなく、全体が白でデザインされた巨大なホールに出た。

扉を潜り抜けるとその扉は消えた。

ホールでは隠たちが忙しなく動き回っている。

剣至は受付まで近づくと美人な受付嬢がこれまた美しいお辞儀をして出迎える。

 

「紅柱様、ようこそいらっしゃいました。本日のご用件、伺っております」

 

「あ、あぁどうも(……なんか見ちゃうな)」

 

受付嬢の美しさを追求したような仕草に思わず見惚れてしまう。

 

「局長は待っておりますので、こちらに」

 

受付嬢に案内されて奥に進み、一室に辿り着く。

 

「どうぞ」

 

扉を開けてもらい部屋に入ると奥のデスクには男性が座っていた。

 

「ようこそ紅柱」

 

左目の泣きぼくろがある30代の男性は隠のトップ、雛鶴 (ひなつる) 天利(あまり)。

 

「雛鶴さん。お久しぶりです」

 

「久しぶりですね。どうぞこちらにお座りください」

 

ソファに座らせてもらうと天利が数本の薬剤を差し出した。

 

「早速ですが、こちらが用意した防鬼薬です」

 

「ありがとうございます」

 

剣至は早速一本の薬を自分の首に打ち込んだ。

 

「くっ……ふぅ……」

 

「………」

 

剣至が薬を打ち込む様子を天利は黙って見守る。

薬を打つと剣至の顔色は少し良くなり、ソファに背中を預けて天井を見上げる。

 

「辛そうですね」

 

「まぁ……そうですね。毎回、鬼になった後だと体調が最悪です」

 

「本来この薬は鬼化を防ぐ薬ではないです。鬼化を遅らせる薬です。この薬は大正時代の鬼殺隊の記録を元に作りました。ある協力者と共に作った鬼を人間に戻す薬を元に作りましたが今の鬼には余り効きません。一時的に鬼の力を弱らせるだけ」

 

天利は悲痛な目で剣至を見る。

 

「君は鬼になる度に鬼化への進行が進んでいく。今回の後遺症は前回より酷いのでは?」

 

剣至は無言でうなづく。

 

「このまま鬼の力を使い続ければ君はいつか鬼になる」

 

その言葉に剣至は眉間に皺を寄せる。

自分でも分かっていた。

鬼になる度にその力は増して深くなっていき、自分の人間としての部分が喰われていく。

このまま使い続ければ死に近づいていく。

 

「これは提案ですが陰陽寮を頼りませんか」

 

「何だって?」

 

「はっきり言って、ここ隠れ家では限界がある。更に薬、生物に対しては今の陰陽寮の局長は専門家です」

 

「………胡蝶局長か」

 

「ええ、彼女が陰陽寮の局長になってから醜鬼に対しての対策は革新的になりました。薬学、生物学、そして桃の能力の方面。今より多くの方面から対策できます。どうですか?」

 

天利の提案に剣至は渋い表情をする。

七番組の用務員兼奴隷の優希の姉、青羽は陰陽寮で酷く傷つけられた。

そんな組織を信用できない。

 

「いや、陰陽寮は頼りたくないです」

 

「………そうですか。我々も日々研究しています。陰陽寮を頼るのは最後にしましょう」

 

次に剣至は自分の日輪刀を取り出して天利に渡す。

天利は鞘から抜いて刀身を見ると顔をしかめる。

 

「これはまた……酷いですね」

 

「螢子に渡して貰えますか?」

 

「自分では渡さないのですか?」

 

「これ渡したら、俺殺されますよ?」

 

その言葉に天利は確かにと頷く。

 

「分かりました。日輪刀の修理は私からしましょう」

 

「ありがとうございます」

 

剣至が頭を下げた瞬間、部屋の外が騒がしくなる

 

「何だ?」

 

すると部屋に案内してくれた受付嬢が慌てた様子で入ってきた。

 

「し、失礼します!突然、鋼塚 螢子さんが本部にいらっしゃって紅柱様に会わせろと!」

 

「うわ、最悪のタイミング……」

 

剣至は天井を見上げて絶望した。

次の瞬間、扉を蹴破って女性が押し入ってきた。

 

「きゃあっ!?」

 

「武藤はいるかあぁぁぁッ!!!」

 

晒しを巻いてだけの上半身を露出させた体格の良い女性は鋼塚 螢子。

剣至の日輪刀の刀鍛冶師だ。

螢子は剣至を見つけると詰め寄ってその襟首を掴んで持ち上げる。

剣至の方が身長が高いはずなのに軽々と持ち上げる。

 

「武藤!!貴様刀を折ったのかァ!?あぁんっ!?」

 

「怖い怖い!?落ち着けって螢子!!」

 

凄まじい形相で詰め寄られて剣至は落ち着かせようとするが螢子は話を聞かず怒鳴ってくる。

 

「紅柱様、大丈夫でしょうか?」

 

「まぁ暫くすれば落ち着くだろう」

 

髪が乱れた受付嬢の質問に天利は投げやりに答えた。

 

 

○

暫くして、螢子を落ち着かせることが出来た。

 

「何だ。刀を折ったわけではないのか」

 

「こちらからそのように連絡したと思うのですが?」

 

「詳しく見とらん!武藤からの刀の修理と聞いて折ったと思うてしまった!ワッハッハッハ!!」

 

豪快に笑う螢子に天利は顔を引き攣らせて、剣至は疲れた様子で呟いた。

 

「これだから鋼塚の人間は……」

 

鋼塚の一族は昔から鬼殺隊の日輪刀を打っていた。

だが職人気質のせいなのか、刀を折ったりぞんざいに扱って修理に出すと癇癪を起こしたようにキレてしまう。

 

「では、早速刀を見てみようか」

 

螢子は刀を見ると顔がまた険しくなる。

 

「こ、今回は新しい六道と戦ったんだ。相手が刀を使っていて打ち合いになってそんな刃毀れしてしまって……」

 

弁明をするがどうしても言い訳っぽくなってしまう。

螢子は何も言わず、刀を見る。

 

「ふむ、新しく刀を打った方がいいかもしれん」

 

「は?」

 

「鋼が変形しておる」

 

刀を見ながら螢子は話し出す。

 

「日輪刀は特殊な刀だ。本来刀は斬ることに特化した武器。刀同士で打ち合ったら普通刃毀れしてしまう。だが日輪刀は鬼の首を切り落とすために相当頑丈に作られておる。特殊な鋼に加えて、特殊な技法で作られておる。私が打った刀は下手な者が振わん限り100体の鬼の首を斬ろうが刃毀れなぞせん!」

 

そう宣言する螢子の顔は自信に溢れている。

相当、自信があるのは分かる。

 

「だがな。お前さんの鬼の力に日輪刀が耐えきれておらん。刀身は曲がり、刃毀れは酷い」

 

「……今後、鬼の力は必要になる。耐えられる日輪刀は作れるか?」

 

「……フッ、舐めるなよ!作ってみせるわ!!」

 

螢子は好戦的な笑みを浮かべて威勢よく答える。

すると腰元に置いてあった日輪刀を差し出す。

 

「新しく刀ができるまでこれを使っておけ。お前さんが今使っている日輪刀とそう変わらん出来じゃわい」

 

「ありがとな。暫く借りる」

 

「折ったら殺す」

 

「……だから怖いって」 

 

日輪刀の件を螢子に任せ、隠れ家から離れようとしたとき天利が声をかけた。

 

「もうすぐ組長会議が始まりますね」

 

「もう知っているんですか?流石ですね」

 

「これでも忍者の家系ですから諜報はお手のものですよ。……恐らく他国のスパイが何かしかけて来ると思います。最近他国の動きが怪しい」

 

真剣な表情になる天利を剣至は疑問に思った。

 

「他国が仕掛けてくるなんていつものことじゃないですか?」

 

「それが最近、その動きがだんだんと激しくなってきているんですよ。どうぞお気をつけて」

 

鬼殺隊の情報を管理しているトップからの言葉に剣至は素直に受け止める。

 

「分かりました。総組長にも言っておきます」

 

こうして、剣至は一抹の不安を抱えながら十番組で行われる全組長が揃う組長会議に臨んだ。

 

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