どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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お先は真っ暗で

「じゃ、対策会議しよっか」

 

「おー」

 

 

 やる気のない2つの声が、がらんどうの教室に響き渡る。

 ……いや、やる気はあるんだ、少なくとも俺には。

 

 

「1つ目、遠山&星伽の和風カップル破局ルート。文字通り来年の始業式までに破局させて、知ってる筋書きを辿らせよう! って奴だね」

 

 

 いっきなりぶっ込んで来るなこいつ。

 

 

「ちなみに1番おすすめだし、1番おすすめできない」

 

「理由聞いてもいいか」

 

「んー、まあこれがいっちゃん原作に近いよね? ってメタ的な要素からおすすめ」

 

「できない方は?」

 

「遠山くんと敵対していい事ないじゃん」

 

「ごもっとも」

 

 

 俺たちがこんなことを話し合ってる理由がまず『現状では遠山キンジが神崎・H・アリアとコンビを組まないのではないか』という不安要素からであり、そうなれば結果的に俺たちにも影響が出る、と言う考えからだ。

 

 

「例の双剣双銃(カドラ)と組まなきゃ、遠山くんは主人公(エネイブル)にならない」

 

「イ……じゃねぇや、犯罪組織と関わらねぇだろうしな」

 

 

 じとっとした目で睨まれる。

 悪かったって、こんなところで名前出しても得がないもんな。

 

 

「人いないけど、配慮して困ることはないから、気を付けてよね」

 

「おう」

 

「話戻すけど、彼が結果的に犯罪組織を壊滅させる、もしくはさせたから。という因果関係で話が進むのは間違いない」

 

「となると、そうならない可能性がある現状が俺たちにはよろしくない……ってことだもんな」

 

「そう言うことだよスレ主さん」

 

 

 はぁ、と浮かない顔するBランク(スレの民)

 

 

「お互い、目的というか着地点を認識しとこっか。大筋じゃなくて個人の」

 

「原作にはならなくても最低限これなら、って妥協ラインか」

 

「そ。……ぶっちゃけ、もう原作通りなんて無理だし」

 

 

 そこはもう、そうだよなとしか。

 だって白昼堂々とイチャコラしてるんですもの彼ら、あんなん修正どうしろという話である。

 

 

「ちなみに私は『生きたい様に生きる』だよ、今のとこ」

 

「随分抽象的だな、そりゃ」

 

「んまぁ、要するに気兼ね無く生きてたいの。今のままじゃあそう生きられなさそうだし……はぁ」

 

「ため息吐くなよこっちも萎える」

 

 

 見て見ないフリは心労に繋がると。

 スレ民に見せてやりたいお人好しだねぇ。

 

 

「スレ民ですけど」

 

「人の心がある様で何より」

 

「そのせいでこんなことになったけどね?」

 

「どうどう。……で、俺の着地点だっけ」

 

 

 最低限ここは譲れない地点と、ふむ。

 あー……そうだな。

 

 

「『世界に負けない様に生きる』でいいわ、今は」

 

「世界に負けないって……大きく出たね」

 

「そんな大層なもんでもねえさ。要するに理不尽を理不尽なまま受け入れたくないってだけで」

 

「確かに現状は理不尽かも」

 

 

 俺たちみたいな原作にない要素が関わったならともかく、なんか原作にある要素のまま違う結果になってますもん、いや個人の幸不幸にいちゃもん付けたくはないんだけどね。

 

 

「世界が闘争に包まれたおまけで死にたくもないし、変わったせいで犠牲を産みたくもない。夢見が悪いし」

 

「ま、そう言うことに繋がるよね結局。第2の人生、気兼ね無く生きたいってことに」

 

「一回読んで楽しんだ世界に来たなら尚更な」

 

「間違いないね」

 

 

 俺もこいつも転生者で、『緋弾のアリア』を読んでいた。

 主人公みたいにならなくたって、ああしたいこうしたいとは夢想したのは同じらしい。

 

 

「さて、じゃあどうしよっかこの現状」

 

「確認したいが。遠山と星伽、この2人がどうして付き合ったとか知ってたりするか?」

 

「いや全く。でもなんとなく想像はできるよ」

 

「へえ」

 

「イッチ……じゃなくて君と合流する前に、ささっと経歴調べてみたんだよね」

 

 

 手が早い、あとそっち方面からなら都合がいいな。

 

 

「そしたら神奈川武偵附属中学校(カナチュー)時代の遠山くん……はあんまりそれらしい違いは見つからなかったんだけど」

 

「だけど?」

 

「まあ、予想通りというか、嫌な勘は当たるもの、というか。星伽さんの方が中々面白い経歴になっててね」

 

「そうだよな」

 

「やっぱり知ってたんだ。そう、なんと遠山くんと同じ学校にて活動してました! ぱちぱち〜」

 

「おお〜」

 

「……じゃなくてね」

 

 

 若干頬を赤くしながらも、話を続ける目の前の少女。

 ヤケクソ感が否めない、てか自棄になってるなこれ。

 

 

「これはまさかと思って関連人物のこととかも調べたんだけどさ。なんかもう……うん、流石は愛に生きる女の子、って感じだったよ」

 

「具体的には」

 

「遠山くんのヒーロー」

 

「なるほど、そりゃこうなるわ」

 

 

 女嫌いになる前にその状況から救われたと。

 やったな星伽さん恋が実ったぞ、どうしてそうなるねん。

 

 

「どうやって救ったとかまではわかんないんだけど、1人を除いて関係してた子が転校してるってのが分かった時の虚無感、すごいよ?」

 

「ははは、怖え」

 

「と、私が知ってるのはこれくらい。そっちは?」

 

「遠山に聞いたあれこれを」

 

「お、本人に聞いたんだ。ちょうどよかった」

 

「そっちが情報面で調べてて助かったよ。……んで、遠山によると『告白した』らしい。喜べ」

 

「うわ」

 

 

 聞いた時の俺と同じ顔してら。

 しっかりがっちり両思いだ、こんなん手を出す方が無謀だ。

 

 

「常時ヒステリアみたいなもんなのにもっと強くなるじゃん、やだやだ」

 

「結婚すると遠山家は弱くなる云々ってなかったっけな」

 

「そう言う意味合いじゃなかったと思う。あとしてないじゃん、結婚。あと星伽さん的に献身的にヒーロー活動支えそうだし」

 

「あー……」

 

 

 そういや遠山の父って……うん、バリバリ現役だったな関係ねえわ。

 

 

「敵対する理由が更になくなって、しかもほんとに違う方向に行きそうじゃん、これ」

 

「神崎と協力する理由もないからな、原作以上に」

 

「……ほんとに代わりをやるしかないかも知れなくなってきたなぁ」

 

「実力足りねぇよ。あと伸び代」

 

 

 お前も俺も、な。

 1人は求められる強いの方向性が噛み合わず、もう1人は単純に不足してるんだ、これが。

 

 

「スレでも言われてたが、既にSと、Sになりそう、じゃ話にならねぇよ。一石の件はほんとに作戦勝ちだったからな」

 

「私も正面で戦う、って感じじゃないし?」

 

「そういうこった。途中までは行けてもそれ以上がない」

 

 

 遠山キンジは、というかヒステリアモードというものが、そもそも戦闘能力だけの代物ではないというのが非常にタチが悪いのも要因だ。

 

 

「お前、遠山レベルで現場で学んで実践できるか? 少なくとも今の俺は無理、身体がついて行けねえから」

 

「私も無理だね」

 

 

 銃弾掴んだり、跳弾で多彩なことしたりと、その発想に至るまでできるのは、ヒステリアモードという戦闘能力以外にも恩恵がある力があってこそ。

 だから脳の負担が甚大なわけだしな。

 

 

「でも始まりの時の戦闘能力なら、いいとこ行けるんじゃない?」

 

「というと?」

 

「だって、原作ならブランクすごいじゃん遠山くん」

 

「っても4ヶ月弱だが」

 

「それでも大きいよ。……こっちはそれ以上に強くなりそうな気配あるけど」

 

「兄の死をどう受け止めるか次第だろ、そこら辺は」

 

「……頭痛くなってきたね、嫌な感じ」

 

「考えることが大き過ぎるからなぁ」

 

 

 今、というかこれから来年の始業式までに考えて対処しなければならないことは、大きく分けて3つ。

 

 1つ目、神崎・H・アリアの相棒の件。

 これが決まらなければその後の流れに著しく影響が出てくる。

 

 2つ目、遠山キンジの絶望。

 これに関してはどう転ぶかわからないと言う側面のが大きいが。

 闇堕ちされて星伽共々敵にでもなったらそれこそ終わりだ。

 

 3つ目、俺たちの今後。

 これは始業式以降も、と言う話ではあるが、始業式が大きいターニングポイントであることは間違いない。

 

 

「……こんなとこかね」

 

「だと思う」

 

「一応だが、こんなことになったんだし改めて自己紹介しとくか」

 

「今更感すごいねそれ」

 

「それはそう。まあ区切るにはちょうどいいだろ、ってことで俺から。俺は石川ヨリト、頼るに人で、頼人(ヨリト)だ」

 

「先祖は義賊?」

 

「石川五右衛門と関わりあるかなんぞ知らねぇよ。あと史実だとただの泥棒だろ五右衛門。所属は強襲科(アサルト)のAランクだ、知ってるだろうが」

 

「まぁね。じゃあ次は私だ。私の名前はイヴ、霧崎イヴ。見ての通りのハーフで、イギリス人の母と日本人の父がいるよ」

 

「……ジャック・ザ・リッパーとか?」

 

「苗字がそれっぽいのは否定しないけど、そうであるとは限らないしよくわからないからノーコメントで。ぶっちゃけ知らないし。所属は尋問科(ダギュラ)衛生科(メディカ)だね、そしてBランク」

 

「他にも手出してんだろ?」

 

「……ふふ、覗いたことはあるよ、とだけ」

 

「おぉ怖。一石よかよっぽどタチ悪いわやっぱ」

 

「褒めても何も出ないからね」

 

「出てきたとしても遠慮しとくよ」

 

「まあとりあえず、これからよろしくね?」

 

「こちらこそ、よろしく頼むよ共犯者殿」

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