紫黒たちに逃げられた剣至は即座に思考を切り替えて京香たちのところに走る。
その頃、一本角の醜鬼と戦っていたが攻めあぐねていた。
突然襲いかかってきた一本角の醜鬼に八千穂たちは戦闘不能になり、大怪我を負っている天花たちと動けない優希のために防戦一方だった。
そこに剣至が到着し、京香たちの間に割って入る。
「無事か!?」
「剣至!八雷神はどうした!?」
「すまん、逃げられた。この醜鬼は彼女の味方じゃないのか?」
剣至は天花に庇われている青羽の方に目を向ける。
「突然襲ってきたんだ。どうやら彼女の言うことも聞かないらしい」
警戒を解かずに京香と剣至は状況を簡単に報告しあう。
「剣至、この醜鬼は私が倒す。故郷の皆の仇だ」
「こいつが?」
剣至は目の前の一本角を疑うように見るがうなづいて負傷している天花たちに駆け寄る。
「京香さん!俺も戦います!」
「ああ!共に行くぞ!」
スレイブ化した優希に乗り、京香は仇討ちへと乗り出た。
○
剣至は倒された八千穂たちを天花の所まで集めた。
「天花、怪我は酷くなってないか?」
「ケンくん……うん、大丈夫だよ」
天花はそう言うと剣至に抱きついた。
「ごめん、少しだけこうさせて……」
「あぁ、わかったよ」
剣至は何も言わずに怪我をしていない腕を天花の背中に回した。
その様子を見て青羽は何か考えるような顔をしたあと、剣至に話しかける。
「ココと波音はどこに行ったの!?」
「俺が回収しに来た時には姿は無かった。……連れ去られたか」
「そんな……!」
「すまない、俺の責任だ」
素直に謝罪する剣至に青羽は鬼殺隊に悪感情を持っていたが一瞬驚いた顔をして悔しそうに俯く。
「……分かったわ。今はそれより優希たちのことよ。一本角に勝てるの?アイツ、私が従えていた時より強くなってたわよ」
「あぁ、問題ない。
剣至は確信した目で戦っている京香たちに目を向けた。
○
京香はスレイブ化した優希に跨り、刀を振るっているが違和感があった。
戦況は優希の成長もあり、京香たちが圧倒的に有利なのだ。
(何故だ……何故、この醜鬼はこんなにも
復讐のために長年修行をしてきて力をつけたのもあるが京香はどこか違和感があった。
「京香さん!来ます!」
「っ!ああっ!優希!そのまま敵に進め!!」
「はい!!」
京香に言われた通りに醜鬼に臆せず、突撃する。
京香は刀を構えて集中する。
「全集中……!」
「桜の呼吸、伍ノ型 乱れ山桜!!」
咲き乱れる桜のような剣戟が反撃などさせないと言わんばかり醜鬼を切り刻んでいく。
「屈服の……時間だぁー!!!」
醜鬼が細かく切り刻んで完全に殺しきる。
切り刻んだ刀を見つめて、京香は物思い耽ける。
「京香さん!やりましたね!……京香さん?」
「あ、あぁ……そうだな」
「……嬉しくなさそう、ですね」
京香はそう言われて、改めて笑顔を浮かべる。
「いや嬉しいさ。皆の仇を取れたんだからな」
そうは言うが京香はどこか納得してなさそうに優希は見えてしまった。
○
戦闘が終わり、改めて剣至は青羽と話し合うこととなった。
「改めて自己紹介をさせて欲しい。鬼殺隊、紅柱の武藤 剣至だ」
「優希の姉、和倉 青羽よ。ここで醜鬼化してしまった子たちを取りまとめているわ」
「今はここにいない天花から聞いた。俺たち鬼殺隊を恨んでいるって」
「……そうよ。陰陽寮から私たちと同じ境遇の子たちを逃がそうとして鬼殺隊の人間に仲間と逃がそうとした子たちを殺されたわ」
「それにその傷か」
剣至は青羽の背中の傷も言うと少し辛そうな表情になる。
「悪いが陰陽寮と鬼殺隊は殆ど関係がない。君たちを斬った人間も鬼殺隊の人間じゃない」
「そんな、そんなことあるわけないじゃない!!アンタが使っていた技とは違っていたけど、あの呼吸の仕方や音は似ていた!!」
「……だが鬼殺隊じゃない。元鬼殺隊の人間だ」
剣至の一言に京香は気づいた。
「
「あぁ、鬼殺隊をやめて陰陽寮に出向いたのは奴しかいないし、奴ならそんな残酷なやり方をするのは納得できる」
「うむ……青羽、剣至が言うことは正しい。私が保証する」
弟である優希が信頼している京香の言葉に青羽も渋々納得する。
「分かったわ……とりあえずは認めてあげる。天花の恋人でもあるしね」
僅かな間だけ共に戦った仲だが青羽は天花を信頼し始めていた。
その時、急患の八千穂たちを医療班に送っていた天花が戻ってきた。
「天花、戻ってきたのか。そのまま医療班に診て貰えば良かったのに」
「ケンくんの誤解を解かないといけないもん。治療は後でいいよ」
「安心して天花、一応は納得して武藤のことは信用するわ」
「……そう、良かったよ」
青羽の話を聞いて安心した天花は剣至にもたれかかるように倒れ、剣至は優しく受け止めた。
「青羽、まだ暴動を考えているのか?」
「……その気はないわ。集めた醜鬼は全滅。ココと波音は攫われたもの。でも、あの2人は助けなきゃ!」
「暴動を起こす気がないなら私は戦う気はない。優希の姉であるお前を信じよう」
「姉ちゃん、魔防隊に保護して貰おうよ」
優希からの提案に首を横に振る。
「アンタたち3人は信じられるけど組織自体を信じるのは無理」
「……隠れられる場所があるなら無理に保護を求めないのも1つの選択肢だね」
「やばい組織って自覚あるわけ?」
「思想の問題だよ」
「総組長か」
京香の言葉に天花はうなづく。
「確かにアイツなら陰陽寮のことも隠していてもおかしくないな」
「彼女は愛国心が強いからいざとなれば一切の情けをかけずに青羽さんたちを始末するだろうね」
その言葉に青羽と優希は息を飲む。
「なら私が次の総組長選挙で総組長になれば問題ない。私が魔防隊の方針を変えて、醜鬼たちは全滅させ、青羽たちを保護して治療方法を探して治す!強引な実験はなし!これでどうだ!」
京香はそう言い切り、青羽も京香の覚悟に納得した。
青羽は残りの仲間のもとに戻り、剣至たちも自分たちの寮に戻ることとなった。
「俺たちは医療班のところに行く。京香たちはそのまま戻るんだろ?」
「あぁ、そうさせてもらう。後日今回の件を話し合おう」
剣至たちは京香たちと分かれて医療班のところまで転移する。
「出雲組長!?重傷なのにどこに行っていたんですか!?」
「ごめんね。鬼殺隊の彼を連れて来たんだ」
別組の医療班が天花をストレッチャーに乗せて運ぼうとすると剣至に手を伸ばし、剣至もその手を優しく握り見送った。
「また後でね……」
「あぁ」
「あの……紅柱さんも治療をしましょう」
「頼む。それと現世に連絡できるものを貸してくれないか?戦闘で壊れてしまったんだ」
「いいですがどなたに連絡するんですか?」
「お館様に連絡を取りたい。近々、柱会議を開きたいんだ」
○
日本のとある山中にある豪華な日本形式の屋敷の一室で1人の女性が庭園に降り立ったカラスの前に縁側に座りながら話を聞いていた。
「カー!カー!紅柱、武藤剣至ヨリ連絡!魔都ニテ新タナ敵ガ出現!至急!柱会議ヲ開キタイト嘆願アリ!」
「……そう、新しい敵が現れたんですね」
その女性の見た目は黒髪で幸薄そうな印象を与えるがどこか存在感があり、声は静かに染み渡るような声色だった。
「
「はい、ここに」
女性が背後に声をかけるとそこには片膝をついて待機していた男性がいた。
彼にも剣至と同じく隊服と羽織を着て、腰に刀をさしていた。
「各柱に連絡をお願いします。1週間後に柱会議を開きます。各自時間の都合を作るようお願いします」
「承知致しました。
「流れが変わりそうですね」
女性、輝耶は晴れ渡る空を眩しそうに見ながら呟いた。