神秘「ギルガメッシュ」   作:聖杯くん

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原作「ブルーアーカイブ」内:投稿時1位

( ゚д゚) ・・・(つд⊂)ゴシゴシ(;゚Д゚) …!?

まだ2話しか投稿していないのに、こんなことになるなんて……!!
感想、高評価励みになってます!! ありがとうございます!!
誤字報告もめっちゃ助かってます!!
 


15秒のその先へ

 たった15秒、されど15秒。

 もしも15秒間、無防備な姿を敵の前で晒せばどうなるか。

 

 ユスティナ聖徒の銃弾の雨が、ギルガメッシュの肢体に無数の穴を開けるだろう。

 ヒエロムニスの攻撃が、ギルガメッシュの全てを跡形もなく焼き尽くすだろう。 

 さらに言えば、ギルガメッシュを失った私たちも間違いなく殺される。

 

 時間切れになるまで抗い、均衡の崩壊と共に殺されるか。

 無謀な賭けに挑戦し、その代償として殺されるか。

 どちらを選んでもデッドエンド。

 無慈悲な二択を、シッテムの箱はモニター越しに提示する。

 

「万全の状態であれば、そもそも神殺しの槍やら、死霊どもを黄泉路に返す武具の類を弾丸代わりに撃ち込めば終わるのだがな。まぁ、無いものねだりをしても仕方あるまい」

 

「……ちょっと待って。色々おかしいって思ってたけど、本当に王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)って何?」

 

「今はどうでも良い。それよりも、15秒をどう手に入れるかについて考えるべきではないのか?」

 

 疑問は尽きなかったが、間違いなくギルガメッシュの言う通りではあるので、今は大人しく戦況へと再び思考を戻す。

 

 今もなお、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の攻撃によって押しとどめられている敵。

 ユスティナ聖徒会と人工天使ヒエロムニス。

 無限の軍勢と埒外の怪物相手から、15秒を奪い取る方法。

 

「ギルガメッシュ、最初の鎖を使って拘束してる間に準備することは出来ない?」

 

「無理だな。今の(ワタシ)には、宝物庫の最奥を開ける際に、あらかじめ開けておいた他の宝物庫の門を維持する余裕はない」

 

「現状の王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の最高火力で、敵をどれだけ怯ませられる?」

 

「ふむ。亡霊どもは一度全滅させたうえで、贋作の天使を少しは黙らせることは出来るだろうな。

 最も、15秒には到底足りんだろうが」

 

 つまりは、状況は変わらず手詰まり。

 私とギルガメッシュの手札では、未来を変える方法がない。

 

 ならば、頼りになるのは大人のカードだけだと取り出そうとしたが、ギルガメッシュの鎖がもう一度私の動きを止める。

 どうして止めるんだという思いを込めてギルガメッシュの方を少し睨むと、あまりにも冷酷な赤い目がこちらを見つめ返していた。

 

「言ったはずだ。奇跡とは、一度しか起こらぬからこそ奇跡。

 濫用してしまえば、効力も薄れるのは必然よ。

 繰り返される奇跡に、先を変える力など存在しない」

 

「だったら! どうやって――」

 

 

「――私に任せてほしい」

 

 

 ガチャリと、弾倉を装填する音がする。

 彼女の髪と同じ白色の銃を握りしめ、強い意思を紫紺の瞳に込めて。

 白洲アズサは、銃弾の飛び交う戦場へと一歩踏み出していた。

 

「ほう、貴様が時間を稼いでみせると?」

 

「アズサ!? 駄目だよ、今までの戦いでかなり傷ついてるのに、これ以上は無茶だ!!」

 

 ここまでたどり着くのに、アズサは幾度と戦闘を繰り返している。

 特に、格上であるサオリを止めるために幾度と挑んだ際の負傷が大きい。

 そのせいで全身がボロボロで、これ以上の戦える余裕があるとは到底思えない。

 それに、15秒の間はシッテムの箱の演算リソースを使えないから、指揮で支援をしてあげることも出来ない。

 

 なのに、引き留めようとする私に向かって、アズサは花のような笑顔を見せる。

 

「ギルガメッシュが戦っている間に、体力も少し回復している。

 攻撃を引き付けて、時間を稼ぐくらい問題ない」

 

「アズサ、でも……!!」

 

「大丈夫だ、実は作戦も考えてある。だから、私にも任せて」

 

 自信たっぷりに胸を張るアズサを見て、私では彼女を止められないと悟る。

 思い出すのは、アビドスの皆とブラックマーケットを調査した時のこと。

 現状を打破するために、銀行強盗をすると決めたときの不退転の決意。

 その時と似た意思を、アズサから感じ取ってしまったから。

 

「アズサ、私は……」

 

「ここまで言っておるのだ、一つこの場を任せてやるがいい。

 なに、脅威から守ってやるだけでなく、時に背中を押して見守るのも、先達としての役割よ」

 

 どうしても躊躇いを消し去れない私に、ギルガメッシュが諭すように言葉を紡ぐ。

 あらゆる脅威からの保護ではなく、成長のための激励。

 生徒(子ども)とは思えない考え方に、少し驚かされてしまう。

 

 きっと、誰に何を言われても、傷だらけの子どもを戦場に送ることを是とすることは出来ない。

 

 でも、今はどれだけ納得いかなくても、それしか方法がないのは事実で。

 だから、私はアズサに任せる決意をした。

 

「ギルガメッシュ。アズサに任せる前に、ユスティナの一時的な殲滅だけはお願い」

 

「無論だ。タイミングは貴様に任せる」

 

 

 人生の中で最も長い15秒、その先への挑戦を。

 

 

 

 ☆☆☆☆

 

 

 

「――露払いは済んだ。演算リソースを(ワタシ)に回せ」

 

「アズサ、お願い!!」

 

 先生の指揮に合わせて放たれた無限にも思える銃弾が、ユスティナたちを古聖堂から消し去り、ヒエロムニスに無視できないダメージを与える。

 その際に放たれた無数の弾丸――、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)という未知の武器による、圧倒的物量の銃撃によって引き起こされた閃光。

 視界が光に塗りつぶされて、されどアズサは走り出す。

 

 0秒――勝利のための、カウントが始まった。

 

「ハァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 雄たけびと共に、古聖堂を全力で駆ける。

 狙うべきは、ヒエロムニスに守られるように後ろで控える奇怪な人物。

 アズサの立てた作戦とはつまり。

 

「ユスティナもヒエロムニスも、呼び出したお前を止めれば15秒も必要ない――!!」

 

 単純明快な解答。

 そもそも、ユスティナ聖徒会は戒律を守るために「誰か」から呼び出されて出現する存在。

 ならば、調印式を襲撃したユスティナ聖徒会を止めるため、サオリを襲撃したように。

 この場で無限に復活を繰り返す彼女らを止めるなら、マエストロを止めればいい。

 

「――なるほど、それは道理であろうな」

 

 1秒――全滅させられたユスティナ聖徒会が、再び現世へと舞い戻る。

 

 とんでもない再生速度に驚かされるが、想定内の範囲だと判断する。

 むしろ、この一瞬こそが最初にして最後の機会。

 時間が経ち、数が何十倍にも膨れ上がる前に決着を付ける――!!

 

 

 2秒――復活したユスティナ聖徒会たちと接敵。

 

 

「邪魔!!」

 

 その直前、姿勢を可能な限り低くして、地面を全力で蹴りつける。

 空高く飛び上がることで戦闘を避けるのは想定外だったのか、ちらりと下を見ると、ユスティナたちは地上でただ呆然とアズサを見上げていた。

 自分を撃ち落とそうとする敵がいないことを確認すると、持ち手を銃身の方に変えてそれを振り上げる。

 

 マエストロは先生と同じ、キヴォトスの外から大人の存在。

 ヘイローを持たず、身体の耐久力は脆弱であると予想できる。

 だから、銃で殴りつけるだけでも気絶させるには十分なはず。

 

 そうすれば、指揮者を失くしたユスティナとヒエロムニスは止まる。

 最悪でも、制御権を奪い取って停止させることは出来るだろう。

 大人がもたらした難しい技術の話はアズサに理解できないが、サオリたちからエデン条約を奪い返して、地上のユスティナ聖徒会を止めた先生なら出来るはず。

 

 これこそが、アズサが現状を打破するために考え出した作戦。

 先生を、地上で戦っているみんなを守るために。

 

 3秒――戦いの結末を決定づける一撃が、振り落とされる――!

 

「であるのならば、銃を叩きつけるのではなく、その引き金を引くべきだった。

 殺意の有無こそ、お前がベアトリーチェの奴隷に成り下がらなかった理由。

 だが、今だけはその信念が仇となったな」

 

「ガッ、アァッ――!!」

 

 アズサの背中越しに加えられたのは、あまりに重く強烈な一撃。

 振り返りざまの視界に映るのは、銃器を叩きつけたユスティナ聖徒の姿。

 つまり、アズサの策を崩した者の正体は。

 

「ユスティナを、背後の空中から出現させた――!!」

 

 全身の気力を振り絞り、消えそうな意識に必死にしがみつき、後ろから襲撃したユスティナ聖徒へと、隠し持っていた手榴弾のすべてを投げつける。

 命中した箇所が良かったのか、爆発に巻き込まれてその場で消滅し、ひとまずの脅威は去った。

 

 だが、地上に落下する勢いは止まらない。

 白洲アズサの体は無条理にも、刻一刻と数を増やし続けるユスティナ聖徒たちの中心へと落ちていく。

 

 4秒――ユスティナ聖徒全ての殺意が、白洲アズサただ1人にのみ向けられる。

 

「負ける、ものか……!!」

 

 一部のユスティナたちを、落下中に打ち倒してこじあけた空間に命からがら着地する。

 だがそれは、アズサを僅かに延命させただけに過ぎない。

 

 既に、ユスティナ聖徒会の顕現数は、100を優に超えている。

 圧倒的な数の戦力に四方八方を囲まれてしまえば、アズサとてひとたまりもない。

 背後にいる敵の動きを見れないし、発砲音を聞いてから避けるなんて芸当もできない。

 

 だから、アズサが生き残るために選んだ術は、視覚でも聴覚でもなかった。

 

 その魂の奥から引っ張り出したのは、アリウスで培った戦闘経験。

 憎しみだけが支配し、人を殺すためだけに生み出された、歪な世界で戦った記憶。

 経験から生み出される第六感を、白洲アズサの全てで(おぎな)ってでも成立させる――!!

 

「――ここだ!!」

 

 5秒――幕が開けるのは、白洲アズサとユスティナ聖徒会との死の演舞。 

 

 ユスティナが放つ弾丸が舞台の上で飛び交い、僅かな隙間を縫うようにアズサが戦場を踊る。

 ここは、1コンマのズレが致死へといざなう絶命の世界。

 だが、それだけでは終わらなかった。

 

 初めに気づいたのは、間近で戦場を見守っていたマエストロ。

 木材の軋む音を立てながら、思わず驚愕を言葉に乗せて呟く。

 

「僅かではあるが、ユスティナが倒され始めている……?」

 

 ある1人は、アズサが避けた銃弾に撃ち抜かれ。

 ある1人は、狙いをすましたアズサの銃弾に脳天を撃ち抜かれ。

 

 6秒――また1人とユスティナ聖徒が倒される。

 7秒――遂に、超えるべき15秒の狭間に手を伸ばす。

 

 

 8秒――けれど、アズサの限界はここまでだった。

 

 

「……、…………」

 

 まるで充電が切れたかのように、体を支える力を失ったアズサが体勢を崩す。

 視界一杯に広がるのは、古聖堂の地面の模様。

 

 誰が見ても、今にも倒れるその直前。

 誰に聞かせるわけでもない呟きが、風に乗って消えていった。

 

「vanitas vanitatum et omnia vanitas......」

 

 そう呟いた言葉は、アリウスに居た頃に支配者たるベアトリーチェから習った教え。

 込められた意味は、"全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ"

 

 アリウスの生徒は、全員この言葉に支配されている。

 だけど、アズサだけは納得できなかった。

 そんな悲しい現実が、世界の真実だとは思いたくなかった。

 

 だからいつだって、アズサはその後に付け足すことを忘れない。

 

「――だとしても、それは諦める理由にはならない!!」

 

 9秒――限界を超えて何度でも、その先に進むための一歩を踏みしめる。

 

 ユスティナ聖徒は、倒れそうになっていたアズサの復活に追いつけず、その隙を突いた反撃によって消滅する。

 

 それだけではない。

 

 疲労も負傷も溜まっているはずなのに、これまでとは比べ物にならない速度で戦場を駆け、アズサは次々とユスティナ聖徒を撃破していく。

 今のアズサの速度に、ユスティナ聖徒は誰一人として追いつけない。

 瞬きの間に、何人もの同胞が消えていく。

 

 10秒――そして、戦場という名の舞台は白洲アズサだけの物になった。

 

「なるほど。これは予想外の結果と言わざるを得ない」

 

 観客であるマエストロの感想は、間違いなく正しい。

 本来、白洲アズサにこの戦闘を成立させる程の実力はない。

 キヴォトスで最強格と評される生徒たちの足元にも及ばず、師匠である錠前サオリにすら、ズルをして(先生の指揮のおかげで)ようやく勝てる程度。

 

 それでも、本来の自分を超えて、さらにその先の領域に踏み入れられたのは。

 

「先生の、みんなのために――!!」 

 

 アリウスから離れ、トリニティに入学し、補習授業部に所属して。

 

 友達と過ごす時間の温かさを知った。

 世界が秘めている美しさを知った。

 

 だから、全てを守りたいと願った。

 

 ただそれだけの願いが、傷だらけのアズサの体を突き動かす。

 まだ動けるはずだと、限界の一歩先へと連れていく。

 

 11秒――限界の、その先へ。

 

「あと、少し――!!」

 

 アズサの瞳は、四方を囲む(ユスティナ)のその奥で、切り札を用意しているギルガメッシュの姿を映す。

 その手に握られたのは、特別な意匠をこらされた黄金の鍵。

 ナイフほどの大きさのそれを中心に、無数に枝分かれした紅い回路のような光が、いつの間にか、まるで大樹のように天高くそびえ立っていた。

 

 そして、光は何の前触れもなく収束していく。

 

 この現象が何を意味しているかはわからないが、アズサは”その時”が近いのだと判断した。

 つまり、間もなく宝物庫の最奥が開かれるのだと。

 

「これなら、いける!!」

 

 連続で撃ち抜かれたユスティナたちが、次々と消滅していく。

 もはや舞台は、主演である白洲アズサの独壇場。

 共演者であるユスティナ聖徒は、次々と舞台袖へと送られる。

 

 

 12秒――故に、舞台の幕引きはあまりにも残酷だった。

 

 

「え――?」

 

 兆候は突然で、思考は刹那すら許されず、結果は直後に訪れた。

 白洲アズサの立つ舞台――すなわち、ユスティナ聖徒会が取り囲んでいた空間の地面から、深紅の獄炎が吹き荒れる。

 完全に不意を突かれたアズサは無防備に吹き飛ばされ、その最中に事の真相を知った。

 

「「「―――――――!!!!!!!!!!」」」

 

 深紅のローブに身を包む怪物。

 両手を組んで祈りを捧げ、二本の杖で敵を排除する人工の天使が、暗闇だけが存在する顔でアズサを見つめている。

 その姿はさながら、物語を歪に終わらせる機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)のように。

 天使ヒエロムニスは狙いすましたかのように、白洲アズサを浄化の炎で焼き尽くした。

 

 

 13秒――どさりと、アズサの体が地面に落ちる。

 

 

「あ、……」

 

 すでに限界を迎え、それすらも超えていたアズサに体を動かす力はない。

 空を見上げたまま、こちらに近づく無数の足音と、銃の構える音だけが聞こえてくる。

 

 間違いなく、ユスティナ聖徒会は白洲アズサを赦さない。

 瞬く間に、無数の弾丸によってハチの巣にされてしまうだろう。

 

「だめ、だったんだ」

 

 遠くから、誰かの悲痛な声が聞こえてきた気がする。

 男の声だったから、きっと先生の声だろう。

 何を言っているかはわからなかってけど、必死に呼びかけてくれているのだと思う。

 

「そうだ、あきらめちゃ、だめ……」

 

 14秒――白洲アズサは立ち上がる。

 同じく14秒――ユスティナ聖徒が銃の引き金に指をかける。

 

 白洲アズサには、最後の一手が足りない。

 先生の手に奇跡はなく、ギルガメッシュが助けることはなく。敵が攻撃を止める道理はない。

 アズサが立ち上がれたのは、単なる意地のようなもので、未来を変えるには不十分。

 

 不条理な教えへの反抗心と、大切な友達とまた過ごしたいという願い。

 立ち上がれはしたものの、最後の1秒を超えるには至らない。

 どうにもならないことを、頭で理解していたけれど。

 

「それでも、いや……!」

 

 力の入らない右手を持ち上げて、ユスティナの1人に銃を向ける。

 それは何か策があったわけでもなくて、意思を示すための行動でしかなかったけれど。

 

 それでも、白洲アズサは引き金を引く。

 無慈悲にも、ユスティナ聖徒が引き金を引くのを止めることはない。

 

 15秒――最後の決着をつける、最後の銃撃が()()()()()

 

「え――?」

 

 ハチの巣にされて、ここで死ぬ未来を想像していたアズサにその運命は訪れず。

 代わりと言わんばかりに、ユスティナ聖徒の(ことごと)くが消滅していく。

 まさか、この場にいるギルガメッシュが助けてくれたのかと一瞬考えたが、それは違うと訴える自分がどこかにいた。

 

 であるのならば、ユスティナを倒した狙撃手は誰なのか。

 

 その正体を確かめるべく振り返り、弾丸が降り注いだ方向を仰ぎ見る。

 視界に飛び込んできたのは、天井に空いた隙間から漏れる青空の光。

 

 そして、少し遠くから見えた、見覚えのある白いコートを翻す彼女の姿。

 

 

「サオ、リ……?」

 

 

「――よく戦った、白洲アズサよ。貴様を勇者と認めよう」

 

 

 ヒエロニムスの出現と同時に、戦場から離脱したはずの人物。

 戦い方を教えてくれた師匠で、平和を壊そうとしたアズサの敵で。

 家族同然の大切な人が助けてくれた、その事実に生まれた感情が何かを理解する前に、ギルガメッシュの声がアズサの意識を戦場に戻した。

 

「アズサ! もう大丈夫! 私の後ろに戻ってきて!!」

 

「あ、あぁ! すぐに撤退する!!」

 

 慌てて戦場を離れて戻ってくると、今にも泣きだしそうな表情をした先生に抱きしめられる。

 突然の抱擁に、恥ずかしさやら安心感やらがこんがらがって、混乱で全身が固まってしまって。

 

「良かった! 本当に良かった!! アズサが死んじゃうんじゃないかって思って!!」

 

「……大丈夫だ先生。私はここにいる」

 

 アズサ自身、戦闘中に何度も死を覚悟したから強くは言えなかったけれども。

 頼りになって強い大人、そんなイメージしかなかった先生が見せてしまった弱さ。

 そんな弱さを見せる先生が酷く(もろ)く見えて、どうにか安心させてあげたかったから。

 抱きしめ返して、アズサは優しい言葉を口にした。

 

 そして、刹那の抱擁を終えて、舞台は再び戦場へ戻る。

 主役の座は黄金の少女へと手渡され、幕引きの時が訪れる。

 

「――出番だ。起きよ、エア」

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の最奥、そこに眠りし至高の宝具。

 黄金の鍵と入れ替わる様に、乖離剣エアがその姿を現した。




 今更かもしれませんが、章立てを追加しています!!
 『序章:揺らめく未来の分岐点』
 最終編をオマージュしてみたのですが、結構語感が良くて気に入ってます。
 
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