魔都精兵のスレイヤー   作:マーベルチョコ

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第22話 鬼殺隊小噺(2)

○八雷神と六道

八雷神の拠点のある区域では激しい戦闘音が響いていた。

そこでは雷が縦横無尽に駆け回り、その間に僅かな安全な場所を白旺が駆け抜けていく。

襲いかかる雷を抜けるとビキニに上着を羽織るという大胆な服装をしたツインテールの女性、八雷神の一柱『鳴姫』が上空から白旺を襲う。

白旺が持つ刀と鳴姫が持つ稲妻の形をした武器が鍔迫り合う。

 

「ゼリャアアァァァッ!!!」

 

「くっ……!」

 

鳴姫が打ち勝ち、白旺は吹き飛ばされるがすぐに姿勢を戻して居合いの型をとった。

鳴姫に向かって走り出す。

鳴姫は迎撃しようと雷を放つが白旺はそれをかわして進むが何度か雷を受けてしまう。

 

「ぅぐっ!?くぅっ……!」

 

それでも何とか刀の間合いに入って刀を抜き放つ。

刀が鳴姫に当たりそうになった瞬間、大きい音が鳴り響いて2人の動きが止まる。

 

「終了だ。2人とも」

 

壤竜が話しかけてきて2人とも構えを解く。

 

「我の雷撃が当たったな!我の勝ちだ!」

 

「あともう少しで私の刀が首に届いていたわ。アレは明らかに致命傷。だから私の勝ち」

 

「違う我の勝ちだ!!」

 

「違う私の勝ち」

 

「我だ!!」

 

「私」

 

現在、八雷神の拠点には白旺とセンソウが所在しており、白旺はよく八雷神と訓練をしていた。

その中でも好戦的な壤竜と鳴姫とは頻繁にしており、こうして勝ち負けを言い争う姿がよく見られた。

睨み合う2人を壤竜が宥めていると新しく生まれた八雷神、空折が現れる。

 

「はくおう〜、次は私とゲームする約束でしょ」

 

「うん、今行く。…………私の勝ちだから」

 

「我だ!!」

 

「落ち着け、鳴姫」

 

最後に一言言って白旺は稽古場を後にして、空折と一緒に紫黒が現世から持ってきたテレビゲームを始めた。

その様子を先にくつろいでいた紫黒が2人を眺めながら考えていた。

 

(六道たちが私達と接触してきてもう半年……馴染みすぎてるね。大極姉はセンソウを慕っているし、壤竜、鳴姫、空折は良い意味でも悪い意味でも単純だ。実力主義の白旺のことは好意的に思ってる。雷煉は見下しているから油断している。僕と伏摩だけはアイツらを警戒してるってとこかな……)

 

冷静に自分たちと六道の鬼との関係性を整理する。

そして、危機感を持っていた。

多くの八雷神が六道の鬼に対して危機感を持っていない。

白旺は八雷神と同等の実力者、センソウは実力が分からないが不気味で他の六道の鬼については姿も見たことがない。

協力関係だというのに相手について、こちらはなにも情報がない。

知らずのうちに不利な状況に追い込まれているように紫黒は感じていた。

 

「(ちょっと踏み込んでみるか)ねぇ白旺、他の六道はここに来ないの?」

 

白旺から情報を引き出そうと質問する。

 

「分からない。私たち六道をまとめているのは師匠だ。だが、他の六道については別の所で動いているとしか言わない」

 

「別の所?それってどこなの?」

 

「知らない。師匠が言っているんだ。問題ないはずよ」

 

「ふーん……、他の六道ってどんな奴ら?」

 

他の情報を引き出そうと更に質問するが、白旺は画面から目を離して紫黒の方を向く。

 

「珍しいわね。貴女がそんなに質問するなんて」

 

白旺が真っ直ぐと見つめてきて紫黒は不味いと思いながらも表情に出さないようにする。 

 

「(これ以上は無理か)いや、君とセンソウ以外の六道を見たことがないから気になっていたんだ」

 

「………そう。私が師匠以外であったことがあるのは1人だけ名前は真蛇(しんじゃ)。私より前にいる六道よ。他の六道には会ったことがない」

 

「……教えてくれるんだ」

 

「えぇ、同じ場所に住んで、こうやって過ごしているもの。教えるのは問題じゃないわ」

 

「ふーん……(優しいのか、僕たちを下に見てるのか)」

 

紫黒はとりあえずはこれからも白旺たちを監視し、いざという時に対応できるようにしておこうと決めた。

その後、ゲームに負けた白旺は悔しくてむくれてしまい、空折がからかっていた。

 

 

○滾る天花

隠れ家に向かった剣至を見送った後、天花は自室でさっきまでの剣至とのやりとりを思い返していた。

普段は天花から構うことが多いが、ふとした時に剣至から迫られると毎回胸がときめいてしまっていた。

今も剣至からキスをされた唇を触りながら物思いに耽っていた。

 

(今日はケンくんからキスをしてくれた……今晩は期待できる)

 

天井を見上げながら妄想を働かせる。

まず疲れて帰ってきた剣至をエプロン姿で出迎える。

 

『おかえり♡ケンくん♡』

 

腕を振るって作った精がつく料理を食べてもらう。

 

『今日は私が作ったの』

 

剣至の背中に後ろから抱きついて、わざと胸を意識させるように押し付けながら耳元で呟く。

 

『私だと思って食べて♡』

 

その後は剣至がお風呂に入っている時に忍び込んで、剣至の体の逞しさを感じながら奉仕していく。

 

『背中、流すよ♡』

 

そして、限界まで剣至を興奮させてから先に寝室で待つ。

2人のベッド(剣至は自室のベッドがある)で待ち、剣至が入ってきたら裸に一枚だけ巻いていたバスタオルを脱ぎ捨てて剣至を受け入れるように両腕を広げる。

 

『ケンくん、きて♡』

 

剣至は天花に覆い被さり、その滾った情欲をぶつけて……

 

「はああぁぁぁぁ♡」

 

エロい妄想で昂った興奮を抑えるために深く息を吐いて、自分の体を抱き締めて身体を震わせながら身悶えていた。

 

「組長、組長会議のときの代理シフトについてじゃが……」

 

そこに今後の予定の確認をしにきた八千穂だが身悶える天花を見て、ソッとドアを閉めて退出していった。

気遣いが出来る八千穂だが、剣至が帰ってきたら文句を言ってやろうと心に決めた。

 

 

○雲の流れ

鬼は人気がない倉庫が立ち並ぶ場所を必死の表情で逃げていた。

鬼の片腕はなく、再生の兆しもなかった。

六道が用意してくれた醜鬼の兵隊も全て1人の男に殺されて、今も動きが早くなるという血鬼術を使って逃げているがあの男の姿が脳裏に焼きついて離れない。

 

「は、早く!人がいるところに!」

 

人がいる所に出れば人質をとって生き残れる、と考えて足を早める。

やがて、住宅街に出ると目の前には買い物帰りのスーツを着た男性と子供を連れた女性がいた。

人間が1人でもいれば人質にできると思っていたが、目の前にはそれに加えて2人もいる。

人質は1人でいいため残りは喰ってしまえばいいとほくそ笑む。

家族の前に鬼が現れて、父親は様子がおかしいことに気づいて母親と子供を守るように前に立つ。

 

「な、何ですか?」

 

「人質は1人でいいんだよ!喰わせろォッ!!」

 

鬼が父親に襲い掛かり、食い殺そうとした瞬間、鬼の四肢は切断された。

 

「な、は?」

 

鬼は無様に地面に転がり倒れて空を見上げる。

家族がいる方に顔を向けるとそこには赫い刀身の刀を持ち、雲の刺繍がされた羽織を着た男、東 十灼がいた。

 

「お、お前……あの数の醜鬼はどうしたんだ?」

 

「全て滅した」

 

百を超える醜鬼を逃げるために仕向けたのにも関わらず、短時間でしかも大した疲労も見られずに倒された。

目の前の男が本当に人間なのか、と疑問と恐怖が沸き起こった。

十灼は目の前で怯えた表情の両親とこちらをジッと見上げる子供に目を向けて、口を開く。

 

「ここからは子供にとって酷になる。早くどこかに行け」

 

「は、はい!」

 

「あ、ありがとうございます!ほら、行くよ!」

 

「うん、おサムライさん!ありがとう!」

 

去っていく両親と手を振る子供の姿が見えなくなるまで見続けた。

十灼は見送ると鬼に向き直り、その胸に日輪刀を突き刺す。

 

「ギャアァっ!?」

 

「質問に答えろ」

 

十灼は氷のような冷たい目で鬼を見下ろす。

 

「白い面を被った六道の鬼はどこにいる?」

 

「せ、センソウ様のことか?しらな……」

 

鬼が言い切る前に十灼は首を斬り落とした。

何度も鬼に問いただしたがそもそも知らない、名前は知っているが居場所は知らないの2通りしかいない。

今回も収穫はなしだと分かり、即首を斬り落とすとそこに1人の隊士が現れた。

 

「東さん……早いですよ」

 

現れたのは帝乃(みかどの) 零馬(れいま)、十灼の付き人で1人で突っ走る十灼の様々なサポートをしている。

疲れた様子で汗を拭って十灼に文句を言う。

 

「ここの後処理を隠に任せて、次のところに向かうぞ」

 

「少しは休みましょうよ。さっきの大量醜鬼の襲撃の後処理すら終わっていないんですから」

 

「俺には関係ない」

 

一切関係ないとバッサリ言い切る十灼に零馬は思わずため息を吐く。

 

「はぁ……全くこの人は……分かりました。せめて隠に引き継ぎするまでここにいてください。状況を説明しないといけないんですから」

 

零馬が醜鬼の後処理をしている隠に連絡をしようとスマホを取り出すと背後で首を切り落とされたはずの鬼の体が音もなく立ち上がり、人の腕だったものが化け物のように変貌して零馬に遅いかかった。

 

「っ!!」

 

直撃する寸前で気配を感じて零馬は避けるが目の前の光景に目を見開いて驚く。

首がない鬼が立ち上がってその体を変貌させていく。

 

「東さん……今回、手を抜きました?」

 

「鬼相手に手を抜くなんてありえない。俺は確かに首を斬った」

 

「そうですよねぇ……じゃあ何で目の前の鬼は立ち上がってるんですかねぇ」

 

変貌を遂げた鬼の体には体毛が生えて棘のような尻尾が生えた。

そして切断された部分からは肉が隆起して新たな頭が生えた。

 

「グルアァァァッ!!!」

 

雄叫びを上げる鬼に零馬は日輪刀を抜いて構える。

 

「東さん、こんな鬼は見たことがありません。ここは様子を見ながら……」

 

そう言葉を続けようとした瞬間、零馬の横を雲が駆け抜けた。

 

雲の呼吸、壱ノ型 遊雲

 

雲を纏った十灼が鬼の首、胴体、足を両断した。

 

「これで確実に殺した。問題ないだろう」

 

「………」

 

あっさりと倒した十灼にジト目を向けるが向けられた当の本人は気にした様子がない。

 

「首を切られた鬼が復活……今までにないことだ。すぐに鎹鴉でお館様に連絡をしろ」

 

「東さんがやらないんですね……分かってますよ。もう呼んでます」

 

遠くの空から飛んでくる鎹鴉を見て、体が崩壊して塵へと消えていく鬼に目を向ける。

今までにない鬼の変化に十灼は事態が動きつつあると予感していた。

 

 

人物紹介

名前:雛鶴 天利

年齢:35歳

備考:隠たちの総本部『隠れ家』の局長。かつては鬼殺隊隊士だったが8年前の鬼殺隊襲撃事件により、鬼殺隊だけでなく隠、刀鍛治たちにも被害が及び、大きな組織改革が行われた際に隠のトップとなった。実力は柱と同等の相当な実力者。本名は宇髄 天利だが家族、親族に被害が及ばせないために自分から縁をきって祖母の旧姓をもらった。親戚にオリンピック選手がいるらしい。

 

名前:鋼塚 螢子

年齢:24歳

備考:鬼殺隊隊士の日輪刀を作っている鋼塚家の一員。勝気な性格で一族特有の刀に対して並々ならない情熱を持っている。剣至の日輪刀は最初に担当した刀でありそれ以来ずっと担当をしている。桃の能力を持っており、それに加えて刀鍛治の腕前も相当なものである。ひょっとこの面は一族から付けるように言われているが顔が痒くなるからと嫌がって腰に付けてる。

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