カヤとの面会後、ヒナは真っ直ぐに、ゲヘナの風紀委員会本部へと足を運んでいた。
巡回に出ている部下を除く、全ての風紀委員を招集し、カヤとの遣り取りを大まかに説明する。但し、先生が無罪である事には敢えて触れず、これまでの経緯を調べたい為、各局のニュース動画のデータを所持している者達から、データを提供するよう呼び掛けた。
そして、集まったデータを纏めた後、その足で万魔殿の羽沼 マコトの所へと足を運ぶ。
「キキキ、どうした。お前から私の元に足を運ぶとは珍しいじゃないか」
「えぇ、貴女に頼みたい事があって来た」
「……ほぉ、私にか? だが、人に頼み事をするのであれば、それ相応の対応と言うものが……」
言いかけた言葉を、マコトは飲み込んだ。あのヒナが、頭を下げたのだ。
「お願い。先生を助ける為に、力を貸して欲しい」
躊躇なく、頭を下げた。あの空崎 ヒナが、私に頭を下げてまで助けを求めて来たのだ。
「……止めろ、今のお前では張り合いがない。頭を上げて、さっさと行け」
マコトはそう言うと、ヒナに背を向けた。そして……。
「今回だけだ。私の名を、好きに使うと良い」
「……ありがとう」
ヒナはマコトは礼を言うと、そのまま部屋を後にする。
「…………」
何がありがとうだ?
私は何もしなかっただけだ。
シャーレの先生が逮捕されたニュースを見た時から違和感があった。その違和感は、直ぐに形となって現れ、彼を糾弾する声が上がったのだ。
それも、ゲヘナ中で。万魔殿の中ですら、その声が上がったのだ。
調べる必要もない。何者かの謀略と分かれば、後は消去法ですむ。
先生に恨みを持つ人物、或いは組織。
アリウス分校の一部の生徒では、このような大規模な作戦は不可能だ。ゲヘナ、トリニティ、ミレニアム、その他の学園に至っては、彼を貶める理由が無い。
個々人の力では不可能な案件だ。
それなら、敵は企業だ。それこそ、テレビ局やヴァルキューレと密接な関係を持つ企業で、尚且つ、このキヴォトスで大きな影響力を持つ組織といえば、一つしかない。
そこまで辿り着くのに時間をかける事はなかった。しかし、手を打つにはあまりにも遅すぎたのだ。
自身の手駒は既に洗脳されている。下手に動けば標的となるのは目に見えている。そこまでのリスクを冒して先生を助けるには、リスクとリターンがあまりにも釣り合わなかった。だからこそ、静観する事にしたのだ。
だが、ヒナは違った。最初から最後まで、先生の無実を証明する為に動き続け、そして此処まで辿り着き、助けを求めて来たのだ。その姿勢に、マコトはほんの少し、手を貸しただけの話だ。
大方、今頃先生の無実の証明ではなく、先生を陥れようとしたカイザーコーポレーションに対抗する為の証拠を集めているに違いない。
次に彼女が行くとすれば恐らく……。
「ミレニアムといった所か」