冤罪先生   作:モノクロさん

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第25話

「……綺麗」

 

「うん、そうだね」

 

 列車を降り、私と先生は、ある場所に来ていた。一面に広がる花畑は色鮮やかで美しく、とても幻想的だった。

 

 周囲に他の人の姿はなく、遠目には私達が宿泊する古民家があり、その近くには、小川が流れている。

 

 まるで、二人だけの世界に迷い込んだかのようだ。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

「うん」

 

 自然と差し出された手を、私は握り返す。そして、手を繋ぎながら、花畑の中を進んでいく。

 

「先生」

 

「ん?」

 

「今日は……その……ありがとう……」

 

 改めて御礼を言うのは照れくさく、私は顔を赤くしながら俯いてしまう。そんな私の顔を覗き込みながら、先生は笑顔を浮かべた。

 

「こちらこそ、ありがとう」

 

「……え?」

 

 先生の言葉の意味が分からず、私は首を傾げる。そんな私の反応を見てか、先生は笑いながら言葉を続けた。

 

「私を信じてくれてありがとう」

 

「あ……っ」

 

 先生の言葉に、私は目を見開く。そして、改めて実感した。

 

 先生を信じ続けた事で、先生が今此処にいて、二人で笑い合っている事に。先生の無実を信じた生徒達の協力もあり、先生は今、こうして私の隣にいてくれているのだ。

 

「ううん……私の方こそ……」

 

 感謝したいのは、私の方だ。先生が無実だと信じて疑わず、ずっと先生を信じ続けたからこそ、私は今こうして先生と一緒にいる事が出来るのだ。

 

「ありがとう」

 

 諦めないでくれて、ありがとう。

 

 私を導いてくれて、ありがとう。

 

 私と出会ってくれて、ありがとう。

 

 感謝の気持ちが溢れて、止まらない。

 

「先生……私……」

 

 伝えたい事は沢山あるのに、言葉が出てこない。そんな私の頭を、先生は優しく撫でてくれた。先生の手つきはとても優しくて、心地良いものだった。その感触に、私は思わず目を細める。伝えたい。この気持ちを。先生と出会い、そして今日に至るまでの思いを、先生に……。

 

「先生」

 

「うん」

 

「私ね……ずっと……」

 

「…………」

 

「……先生の事が……っ」

 

 そこまで言いかけた私の言葉を、先生が遮った。

 

「待って」

 

「……え?」

 

 突然の突然の事に、私は思わず先生の顔を見る。先生は真剣な眼差しで私を見つめていた。

 

「……先に……言ってもいい?」

 

「……うん」

 

 先生の問い掛けに、私は小さく頷く。そして先生は再び口を開いた。

 

「ありがとう」

 

 そう言って、先生は私の身体を抱き寄せた。

 

「私の為に、一生懸命になってくれて……私を信じてくれて……」

 

 ゆっくりと紡がれる先生の言葉に、私は静かに聞き入る。そして先生は言葉を続けた。

 

「私もね、ずっとヒナの事が好きだったんだ」

 

 先生と生徒としての関係ではなく。一人の男性と一人女性として、先生は私に思いを告げてくれたのだ。

 

「だから、この言葉は、私の口から言わせてほしいんだ」

 

 そう言って、先生は私の身体を離すと、真っ直ぐに私の目を見つめた。

 

「ヒナ……私は君が好きだ。どうか、これからも一緒にいてほしい。私を、これからも支えてほしいんだ」

 

 先生は笑みを浮かべながら、私に思いを告げてくれた。その言葉に、私の目からは涙が溢れ出す。それは悲しみから来るものではなく、嬉しさからくるものだ。

 

「……っ……はい……っ……私も……先生が好きです……っ」

 

 溢れ出る涙と共に、私は先生に思いを告げた。そして先生はそんな私を、再び優しく抱き締めてくれた。

 

「ありがとう……ヒナ……」

 

 先生の腕の中で、私は涙を流し続けた。そして、涙が止まった後、私達は見つめ合い、自然と唇を重ねた。

 

「んっ」

 

 初めての口付けは、とても優しくて甘かった。先生とのキスは今まで感じた事がない程に幸せなもので、私の心を満たしてくれた。

 

「先生……大好き……」

 

 私は先生に抱き着きながらそう呟くと、先生は私の耳元で囁いた。

 

「私もだよ、ヒナ……愛してる」

 

「……私も、貴方を愛してます」

 

 そして再び、私達は唇を重ねるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先生の冤罪事件が解決し、各学園の混乱も、落ち着きを取り戻したかと思えば、今度は別の形で、今日もキヴォトスは慌ただしい。

 

 各自治区と協力し合い、問題解決に勤しむ先生の傍らには、常に一人の少女が寄り添っていた。

 

「今日はヘルメット団とスケバン連合の全面戦争か……ヒナ、行ける?」

 

「えぇ、問題ないわ」

 

「ありがとう。それじゃあ、行こうか」

 

 そう言って先生と私は、銃弾飛び交う現場へと足を運ぶ。その隣に立つ私は、先生を守れるよう、気を引き締めるのだった。

 

「ヒナ……無理はしないでね」

 

 そんな私に対して心配の声を掛ける先生。その優しさに、私は思わず笑みを浮かべる。

 

「えぇ、大丈夫よ、先生」

 

 だって……貴方がいてくれるから。先生が側にいてさえくれれば、私はどんな困難にも立ち向かう事が出来るわ。だから先生、これからもずっと……私の側で見守っててね。

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