魔都精兵のスレイヤー   作:マーベルチョコ

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第25話 恋人の許容

先行してテロリストを倒しに来た剣至たちは処理班が来るまで寛いでいた。

周りに人が倒れているのにも関わらず、剣至は地面に座りその膝の上に恋が跨って甘えてきていた。

 

「フフ……♡漸く2人っきりになれたわね♡」

 

「2人っきりって……周りに人が倒れてるんだが」

 

「野暮なことは言わないの。ここ最近連絡すら取れなかったのだから。それに私の寮で天花と仲良くしていたらしいじゃない」

 

「……」

 

組長会議が始まる前の天花とのやり取りを恋に気付かれていた剣至はバツが悪そうな顔をして視線をそらす。

その様子に恋はジト目で剣至を見つめると露出している首元に向かって顔を近づけて強く噛みついた。

 

「い"ッ!?」

 

口を離すと剣至の首には噛み傷がついてしまっていた。

それを満足気な表情で恋は見ると今度はその傷を癒すように優しく口付けし、妖しく舐め上げる。

 

「んっ……チュ、チュ……♡はぁ♡んぇ…レロ……♡ペロ……♡天花もアナタも勘違いしている様だから教えてあげる。剣至、アナタは私の所有物なの。魔都配属になった時にそう決まったの。今は天花に借してあげているだけ」

 

「それは鬼殺隊と魔防隊で決まったことだ。俺の意思がない」

 

「貴方の意思が必要なの?……鬼化する可能性があるアナタは現世での着任は許されていない。だから貴方は魔都への配属になったの。そして鬼殺隊との契約で万が一鬼化した時には総組長である私に処刑の権利が与えられる。アナタの生殺与奪の権利が私にはあるのよ?だがら剣至は私のもの」

 

鬼殺隊と魔防隊で交わされた契約の内容を聞いて、剣至はウンザリした顔になったが恋はそれを気にせず今度は剣至の胸に顔を押し付けて匂いを楽しむ。

 

「それ、前組長にも言われたな」

 

「そうね。東 海桐花も剣至のこと気に入っていたわね。でもアナタは私のものなの」

 

胸から顔を離して今度は剣至を真っ直ぐ見つめる。

 

「何故か教えて上げましょうか?もし完全に鬼化したとき、魔防隊で貴方を倒すことができるのは私だけよ。他の組長では力不足だわ。管理できるのは私だけ」

 

恋は自信がある宣言をすると今度はキスをしてくる。

愛情の籠ったキスは最初は唇同士をくっつけるだけだったが徐々に激しくなり、恋から舌を絡めてくる。

 

「んっ♡はぁ、んちゅ♡ちゅ、ちゅぷ♡れる♡れろ♡じゅる♡んぁ♡」

 

一度キスから離れて恋は自身の服に手をかける。

 

「おい、外だぞ?」

 

「あら?見られるのが心配なの?安心しなさい。私の能力で私たちの姿は見えていないわ。索敵班からも見られていないし処理班が来るまでまだ時間があるわ。……それとも嫌なの?」

 

少し不安そうにする恋を見て、剣至はいたたまれない気持ちになり恋を抱きしめる。

抱きしめられた恋は嬉しそうな表情をして抱きしめ返す。

 

「フフ……それでいいのよ♡」

 

恋が続きをしようとした瞬間、2人の横に天花が現れた。

 

「迎えに来たよ、ケンくん」

 

「て、天花!?」

 

「あら?邪魔が入ったようね」

 

剣至に跨る恋を見て、天花は一瞬眉間に皺を寄せるがすぐに表情を元に戻して平然とする。

 

「あなたには本部を任せたと思ったけど?」

 

「帰りが遅いので万が一のことがあると思い、駆けつけました。索敵班もお二人の姿を見失ったようなので。だけど、まぁ……仕事を放っておいて男と乳繰り合っているとは総組長としてどうなんでしょうね?」

 

「ふふ、天花がそれを言うのかしら?寮でも外でもずっとくっついているあなたが?ブーメランになっているわよ」

 

2人はお互いに薄い笑みを浮かべているが天花だけは目が笑っていなかった。

剣至は原因である自分が止めないといけないと思い、声をかける。

 

「な、なあ2人ともここは一旦冷静に……」

 

「「ケンくんは黙ってて/アナタは黙ってなさい」」

 

「はい……」

 

2人に言われた剣至は情けなくも引っ込んでしまった。

睨み合う2人だが恋がふと一息つく。

 

「まぁ、いいわ。確かに戻らないといけないのは事実だし、迎えに来てくれたことには感謝するわ。でも私は1人で戻れるから剣至とここで処理班を待っていてくれるかしら?」

 

「……?」

 

恋なら剣至と一緒にいたいはずで自分を戻すかと思いきや、自分から離れるとは思っていなかった天花だが不審に思いながら了承した。

 

「了解しました」

 

「お願いね。剣至、また後でね」

 

恋は最後に僅かに剣至に名残惜しそうな目を向けたがすぐに本部へと戻っていった。

その目を向けられた当の本人は気づかなかったが、同じ人を愛する天花は気づいていた。

油断ならないと思いながら剣至に何があったかを問い詰めようと向き直した時に、襟から覗く首に赤い跡があることに気づいた。

 

「ケンくん、こっち来て」

 

「お、おう。あっ……」

 

「噛み跡?総組長め……キスもされたんでしょ?正直に答えて」

 

「はい、しました」

 

天花が剣至の襟元を引っ張って肌を露出させ、恋のマーキングが見つける。

ここまでくると何を言っても無駄だと思い、全て正直に話す。

目がすわってきている天花に剣至は冷や汗をダラダラと流してしまう。

しかし、天花は折檻などはせず剣至を抱きしめて恋の噛み跡にキスをした。

 

「て、天花?」

 

「ケンくんの人たらしはもう仕方ないと思うことにするよ。あの総組長や自称神もたらしこんじゃう程だし」

 

天花は諦めたような表情をする。

 

「だけど総組長にああも目の前で挑発されるのは腹が立つよ。ケンくんは私ので、私はケンくんのもの」

 

天花は剣至を見上げて、目をジッと合わせる。

 

「私が1番であれば、今は許してあげる。だから……」

 

天花はニッコリと笑顔を浮かべた。

 

「今まで総組長とどんなことをしてきたか()()教えて?」

 

「………」

 

恋人の天花に恋とのことを全部教えるのはある意味自分の醜態を晒すのと同じことで顔を引き攣らせる。

 

「もちろんアッチのこともだよ」

 

「………(早く処理班きてくれ)」

 

剣至は遠い目になって誰か来てくれることを望んだが、処理班が来たのはそれから30分後のことで剣至は根掘り葉掘り聞かれた。

 

 

その後、寮に戻り組長会議は襲撃犯の尋問をするために今回は終了となった。

恋のベルへの特訓はなくなり、ベルはホッとした表情をしていた。

その後、総本部の一室を借りて剣至は京香たちと話し合いをしようとしていた。

 

「待たせたな。……剣至、大丈夫か?」

 

「おう、ちょっとメンタルとこの後のことを考えて疲れただけだから……」

 

天花からの恥ずかしい尋問とベルは解放されたのに剣至だけは居残りになってしまい、疲れてしまっていた。

 

「さて気持ちを切り替えて……話したいことはお前の故郷を襲った醜鬼についてだが……」

 

剣至は京香の後ろに控える優希に目を向ける。

京香のデリケートは話のために第三者をいれるのはどうかと思ったが京香は気にしなかった。

 

「優希は私の奴隷だ。ここにいてくれても問題ない」

 

「はい!ここにいさせてください!」

 

「……そうか、分かった」

 

改めて剣至は京香に向き直って話し出す。

 

「単刀直入に言うと、お前の故郷を襲ったのは本当にあの醜鬼だったのか?」

 

「何だと?」

 

青羽たちとの戦闘になった際、青羽が従えていた一本角の醜鬼は過去に京香の故郷を襲って、京香以外の人間を殺し尽くした。

京香はその一本角を倒したが剣至はその醜鬼は故郷を襲った犯人ではないという。

 

「あの事件、実は鬼殺隊の隊士も戦っていたんだ。だが、全員が戦死した。確かに一本角は強かったがあの時見た時はそこまでの実力だとは思えなかった。戦ったお前もそう思ったんじゃないか?」

 

言われた京香も戦った時、圧倒できたときに違和感を覚えていた。

確かに一本角を倒すために力をつけ、倒すことはできたが自分の中ではどこか腑に落ちていなかった。

 

「戦った隊士の階級は柱の一つ下、(きのえ)だ。決して弱くない。その隊士含む10人の隊士が全員死んだ。当初は醜鬼が犯人だと思っていたが見返すと一本角との違いがあったんだ。今からお前にとって酷なものを見せるが悪い」

 

剣至は懐から数枚の写真を見せる。

全てが殺された人間たちの傷口を撮ったものだ。

優希はその写真の凄惨さに顔を顰めるが、京香は昔の恐怖と怒りを思い出すが僅かに眉間に皺を寄せる。

 

「これらの全ての傷は全て斬撃によるものだ。どれも酷くやられているが全て致命傷になる攻撃だ。だけどお前が倒した一本角はどうだった?」

 

「奴は斬撃を使う様子はなかった……私の故郷を襲ったのは、別の存在なのか?」

 

京香は過去のことを思い出す。

惨殺された両親の死体に隠された京香はその死体の隙間からその姿を見ていた。

まるで刃物のような角を持った何者かがその両腕に持つ双剣で殺し尽くす姿を。

京香は大量の冷や汗を流して過呼吸になってしまう。

 

「ハッ……!ハッ……!」

 

「きょ、京香さん!?大丈夫ですか!?」

 

「和倉くん、水を渡してあげてくれ」

 

「はい!」

 

優希から渡された水を飲んで京香は一息をつくことができ、落ち着いた。

 

「すまない……あの時の記憶が混濁しているんだ……だが、あの時私の故郷を襲ったのは……あの時の一本角の鬼ではなかった……!」

 

悔しそうにそう呟く京香は拳をキツく握りしめる。

 

「……色々混乱しているだろうから、記憶のことは思い出してからでいいから教えてくれ」

 

「……あぁ」

 

焦燥した様子の京香はソファに深く背中を預けて座り込み、剣至はこれ以上無理をさせられないと思ってここまでとすることにした。

 

「和倉くん、申し訳ないけど京香を頼む」

 

「分かりました!任せてください!」

 

京香のケアを優希に任せて剣至は室外へと出た。

 

「ふぅ……(あそこまで沈んだ様子の京香は初めて見た。これは一度あの人に活を入れてもらった方がいいかもな……)」

 

そんなことを考えているとふと視線と鋭い殺気を感じて、そちらを向くとまたピリペンコが剣至を睨みつけていたがすぐにいなくなってしまった。

 

「またか……俺なにかしたか?」

 

剣至は不思議に思いながら頬をかいた。

 

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