「……綺麗」
「うん、そうだね」
列車を降り、私と先生は、ある場所に来ていた。一面に広がる花畑は色鮮やかで美しく、とても幻想的だった。
周囲に他の人の姿はなく、遠目には私達が宿泊する古民家があり、その近くには、小川が流れている。
まるで、二人だけの世界に迷い込んだかのようだ。
「それじゃあ、行こうか」
「うん」
自然と差し出された手を、私は握り返す。そして、手を繋ぎながら、花畑の中を進んでいく。
「先生」
「ん?」
「今日は……その……ありがとう……」
改めて御礼を言うのは照れくさく、私は顔を赤くしながら俯いてしまう。そんな私の顔を覗き込みながら、先生は笑顔を浮かべた。
「こちらこそ、ありがとう」
「……え?」
先生の言葉の意味が分からず、私は首を傾げる。そんな私の反応を見てか、先生は笑いながら言葉を続けた。
「私を信じてくれてありがとう」
「あ……っ」
先生の言葉に、私は目を見開く。そして、改めて実感した。
先生を信じ続けた事で、先生が今此処にいて、二人で笑い合っている事に。先生の無実を信じた生徒達の協力もあり、先生は今、こうして私の隣にいてくれているのだ。
「ううん……私の方こそ……」
感謝したいのは、私の方だ。先生が無実だと信じて疑わず、ずっと先生を信じ続けたからこそ、私は今こうして先生と一緒にいる事が出来るのだ。
「ありがとう」
諦めないでくれて、ありがとう。
私を導いてくれて、ありがとう。
私と出会ってくれて、ありがとう。
感謝の気持ちが溢れて、止まらない。
「先生……私……」
伝えたい事は沢山あるのに、言葉が出てこない。そんな私の頭を、先生は優しく撫でてくれた。先生の手つきはとても優しくて、心地良いものだった。その感触に、私は思わず目を細める。伝えたい。この気持ちを。先生と出会い、そして今日に至るまでの思いを、先生に……。
「先生」
「うん」
「私ね……ずっと……」
「…………」
「……先生の事が……っ」
そこまで言いかけた私の言葉を、先生が遮った。
「待って」
「……え?」
突然の突然の事に、私は思わず先生の顔を見る。先生は真剣な眼差しで私を見つめていた。
「……先に……言ってもいい?」
「……うん」
先生の問い掛けに、私は小さく頷く。そして先生は再び口を開いた。
「ありがとう」
そう言って、先生は私の身体を抱き寄せた。
「私の為に、一生懸命になってくれて……私を信じてくれて……」
ゆっくりと紡がれる先生の言葉に、私は静かに聞き入る。そして先生は言葉を続けた。
「私もね、ずっとヒナの事が好きだったんだ」
先生と生徒としての関係ではなく。一人の男性と一人女性として、先生は私に思いを告げてくれたのだ。
「だから、この言葉は、私の口から言わせてほしいんだ」
そう言って、先生は私の身体を離すと、真っ直ぐに私の目を見つめた。
「ヒナ……私は君が好きだ。どうか、これからも一緒にいてほしい。私を、これからも支えてほしいんだ」
先生は笑みを浮かべながら、私に思いを告げてくれた。その言葉に、私の目からは涙が溢れ出す。それは悲しみから来るものではなく、嬉しさからくるものだ。
「……っ……はい……っ……私も……先生が好きです……っ」
溢れ出る涙と共に、私は先生に思いを告げた。そして先生はそんな私を、再び優しく抱き締めてくれた。
「ありがとう……ヒナ……」
先生の腕の中で、私は涙を流し続けた。そして、涙が止まった後、私達は見つめ合い、自然と唇を重ねた。
「んっ」
初めての口付けは、とても優しくて甘かった。先生とのキスは今まで感じた事がない程に幸せなもので、私の心を満たしてくれた。
「先生……大好き……」
私は先生に抱き着きながらそう呟くと、先生は私の耳元で囁いた。
「私もだよ、ヒナ……愛してる」
「……私も、貴方を愛してます」
そして再び、私達は唇を重ねるのだった。
先生の冤罪事件が解決し、各学園の混乱も、落ち着きを取り戻したかと思えば、今度は別の形で、今日もキヴォトスは慌ただしい。
各自治区と協力し合い、問題解決に勤しむ先生の傍らには、常に一人の少女が寄り添っていた。
「今日はヘルメット団とスケバン連合の全面戦争か……ヒナ、行ける?」
「えぇ、問題ないわ」
「ありがとう。それじゃあ、行こうか」
そう言って先生と私は、銃弾飛び交う現場へと足を運ぶ。その隣に立つ私は、先生を守れるよう、気を引き締めるのだった。
「ヒナ……無理はしないでね」
そんな私に対して心配の声を掛ける先生。その優しさに、私は思わず笑みを浮かべる。
「えぇ、大丈夫よ、先生」
だって……貴方がいてくれるから。先生が側にいてさえくれれば、私はどんな困難にも立ち向かう事が出来るわ。だから先生、これからもずっと……私の側で見守っててね。