どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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ヨルノジュウニン

「ん……んっ」

 

「……」

 

 

 日が落ちきった暗い夜。

 月明かりだけが頼りとなる冷たい病室にて、男に被さる女の影が1つ。

 

 

「……おぉ、何やってんだ峰」

 

「……」

 

 

 今更気付いたし俺が言えたことではないんだが、もうちょっと常識に則って動こうぜ。

 面会時間はとうの昔に過ぎ去ってんぞ。

 

 

「えへ、やぁっと気付いたぁ?」

 

「やっととか言うんじゃねぇよ。目ぇ開けた瞬間、お前が映る俺の気持ちも考慮してくれ」

 

 

 馬乗りになられてやっと気付くってどんだけ鈍ってんだか。

 そんな疲れてる自覚はなかったんだが。

 

 

「んっ……ぁはは、お疲れだねぇヨリくん」

 

「話しながら擦り付けんなってか服着ろ俺から降り……ろ?」

 

 

 よく見なくてもこいつ下着姿じゃねぇか何やってん……。

 いや、何やってんだぁっ!?

 

 

「……」

 

「えー無反応ぉ? 傷付くなぁ」

 

「うっせぇ」

 

 

 ロリ巨乳とかいう庇護欲掻き立てる癖に女の要素の主張が激しい容姿の奴の下着姿は、何歳になろうが刺激が強い光景なんだろうがね。

 生憎、俺は特殊なんだ。あんまし効果ねぇぞ。

 

 

「犯罪臭すげぇからさっさと服着ろ」

 

「ん〜、だーめ」

 

「だったら力づくで……」

 

「動けないよぉ?」

 

 

 ……。

 手足が動かん。

 麻痺系の薬を盛られたか。

 

 

「ねぇ、ヨリくん」

 

 

 動けないのをいいことに、峰がこれでもかと囁いてくる。

 

 

「……ヤる?」

 

「んなわけねぇだろ、気でも触れたか?」

 

「今なら本番だよぉ?」

 

「これ以上は本気で止めとけよ?」

 

 

 冗談抜きで怒られる。

 やーめろやめろブラに手をかけるな!

 看護師その他に見つかったら俺が死ぬんだわ、洒落にならん。

 

 

「ざーんねん」

 

「いつにも増してフワッとしてんなお前な……で? 今日は何の用事だ」

 

 

 俺の印象にはなるが、最近の峰は情緒がおかしい気がする。

 恨みの対象を殺そうとするのはいい、表面上の付き合いとして協力を仰がれるのもまぁあり得るだろう。

 しかしなぁ。

 

 

「……」

 

「何だよ」

 

「ヨリくんはかっこいいなぁって?」

 

「疑問系じゃねぇか」

 

 

 何なんだ本当に。

 

 

「1週間後」

 

「……」

 

「1週間後にアリアがイギリスに帰っちゃうんだぁ、知ってた?」

 

「残念ながら、そりゃ初耳だな」

 

「あははっ! そっかぁ、流石のあいつもトラウマってとこかなぁ」

 

 

 いい気味かも、と呟く峰。

 ……まぁ、変な気の使われ方してるんだろうなってのは薄々察してたが、面会に来ても一言二言しか喋らないしあいつ。

 あのアリアがだぞ?

 

 

「1週間の間に何するかはお任せしちゃうケド、1週間後は空けといてね?」

 

「そりゃ、大胆なデートのお誘いだな?」

 

「そりゃあもう、ね?」

 

「もう否定もしないんだな、『武偵殺し』」

 

「する理由もないもーん。それにそれに……」

 

 

Je t'aime a croquer(食べちゃいたいくらい好き)

 

 

「そんな相手なんだもん。理子のありのままを、そして大胆に行かなきゃだよね?」

 

「……」

 

 

 こんなとこで原作シーン出してくれんなよってのは置いといて。

 

 

「場所は?」

 

「それは勿論、飛行機の中」

 

「俺乗れねぇけど」

 

「ヨリくんなら何とかできるよねぇ」

 

「……なぁ、峰」

 

「なぁに?」

 

「お前は、俺に何を求めてんだ」

 

 

 明らかただの復讐対象への対応じゃねぇだろこれは。

 何か別の思惑がある、と考えるのが妥当な筈だ。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 黙り込んだ峰と俺の視線がぶつかる。

 ……こいつの目には、俺がどう見えてんだ?

 

 

「やっぱり欲しいなぁ……」

 

「は?」

 

「何でもなーい、じゃあそう言うことだから、ばいばーい」

 

「あ、おいこら待てっ……っう……!」

 

 

 傷がっ……くっそ、ようやく身体が動くってのに!

 とか考えてるうちに、峰の奴は夜の闇に消え去ってしまったらしい、逃げ足はええ。

 

 

「はぁ……」

 

 

 俺の周りにはめんどくさいのが多過ぎる、俺のってか武偵校。

 中空知とか平賀はマシだが、十分面倒な部類で。

 コミュニケーションに難があるのと、ぼったくり幼女だし。

 

 

「Sランクは言うまでもねぇ」

 

 

 アリアに修行バカにロボットレキに遠山キンジだ、錚々たるメンツである。

 

 

「そんなことより、とりあえずはアリアか」

 

 

 帰ろうってアリア自身の選択に俺が異を唱えるのは、あんまり良いことじゃないんだが。

 流れを変えるにしてもアリアには日本にいてもらわなきゃそもそもの問題だ、できる限りのことはしよう。

 

 

「そもそも、帰るってのに別れの一言もないのは寂し過ぎるだろうよ」

 

 

 

 

 

「いねぇな」

 

 

 俺は人を探すと絶対に会えない呪いにでもかかっているのだろうか。

 

 

「……ふむ」

 

 

 峰のお誘いの日から2日、無事退院できた俺はアリアを探していた。

 メールしても返ってこないし探すしかもう方法ねぇんだよな、携帯はどうしたんだあいつ。

 

 

「とりあえず街の方……か?」

 

 

 学校にはいなかった。

 おあつらえ向きな力を持っているわけでもなし、しらみ潰しに足を使うしかない。

 

 

「さっさと見つけて、話をする」

 

 

 それで原作の流れに戻せりゃ万々歳。

 ……できなかったら?

 

 

「結局その時考えるしかない、か」

 

 

 ……原作の流れにするのに必要な主人公がフェードアウトしそうなのに、原作の流れにするってもう前提が崩れてるだろって?

 お黙ろうか、そこは言っちゃいけない。

 

 ギリギリ、ほんっとにギリギリのラインで遠山は関わってるんだ。

 今はまだ。

 

 

「霧崎には遠山の方を頼んでる、とりあえずはアリアだ」

 

 

 今回ばっかりは俺だけじゃ回らないんでな。

 霧崎を遠山に、ってなると星伽が怖いがまだ合宿中の筈。

 

 

「ぼちぼち探すかね」

 

 

 さしづめ俺が自分のせいで怪我してしまった、足を引っ張ってしまったとかその辺りで思い詰めてんだろうが。

 気に病みすぎだ、俺が勝手に守ってんだよあの時は。

 

 

「自意識過剰だってアリアに伝えねぇとなぁ?」

 

 

 アリアの問題はちょいとばかしコミュニケーションに難があるところ。

 そこが遺憾無く発揮されていて俺は困りもんだよ本当に。

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