組長会議が始まり、先ずは一番組のりうが手を挙げた。
「先ずは一番組の人事から報告させておくれ。アタシは組長を降りた。改めて皆に挨拶しな」
りうがそう促すと隣で組長席に座っていた木乃美が立ち上がり、元気よく挨拶した。
「押忍っ!多々良 木乃美です!高校生と若輩ですが一生懸命頑張ります!宜しくお願いします!」
木乃美の挨拶に剣至は一番に拍手して歓迎すると木乃美はそれに気づいて嬉しそうにする。
「木乃美は鍛えに鍛えた秘蔵の弟子さ。数年経てば総組長になれる逸材、それは確かだよ」
りうが木乃美のことを総組長になれる存在だと自慢気に言うと殆どの組長が次は自分が組長になると次々と名乗りでる。
殆どの組長は自身の野望、目的のために総組長の座を目指しており、剣至はその光景を見てやる気が凄いな、としか思えなかった。
「フフフ、みんなやる気いっぱいで頼もしいわ。では本題よ。八雷神と自称した敵についてよ」
恋の合図でテーブルの中央に先日、六番組と七番組との交流戦に乱入してきた八雷神の立体映像が映し出される。
ほぼ全員が八雷神を見て、さっきまでの雰囲気と打って変わって佇まいを直す。
「可愛いのに人を滅ぼす存在とはねぇ」
飄々とした様子で夜雲が残念そうに言う。
「この巨体は六・七番組の組員達を病院送りにした」
「………」
風舞希は壤竜を黙って鋭く見据える。
「けど剣至が撃退したのよね?」
「まぁ、ほぼ相打ちだったけどな」
「よくやったわね。偉いわ♪」
まるで飼い犬を褒めるように言う恋に剣至は顔を引き攣らせて、隣に座る天花は表情は変わらないがまた怖い笑顔で剣至を見ているがそのオーラは恋にも向けられている。
しかし、向けられた恋本人は涼しい笑顔を向けるだけだった。
「コイツは剣至と天花が撃退した……だけど逃げられたのよね?」
「ああ、3人目の『紫黒』っていう女のせいで逃した」
今度は紫黒に目を向ける。
「この黒髪は三番組を蹂躙した。そして事あることに鬼殺隊紅柱 武藤 剣至に接触してきているわ」
今度は恋がどこか凄みがある笑顔を剣至に向けてくる。
「いったいどういうことかしら?」
「………」
剣至は下手なことを言えばややこしくなると思い、冷や汗を流して黙るしかできなかった。
「まぁ、そのことは後で問い詰めるとして」
「え?」
「大事なのは組長なら神だろう倒せる点よ」
恋は揺らぐことのない自信を顔に浮かべてそう言い切る。
しかし、それに剣至が待ったをかけた。
「どうだろうな。まだアイツらが全力を見せた訳じゃない」
「どういうことかしら、剣至?」
組長全員が剣至を見てくるが堂々と話す。
「俺は3体……いや、今映し出されている奴ら全員と戦った。紫黒って奴とはそんなに戦っていないから何とも言えないが……この雷煉は炎と雷を操る広範囲の攻撃が目立った。能力で防ぐならまだしも近接戦闘を得意とする人間にとっては一撃一撃が必殺の威力があった。天花が圧勝できたのは能力の相性もあったんだろうな」
剣至の話を全員が黙って聞く。
「そして、次に壤竜。コイツとは一番戦った。岩石を操り、防御力は1番高かった。退けることはできたが最後にコイツは何かしようとして何か奥の手があるような気がする………この壤竜だけが出来ると思うより八雷神全員が奥の手を隠していると思った方がいい」
説明を終えるとほぼ全員がさっきまでの余裕の表情ではなく、真剣な表情だった。
しかしその中でも余裕の表情を崩さない恋が口を開く。
「それでも私達が戦うことには変わりはないわ。八雷神が来たら組長、もしくは柱が交戦する。これは徹底ね。だけど決して油断はしないことまだ相手について不明な部分が多いわ」
改めて魔防隊としての考えと八雷神に対する警戒を宣言する恋に全員がうなづき、新しく組長になった木乃美が元気よく返事する。
「分かりました!やっつけてみせます!」
「いい返事、その調子よ。……ただ、ひとつ不安な組があるのよね」
恋のその一言に今まで限りなく影を薄くしようとしていたベルの肩がビクリッと跳ね上がる。
「ベル、三番組が情けないのは組長の責任よ?」
「す、すいません……」
ベルが管理している三番組は以前偵察にきた紫黒によって数名の組員が負傷してしまい、ベルは今回の会議でそのことを責められるのが分かっておりとても緊張していた。
「だからこの後、私が貴女を特訓してあげる」
「えっ!?」
「安心して銀杏の結界内ならどんな無惨な怪我をしてもちゃんと治るから」
あんにボロボロになるまで鍛えると言われて、最早死刑宣告と代わりがないと思って過呼吸気味になってしまう。
咄嗟に同じく恋におもちゃ扱いされていると思っている剣至を見る。
「(いや、見られてもな……仕方ない)あー山城総組長、その、お手柔らかにな?」
「何言ってるの?八雷神と戦ったことのある貴方のアドバイスも必要なの。貴方も参加よ」
(マジかよ……)
剣至はまさかのことに愕然とし、ベルは同士が増えたと少し安心し、天花の片眉が少し釣り上がった。
すると京香が挙手して恋に提言した。
「議題が一つ。敵が来たら迎撃だけでは生ぬるい。八雷神や醜鬼を全滅させる攻めの作戦を考えるべきです」
提言された恋は一瞬驚いた顔をするがすぐに戻して返答する。
「魔都も八雷神も未知の部分が多い……襲ってくる敵を倒して削っていくカウンター型の作戦こそ確実だわ。私が総組長になってから魔都災害の数は激減した……私のやり方が正しい証拠よ」
自信に満ち溢れた表情に京香は内心で無理か、と諦めた。
「発言は以上?」
「はい」
京香はそれ以上何も言わず座ると一瞬だけ剣至と天花に目配せして醜鬼化した青羽たちについて何も話さないように目で合図した。
「じゃあ次はそこの男の子について」
恋は優希について簡単に説明し、優希も自己紹介すると銀杏が慌てた様子で会議室に入ってきた。
「恋サマ!皆様!緊急事態ですっ!!」
「どうしたの銀杏?」
「醜鬼の大軍が十番組本部に向け進軍している模様です!!」
大画面に映し出されるのは醜鬼の大軍が迫ってくる光景だった。
その光景を見て気弱なベルは怯えてしまう。
「あ、あわわ……す、凄い数……」
怯えるベルにこっそりと夜雲が背後から近づいてそのお尻を揉み上げる。
「リラックスして♪ベルたん!」
「ひゃうっ!?夜雲ちゃん!?」
そしてそのままベルの体を触りまくってセクハラをしてくる。
「組長が勢揃いしてるんだから怖がる必要なんてないよ〜」
「分かったから……はなしてぇ〜!」
セクハラする八雲と徐々に肌色が見えて艶かしい声を出すベルに全員が恥ずかしそうに顔を赤くしたり、呆れた目で見ていた。
ちなみに剣至は天花に目を両手で強く塞がれていてギリギリと鈍い音を立てていた。
「………木乃美と美羅、風舞希と夜雲は迎撃。他は敵の出方を見る」
『了解!』
恋は即座に命令を出してそれぞれがそれに従って動き出す。
4人が外に出て醜鬼への迎撃からしばらくして背後で突然光が放たれた。
振り向くと優希がスレイブ化していた。
「総組長、私達も出撃させてください。守りは性に合わん」
「生で見ると結構な迫力ね」
「総組長!!」
京香がそう言うが恋は無視して変身した優希の体を触る。
すると迎撃に出ていた木乃美たちから報告が上がってきた。
「報告します!敵は通常醜鬼の大軍のみでした!」
「全員泣かしたけど次が来る……警戒ッスね」
「たださぁ何匹かの醜鬼は倒したら爆発したね」
「そういった能力が付与されたかと。裏がありますね」
瞬く間に殲滅した4人からの報告と更に銀杏からも報告が上がる。
「恋サマ!索敵班から報告です!南方5キロに人影5!」
「それが黒幕か……私が行くわ。剣至も来なさい」
宙に浮きながら更に指示を出すが、指示を出された剣至は怪訝な表情になる。
「は?俺が行かなくても総組長1人でやれるだろ?」
「もしかしたら六道かもしれないわ。専門家が必要なのよ」
「いや、だけどな……」
「グダグダ言わずに来なさい」
恋は無理矢理剣至の襟元を掴み上げて持ち上げる。
「ぐえっ!?」
「そういうわけで京香、今回は悪いけど私たち2人で行くわ。その代わりここを任せるわね」
「……了解」
京香は少し不服といった表情をしていたが了承し、剣至と共にその場から飛び立った。
「総組長と剣至さんが行くなんて相当な事かもしれませんね……」
変身したがやることがなくなり少しいたたまれない優希がそう話すが即座に天花が否定した。
「それは違うよ奴隷くん」
「え?出雲組長どういうことですか?」
「もし八雷神、六道が出たら索敵班が認知しているはず。この前の八雷神の侵入で魔防隊の索敵は更に厳しくなったの。なので今回、人影と言うことは相手は人間なんだよね?」
「はい!天花サマ!激その通りです!」
銀杏の返事を聞いて、天花はまた怖い笑顔を浮かべる。
「ということは……総組長はそれを分かっていながらケンくんを連れて行ったわけだ。ふーん……へぇー……なるほどね……あの泥棒猫め……」
天花は暗い表情で1人ブツブツと何かを呟き、その様子に誰もがそれに触れようとはせず恋たちの報告を待つことにした。
○
恋が目標の地点まで近づくとそこにはテロリストの女性たちが醜鬼を操っており、そこに着地して連れてきた剣至を解放する。
「げほっ!?ごほっ!?……もう少し優しくしてくれよ!」
「あら?情けないことを言うわね」
文句を言う剣至に恋は揶揄うような笑みを浮かべながらそんなことを言う。
「山城 恋か!!」
「返り討ちだよ!石になれ!!」
テロリストの1人が能力を使うが何も起こらず、困惑する。
「組長が揃ったところを爆弾でドカンってところか?」
「そんなものでやれると思われているなんて、舐められたものね」
剣至が立ち上がりながらそう言って、恋はテロリストたちに近づいていく。
『燃えて!!』
更にテロリストの1人が声を発して能力を使うが恋はそれを蹴り返すという訳の分からない反撃をして、テロリストは蹴りで返された空気の圧力で腹を貫かれて地面に倒れた。
「言葉に関する能力だったのかな?……魔防隊は貴方たちのような連中から魔都の資源を守る隊でもあるわ」
恋の周りに何枚もの光るカードが浮かび上がり回って次の能力を選びながら、片手間でテロリストの1人を倒す。
するとテロリストが拘束していた明らかに様子がおかしい男を解き放つ。
「行って!能力と薬物で改造された最強の人類よ!」
「ぐるる……!」
「あら、そっちにもペットがいるのね。ならこっちもペットが相手をしましょう。行きなさい剣至」
「誰がペットだ!?」
剣至は仕方なく構える。
改造人間が殴り掛かってくるのを受け止めると弾き飛ばされてしまう。
「うおっと……結構強いな」
「助けてあげようか?」
恋がまた揶揄うように言うが剣至は鼻で笑って否定する。
「ハッ!いらないって、力は多少あるが技術はない」
再び襲いかかってくる改造人間の攻撃をいなして、反撃していく。
改造人間の全ての攻撃を受けずに攻撃だけを与えていき、速攻で行動不能にさせた。
「まっ、こんなところだろ」
「よくやったわ。後で褒めてあげる」
「だから俺はペットじゃねえよ」
恋は残りのテロリストを殴り倒し、最後の1人は広範囲の自爆をしようとしたが恋がその能力を封じてどこかに転移させて処理した。
「片付いたな」
「そうね……後は処理班が来るのを待ちましょう」
恋はそう言うと突然剣至の胸板に抱きついてきた。
「ど、どうしたんだよ総組長?」
「今は恋でいいわよ。……久しぶりに会えたんだからたまにはいいじゃない」
恋はそう言うとぐりぐりと頭を擦り付けてくるとジッと剣至を見上げてくる。
長年、付き合いがある剣至は何かを察して恋のサラサラとした長髪をゆっくりと撫でると、気持ちよさそうな表情をしてもっととせがむように頭を押し付けてくる。
処理班が来るまで剣至は恋様に甘えられて時間を潰すこととなった。
「ふふ♡撫でるの上手ね♡」
こうやって普段とは違う恋の実態を知るのは剣至だけだった。