どうか、見守っていてください。
一話 朝比奈家との関係
目が覚める。
いつも通り変わらない、唯一変わっているとしたら、部屋の明かりが、知らない内についていることだろうか?
そう考えている内に、目覚めて間もない視界の端に、動く何かを認めた。
「…おはよう、螢」
視界に映ったのは天井と、相も変わらず無表情にこちらを覗き込む、幼馴染の
…珍しいな、彼女が僕の家に居るなんて。
「まふゆ、どうしたの。時間は…問題無いはずだよね」
時間は間違い無く定刻通り、スマホで確認した。
ならなんでまふゆは此処にいるのだろうか?何となくで来たと言うなら、それはそれで彼女が自発的に行動に起こせた事であり、喜ばしい事。そう思う。
「ううん、何となく、ここに来たいって思っただけ」
「…そう、朝食は食べる?」
「家で済ませたから、いい」
「わかった」
少しだけまふゆと会話を交わした後、身支度をする為に洗面台に向かう。
鏡を見た、いつも通りの自分、
まふゆは、朝食は食べたと言っていたので、自分の分のみを出す事にしよう、まふゆの分を出したところで、アレは少々味気が無さ過ぎると思うが。
「まふゆが、自発的にここに来たいって、言い出すなんて…きっと、良い方向に進めてる、少しずつだけど」
顔を洗いながら、まふゆが自発して行動を起こすことができた事実に対して、独り言をこぼす。
このまま、良い方向に進んでくれれば…でも彼女はそんな行動とは裏腹に、思考回路は悪い方向に進んでいると、僕にはそう感じてならない。
「…少しだけ、まふゆと話し過ぎたのかな。」
支度を終えて時計を見ると、いつもより少し時計の針が前に進んでいることに気付いた。
楽しかったんだろうか、まふゆとの会話が。それとも、身支度が思いのほか長引いてしまったのか。
「…まぁ、いいか」
そう言って、冷蔵庫にあらかじめ入れてあった朝食を取り出して後ろを振り向くと、まふゆが立っていた。
…なんで後ろに陣取っていたんだろ。
「?まふゆ、どうしたの」
「ううん、少し、遅いなって思って」
…どうやら身支度の方が、思いのほか長引いてしまっていたようだ。
「そう…ごめんね、食事は多分、時間はかからない筈だから」
「そう」
そんな会話をしながら食事と箸を机の上に置き、席に着く。
まふゆは隣の席に座ったらしい、立たせたままの訳にはいかなかったし、どちらでも良かったのだが…僕の座る位置を確認してから座った?気のせいか。
「…ねぇ、それがあなたの朝食なの?」
そう言いながら隣の席から顔を覗かせて、僕の朝食を見た。
…事実、味気なんて皆無なメニューだけど、微妙な顔をされる謂れは無いのだが。
「そんなにおかしなメニューかな、効率的だからいつもこうしてるんだけど」
「…毎日?」
さらに微妙な顔になった気がする。
…そういえば、まふゆに僕の味覚の事は話したかな。してない気がする。
「…そういえば、僕の味覚の事話したっけ」
「螢も?」
そう言って首を傾げながら初耳だと言わんばかりにまふゆはそう言った。
…味の感じないまふゆと同じならば、多少は我慢出来たのだろうか?
「君と違って有るよ、味が酷く感じるだけ」
「…それとこの食事になんの関係があるの」
半目でそう言ったまふゆの質問に、僕は疑問に思った。
そもそも味が酷い分、ボリュームなんて出したく無いからこうやって効率の良いやり方をしてるんだけどな。
「味が酷い分、ボリュームを盛りたくは無いんだよ、別に、他のものを食べろと言うなら食べるけど」
「…それでも、見た目は大事だって、あなたは言ってた。…それで螢がそうするの?」
「栄養管理は問題ないよ、食事ってこうゆうものじゃないの?」
そう言って僕は、白飯と汁物以外の全てが流動状の食事を見た。
…栄養素は問題ないけど、そうだな、顎が衰えると思えば、多分そうなのかも。
「螢にとって食事は、そういうものなの?」
「でも流動状の物ばかりなのは、ダメなのかも?考えてみるよ、まふゆ」
「…そう」
そう言いつつ食事を口に運ぶ。
…まふゆがこうやって自発的に言ってくれた以上は無碍にしたくはない。量を増やさない方向で、見た目を改善しよう。
「…」
「…?欲しくなったの?」
そう考えていると、まふゆはいつの間にか持っていたスプーンで流動状の食事の一部を掬って口に運んでいた。
…欲しくなったのかな、コレ。
「ううん、何となく、味がわかるかなって、ごめん」
「そう…後、本心で思ってないなら、別に謝らなくても、大丈夫だよ」
何処となく、気落ちしたような表情でまふゆが食事を口に運んだ理由を言った。
『私にもわかるかな』…すでに知ってることだけど、面と向かって言われると、どうしようもない自分に、歯の奥が痒くなる感覚に陥る。
それとは別に、本心からの言葉を無理に言わなくても良いと、端的に伝えた。
「…そう」
「『いい子』の立ち振る舞いが抜けて無いのは仕方ないよ、君は君のペースで」
「私は!今すぐに見つけたいの…」
唐突に吊り上げられたように机へ手を突いて席を立ち、僕の言葉を遮るようにそう言った。
…なんで僕は、苦しんでいる彼女に対して何も出来やしないんだろう。
「そう、ごめんね…。ごちそうさま」
そう言って席を立ち、食器を片付ける、まふゆの持っていたスプーンも。
「ううん」
…
それ以降の会話はなかった。
支度をし、表札に『雨宮』と書かれた自宅から外に出ると、おばさんが立っていた。
困ったな、ここに立っていると言うことはまふゆが僕の家から出るまで待っていたと言う事だから。
心配なのは親として当然の気持ちと承知しているが、やはり、親との僅かな記憶から比較しても、多少どころか、かなり過保護だと感じる。それでも家に上がり込まないだけ良識は備わっている、そう思いたいが。
【大丈夫、大丈夫よ、おばさんはここに居るからね】
…くだらないことを思い出した。
「あら螢くんおはよう、ごめんね朝から、まふゆが何かしてないかしら?珍しく螢くんを起こしに行くだなんて言ったから心配で」
おそらくおばさんは本心から心配しているのだろう、僕の家だから外聞を気にして、という訳でも無い。
相変わらず変わった人だ。
「もう、お母さんたら、恥ずかしいよ」
母親を前にしたまふゆは、いい子のふりをしてそう言った。
…僕も家以外だといい子として振る舞うが、いつか彼女にも、安らげる場所という物ができるのだろうか、出来て、欲しいな。
「目の前にまふゆがいた時は驚いちゃいましたが、あはは、嬉しかったですよ?」
「うふふ、そう言ってくれると助かるわ。
それじゃあ二人とも、朝の路とは言え気を付けてね?最近色々と物騒だから」
「…はい、心配ありがとうございます、おばさん」
「ありがとうお母さん、行ってくるね」
「ええ、まふゆも螢くんも、行ってらっしゃい。
まふゆ、お勉強頑張ってね?」
「…うん、わかったよ!お母さん」
手を振り見送るおばさんを背にして学校へと向かう、いつもと少し違うが大して変わり映えのない日だ。
自宅で既にまふゆがいて、外に出るとおばさんが見送ってくれた。珍しくはあっても、特に変わり映えしなかった。
「…」
「…」
「…螢、わたし、あの曲を聴いた時、足りるかもって感じたのに、結局、足りなかった」
今まで会話がなかった僕らの間に、まふゆは唐突に足りないと、そう口にした。
あの曲と言うのはおそらく、いつだか話していた、音楽サークルの話だろうか、名前は知らないが、まふゆが期待するように話していたのは印象的だった記憶だ。
…足りないなら、まふゆがしたい事をさせてあげよう。
「…そう、どうしたいの?」
「手伝って」
手伝って、とは、曲のことだろうか?ここ最近のまふゆは音楽に強く興味を惹かれているように感じるから。
「良いよ、君の音に合わせれば良いんだよね」
どうやら僕の予想は当たっていたようだ。
「…うん」
「ナイトコードで、良いよね?」
「うん」
「…ごめんね、結局君にできること少ないや」
「気にしてない」
そう言いいながら、僕らは路を進んで行く。
気にしてない。真実だとしても彼女にとってそれらは足りなかった今までだ、意味がない。
これからが、彼女にとって足りることを願っている、彼女と曲を作るこれからを。
それとも、例の音楽サークルが、本当のまふゆを見つけてくれるかもと思うのは、都合が良過ぎるのだろうか。
「…じゃあ、ナイトコードで」
「うん、ナイト、コードで…ありがとう?」
「…僕は感謝される人間じゃない、やりたい事をやりたいからする、そんな人間なんだから」
「それでも、本当に感謝してる、と思う…」
「…そう、わかった」
そんなやり取りをして、まふゆと別れる。
ああ、今月は持ち物検査の強化月間だった、話し込んでしまったな…少し急がないと。
最後までお読みいただき、有難うございます。
どう、でしょうか?
考えるだけ考えましたが、ストーリーを深く知らないので変なところがあるかもしれません…
コレが違う、アレが違う、まず文章がおかしい等があれば是非にお願いします。
文章を大きく変更致しました、読みやすくなっていれば幸いです。…と言うか、主人公のフルネーム書き忘れるのは間抜けすぎましたね…。探せばもっとやばいやらかし見つかりそう