八雷神の出現、六道の鬼に再出現により魔防隊は今まで其々の組での独自で動いていたが、これからは連携を強めるということで何組かで合同訓練をすることになった。
その初回で京香率いる七番組、六番組ともう一組で訓練することになったがそのもう一組がおらず、六番組は天花と剣至の姿がなかった。
更に七番組の面々は不安に思っていることがあった。
組長会議から京香は物思いに耽ることが多くなった。
普段はいつもの凛とした京香だがふとした時に考え込む姿がよく見られるようになった。
日万凛たちが心配するが京香は気にするなと言うだけだった。
「うん?天花と剣至はどうした?」
「組長たちはある人を迎えに行くと言って、少し遅れています」
八千穂がその質問に答えると一陣の風が全員の頬撫でた。
「来たか」
京香が呟くと突然竜巻が京香たちの目の前に現れて近づいてくる。
「ち、近づいてきますよ!?」
「五番組だ」
竜巻が徐々に晴れていき、中から人影が見えてくる。
現れたのは夜雲率いる五番組だ。
「こんちゃー☆」
夜雲らしく軽い挨拶をして、その部下たちも挨拶をしてくる。
「ウィンウィンの合同訓練になるように頑張りましょう」
「……(ペコ)」
五番組副組長、五木 カイコと組員の所山 サキも挨拶を終えると夜雲は早速と言わんばかりに京香に近づいて、肩を掴んで自身に引き寄せて京香の身体を舐めるように見回す。
「引き締まった体……素敵よ京香」
「変なところを触ったら指折るぞ」
夜雲のスキンシップに相変わらずの対応で返す京香だが、夜雲はそれすらも嬉しそうにする夜雲だったがある事に気づいた。
「あれ?天さんは?」
「組長と武藤は所用で少し遅れるとのことです」
八千穂がそう答えると夜雲は怒り出した。
「なにィ!?ライバルめ!天さんとアンナことやコンナことをしているに違いないなぁ!?」
夜雲の頭の中では乱れた制服姿で汗をかきながら絡み合う天花と剣至の姿が妄想されていた。
「お前ではあるまいし、そんなことあるか」
京香がすかさずツッコむと天花と剣至、そしてもう1人が瞬間移動で現れた。
「ごめんね。迎えに行くのに少し手間取っちゃった」
「今回の合同訓練は各組の連携を強めることもそうだが、各個人の強さも底上げすることになった。そこで今回、特別講師としてこの人を呼んだ」
剣至は後ろに控えていた人物に前に出るように促すと、力強く前に踏み出して皆んなの前に姿を現す。
「私は炎柱、煉獄 杏寿ッ!!今回はこの合同訓練に参加させてもらう!必ず君たちの実力を一つ二つ上に上げよう!!」
炎のような黄と赤の髪をポニーテールにして溌剌とした話し方をする杏寿に全員が彼女から発せられる存在感とその勢いに驚いた。
○
時間は遡り、合同訓練が始まる数週間前に剣至は現世のとある山を訪れていた。
長い石階段を上り、大きな日本屋敷の門の前に辿り着く。
その門には『煉獄道場』と看板がかけられており、門の外にいるのに関わらず中から威勢の良い掛け声が聞こえてくる。
門をくぐり、声がする方向に向かうと大きな道場が建っていた。
中に入ると道着姿の杏寿が大勢の見習い鬼殺隊士の前田指導していた。
「確実に一撃で倒すように竹刀を振るうんだ!!だが力みすぎて雑になってはいけない!!一振り一振りに集中しろ!!」
『はい!!』
指導する姿は正しく弟子を導く師範として立派だった。
剣至に気づいた杏寿は指導を側に控えていた師範の1人に指導を任せて、いつもの快活な笑顔を浮かべて近づいてくる。
「剣至!よく来たな!」
「お久しぶりです。杏寿さん」
「話はお館様の鎹鴉から聞いている!詳しくは本邸のほうで話そう!」
道場の横にある煉獄家本邸に案内され、その中の部屋の仏壇の前で手を合わせた。
「剣至、ありがとう。父上も喜んでいるだろう」
「どうでしょうか。あの人ならさっさと鬼を倒しに行けと言いそうですけど」
「ふふっ、口ではそうは言うかもしれないが父様はお前のことを気にかけていたよ」
2人でそう談笑していると1人の女性がお茶を持って入室してきた。
「杏寿、お茶を持ってきましたよ」
「母様、ありがとうございます」
「
凛とした顔立ちの女性は杏寿の母親、燈莉であり杏寿の隣に座る。
「鎹鴉から聞いていると思いますが八雷神と六道の鬼が協力している中、魔防隊と鬼殺隊は連携を強めていくことになりました。その先駆けとして杏寿さんには魔防隊の合同訓練に指導者として参加して欲しいです」
「うむ。今後、敵は更に強くなるだろう。十灼の報告にあった新たな鬼の出現。これも八雷神と六道の仕業のはずだ。我々も強くならないといけない」
「手っ取り早く強くなるには魔防隊に全集中の呼吸を覚えてもらうことだと思います。魔防隊でも何人かは呼吸を使える人はいますがそれでも3〜4人しかいません。呼吸を覚えてもらうことで身体能力は著しく飛躍すると思います。……勿論、鬼殺隊も強くならないといけませんけどねれ
「うむ、我々も日々精進しているが一番効果が出やすいのは魔防隊の方だと私も考えている」
「なので今回、誰よりも指導が上手い杏寿さんに指導をお願いしたいです」
杏寿は自信のある笑みを浮かべて頷いた。
「承知した。その指導、有り難くやらせて貰おう。魔防隊と手合わせできるのも中々ないからな」
了承してくれたことに剣至は安心する。
杏寿なら快く引き受けてくれると思っていたが一部の柱が今回の件で反対してきたから少し心配だった。
「それとこれは個人的なお願いがあるんですが、京香のことを見てやってくれませんか?」
「どういうことだ?」
剣至は一本角の鬼と京香の因縁について説明した。
「なるほど……分かった。京香についても気にかけておこう!私に任せておけ!」
「ありがとうございます」
剣至が頭を下げて礼を言うと、今まで黙っていた燈莉が口を開いた。
「杏寿、魔防隊との合同訓練と京香さんについてしっかりやってきなさい。貴女は柱として導くのです」
「はい!!」
燈莉の激励に杏寿も強く返事をした。
○
「ってことで、杏寿さんは鬼殺隊員の訓練を担う『道場』をまとめていて誰よりも全集中の呼吸や戦い方を教えるのが上手い。今回の訓練では全集中の呼吸を習得している者、修行している者もいるだろうから指導をお願いしたんだ」
「よろしく頼む!!」
全員に説明を終えて、剣至は杏寿に後のことは任せた。
「それでは杏寿さん、後は頼みます」
「うむ!私が離れている間はそっちを頼むぞ!」
「あれ?ライバルは訓練に参加しないの?」
「杏寿さんがこっちにいる間は俺が道場と担当地域を任せられたんだ。柱を持て余す訳にはいかないからな。天花、移動を頼む。お前らも頑張れよ」
「うん」
そう言うと天花とともに門まで瞬間移動して姿を消した。
杏寿は改めて全員の方を向き、早速訓練を始めようとする。
「それでは!早速訓練と行こうか!」
やる気に満ち溢れている杏寿を見て、夜雲が京香に耳打ちする。
「だいぶパワフルな美人さんだね。お近づきになりたいなぁ♪」
「そんな軟派な考えでいてると痛い目にあうぞ」
「どゆこと?」
「あの人、杏寿さんは……」
京香がいつもより顔を引き締めていることに気づいた夜雲が質問する。
「と、言いたいところだが私は君たちの実力を知らない。なので……」
杏寿は日輪刀を抜き、振り下ろす。
それだけ京香たち全員に熱風がぶつかる。
「全員で私と勝負といこう!!」
「女性の柱の中で最も強い。その実力は私以上だ」
杏寿の赤き炎刀が煌めいた。