どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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チック・タック

「春休みに呼び出して……一体何の用事ですか、綴先生」

 

「……」

 

 

 いやマジで何の用だよ、つかタバコ臭え。

 ここ生きた心地しねぇから来たくないんですけど???

 壁を2、3枚挟んでるはずなのに圧が凄えよ怖えんだよ。

 

 

「石川ぁー……」

 

「はい」

 

「お前戦徒(アミカ)作る気あるかぁー?」

 

「ないですけど」

 

 

 戦徒……ってのは、後輩と1年間コンビを組んで、その後輩を指導するっていう制度のこと。

 取るやつもいれば取らないやつもいる、俺は後者。

 誰かに教えられるほど強くねぇっつーの、あと時間もねぇ。

 

 

「だーろぅなぁー……まぁそういうだろうってのはぁー、1年間お前を見て来て知ってる訳だがぁ……」

 

 

 ドサッと、綴先生が俺の目の前に置いたのは。

 

 

「……なんすか、この資料の束」

 

「後輩からのぉ……戦徒希望者だなぁー」

 

「誰のですか」

 

「お前」

 

「はっ?」

 

 

 ぱっと見20枚はあるんすけど、何の冗談すか。

 

 

「冗談じゃぁーねぇよぉ?」

 

「……俺、Sランクとは言え1番弱いんすけど」

 

「そうだなぁ」

 

「何でこんなに来てんですか」

 

「あー……そりゃ、お前……あれだ」

 

「どれですか」

 

 

 相変わらずラリってんなこの人、あとタバコ臭え。

 

 

「お前が唯一の……努力のS、だからじゃないかぁ?」

 

「努力の……はい?」

 

「努力のSだ。……なまじ他の奴らがぁ、最初からSランクに査定された天才ども……だからなぁ」

 

「……」

 

 

 ああそういう、つまり。

 

 

「庶民的で手が伸ばしやすいと」

 

「有り体に言うなら、そーいうこと」

 

 

 AからSになったということは、それだけ努力をしてきたという裏付けにもなるんじゃないかと、後輩たちは考えたわけだ。

 貪欲だねほんと。

 

 

「あとは、単純に人気があるからだなぁ」

 

「はい?」

 

「石川ヨリト、性格は社交的よりの非社交的」

 

 

 ほっとけ。

 

 

「しかし積極的ではないだけで、話されれば話すし他者との交友関係は広い。おまけに技術を学ぶことにも余念がない」

 

 

強襲科(アサルト)においては努力でSランクに成り上がった秀才として、単なる友人としても一目置いている者は多い。人を惹きつけるカリスマ性は十分持ち合わせている」

 

 

「解決事件は……たーくさん、だなぁ」

 

「……それが何だってんすか」

 

「まだ気付かないかぁー? 敬遠する要素がないってことだよ」

 

「はぁ」

 

「他が曲者だったり、戦徒が既にいたりするってのもあるがぁ……お前はまともでフリーだからなぁ。1年には正統派としてすごーく人気だぞぉ」

 

 

 いや意味わっかんねぇな!?

 まともなだけで人気出るSランクって……ええ。

 もしかしてSってぼっち(solo)のSだったりするのか???

 孤高(アリア)機械(レキ)は空いてるよな。

 んで遠山には風魔がいるか。

 ……あれ一石は?

 

 

「一石がいるでしょ、その枠には」

 

「一石マサトか。あいつは3年と戦弟契約してて今は無理だなぁ」

 

「げっ」

 

 

 話題に出ねぇって思ったらそういうことかい!

 なんだあいつ3年と契約してんの? よくやるね忙しいだろうに、どっちも。

 

 

「でまぁ……教務科(うちら)としては頭ごなしに否定する理由もないからなぁ……お前に判断を任せようってわけ」

 

「全部お断りで」

 

「即決だなぁ……見なくていいのか?」

 

「いやまあ見ないと相手に失礼なんで後で見ますよ。でもどっちにしろ答えは変わらないので先言っときました」

 

「理由はぁ?」

 

「弱いんで。他者より自分を鍛えなきゃならないんすよ俺は」

 

「ストイックだなぁ……じゃ、こっちも渡しとくわ」

 

 

 そう言って綴先生が更に渡して来たのは……また希望書……じゃ、ない?

 

 

「……これは?」

 

合戦徒(ランデ・ビュー)、知ってるよなぁ?」

 

「まあ、字面と内容は」

 

「それ、お前の戦徒(あいて)候補」

 

「は?」

 

「どっちかとは1週間、戦徒契約結んだ方がいいんじゃないかぁ?

 

「……」

 

 

 いやいや、俺さっき暇はないって言いましたよね?

 

 

「よく言うだろぉ? 誰かに教えることで自分も学べるって」

 

「それは……」

 

「騙されたと思ってぇ、1週間教えてみなぁ……そしたらお前の悩みもマシになったりするかもなぁ」

 

「……バレてるんすね」

 

 

 確かに己の強さに悩んじゃいましたけど。

 なんでそれがバレてるんすかね。

 

 

「1年見てたら気付く。教師舐め過ぎだぞぉ」

 

 

 

 

 

「戦徒? それがどうしたってのよ」

 

「いや、お前なら引く手は多いだろって思ってな」

 

「んー……全部エンブレムで断ったわね」

 

「マジかお前」

 

 

 そりゃ綴先生も曲者扱いするわ。

 

 

「ちなみに何人」

 

「20人くらいかしら」

 

「そりゃ、後輩たちも気の毒だな」

 

 

 強襲科のSランクからエンブレム盗めって。

 しかも1年かインターンのどっちかが2年から。

 それができるんなら戦徒になる必要あるんかねぇって話になりそうだが。

 

 

「あたしは忙しい。でも機会(チャンス)は平等に与えられるべきだもの」

 

「それでエンブレム……か、合理的っちゃ合理的だ」

 

「でしょ?」

 

 

 まあ後輩の心は無視すれば。

 理不尽にしか思えないんじゃないか?

 まあそれすら乗り越える意思の強さが条件にもなってるんだろうが、アリアの好みだろうしそっちのが。

 

 

「というかどうしたのよ。いきなり戦徒の話なんて」

 

「ん」

 

 

 アリアに例の紙を見せる。

 

 

「……ああ、合戦徒ね。受けるの?」

 

「先に20人分くらいの希望書断ったし、忙しいしで断るつもりだったんだが……教務科(マスターズ)からの助言でね、取ったら視点が変わるかもってな」

 

「ふーん」

 

「それで、悩んでるってわけだ」

 

 

 まあ結局取らないって選択肢を取りそうなんだが。

 

 

「で、これから帰るのかアリアは」

 

「ええ、あんたも一緒に来なさい」

 

「? なんかあったか夜」

 

「『武偵殺し』を追うための機材とか用意してるのよ、準備を手伝って頂戴」

 

「……ちなみに聞いとくが、どこで?」

 

「女子寮よ」

 

「俺男子だが?」

 

「任務は場所を選んでくれないわよ」

 

「……ごもっとも」

 

 

 うっそだろ? 面倒なんだが。

 個人的には3大危険地域の次に来るくらい面倒な場所だと思ってんだけど。

 ……あ、3大危険地域ってのは、強襲科・地下倉庫(ジャンクション)・教務科の3つのことな。

 

 

 

 

 

「……にしても明日が始業式だってのに人多いよなぁ」

 

「バカね、任務は時も選ばないのよ」

 

「冗談だよ」

 

 

 始業式などと銘打ってはいるものの、だ。

 ぶっちゃけその前から学校みたいなことはしてるし、なんなら練習してる奴だっている、教師も。

 ほんとに休んでる奴もまあいるんだが。

 基本、長期休暇だから動けませんじゃダメだもの、武偵は。

 

 

「……あの子……」

 

「どうした?」

 

「ちょっと、カバン持ってて」

 

「は? っておいアリア!」

 

 

 荷物をこちらに投げ渡し、どこかへと向かうアリア。

 ……行く先には……後輩か?

 

 

「持ってる紙……ああ、そう言うこと」

 

 

 目敏いなあいつ、この距離ですぐに見抜いたのかよ。

 

 

機会(チャンス)は平等に、か」

 

 

「あの後輩は、どうなることやら」

 

 

 俺にできるのは、あの後輩が願いを叶えられる様にちまーっと願うだけだ。

 てか、あのちっこい後輩どっかで見た様な気がするんだが誰だ。

 アリアレベルでちっさいが。

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