魔防隊の組長が一同に会する会議、組長会議が行われる当日、剣至は天花とともに十番組に来ていた。
「ケンくんが来なくてもいいのに……」
「俺は鬼殺隊と魔防隊の繋ぎだ。来ないわけにはいかないよ。それに来なくても山城総組長が許さないだろ?」
恋の名前を出すと天花は眉間に皺を寄せて嫌そうな表情をする。
それに気づいた剣至は少し申し訳なさそうにしながらも天花の肩を抱き寄せる。
誤魔化されそうになっているが剣至の体温を感じて嬉しく思っている反面、相変わらずちょろいなとも思ってしまう。
天花からも身体を寄せて甘えて、2人の距離がどんどん近づいてキスをしようとした時、背後から声をかけられた。
「天さーん!ひっさしぶりー!!」
声をかけてきたのは五番組組長、蝦夷 八雲だった。
2人は慌てて離れるが夜雲はそれを見逃さず、剣至を睨んできた。
「相変わらず見せつけてくれるねぇ。我がライバル!」
「だからライバル呼びやめろ」
「だって夜雲さんの夢であるハーレムを築いてるし」
夜雲の夢である組長の
不貞腐れながら言う八雲にたいして剣至はため息を吐く。
「俺はハーレムなんて作ってない。恋人は天花だけだ」
「でも総組長とも関係持っているでしょ?」
「…………」
その一言に剣至は口を閉じてしまい、それだけで何が正しいか物語っていた。
「やっぱりハーレム作ってるじゃーん!」
「いや、それはな……い"っ!?」
弁解しようとするが隣の天花が見えないように剣至の太ももをつねり、剣至をジト目で睨んでいた。
「そういえば一番組の副組長とも仲良くしていたよね?もしかしてもう手を出したりぃ〜?」
「おい、なんでそのことを……ただ同じ師匠に教えてもらった縁で俺も手解きしてるだけだ」
「そんなこと言いながら指導といいながら青い果実である女子高生を貪り食らう気でしょ!夜雲さん分かっているんだからね!この性欲魔神!!」
あまりにも酷い言い掛かりに剣至は目元を引き攣らせた。
そして、天花のつねる力も強くなった。
「へぇーあの連絡のやり取りをしていた子、やっぱりそうだったんだ。ふーん……!」
「ちょ、ちょっと天花……力が強い……!」
「じゃっ!私はそろそろ向かうよ。後はお二人でごゆっくり〜。あっ天さん、もし彼氏に飽きたらいつでも私のところに来てもいいからね⭐︎」
夜雲はそう捨て台詞を吐いて、2人を置いて行った。
「あの女……荒らすだけ荒らして逃げやがった!」
「ちょっとオ・ハ・ナ・シ、しようか?」
天花は目が笑っていないが笑顔で剣至に詰め寄る。
詰め寄られた剣至は顔を引き攣らせて、見上げてくる天花に後退りしてしまう。
そこに明るい声が聞こえてくる。
「あっ!剣至さん!」
声をかけてきたのは木乃美でその後ろにはりうもいた。
天花はすぐに表情をいつも通りに戻して平静を装ったが、人生経験が長いりうは2人の間に流れる僅かな空気の違いを感じ取って、少し呆れたように剣至を見た。
「剣至さん!お久しぶりです!」
「あ、あぁ、久しぶり木乃美」
「この前の修行ありがとうございました。また新しい技が出来たので後で見てもらってもいいですか?」
剣至に会えたのが余程嬉しかったのか木乃美から尻尾が生えて左右に振っているように見えてしまう。
「ん?でも今日は組長会議だろ?副組長の木乃美がここにいるってことは……」
「そう、今日発表するつもりだよ。私の後任にね」
「そうか、おめでとう木乃美」
「はい!ありがとうございます!」
先日りうが話した通り、木乃美が新しく一番組組長に就任するのだ。
その後、少し話して木乃美たちは会議室へと向かった。
2人がいる間、全く話さなかった天花がまた目が笑っていない笑顔で剣至を見る。
「随分慕われてるね?ねぇ剣至さん?」
「いや天花、あのな……」
すると今度は二番組の組長、上運天 美羅が奥から歩いてきた。
「よう!武藤!久しぶりだな!」
「よう上運天組長、久しぶり」
勝ち気で見た目は不良で怖い印象を与えそうな美羅だが面倒見がいい姉御肌な女性だ。
そして鬼殺隊、鳴柱の守麗 沙耶の恋人だ。
「報告見たぜ!全快したみたいでよかったな!コラ!」
「ありがとうな。そっちも守麗と相変わらず仲良さそうでよかった」
「なっ!?何言い出すんだテメェ!!?」
剣至の返しに美羅は顔を赤くして一気に慌てる。
魔防隊の美羅と鬼殺隊の沙耶が恋人同士なのは二番組の人間、魔防隊の組長陣と鬼殺隊の柱陣が知っている。
そのまま美羅は顔を赤くしたまま入口に向かった。
「もしかして俺の快復を祝うために来たのか?律儀だな」
「上運天組長は義理堅いからね。それとケンくん、話を逸らさないでくれるかな?私はまだ話したいことがあるんだけど?」
詰め寄ってくる天花に剣至は観念したように抱き締めた。
「……こうやって誤魔化すつもり?」
「誤魔化すつもりじゃなくて、俺の気持ちだ。恋とは確かにそういう関係だ。それは申し訳ないと思ってる。だけど俺は天花を愛している」
「………1番に?」
「もちろん!」
ハッキリと言う剣至の胸に天花は頭を預ける。
「今はこれで誤魔化されてあげるけど、帰ったらわかってるよね?」
「うん、頑張らさせてもらいます」
「よろしい♡」
チュッ♡
天花は剣至にキスをして手を引っ張っていく。
「さぁ、会議が始まるよ」
なんとか天花の機嫌を取り戻して、剣至はやっと会議室にたどり着いた。
○
会議室に入ると既に九番組組長であり十灼の母親である東 風舞希が座っており、剣至は目が合うと近づいていく。
「お久しぶりです。風舞希さん」
「剣至くん、久しぶりね。報告書を呼んだわ。新しい六道と接敵したそうね」
「えぇ……逃げられましたけどね」
悔しそうにする剣至に風舞希は立ち上がって真正面で目を合わせる。
「その悔しさを忘れてはいけないわよ。貴方は鬼殺隊の柱なのだから必ず討ち取りなさい」
「はい!」
厳しくも激励する風吹希だがされた本人の剣至は気合いを入れ直して返事をする。
「ふふ、いい返事ね。頑張って」
さっきとは打って変わって優しい表情に剣至の頭を撫で、された剣至は恥ずかしそうにする。
「あ、あの流石にこの歳で頭を撫でられるのは恥ずかしいです……」
「あら、ごめんなさい。昔の癖でついね」
朗らかに談笑をしているとそこにまた夜雲が突っかかってくる。
「ライバル!今度は風舞希さんにも手を出す気だな!」
「違うわ」
「ふーん……今度は人妻まで」
そこに落ち着いたと思った天花までまた据わった目で近づいてくる。
「いや、違うんだ。……子どもの頃、一時期風舞希さんの家でお世話になっていたんだ」
「そうよ出雲組長。勘違いしないで。剣至くんは私の子供たちと一緒に育ったの。いわばもう1人の息子よ」
そこに木乃美も加わり、談笑していると京香とそのお供として優希、そして三番組組長月夜野 ベルを連れて入ってきた。
「久しぶりだな。剣至」
「よお京香………ちょっといいか?」
入ってきた京香の手を引き、部屋の隅へと移動して誰にも聞かれないように話し出す。
その時、八番組組長ワルワラ・ピリペンコが一瞬剣至を睨むが誰にも気づかれなかった。
「組長会議のあと、少し時間を貰ってもいいか?少し話したいことがある」
「後でか?別に今でもいいが……」
「お前の仇に関することなんだ。ここじゃ話しづらい」
「っ!そうか……分かった。後で時間を作ろう」
京香は一瞬驚いたが了承すると、また会議室の扉が開く。
組長用の椅子に座った恋が椅子ごと空中に浮いて、総組長の定位置である上座に移動する。
剣至と目が合うと意味深な笑みを向けてくるが剣至は見なかったことにした。
全員を見渡して、口を開く。
「皆、会えて嬉しいわ。さぁ、組長会議はじめよっか」