魔都精兵のスレイヤー   作:マーベルチョコ

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第28話 合同訓練 炎柱 煉獄杏寿VS五番組組長 蝦夷 夜雲

剣至を見送ってきた天花が戻ってきて目に入ったのは対峙する杏寿と夜雲だった。

 

「天花、戻ったか」

 

「京ちん、今はどんな状況?」

 

「日万凛たちとの戦闘を終えて、これから夜雲との戦闘だ」

 

「そうなんだ……じゃあ最後は京ちんかな?私はケンくんとの事前の顔合わせで一度戦ったから」

 

「そうなのか?どうだった?」

 

天花は首を横に振って少し残念そうな顔をした。

 

「天御鳥命で最初は翻弄して有利だったけど徐々に対応されて追い込まれて負けちゃったよ」

 

「そうか……天花の能力でも対応してくるか、流石だな。優希、鬼殺隊の強みは何だと思う?」

 

京香は日万凛たちの治療を手伝っていた優希に質問する。

 

「え、えっと……やはり全集中の呼吸による身体能力と技でしょうか?」

 

「そうだな。確かにそれもある。だが私は別のところにあると思っている。それは異能に対する適応力だ」

 

「適応力ですか?」

 

「ああ、多分だがこの模擬戦でそれがよく分かると思うぞ」

 

対峙する2人の間に京香が立ち、手を上げる。

 

「いざ尋常に……始めッ!!」

 

「じゃあ早速……仕掛けちゃうよぉッ!」

 

夜雲は早速腕を翻して竜巻を巻き起こし、杏寿に向けて放つ。

巨大な竜巻は地面を抉りながら凄まじい風を巻き起こす。

しかし、杏寿は焦った様子を見せず木刀を構える。

迫ってくる嵐に杏寿は微動だにせず観察する。

 

(なるほど凄まじい嵐だ。これは避けても無駄だな)

 

「ならばッ!!」

 

杏寿は走り出し、嵐の中に突っ込む。

 

「えっ!?」

 

杏寿の突然の奇行に夜雲たちは驚くが、次の瞬間嵐の中から杏寿が飛び出してきた。

 

「うそっ!?嵐を抜け出してきたの!?」

 

落ちてくる勢いをそのまま斬撃に乗せて振り下ろす。

 

炎の呼吸、参ノ型 気炎万象

 

炎を纏った斬撃を夜雲に向けて振り下ろすが夜雲はそれを風を纏った状態でかわす。

 

「ひゅー……あぶな」

 

まさか嵐の中から抜け出してくるとは思わず、一息ついた瞬間には杏寿は夜雲の目の前に迫って木刀を振るった。

 

「っ!」

 

しかし、夜雲もやられっぱなしではなく杏寿の一撃を寸前でかわすと手のひらを杏寿に向けて風を巻き起こす。

それを木刀で防ぎながら杏寿は距離を離されるが即座に夜雲に近づこうとする。

 

「やり辛いなぁ……!」

 

いくら距離を取ろうともすぐに近づいてくる杏寿に夜雲は悪態をつきながら風を放って杏寿に攻撃するが、どれもが決定打に欠けていた。

夜雲は焦ったくなり地面に風を巻き起こして空に逃げる。

 

「逃がさないぞ!」

 

「もう!夜雲さんは熱烈なのは歓迎だけどしつこすぎ!」

 

しかし杏寿はそれを逃さず、鬼殺隊の装備品であるワイヤー付きナイフ『クモイト』で夜雲を捕まえて距離を離さない。

執拗な距離の詰め方に美女、美少女に優しい夜雲もつい悪態をついてしまう。

 

「流石杏寿さんだ。もう夜雲の弱点に気付いて対応している」

 

「弱点…ですか?」

 

「あぁ、夜雲は広範囲、高出力の竜巻を起こして敵を一網打尽に出来るが逆にそれは自身の近くで発動すれば自滅してしまう。必ず距離が必要だ。杏寿さんは初手でそれに気づいて距離を作らせないようにしているんだろう」

 

「初手でそこまで考えつくなんて、凄いですね……」

 

「鬼殺隊の構成は殆どが男で無能力者だ。それに対して鬼は人を超えた身体能力に加えて血鬼術という桃に似た能力も使う。だが、彼らはそれらに対して戦い続けてきた。謂わば鬼殺隊は対能力者戦のエキスパートとも言えるな」

 

「それで適応力なんですね」

 

京香と優希は会話を続けていると杏寿たちの戦いが動いた。

ワイヤーが絡んで解けないと分かった夜雲は風をかまいたちのように起こしてワイヤーを切り落とす。

そして、距離をとって最初の一撃より大きな竜巻を作る。

 

「これでぇ……おしまいッ!!」

 

杏寿は先と同じように竜巻から抜け出すのは無理だと、即座に判断して逃げようとするが竜巻の吸い込む力が強く、踏ん張ることしかできない。

 

「………」

 

杏寿は少し竜巻を見つめると踏ん張っていた足の力を抜き、竜巻に自分から呑まれていった。

 

(自滅?諦めた?いや、それなら声をかければ……)

 

杏寿の奇行に不審に思う夜雲だが自分が生み出した竜巻の様子がおかしいことに気づく。

杏寿は竜巻の中で風に身を任せて、構えを取っていた。

最早、上下左右が分からない状況で杏寿は目を閉じて精神を統一する。

肌で感じる風の向き、吹き荒れる風の音に集中し、目を見開く。

迫ってくる瓦礫を足場に上へと登り、やがて竜巻の上へと躍り出る。

そして、重力に従って夜雲の下へと落ちてくる。

 

「それだと狙い撃ちだよ!」

 

夜雲が杏寿に向かって竜巻を起こすと杏寿を飲み込む。

しかし、杏寿は姿勢を崩すことなく竜巻の回転に身体を任せて、吹き飛ばされるところか夜雲に向かって進んでいく。

やがて近づくと刀を握りしめて巻き上げられた岩を蹴って、一気に夜雲に近づく。

 

炎の呼吸 陸ノ型 華炎の舞い

 

強力な回転斬りで竜巻を掻き消しながら夜雲に一気に近づいて、その懐に入り込み喉元に木刀の切先を添える。

夜雲は冷や汗を流しながら苦笑いを浮かべて両手を上げた。

 

「勝負あったな」

 

「こ、こうさーん……」

 

夜雲は潔く負けを認めてその場に座り込んだ。

 

「あーあ、負けちゃったなー」

 

「いや、蝦夷組長は本気を出せなかったのだろう。本気を出せばここら一帯が無惨な状態になるものをそれを抑えて戦った。本来であればどうなったかは分からない。それなのにこうも私はやられてしまったのだ。流石だ」

 

手を差し出す杏寿の姿は傷こそないが隊服と羽織がズタズタに裂けており、胸元と色々なところの肌が少し見えてしまっている。

夜雲の攻撃がどれほど苛烈だったのかは明確だ。

素直に褒めてくる杏寿の姿を夜雲は凝視する。

はだけた部分から健康的な四肢が垣間見えて、そして鍛えているからか豊満な胸が見えてニンマリと下心ありの笑顔を浮かべる。

 

「ありがとう!杏寿さん!今回の訓練で()()()仲良くなりたいなぁ」

 

「もちろん!仲を深めよう!」

 

杏寿は夜雲の下心はまったく気づかず、互いにいい汗を訓練で流して仲を深めようと考えているが、夜雲の頭の中では裸で汗を滴らせて交わる光景が思い浮かんでいた。

 

「あれ気づいてる?」

 

「いや、杏寿さんはそういうのは疎いからな……」

 

京香は下心満載で握手している夜雲とそれに気づかず笑顔の杏寿を見て少し不安になったが、あの快活さなら夜雲のことは気にしないだろうと思った。

 

「さて……最後は京香だな!」

 

「その前に杏寿さん……服を着替えてください。優希、替えの服を」

 

「はい!こちら服です」

 

「助かる!ありがとう!」

 

杏寿のボロボロになった服の替えを優希が持ってきたが、優希の目の前で着替えようと服を脱いで胸を見せてしまい、優希は赤面して恥ずかしがり、夜雲は目を輝かせて一悶着あった。

 

 

服を着替えた杏寿と京香は木刀を構えて対峙していた。

互いに木刀を構えて動かず、2人の間には緊迫した空気が張り詰めていた。

 

「2人とも動かない……」

 

「お互いに出方を見ているのかしら?」

 

動かない2人を見て優希と日万凛がそう話すが対峙していた京香は冷や汗を流していた。

 

(相変わらずの気迫だ……向かい合っているだけなのにまるで大火の前に立っている威圧感がある)

 

杏寿から放たれる気迫に京香は肌が焼き付けられるような感覚を感じていた。

 

「どうした京香かかってこないのか?なら、こちらから行くぞ!!」

 

杏寿は踏み出して、京香に迫ると木刀を振り下ろす。

京香は木刀で受け止めるが抑えきれずに弾き飛ばされてしまう。

転がりながら姿勢を戻すが木刀を握っていた手が衝撃で痺れて震えていることに気づき、苦い表情になる。

 

「相変わらずのパワーですね。一撃でこれほどとは」

 

「私も日々鍛えているからな」

 

「今度はこちらから行きます!!」

 

今度は京香が近付いて、全集中の呼吸を使って技を放つ。

力で格上の杏寿に勝つには全集中の呼吸を使うしかなく、唯一勝る速さにかけた。

 

桜の呼吸、壱ノ型 桜花斬

 

炎の呼吸、弍ノ型 昇り炎天

 

2つの斬撃がぶつかり合い、辺りに衝撃が走った。

 




用語集
・炎の呼吸、陸ノ型 華炎の舞い
本作のオリジナル呼吸
体を大きく捻っての回転斬り。回転斬りの軌跡が炎が燃え盛るように咲く花のように見える。
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