どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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劣悪なパーティ会場にて

「最悪だな」

 

「……」

 

 

 ()()だ。

 とびっきりの、荒れに荒れた奴。

 

 

「目を開けられないほど、ではないが」

 

「……」

 

 

 原作を普通と評するとしたらこれは……超重度、ってとこかねぇ。

 アリアはいない、この雨の中で他のに連絡したって雑音に声をかき消されるからな。

 扉の向こうにて応援要請中。

 

 

「風……はまだ強くないにせよ。これじゃあなぁ……」

 

 

 横目で隣に座……ってはいないか、立つ少女を見つめる。

 

 

「レキ」

 

「……はい」

 

「狙撃は大丈夫そうか? この環境で」

 

「……」

 

 

 ヘッドホンを外して応答するレキ、良かった聞こえてたか。

 少しの沈黙の後、口を開くと……。

 

 

「……問題、ありません」

 

「てことはこれ以上風が強くなったら流石に面倒か。了解」

 

「……」

 

「ムスッとした目でこっち見んなよ」

 

 

 こいつ……自我薄い癖になんだおいこら、全く。

 レキは基本答えに迷いがない、まぁ迷う必要がない程に洗練された技術とツキを持ち合わせてるからな。

 ツキってか、信奉する神様の憑きかもしれんが。

 

 まぁ何が言いたいかって言うと、こいつの答えに余白がある時は主からの答えを待ってる時か、確信ができない時ってこと。

 今回は後者で、他には潜入捜査しなきゃならんかった時とかにこう言うことがあったな。

 今のレキ、表情硬いとかってレベルじゃないしな、あの時は苦労した。

 

 あれはまあ任務自体がタチが悪いけど、2度は受けたくない。

 

 

「そこそこの付き合いだからな、それくらいはわかる様になったぞ」

 

 

 他でもない俺とレキに斡旋する任務じゃなかった、とだけ。

 肉壁と狙撃手だぞ俺ら。

 

 

「……」

 

 

 あ、またヘッドホンで音聞き始めた。

 何を考えてるのかわからんなマジで。

 

 

「……もうっ、今日に限って皆出払ってるのねっ!」

 

「アリアか、どうだった?」

 

「ダメよ。……キンジがもう少ししたら来る筈よ、頼れるのはそれくらい」

 

「そうか」

 

 

 よし、遠山の方も第一段階はクリア、か。

 ……こっからだな。

 

 

「全く、こんな天気の中でバスジャックなんてな」

 

「任務は時も場所も、天候も選んじゃくれないわ」

 

「にしてもこれじゃあなぁ」

 

 

 見渡す限り土砂降りだ。

 風がないことだけが幸いと呼べるし、レキレベルの狙撃手だからこそ危ういだけで済んでる。

 雨に打たれて弾道が変わるレベル……には、まだちょっと軽いと信じたい。

 

 

「これ以上強くなったら、俺達の銃も危ういかもな」

 

「いつの時代の話よ。耐水加工はしてあるでしょ?」

 

「それも完全じゃない。長時間濡れたら弾、詰まるぞ」

 

 

装備科(アムド)の端くれとして言っとく」

 

「……それもそうだけど」

 

 

 アリアも懸念してない訳じゃないんだろうけどな、一応。

 今はこうやって雨を凌げる場所にいるから問題ないが、遠山が来たらそう言ってられん。

 

 

「悲観論を忘れんなよ」

 

「そうね。ちょっと気が抜けてたかも」

 

「そりゃ珍しい」

 

「……あんたがいるからよ」

 

「何か言ったか?」

 

「何にも。……キンジも来たみたいね」

 

 

 お、来たか。

 さて……気は引き締めて。

 

 

「……変な動き、しなきゃいいがな」

 

 

 頼むから、できる限り原作通りに動いてくれると助かるぜ。

 俺がいる時点で原作通りじゃないけど、そこは無視。

 最悪を迎えない為に、出て来たんだからな。

 

 

 

 

 

「左右ともに6.0です」

 

「「……」」

 

「相変わらずよく見えてんなぁおい」

 

 

 6.0ってお前な。

 まあ、どっかの民族はそれを超える平均視力してるらしいけど。

 

 

「石川、見えるか?」

 

「んー……バスと、その中の人の大まかな服の色くらいなら」

 

「いや、お前も相当だな!?」

 

「山育ちで目がいいんでな」

 

 

 いや関係あるかって? 気にすんな遠山。

 言うて3.0あるかないかだった筈だし、結構ボヤけてるし。

 

 

「空中からバスの屋上に移るわよ。あたしはバスの外側をチェックする」

 

 

「キンジは車内で状況を確認、連絡して」

 

 

「レキはヘリでバスを追跡しながら待機」

 

「俺は?」

 

「ヨリトは私と一緒に外側よ、あたしの邪魔をさせないで頂戴」

 

「セグウェイみたいなのを撃ち落とせと、了解」

 

「そう言うこと」

 

 

 この雨の中で? ってのは皆同条件だから気にしちゃ負けだ。

 UZI(ウージー)側……はまぁ、的が大きいバスだからかなりこっちに不利だが。

 

 

「中に犯人がいたらどうするんだ」

 

「『武偵殺し』なら車内には入らないわ」

 

「そもそも    

 

 

 ……とまぁ、いつものが始まったからこっちは放置。

 止める気はないんだなこれが、てか下手な止め方じゃ止まらんし。

 

 

「レキ」

 

「はい」

 

「待機とは言われたが、人質が危ないと判断したら構わず撃ってくれ。人命優先だ」

 

「はい」

 

 

 ここは大丈夫だろうが、一応な。

 

 

 

 

 

「っぅ……凄え風だよなおいっ」

 

「ちゃんと本気でやりなさいよ!」

 

「本気だって!」

 

 

 相変わらずお互い語気が強い。

 まあ原作より気力はあるだろうからな、遠山も。

 

 

「遠山は中に……行ったか。どうするよアリア」

 

「あたしは爆弾を確認する! ヨリトは周囲の警戒をお願い!」

 

「仰せのままにっと!」

 

 

 正体を現した車のタイヤを、手当たり次第パンクさせていく。

 狙いが定まらないとかいうレベルじゃねぇなぁおいっ!

 

 

    そっちはどうなんだ』

 

 

 無線から遠山の声が響く。

 てことは……より一層気合い入れなきゃならん!

 

 

「爆弾らしいものがあるわ! カジンスキーβ型のプラスチック爆弾(composition4)  『武偵殺し』の十八番(おはこ)よ」

 

 

「炸薬の容積は……3500㎤はあるわね」

 

「そりゃまたっ、豪快な量詰め込んでんなぁっ!」

 

 

 この界隈に関わる様になって初めてわかったこの爆弾の過剰さ。

 この3500㎤って量はざっくり言うと、20cmくらいの幅があるHの形をした鉄骨あるだろ?

 あれを破壊可能な規模だ。

 何言ってんだって? まぁつまりだな!

 

 

「こんなバスの薄っぺらい装甲なんて紙切れみたいに余裕で貫ける、ってことだ……!」

 

 

 下手に爆発させたら、この先にある橋も崩しかねないレベルか?

 そんなヤワじゃないとは思ってるがね。

 

 

「げっ……!」

 

 

 相当数追い払ったつもりだった犯人の物と思しき車。

 それが、3台こちらに銃口を向けている。

 

 

「ちっ……おい遠山!」

 

 

  今すぐ伏せろっ!!」

 

 

 鳴り響く発砲音。

 ……俺にも掠ったが、それはいい。

 今はとにかく数を減らせ……!

 

 

「ぬっ、お    !」

 

 

 と思えば、バスがいきなり傾いた、カーブしたんだ。

 

 

「ってえ……!」

 

 

 バランス崩して数発貰った。

 そして敵が減らない。

 原作じゃ1、2台だった筈なんだがねぇ、俺のせいか!

 

 

「ヨリトっ! 大丈夫!?」

 

「任務続行に支障はねぇよっ! そっちは!」

 

「ルノーに追突されたけど損害はヘルメットだけよ!」

 

 

「潜り込んで解体を試みるわ! 手を貸して!」

 

「……ああっ!」

 

 

 ……遠山が、出て来ない。

 朧げな記憶が正しければ、そろそろだったんだが……くそっ。

 

 

「ここで変わるのかよっ」

 

 

 雨にかき消される程度の声量で、1人愚痴る。

 どう頑張っても手が出せない、修正しようがないタイミングの変化。

 不自然に出て来いなんてことは言えない、今の状況は下手したら死ねるレベルだから。

 

 

「だったら、やれるだけ抗うだけだ!」

 

 

 だったらせめて、アリアに余計な負荷を加えさせない様に動くのみ    !?

 

 

「んなっ……アリア!」

 

「っ!!」

 

 

 ここで、敵の増援(おかわり)かよふざけんなっ!

 しかも装備がUZIじゃねぇ!

 

 

「AKだと……!?」

 

 

 UZIとの比較は言うまでもなく……まあ、単純に威力はこっちのが高いか。

 

 

「ぬ、おおおっ!」

 

「ヨリトっ!?」

 

 

 銃口は既にこちらを向いている、なら。

 

 

「あぐぁっ……動く、なよアリアっ……!」

 

「ちょっ、あんたっ」

 

 

 我が身を、盾に。

 元々、前髪でどうにかなるとしたって、女の子の顔に傷なんぞ付けさせたくはねぇんだ。

 どうせ変わるなら、ここも変えさせる。

 

 

「っ……!」

 

「ヨリトっ!」

 

「……」

 

 

 だがまあ、代償はそりゃ大きい。

 防弾装備と制服ありき、そんなに命中率が良くないとしたって、アサルトライフルの集中砲火、タフだとしても耐えられるもんじゃない。

 

 

「げほっ……」

 

 

 どうする?

 腕っぷしだけの奴が、腕っぷしすら役に立たなくなって来た。

 状況が悪過ぎる、どうする    

 

 

    諦め、させないよっ!」

 

「!」

 

「知恵を回すのは、裏方(わたし)だってできるんだからっ!」

 

「はっ……い"い"……ゲホッ、タイミングじゃねぇかよっ」

 

 

    霧崎っ!!」

 

 

 どこから現れたのか、霧崎がいた。

 心強いが、今外には……。

 

 

「目の前、敵、3台だっ!」

 

「わかってる! ……神崎さん!」

 

「えっ、な、何!?」

 

「右1台頼んでいい? 左の1個は私がどうにかするからっ!」

 

「!   ええ、わかったわ!」

 

「もう1台……!」

 

 

 普段なら、こんな状況でもアリアに2台任せたって良かっただろうが。

 今はバスの上で、超スピード状態。

 両手撃ちは実質、封じられているんだ。

 

 

「ゲホ……レキっ!」

 

『はい』

 

「っ……()()()()! いける、よ……なっ!」

 

『問題ありません』

 

「じゃあ、任せる!」

 

 

 言わずともわかるところは流石だと言いたいが、これ以上言葉を紡ぐ気力がない。

 くそ、AK持ち3台はやり過ぎだって……のに……。

 

 

「……くそっ」

 

「しっかりしなさいよっ! ……ここでくたばったら風穴よっ!」

 

「くた、ばるかよっ……!」

 

 

 寒い、眠い、息がし辛い。

 意識も絶え絶えな中、死にはすまいと強く思っていたのだが。

 銃弾の音が響く中で、俺は    

 

 

「……おれの、おやじが、めいわく……そう、とう、かけたみてぇ……だなぁ、おい……」

 

「ヨリト!?」

 

 

 

 

 

     この後、俺の意識がはっきりとしたのは、病院にて目覚めた時だった。

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