どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!? 作:銀の弾丸
「君はなーんで1人で背負おうとするのかなぁー?」
「お、落ち着け霧崎。ここは病院だ、騒いだら他の人に迷惑だろ」
「……ふぅ。うん、落ち着いた」
「そうか、なら良かっ」
「だからイッチ、君を殴る」
「ちょ待てって」
拳を構えこちらに向かって来る霧崎を抑える。
全身はまだまだ痛いし殴られたら割と本気でシャレならん。
「上等な個室だから騒いだって基本大丈夫だし、一回殴られてよねっ!」
「普段なら殴られようが抵抗しねぇけど、今は割とマジでやばいから待てっての!」
「っ……もうっ」
胴体が満遍なく軋む様な痛みに苛まれている、と言った感じだ、痛え。
今にも傷口が開きそうというか、何というか。
治りかけの指の切り傷がパクパクしてる時の感覚に近いか、ちょっと触ったら傷が開きそうなアレ。
「何で?」
「何でって、何がだ」
「確かに、結果的に見たら殺意やばかったし、イッチの判断は間違ってなかったよ」
「でもあれ、明らかに神崎さんを守る気だったよね」
「……」
「どうして?」
どうして、とその言葉単品じゃ誤解されるぞ霧崎。
まあその先に『原作を変えようと思ったの?』ってな感じの言葉が続くとなるとまぁこの場じゃ言えないのは……まぁ、そうなんだがよ。
「あの時、誰も出て来なかったからな」
「それは……そうだけど」
聞く所に寄ると、遠山はバス内の混乱の収拾に追われて外にまで手が回らなかったらしい。
その時点で違うだろうよ。
「だったら、俺がやらなきゃだ。俺のやり方でな」
「でもそれは……!」
「俺が傷付いてまですることか、ってか?」
「……毎回毎回、身体張ってるじゃん」
「まぁな。でもあの場所での優先順位は間違ってない筈だぜ」
「レキはまぁまだ安全圏だったろうし、他の皆は遠山やバスが。だったら司令塔のアリアを優先するのは間違ってないだろうぜ」
「……そうだけど! そう判断したんだろうとは思ったけどもっ!」
というか、あのバスに霧崎が乗ってたことの方が俺には驚きだったんだが。
何故?
「……嫌な予感がしてたから」
「嫌な予感、と言うと」
「前々から疑問には思ってたんだよね、理……『武偵殺し』の案件の時の、イッチの怪我の酷さ」
「……目標と比べて弱いって言ってもさ、イッチはSランクなんだよ、ちゃんと強いんだよ?」
「なのに神崎さんがいつも軽傷で、イッチばかり重傷なんてそんなバカな現実はそうそうあり得ないし、私は今でも不思議に思ってる」
「イッチが私に隠してるであろう部分を考慮しなきゃ、ね」
「気付いてたか」
「そりゃあね、何かしらあるなってずっと思ってたよ」
「でも話さないんなら、私が過干渉するまでもないって思ってたし、バスに乗ってても表には出ないでいようって思ってた……ああなるまでは」
「……」
「あんな、下手したらイッチの生死に関わる怪我されてまで素通りするつもりは今の私にはないから」
「……答えてよね」
やばいな、結構お怒りらしい。
まあAKに狙われて生き残ってたのは、単純に銃弾の当たりどころが良かったってのが大きいだろうしなぁ。
「ちょっとした因縁があるらしい」
「因縁?」
「ああ。俺の親が、あっちに半端ないレベルで恨まれてる。それで、だ」
「……何それ」
「詳しくは知らんよ。まあ、あっちも状況が状況だしなって感じだよ。俺的には感情を爆発させる機会は必要だって思ってるし」
俺の立場的にはそんな理不尽な! で通りそうな問題だが、それでスルーしたら潰れるのはおそらく峰だ。
潰れられたら原作的にも困るし、そもそも友人との喧嘩の範疇みたいなもんだと割り切れば良い、耐えるのはお得意なので俺。
「そんな、お人好しな……!」
「人が良くなかったら、俺もお前もここには居ないだろ?」
「っ〜……」
「悪い。火に油を注ぐつもりはなかったんだが」
だからそんな苦しそうにしないでくれよ、俺の自業自得だぜ。
今回は流石にやばかった自覚もある。
「……で、どうなったんだあの後」
「レキさんが綺麗に撃ち抜いてくれたよ。被害者も運転手とイッチだけで、他はほとんど傷も負ってなかった」
「軽い打撲とか、その程度」
「でも……まぁちょっと、うん。現場の混乱が酷かったけど」
「? なんだ、そんなにパニックになってたのか?」
乗ってるの大体武偵生だよな? 遠山が苦労するレベルの混乱といい、流石におかしい気がするんだが。
「そっちじゃないよ。いや、そっちもちょっとおかしかったけど」
「て言うと」
「神崎さん、後ついでに間宮ちゃんとかの部外者武偵生」
「……は、間宮?」
「あ、そっか知らないんだっけ。いや知らなくても良いんだけど……」
あー……俺が運ばれて、その先に間宮が鉢合わせたと?
そりゃまあ……うん、生々しいもの見せちまったな。
「というかあの場のイッチの関係者全員挙動不審だったよ全く、イッチの人たらしめ」
「全員て」
霧崎やらレキは冷静な判断してくれてそうなもんだがな。
「私はこれでも医療従事者だからね、患者目の前にして取り乱したら終わりです」
「そりゃそうか、いつも助かってるよ」
「どういたしまして。後レキさんは……ヘリに乗ってたから見てはいないけど」
とまあ、なんだかんだあの後もやばかったらしい。
他にもお見舞いの品の数々や、その後の処理の手続きなど、色々話してくれている、ありがたい限りだ。
「それじゃ一旦帰るけどさ……くれぐれも! 無理はしない様にっ!」
「わかったって」
「わかってないでしょそれさぁもうっ! ……今のイッチ、今まで以上にというか、かなり危ないんだからさ」
「……と言うと?」
「小さい傷の積み重ねってこと! 短期間で怪我し過ぎ、治り切らない内に動き過ぎ」
「身体が鈍りそうで嫌なんだよ、じっとしてるの」
今回も2日寝込んでいただけらしいし、まだそんなに鈍ってはいないんだろうが。
動かないのが性に合わないというよりは、身体が鈍っていくのが許容できないと言うべきか。
「それでもだめなものはだめだよ。……普段休めって言っても、多くて1日くらいしか休まないのが原因なんだからね」
「動ける内に動かなきゃな」
「……今は良いかもだけど、その内壊れるよ本当に」
……ふむ。
それは困るがなぁ。
「……ま、入院してる間は大人しくさせてもらうさ……出来る限り」
「出来る限りじゃなくて絶対安静だってば」
「善処しよう」
「しない人の発言じゃんそれ」
「失礼な、最善を尽くすっていう良い意味の言葉だぜ」
「意味と用法は必ずしも一緒じゃないからね、わざと言ってるよね」
バレたか、まぁほんとに善処するよ、本当に。