どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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 突然ではあるが、今日は一日暇であることが確定した。

 まず任務がない、そして訓練もできない。

 

 霧崎に今日くらいは休めと言われてしまった、何でやねん。

 別に怪我したままでも俺は動けるんだが、てか俺はそうしなきゃ追いつけんのだが。

 ……まあ、休めと強引に言われてしまったが故に、休まなければなるまいと。

 

 そしてアリアはつい先程強襲科(アサルト)に戻ってきた遠山に付きっきりであり、峰とはそう何度も頻繁に話す間柄でもない。

 

 霧崎? 峰とあんまり変わらん。

 普段のあいつが何してるかなんてのに関わるつもりはない。

 怪我の手当てか、密会の時くらいだからなあいつと会うの。

 

 

「レキ……はもっとわからんしな」

 

 

 他の奴らに関してはもっと言うこともない、会ったら話す。

 んー……しかしなんだか新鮮な気分だ、たった一人で暇潰しをすることになるとは。

 

 

「考えてみると、あんまり誰かと関わらずにいる時間ってのが少ないな俺」

 

 

 本当に少ない。

 そりゃあ当然、自室や授業を受けたりしている時は確かに一人だが、そう言うことではなく。

 まあ、その話はあまり重要ではない。

 

 

「まあ、遠山がうまく行くことを願っとこう」

 

 

 これまでからの経験上、それほど期待ができるものでもないが。

 恋人がいるのにペアルックとかするとは思えないって?

 鈍感を極めた遠山だぞ、余裕でできるに決まってる。

 まずペアルックの一般的な意味すら知らんだろうし。

 

 

「まぁそこは星伽の教育しだいだなぁ」

 

 

 彼女は今、武偵校にはいない筈だが。

 お山でなんかしてるんだっけ?

 原作も読んだのがもう十数年は昔の話だからなぁ、そこまで細かい部分は覚えてない。

 当時の推しキャラだったネモとかレキが可愛かったこととか、大まかな流れなら……まあ、ギリギリ。

 

 

「……はぁ、この先どうなるんだろうなぁ、ほんと」

 

 

 ()()()()()()()()

 ヒビだらけ穴だらけの原作(うつわ)を、俺や霧崎の手で抑えて中身ができるだけ溢れないように。

 

 だがしかし、だ。

 ヒビや穴はちゃんと補修してこそなのだ。

 抑えた程度じゃ完璧には止められない。

 

 

「どこまでを妥協点とするか」

 

 

 霧崎も言ってはいたが、原作通りはもう無理だ。

 遠山にはもう、絶対に譲れない守るべき相手がいる。

 何でもかんでもアリアの強引さに流される、なんてことは起きないだろう。

 

 ついこの前、スタートラインを切ったばかりなのになぁ。

 なんか峰には恨まれてるし、俺や霧崎の関係ないところで原作変わっちゃってるらしいし……なんだこれは?

 ここまではもったと言った場所は、まだスタート直後とかいうクソゲー具合、超絶難易度にも程があるだろう。

 

 

「やめだやめだ。辛気臭いことばかり考えちまう」

 

 

 その辺りをふらふらと見回ろう、そうしよう。

 嫌なことは忘れる……わけにもいかないが、そればっかり思い出しても仕方ないのである。

 

 

 

 

 

「あ、先輩っ!」

 

「間宮か」

 

 

 なんとまぁ何でここに。

 このアリアっ子のことだから、今話題の遠山とアリアの関係の方を追いかけてそうだと踏んでいたんだが。

 

 

「えへへ、偶然ですねっ」

 

「……ま、そうだな。間宮はどうしてこんなとこに? 来ようと思って来る場所でもないだろ」

 

 

 今いる場所は、武偵校からそう遠くはないが近くもない、バスや電車などで乗り継いだ場所ではあるが、だからと言ってわざわざ訪れる場所でもない。

 

 

「お前も映画、見に来たのか」

 

「そうなんです。なんか、ここでしか上映してないって聞いたので」

 

 

 そう、何を隠そうここは寂れた映画館なのだ、別に隠してないけど。

 しかしそれならば他にも場所があるのだが、わざわざここに来なきゃいけない理由としては……。

 

 

「『趣味の悪い、風変わりな映画』……だったっけな」

 

「あ、そうですそれですっ! 今日はライカちゃんも志乃ちゃんもいなくて、アリア先輩も忙しそうで会えなかったので」

 

「暇潰しがてら、文言が目を惹いた映画館に寄ってみた、と」

 

「はいっ」

 

 

 わお、全く同じ理由である。

 ……んー、まぁアリアが忙しいのは正解なのだが、見つけられなかったかぁ、二人きりの出会い。

 真実は伝えないことも、時には正解となるのだろうか、うん、多分そうなのだろう。

 

 

「ふむ、なんかおすすめとかあるのかね」

 

「……えーと……」

 

 

 どこを見てもよくわからん映画しかないのがポイントなのだと思う。

 映画のチョイスは、オーナーの趣味100%だとか。

 こういうのを、ミニシアターと呼ぶんだっけ? よくわからないな。

 

 

「知ってる映画、一個もない……」

 

「だなぁ」

 

 

 完全初見に優しくない映画しか並んでいないことが、おそらく人がいない理由だろう。

 いや、シリーズものを並べられても全くわからんのだ、こっちは。

 

 

「わあぁ……!」

 

「どんな内容なんだよこれ」

 

 

 あっちを見たりこっちを見たり。

 

 

「殺人一家が、普通に生きようと苦悩する物語……」

 

「ある分野の天才が、周りの平凡さ故にその才能を潰す、ねぇ」

 

 

 独創性に満ちていると言わざるを得ない。

 いや、マイナーと言えどこれらは多分本当にマイナー側な気がする。

 

 

「……先輩っ!」

 

「ん? どうした間宮」

 

「その……」

 

 

 急に口ごもり始める間宮、何だいきなり。

 

 

「あの、その……せっかくなので、一緒に、映画見ませんかっ」

 

「別に、それくらいならいくらでも」

 

「! やったっ」

 

「……いや、そんな喜ぶことか?」

 

 

 随分な喜び様である。

 映画を見に来たんだから、それに知り合いが増えたところで目的は変わらんだろうよ。

 

 

「先輩は、何か見たい映画ってありますか?」

 

「んー、ここに並んでるのに限って言うなら特にない」

 

「……あたしもです」

 

「だよな」

 

 

 だって、風変わりとか趣味が悪いだとか、あまり見ない様な文言に惹かれて来たってだけだしなぁ。

 

 

「……んー、じゃあこれでも見てみるか」

 

「どんなのですかっ?」

 

「なんでも、二人の武偵が偶然遭遇した、学校のいじめやら何やらを解決するお話……だそうだ」

 

「はえぇ……」

 

「こっちも武偵二人だし、初めて見るきっかけなんかにしてはちょうどいいかと思ってな。間宮はこれで大丈夫か?」

 

「はいっ!」

 

「じゃあ、見てみるか」

 

 

 

 

 

「いや、正直選択間違えたわ。悪い間宮」

 

「い、いえいえっ」

 

 

 件の映画、途中でちょっとアレなシーンがあったのだ、年齢制限にギリかからない程度の。

 俺はともかく、間宮に見せる様なもんではなかったと思う、ミスった。

 

 

「でもっ! その他の部分は楽しかったですっ」

 

「それはそうなんだが……」

 

「あたしは気にしてないですからっ、ね?」

 

「……わかった。ありがとな間宮」

 

 

 後輩に気を遣われてしまったか、いや完全にこっちのミスなんだが。

 

 

「まあまさか、ただの学校問題から犯罪組織に繋がってるとは思わなかったな、うん」

 

「武偵の人達の、過去と現在の対比が面白かったですっ!」

 

「だなぁ、あと現実味がないと言えばそれまでなんだが。まぁ作り話としちゃあ愉快だったし……」

 

「有名な俳優さんがちょっとだけ出てませんでした?」

 

「……あー、ああ、そうだあの人か! 確かに見覚えあったわ」

 

 

 映画を見終わり、今は帰り道である、駅までの。

 意外と楽しかったとだけ。

 映画見てるだけの内容を長々と伝えてもだしな……。

 

 

「あと、映画館の雰囲気も、その……」

 

「独特ってか、普通じゃ見ない雰囲気で楽しかったな」

 

「それですっ!」

 

「……こういうところって、あんまり売れてないイメージがあるのにな」

 

 

 俺や間宮に合った、と言えばそれまでなんだろうが。

 あの暗さとか、独特の陰鬱さとかは、正直過ごしやすかったりした。

 間宮もどことなく楽しそうだったしな。

 

 

「また来る気にはなったが、正直誰かにおすすめはできんかもしれん」

 

「あはは……そうですね」

 

 

 いや、気に入ったんだけどね?

 誰かにすすめるには、ちょっと映画のチョイスが……。

 今回のプチ事件みたいなことを、もう一回起こしてしまったら洒落にならんのだ。

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