魔都精兵のスレイヤー   作:マーベルチョコ

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第3話 神と名乗る鬼

初の顔合わせから日にちが経ち、六番組と七番組との魔都交流戦が行われる日がきた。

 

「ノルマは六番組の完勝と行こ」

 

「はーい!」

 

「優雅もつけ足そう!優雅なる完勝じゃ!」

 

現れた六番組の中には剣至の姿はなく、彼は仕事で交流戦には来なかった。

 

「そしてケンくんにご褒美をもらうんだ♪」

 

いつもの色ボケが発動したことで八千穂のやる気は著しく下げられてしまい、ゲンナリとした表情になる。

 

「じゃあ私は添い寝かなぁ?」

 

「サハラ、お前もか!?」

 

同じ六番組の組員、若狭 サハラの言葉に八千穂は目を剥いて驚く。

 

「そう言うヤッチは欲しくないの?」

 

「ほ、欲しくなどないわ!」

 

騒ぐ六番組だったが1戦目の八千穂が日万凛に負けて、完勝もご褒美もなくなった。

続く2戦目はサハラが朱々に勝利し、残りは組長同士の戦いとなった。

しかし、そこに結界を破って乱入者が現れた。

 

「廃れ者ども。貴様らそろそろ亡びの時だ」

 

現れたのは知能のない獣のような醜鬼ではなく、言葉を話す異形の人型だった。

交流戦は中止となり、現れた敵と戦うこととなる。

京香は能力で強化された優希に乗って刀を振るう。

 

「桜の呼吸、参ノ型 桜刀旋風(おうとうせんぷう)

 

刀を振るうと桜の花弁が竜巻のように舞い散り、醜鬼どもを切り刻む。

 

(凄い…!一太刀で圧倒した!流石京香さん!)

 

実力の凄さを魅せる京香に優希はますます尊敬の念を送る。

京香は刀を握りしめて技の腕を確かめる。

 

(呼吸を改めて見直して良かった。技に更に磨きが掛かったしな)

 

兄弟子である剣至の叱咤と激励により、自身を見直した京香は人型醜鬼が襲撃された時より強くなった。

 

 

それと同じ頃、八千穂は新たな人型に追い詰められていた。

雷煉と名乗る異形は炎を吐き出し、雷を空から放つ。

正に神業を繰り出す雷煉に八千穂は自身の能力である『東の辰刻』で時間を止め、時間を戻して避け続けるが相手の圧倒的な火力と防御力に追い詰められていく。

トドメを刺さられそうになった時、横から非戦闘員を安全な場所に移動させた天花が現れた。

 

「お疲れ、八千穂。待たせたね」

 

「のわっ!?」

 

突然現れた天花に雷煉は驚きつつ、様子を見る。

 

「代わろう、休んでて」

 

天花の言葉に八千穂は安心したような笑みを浮かべて後ろに下がる。

 

「まぁ代わるのは私ではなくて彼なんだけどね」

 

天花はそう言って手を横に向けるとワープホールが形成され、そこから1人が姿を現す。

 

「ちょうど彼が寮に戻ってきていて良かった。人型醜鬼を見つけたら合わせる約束してたから」

 

ワープホールから現れたのは剣至だった。

剣至は周りの醜鬼と雷煉、そして傷ついた八千穂を見て目を細めて、雷煉に向かって話しかける。

 

「お前に3つ聞きたいことがある」

 

「フッ、廃れ者の質問に誰が答えるか!」

 

雷煉は馬鹿にしたように鼻で笑うと剣至に向かって火球を放った。

雷煉は火球で焼け焦げて死ぬと思い笑みを深めるが、放たれた当の本人である剣至は落ち着いており刀を抜いた。

火球は一刀両断され剣至の後ろで2つの火柱が立った。

 

「っ!?どんな能力だ?」

 

「能力なんてない、男だからな。まず一つ目の質問だ。お前らは現世にいる鬼と同じ存在か?」

 

「……?現世にいる鬼はそこらにいる雑兵であろう」

 

(こいつらと鬼は別物……憶測だったものが確証に変わっただけでも良しとするか)

 

想像とは外れたことに少しため息を吐いたが直ぐに質問する。

 

「二つ目の質問だ」

 

「何度も言わせるな!廃れ者の話など聞くか!!」

 

今度は指先から雷を剣至に向かって放ち、剣至は呼吸を使う。

 

「血の呼吸、参ノ型血流駿歩(けつりゅうしゅんほ)

 

体から紅い軌跡を描きながら高速で電撃を避ける。

2度も攻撃を躱されたことに驚きながらもその顔を怒りで歪ませる。

 

「二つ目の質問だ。『月ノ皇』は知ってるか?」

 

「神である我にそのような王のことなど知るかッ!!」

 

怒りで怒鳴る雷煉の様子を見て、剣至は考える。

 

(怒りで何も考えちゃいない。あれは本音だな)

 

宿敵である月ノ皇に関係ないと分かり、心の底では落胆するが気を引き締める。

 

「次で最後の質問だ。もうここまで来たら答えてくれよ」

 

「貴様ァ……!」

 

怒りでワナワナと震えるがそれを無視して雷煉に質問する。

 

「何で人を襲う?」

 

その質問に雷煉の表情は一瞬呆気に取られるがすぐに嘲笑を浮かべた。

 

「ふん、そんなことか。廃れ者である貴様ら人間は神である我らに裁かれるのだ。それは必然なのだ」

 

雷煉の傲慢な発言に剣至の刀を握る力が強くなる。

 

「必然……余りにも傲慢な発言だ。お前らにそんな権利があるのか?」

 

「言った通り我は神ぞ。人間の命など我の好きにしても良いのだ」

 

その言葉に更に力が入り、コメカミに血管が浮き出る程に怒りが滲み出る。

 

「もういい。口を開くな」

 

剣至は構えを取り、雷煉を睨む。

 

「お前は神なんかじゃない……悪鬼だ」

 

その眼はいつも黒目ではなく、血のように紅く染まっていた。

 

「滅する……!」

 

「人間如きが図に乗るなァ!!」

 

雷煉が激昂するも剣至は近づいて刀を振るう。

 

「血の呼吸、壱ノ型 紅斬り」

 

紅い斬撃が雷煉を襲うが腕で防がれてしまう。

 

「廃れ者の技など神たる我に届かぬわぁっ!!」

 

雷煉が火球を放つが剣至は呼吸をしていた。

 

「血の呼吸、参ノ型 血流駿歩」

 

先程と同じで赤い残像を残しながら避け、剣至に雷煉はほくそ笑む。

 

(その動きが止まった瞬間に空から雷を落としてやる……!)

 

頭上の空には暗雲がたち込め、時折稲光が光っている。

雷煉は火球、雷で動きまくる剣至に追撃していくが遂に剣至が攻めに転じた。

攻撃をかわすと雷煉に向かって突撃する。

 

「なに!?」

 

「続けて……」

 

突然の攻めに驚く雷煉だが剣至は更に呼吸を強める。

 

「血の呼吸、壱ノ型 紅斬り」

 

首目掛けて振るわれた斬撃は先の一撃より強い斬撃が雷煉の首目掛けて振るわれる。

 

「ぐぬぅ……!」

 

雷煉は腕で防いだがその腕には深い傷が刻まれており、血が流れている。

 

「神でも血が流れるんだな。それにこのくらいの斬撃で傷が出来るなら神ってのは案外大したことないな」

 

刀に付いた血を振り払い、雷煉を睨む。

 

「貴様アァァァッ!!!」

 

激昂する雷煉に構えをとる剣至が互いに睨み合う。

すると剣至の前に天花が躍り出た。

 

「ケンくん。ここからは私が代わるよ」

 

「天花」

 

「今回は七番組との魔都交流戦を兼ねてるから、京ちんとの競争もあるから、ね?」

 

剣至にウィンクする天花に一息ついて、背後にいる醜鬼たちの方を向く。

 

「分かった。俺は雑魚を片付ける」

 

「うん、お願いするね」

 

醜鬼たちに向かう剣至は途中で立ち止まり、天花に向かって声をかける。

 

「天花、ありがとうな」

 

「……うん、また後でね」

 

天花は剣至を見送り、雷煉に向き合う。

 

「さて、君を片付けようか」

 

「貴様は組長か!本来の標的は貴様であったが、そんなことどうでもいい!!あの廃れ者を殺さなければ我の気が済まん!!貴様は後で相手をしてやるからそこを退けェ!!」

 

激昂する雷煉だがそれとは対照的に天花は酷く落ち着いた表情をしている。

 

「私はね。怒っているんだよ」

 

気合いを入れ直すかのように手袋をはめ直しながら呟く。

 

「君はケンくんの悲願のための一歩になる可能性だった。勿論、そうじゃ無い可能性も十分にあった訳だしそこは仕方ないと思うよ。でもね……」

 

雷煉を睨むその目には明らかに怒りがあった。

 

「ケンくんが目の色を変えてまで怒りを覚えさせたお前を許せない……!」

 

「知ったことかぁっ!!」

 

雷煉が火球を放つが天花は自身の前にワープゲートを展開させて火球を飲み込むと真横にもう一つワープゲートを展開させて火球をぶつける。

 

「ぬぐぅっ!?(我の攻撃を返したのか!?)」

 

爆煙で視界が塞がれた雷煉に天花が蹴りを放つ。

 

「っ!(やっぱり見た目通り生身の攻撃じゃ分が悪いか)」

 

岩を蹴ったかのような感触に少し表情を歪ませると離れる。

 

「鋼の体を待つ我に傷などつかぬ!!」

 

「ケンくんに斬られたでしょ?」

 

「黙れ!!」

 

天花の挑発に乗せられた雷煉は電撃を放つがそれを転移してかわし、雷煉の真横に現れる。

それに気づいた雷煉が拳を振るうが軽やかにかわして手を向ける。

すると雷煉の顔のすぐ横の空間が歪む。

バツンという音とともに空間が裂かれ、雷煉はそれをかわすが腕に傷がつく。

 

(我に傷を!?)

 

体勢を崩した雷煉を殴り飛ばすのと触れた瞬間に雷煉を転移させる。

空中に飛ばされた雷煉に照準を合わせるかのように両手を向ける。

 

「位置バッチリ」

 

次の瞬間、空中から落ちてくる雷煉と地上にいた醜鬼の間の空間を大きく歪ませて周りの雷煉たちを巻き込む。

 

(このままいけば倒すのは無理でも致命傷にはなるはず…….)

 

天花がそう考えていると横から剣至が飛び出して渦に巻き込まれる雷煉に向かっていく。

 

「ケンくん!?」

 

「天花!このまま!」

 

指示通りに天花は能力を止めず、剣至は刀を構える。

雷煉に向かって刀を振るうが当たる直前にその姿は消えていた。

 

「チッ……」

 

足元には剣至が辛うじて斬ることができた雷煉を助けに来た何者かの髪であろう黒蛇が落ちていた。

しかし、その蛇も霧のように消えてしまった。

戦いが終わり、全員が集まって無事か確認する。

 

「今回現れた人型はライレンと自称していた個体のほかにもう2体いたと寧から報告があった」

 

「じゃああの時見たのはそのうちの一体か。全体は見れなかったが後ろ姿は女だった」

 

京香と剣至が今回の襲撃について話し合っていると七番組偵察隊員である大川村 寧が申し訳なさそうな顔をしながら2人に申し出た。

 

「すいません……寧がもっとしっかり監視していれば……」

 

そう言って顔を俯かせる寧に、京香は顔を上げるように頬を掴んで持ち上げる。

 

「そんなことを言うな。お前がいなければ奴らの襲撃に気づくのに遅れてしまっていた」

 

「それに敵の顔が分かっているのは大きなことだよ」

 

落ち込む寧を励ます京香と天花に寧は顔を綻ばせた。

 

「じゃあ大川村隊員は後日俺と敵の顔のすり合わせをしよう。今日は解散だ」

 

そう言って天花の肩に手を置き、天花はその手を握り、八千穂たちに触れて六番組へと戻った。

自室(天花が勝手に共同部屋として作った)に戻るとソファにドカリと座り込み、疲れた表情になる。

 

「大丈夫?結構無理したんじゃない?」

 

天花が剣至の横に寄り添って横腹に触れる。

 

「火球は避け切ったけど電撃は無理だったな」

 

そう言いながら服をめくると横腹は赤くなっていた。

 

「能力の相性にもよるけどアイツら強いな……できれば月ノ皇に繋がっていて欲しかった」

 

「ごめんね。期待させちゃって」

 

「なんで天花が謝るんだ?天花は悪くないだろ?」

 

申し訳なさそうにする天花の頬に触れて、慰めるように撫でると天花はその心地よさに目を細めて幸せそうにする。

 

「また次の機会があるさ」

 

「うん……」

 

天花はそう頷きながら剣至に体を預けた。

 

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