ー先生sideー
カンナに連れられ、ヴァルキューレ警察学校まで同行した先生。
周りの生徒の目からは『信じられない』『なんで先生が?』といった、困惑の感情が見て取れる。
しかし、カンナはそんな周囲の視線など気にした様子もなく、淡々と歩き続ける。
「すみません。皆、今回の事件で動揺しているだけです。私含めて、多くの生徒達が、本当に先生が犯人だなんて思ってません」
立場上、不適切とも取れる発言なのだが、これまでの先生の功績を考えれば、上からの命令とはいえ、カンナが先生の味方をするのも納得出来る。
「今回の件で、貴方と接触出来るのは此処までです。本当でしたら私が担当したかったのですが、私と先生とでは、公正な判断が出来ないと、そう判断されました」
本来なら、シャーレから此処まで先生を護送する役目は、別の生徒達が担う筈だった。
それを、無理を通して護送までの過程を、担当させてもらったのだろう。
「ありがとう、カンナ。心配してくれて」
「いえ……その……これまでの先生の事を考えれば……っ」
カンナはそう言うと、何か言いたそうに口籠る。しかし、すぐに頭を振ると、先生に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません。今のは忘れて下さい。それでは失礼します」
そう言って、局内で待機していた生徒達に引き継ぎを任せると、先生に一礼した後、カンナは去って行った。
カンナと別れた後、先生は施設内にある一室へと案内された。
薄暗く、如何にもな取調室の雰囲気の中、先生はパイプ椅子に座るよう促されると、静かに腰を下ろした。
大丈夫。何かの間違いで連れて来られたが、きっとすぐに解放される筈だ。
そう自分に言い聞かせ、取り調べを受けるも、一向に解放される様子はなく、時間だけが過ぎていった。
そして、数時間後。日が沈み始めた頃、漸く取り調べから解放された先生は、局内の留置所に入れられた。
留置所の中は、まるで刑務所のようであり、独房のような部屋が幾つかある。その内の一つに通されると、部屋の鍵を閉められた後、看守から説明を受ける。
「明日の朝までこの部屋で待機だ」
それだけ告げると、看守は部屋の前から去って行く。
独房のような部屋に1人残される先生。部屋は3畳程の大きさであり、室内に置かれた家具等はトイレと簡易ベットのみとなっている。
薄暗く、ジメジメとした独房のような部屋。
「…………」
先生は無言で室内を見渡す。そして、ベットの上に座りながら、これからの事を考えた。
このまま、何時まで此処に拘留されるのだろうか?
仕事の事もあるし、生徒達だって心配している筈だ。
無事に釈放されたら生徒達に会いに行こう。無事に釈放されたと伝えれば、安心してくれる筈。
いや、その前に、生徒を殺めた犯人を探さなくてはならない。私の事はその後でいい。
私がどうなろうと関係ない。生徒の人生を狂わせた事だけは、絶対に許さない。
先生として、大人としての義務を果たさなくては。
「…………」
先生はベットに横になると、静かに瞳を閉じた。
明日の取り調べの為に、体力は温存しなくては。
そう思い、心労が溜まった疲れもあり、先生は静かに意識を手放した。