どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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致命の一撃

「さーてさてさてっ! 訓練も大事だけど、そろそろすぅっごく難しーいエクストラクエスト始めよっか?」

 

 

 間宮が乗馬訓練、佐々木が1対多数の対人訓練、火野と島がそれぞれ攻めと守りの訓練、をしていたのだが……ふむ。

 流石泥棒、現場の使い方が上手い。

 

 

「今回の相手はあかりん達にはとーっても強いからねぇ」

 

 

「ここで1回、格上相手に揉まれておいた方が良いんじゃないかなぁ」

 

「……だ、そうだ」

 

「うげっ」

 

「た、大変ですの?」

 

「恨み、晴らさで置くべきかッ!」

 

「……」

 

 

 命持つかなこれ。

 

 

 

 

 

「……とまぁ、峰はあんな物騒なこと言ってはいたが。気負うもんでもない、ちゃんと制限されてるからな」

 

 

「手足に重り、そして俺は素手だからな」

 

「十分過ぎるんじゃないですか……」

 

「そう僻むなよ火野」

 

 

 流石の苦笑いだが、まあ実力差はそう誤魔化せるもんじゃないし、うん。

 

 

「……ッ!!!」

 

「……まあ、うん。何も言わん」

 

 

 すごい気迫であるし、その動機に心当たりがないとも言わない。

 

 

「ど、どうしましょうですの」

 

「……どんまい、島とやら」

 

「憐れまれましたですのっ! 不憫なのですのっ!」

 

 

 これ以上ないくらい関わり薄いし……。

 まあ、CVRとは言え武偵、荒事からは逃れられんだろうし経験だと思って頑張ってくれ。

 

 

「……先輩」

 

「おう」

 

「あたし……」

 

 

 何だか、とても不安そうな顔をしている間宮。

 

 

「何か言われたかよ」

 

「えっと……」

 

「ふむ」

 

 

 まあ、予想できんこともない。

 

 

「アリアから盗ったあの技、歩き方……」

 

「っ」

 

「……その辺りだろうよ」

 

 

 誰に言われたのか、とかの詳細は知らんが。

 

 

「ま、俺からあーだこーだ言うつもりはないさ、その辺」

 

「先輩……」

 

「いやそんな顔されてもなんだが……ふむ」

 

 

 何でそんな泣きそう苦しそうに。

 そんな辛い何かがあるのかね、その技に。

 

 

「俺は丈夫だぞ」

 

「……ぇ?」

 

「言葉の通りだ」

 

「え、えっと、それって」

 

「どんな技術(もん)でも、対処してやる」

 

 

「……どーんと、来い」

 

 

 タフネスだけは他のSにも負けるつもりはないさ、気概だけは。

 

 

「んふふー、じゃあ始めっ!」

 

 

 

 

 

「……やっぱ光るもんはあるよな、うん」

 

 

 間宮達を相手取って、大体10分。

 残りは間宮、ただ1人。

 

 

「……んで、間宮。その気にはなれなかったか」

 

「ぅ……」

 

 

 赤の他人の言葉じゃ、効果無しってとこかねぇ。

 

 

「まあふわっと考えてみな」

 

「え?」

 

「仮に、あくまでも仮に、それが人を殺せる技術(わざ)だとして」

 

「ッ……」

 

「周りを、普通の人を不幸にしてしまうんじゃないかと思い込んでしまう様な技術(わざ)。仮に、だからな」

 

「は、い」

 

 

 間宮がどれくらい鍛えてたのかにも寄るんだが、そこは未知数。

 

 

「人外くらい強くて死なないんなら、不幸すら跳ね除けるんじゃねぇんかってな」

 

 

 そこは先輩としての意地と気合いと見せどころだよなぁ?

 

 

「……」

 

「そう考えたら、そんなに苦しく考える必要はないと思わねぇか?」

 

 

 ぽかんとしている間宮。

 まあ、そんなこと言われてもって感じだろう、そりゃそうだ。

 

 

「もちろん、無理強いはしないが   

 

 

「……悪い、気分悪くさせちまったな」

 

 

 やらかした、盛ッ大にやらかした。

 

 

「おい峰……って居ねえ」

 

 

 どこ行ったんだあの怪盗、1番必要な時に……。

 いや、泣かせるつもりはなかったと弁明しておく、本当に。

 

 

「ぅ……あれ、あ、いや……ごめ、ごめん、なさい、せんぱい……!」

 

「そりゃこっちのセリフだよ、全く」

 

 

「……闇は、深そうだねぇこりゃ」

 

 

 ぽろぽろと溢れる涙。

 堪えようとしているみたいだが、止まらない様子。

 トラウマを刺激させてしまったのか、はたまた別の何かか。

 

 

「峰どころか、周りの皆すら」

 

 

 ご丁寧な奴である、後始末だけ。

 名目としては気絶した後輩達の手当てと看護辺りだろうか。

 

 

「うぅ……」

 

「ま、落ち着くまでは泣いときな、いくらでも待っとくよ」

 

「ッ……!」

 

 

 間合いとしては、5歩も歩けば届く距離。

 しかし俺は立ちすくむ。

 気の利く奴なら、慰めるのが鉄板なのだろうが、俺にはそんな器用なことは出来やしない。

 

 まあ、要するに……俺みたいな部外者がやみくもに手を出したり、立ち入るのは良いことじゃないってことだ。

 大人しく、待ってるさ。

 

 

 

 

 

「あぅ……ご、ごめんなさいっ!」

 

「落ち着いた様で何よりだ。謝られることじゃない」

 

 

 数分後、落ち着いた様子の間宮が、顔を真っ赤にしながら謝っていた。

 

 

「俺は微妙な立場上、間宮とは割と関わる方だと思う」

 

「ふぇっ? そ、そうですね」

 

 

 間宮の戦姉(あね)が、俺のチームメンバーという、微妙な関係。

 しかし何故かは知らんが、忙しいアリアの代わりに守ったり、偶然出会ったり、今度は峰に引っ張られて関わることになったりと。

 どう考えても奇縁である、うん。

 

 

「だからとは言わんが、まあ……お前が悩む理由も何となしに予想してる」

 

「……はい」

 

 

 おそらく、さっきも触れた……隠さず言ってしまえば『9条破り』……人殺しに関わりかねない系統の、何か。

 そうなりゃ普通の武偵でも悩みの種なんじゃないかねぇ?

 

 ましてや間宮の憧れは武偵法違反ゼロに加え実力も最高峰のアリアだ、生半可なものじゃないと思われる。

 ……以上全部、俺の憶測であるが、間違ってたら恥ずいなんてもんじゃない。

 

 

「だがまあ、何がどうあれ試してみなきゃ始まらないもんだぜ。始まりの一歩ってのは」

 

「え?」

 

「そういう系統の技なら、人に試したことだってないんじゃないか」

 

「そ、それはもちろんです」

 

「よろしい。ここで試しましたとか言われたら俺はどうも反応できん」

 

 

「ってことで、俺に1つ、試してみりゃあ良い」

 

「……え、ええっ!?」

 

 

 悪いが俺、そういう道に詳しい訳じゃないんだ。

 武偵になる前なんてプロの不良門徒だし。

 

 

「トライアンドエラーだ。死ななきゃ安い、そして俺はそうは死なん。これでオッケー」

 

「ふぇっ、いや、ダメですよっ!?」

 

 

 俺、Sランクじゃ弱い方だからなぁ、身体を張ることしか能がないんだ。

 

 

「もし、先輩に何かあったら、私   

 

「俺の言葉じゃ、信用ならないか?」

 

「……い、いやっ! でも、でもっ……!」

 

 

 いかん、また泣かせるかもしれん。

 ……んー、どうすっかなぁ、見てしまった以上このまま放置すると後味悪いし、戦妹(いもうと)に何かしたと神崎にどやされかねない。

 

 

「なあ、間宮、ちょっとしたクイズをするか」

 

「え? は、はい」

 

「世界……はスケールでけぇな」

 

「?」

 

「……コホン、理不尽ってのは、不意に訪れるもんだ」

 

 

「思っても見なかったアクシデントに見舞われて、尚且つそれをどうにかしなきゃいけなくなったりな」

 

 

 友人のため、顔すら知らない誰かのため、そこはどうでも、誰でも良い。

 放置できるなら、まぁ関係ない話だが。

 まぁ、どこかの誰かさん達も、目の前の間宮もそれができないタイプだと思う。

 

 

「そんな状況だったら……お前は、死んでもいいと、諦めるのか?」

 

「……」

 

「武偵としての実力が足りない、がとある力を、制御を間違わなければ」

 

 

「忌み嫌うソレを、いざという時に使う判断ができれば、全部がいい方向に向かうのに」

 

「……わた、しは……」

 

「時間は沢山あるが、きっかけはとっても少ない」

 

 

「選択肢があるってのは、実はとっても贅沢なことなんだぜ」

 

 

 ちなみに俺には、ない。

 実力不足は痛感してる真っ最中だ。

 ……どこかの誰かさんにも言ってやりたい言葉だがな、今は目の前。

 

 

「……せん、ぱい」

 

「おう」

 

「……っ……っ!」

 

 

「……お願い、しても……っ、いい、ですかっ」

 

「おう」

 

 

「どーんと来い」

 

 

 後輩に、胸を貸すのは先輩の役目でしょうよ。

 

 

 

 

 

    エクストラ含む、もろもろの訓練終了後にて。

 

 

「やーやー、ヨリくん」

 

「……峰か、いいとこで逃げやがって」

 

「はて? 何のことでしょうなー?」

 

「白々しいな。……目的のもん、見届けられたかよ」

 

「んー? そっちは本命じゃないし、興味本位で見たかっただけだよぉ?」

 

「……そうかい」

 

 

 唆したのは峰である、と。

 しかしまあ、峰自身がどうこうしようという気概はないらしい。

 嘘は言ってないと思うが、どうだろうな。

 

 

「しっかしぃ? これはまた派手にやられたねぇ」

 

「なんの、ことやら」

 

「……強がらなくても見ればわかる。肉体どころか、骨まで届いてるでしょ?」

 

「かもな」

 

 

 佐々木が比べ物にならんくらい、全身が痛い。

 間宮の目の前で血を吐かない様に堪えるのは大変だった。

 歩くのにも、ちょっとふらつくし割とやばいか。

 

 

「……んっふふー。生き汚なさは流石の一言だねぇ、ヨリくん」

 

「トドメを刺すなら今だぞ、と目の前の人間に伝えてみようか?」

 

 

 ここで襲われたら本気で死ねるがな。

 

 

「ふざけるな。……あたしの復讐は、こんなちゃっちいものじゃ終わらないッ……!」

 

 

「だからぁ、今回は見逃したげるねぇ?」

 

 

「イヴイヴにはそれとなーく伝えてあるからぁ、帰りに武偵校に寄ってってねぇ〜」

 

 

 言いたいことは伝えたと言わんばかりに去っていく峰。

 

 

「……全く、俺の身の回りは嵐みたいだなほんと」

 

 

 

 

 

     この後、霧崎に問い詰められ、アリアにも叱られることになるのを、俺はまだ知らない。

 嵐だよお前ら本当に。

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