どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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痴情のもつれ

「ここかね、遠山の部屋ってのは」

 

 

 いやぁ、寮で一人部屋とは羨ましい、しかもここ元々四人部屋なんだろ?

 ますます羨ましいね。

 寮のVIP部屋? ああいや……うん、まぁ、あそこも良いとこなんだろうけど。

 

 

「山の民には少々扱いに困る代物ですよ……っと」

 

 

 インターホンを鳴らす。

 

 ……まぁ、すぐには出て来ないだろう。

 何故なら   

 

 

「あんた、あたしのドレイになりなさい!」

 

「おぉ……」

 

 

 ……始まったんだなぁ原作、なんかこのセリフ生で聞いたらしみじみとしちまうよ。

 めちゃくちゃ原作より俺にとってお辛いが、現実見たくねぇー……。

 

 

「何でだよっ!? てかいきなりなんなんだっ」

 

「言葉の通りよ。……というかほら、さっさと飲み物ぐらい出しなさいよ! 無礼な奴ね!」

 

「やってるやってる」

 

 

 いや、ほんとになんか笑けてくる。

 ははは、いやぁあのシーンが聞けて嬉しいやら、これからのことを思って悲しいやら……うん、複雑。

 

 インターホンを押す。

 

 

「にしてもアリア……何で俺を呼んだんだか」

 

 

 そう、本来なら俺はこれに関わることはなかったんだが。

 何やら話したいこと、頼みたいことがあるとのことで呼び出された。

 

 本来なら強襲科(アサルト)はまだ、というかそろそろ早い奴が帰り始める頃合いなのだが。

 

 ……数回、インターホンを押してみる。

 

 

「つーか帰れよっ、俺はもう強襲科に戻るつもりはないっ!」

 

「嫌よっ! あんたがうんと言うまで帰るつもりはないわっ!」

 

 

「……あたしには、時間がないのよっ」

 

 

 あれっなんか原作よりギスギスしてる気がする。

 というか早く気付いてくれ。

 インターホン、壊す勢いで連打してみるか……?

 

 と、ドアが乱雑に開かれる。

 

 

「誰だよっ……って、石川っ!?」

 

「おーやっと気付いた……てか、いきなり悪いな遠山。これ菓子折り」

 

「お、おうありがとよ。何でお前がここに」

 

「私が呼んだのよ」

 

「げっ」

 

「お呼ばれしたな」

 

 

 明らかに顔を顰める遠山。

 悪い、俺もアリアをわざわざ怒らせたいとは思わんのでな、諦めてくれ。

 

 

「……はぁ」

 

「そう深いため息吐くなっての。んでアリア、用件は?」

 

「そうね、()()()()()()()()()()、手短に話すわ」

 

「そっち?」

 

「私の戦妹(アミカ)、わかるでしょ?」

 

「おう、てか一昨日も会ったな」

 

「その子を尾行して欲しいの」

 

「は、尾行? いつから」

 

「今からよ」

 

「……ん? いや、はぁっ!?」

 

 

 お、おまっ……ここ男子寮ぞ?

 さっきまで学園にいたってのに何で……!

 

 

「あんたにもこの場所を教えときたかったのよ」

 

「……まさか」

 

「あんたはキンジと違って理解力があるわね。そうよ」

 

「っ〜……はぁっ、いつまで?」

 

「明日まで」

 

「理由は?」

 

「あたしが守ってあげられないから、これでわかるわよね」

 

「……ああ、3日内解消規則(スリーデイズ・キャンセル)か」

 

 

 3日内解消規則とは、戦徒(アミカ)契約をした戦妹・戦弟(アミコ)が、契約後72時間以内に私闘で負けた場合に戦徒契約を解除すると言う制度だ。

 妹や弟が、よりにもよって私闘で負けるなんて、って奴だな。

 

「ふふ、そうよそれっ。   お願い、してもいい?」

 

「アリア、お前そんなに望まれてるのか?」

 

「勘よ。……あの子なら大丈夫だとは思うけどね」

 

「はぁ……了解、急ぐから流石に失礼するぞ」

 

「わかったわ。……ありがとねっ」

 

「どういたしまして、と遠山」

 

「……なんだよ」

 

 

 はは、バツが悪そうだ。

 ……まぁ、会ったら話す程度とは言え、訓練とかで一緒だったんだ。

 何も言わずに去ったというのは、俺が思っている以上にした側に気まずいんだろうな。

 

 

「お前が、どう言う思いでどうして決断したかなんて、俺にはわからない」

 

 

「だから、まぁ……元気そうで、よかったよ。全く知らないわけじゃない身としては」

 

「……おう」

 

 

 ポリポリと頬をかく遠山、何だよ照れんなよ。

 星伽にもその調子なのかよと疑っちまうぜ?

 

 

 

 

 

「間宮は……おお、危ない今帰ってるのか」

 

 

 聞いた話だとあいつはE、だったか。

 ……あれで? とは思わなくもないが、強襲科に求められるのは盗る技術じゃない、俺がどうこう判断するにはちょっと材料が足りないな。

 

 

「だがまぁ……」

 

 

 ただの尾行とは言え、周りが手強そうと言うのは否めない。

 

 

「間宮が言うには、探偵科(インケスタ)のAと強襲科のBがいつもいるメンバー、だったか」

 

 

 強襲科の方もだが尾行となると探偵科の方が問題だ。

 俺の分野ではない上に、専門家まで側にいる。

 ……思ってたより厳しい依頼になりそうだよ畜生め。

 

 

「気配……気配か」

 

 

 間宮は間違いなく武道の経験者で、おそらく爺さんと同じく型が癖として染み付くレベルだ。

 

 

「えへへぇ……先輩……」

 

 

 ……まぁ、本人はあんな風にふにゃっとしてはいるが。

 多分、尾行とかそっちの系統への気付きは早いだろうさ、追う方は知らん。

 

 

「気配を消す……ふむ」

 

 

 ……山道で、野生の動物どもに出会った時にやってた感覚でいいのだろうか、あれ成功してたのかすらわからんのだが。

 

 

「やるしかない、か。……ふぅ」

 

 

 ……己を岩だと思え、そこらに映る背景だ。

 時間かかるんだよなぁこれ……じゃなくて、岩だ、気配を消せ。

 

 紛れさせろ、自然の世界に。

 溶かし込め、己が存在を。

 

 

「……ふー……」

 

 

 息は一定、音は限りなく静かに。

 ……俺は、世界の一欠片。

 

 

「……」

 

 

 これと言って、上手く行ってる確証もないのだが。

 

 

「行く、か」

 

 

 いや、行くしかない。

 

 

 

 

 

「……いや、あいつの勘当たり過ぎだろ……!?」

 

 

 探偵科の方の女に私闘挑まれてやがる……っ!

 てか知ってるぞあのやべー気配……どこだったかな。

 

 

「いや、今はそんなことよりも   っ!!!」

 

「「曲者っ!!!」」

 

 

 鋭い、剣閃っ。

 仕掛け人は……双子のメイド?

 

 

「……ここの、使用人か」

 

「何者ですかっ!」

 

「名を名乗りなさいっ!」

 

「お断り。……こっちも事情があるんでね」

 

 

 何故バレた? いや本当に最低限の変装はしてあるからバレたのは最悪どうでもいい。

 だがこれでは……っ!

 

 

「……邪魔だ、どけ」

 

「なりません。お嬢様を害する者は何人たりとも」

 

「ここで、成敗して差し上げますっ!」

 

「ぐ、面倒な……っ!」

 

 

 おいアリア。

 俺、ここからメイドをあしらいつつ間宮の手助けをしなきゃならんのか?

 

 間宮も、中々濃い友人を持っていることで……!

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