どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

26 / 30
地雷処理

「よぉ」

 

「……」

 

 

 アリア見っけ。

 意外と手こずったぞこの野郎、大丈夫かよ顔真っ青じゃねぇか。

 

 

「……おい、大丈夫か?」

 

「……ヨリト?」

 

「おう、俺だが」

 

「……」

 

 

 反応も鈍い、こりゃあ重症だな。

 さっさと元気付けたいところだが。

 

 

「丁度いいわ、一緒に来て」

 

「おー……どこに?」

 

「来ればわかるわ」

 

 

 ……ん?

 

 

「いや、俺お前に用があっただけなんだが」

 

「いいから、来て」

 

「……あいよ」

 

 

 ちょっと待ていあかんこれ。

 

 

「……あいつらはいいのか?」

 

 

 俺が目配せした先にいるのは……よぉく見慣れた白いあいつと昼行灯、何やってんだあんなとこで。

 あ、白いのと目が合った。

 

 

「……」

 

 

 なんか言いたげな複雑な表情してるけど無視しよう。

 俺だってこんな間の悪い時とは思っちゃいねーんだよなぁっ。

 まあ俺が行くとしても警察署の面会は3人までいけた筈……。

 

 

「……いいわ、どうせ面会できるのは2人までだから」

 

「え"っ」

 

「……何よ」

 

「いや1組3人じゃなかったか? 俺の知ってる面会だと、だが」

 

「事情があるの、特例よ」

 

 

 あらやだ本当に原作壊しちゃう。

 ……じゃなくってだなっ!?

 なんだよその設定聞いたことねーぞっ!?

 

 

「だったら遠山連れてけよ」

 

「っ……何で、かしら」

 

「俺よか適任だと思うから、でいいか?」

 

 

 それとなく誘導する。

 このまま俺が行ったら遠山とアリアがお互いの痛みを知らないまま、共有しないままで終わっちまう、それだけはダメだ。

 

 

「……いやよ」

 

「そりゃまた何で」

 

「あんたがいい」

 

「……」

 

 

 俺そんないいとこ見せてねぇよな、多分。

 任務受けたらズタボロになる奴のどこがいいんだ、頼りないだろ。

 

 

「察するにアリアの事情的な何かなんだろうが、それだったら余計俺みたいなのより、確実に強い遠山の方が……」

 

「そうじゃないわよっ!」

 

「……」

 

 

 荒い声で遮るアリア。

 その表情は真剣そのもの、だなぁ。

 

 

「あいつは強い、多分本気だったらあたしより強いと思ってるわ」

 

「……だったら尚更」

 

「それでも、いざという時に本気を出さない奴は信用できない」

 

「……」

 

「こればっかりはあいつを、あいつがちゃんとやるって思い込んで作戦に無理矢理組み込んだあたしの責任よ」

 

 

「そうよね、あんな風に引っ張ったって誰も付いて来てくれないわよね」

 

「そう思い詰めるなっての」

 

 

 ……どうやら、先の一件は相当メンタルに響いた様子。

 思えばアリアって守られはするけどそれに付随した他者の犠牲とかはあんまり経験してないんだっけ、覚えてねぇや。

 まああんまり無さそうではある、アリア補正のかかった遠山強いし。

 

 

「ヨリト、あんた以外はね」

 

「俺は逆らう理由がなかっただけだよ、格上のお前から技術を盗めるだけ盗むつもりだったしな」

 

「それでいいわ、ちゃんと一緒にいてくれるもの」

 

 

 なんかやべー方向に舵切ってない? 大丈夫かこれ?

 

 

「あたしのことを知ってもらうなら、あんたがいい」

 

「……そうかい」

 

 

 こりゃダメか?

 こうなったアリアみたいなタイプの奴は頑固だし。

 

 

「……一応補足しとくが、間宮だってお前に並ぼうと頑張ってるからな」

 

「……そうね、あの子もあの子で頑張ってるわね」

 

「?」

 

 

 何か深みのある言い方だな?

 あー……そういや間宮の家族も入院してたっけな、見舞いには行かなかったんだが。

 間宮その他はともかく、その家族からしたら俺赤の他人だって考えたが、間宮には悪いことしたかねぇ。

 

 

「その割には帰る算段だったらしいじゃねぇか、ロンドンに」

 

「知ってたのね」

 

「耳が早い友人がいるって言ったろ」

 

 

 あいつの耳は早いなんてもんじゃないが。

 ……どうすっかなぁほんと。

 

 

「あんたはあたしに付いて来てくれる、でもそれはあんたにとっての茨の道だもの」

 

「あたしは結局どこまで行っても独奏曲(アリア)なのよ。付いて来てくれるパートナーすら傷付けてしまう」

 

 

「だからこれからは一人で戦うって決めたのよ」

 

「だが……」

 

 

 遠山なら、と言いかけて。

 確かに俺より強いし、アリアに対して本気になればそれだけで俺なんかが霞むくらい魅力的な『パートナー』になる筈だ。

 

 だがこの世界は、遠山側の絶対的な想い人(パートナー)が既にいる。

 ラッキーでヒステリアになることはあっても、それ以上にはなり難いだろう。

 ……やり切れねぇなぁくそったれ。

 

 

「つまり、全部俺の実力不足ってことだろ。お前が悩むことじゃねぇよ」

 

 

 この世界の厄介なところは。

 やっぱり主人公のメインヒロインがアリアじゃなくて星伽であると言うところだろう。

 

 アリアだったら、それを巡る動乱に次々と関わっていかなきゃならんからな、世界規模で。

 俺や霧崎が問題視しているのはその辺りが主。

 

 しかし星伽だと……こう言っちゃ悪いが基本日本という国から出て行かないだろう。

 アリアはホームズの元に行く、そうなればその後の動乱なんて片付いてしまうのではないか?

 まあ、その他の遠山が色んな意味で救うであろうサブヒロイン的な面々や人々はほぼ素通りされるだろうが。

 

 ……全く知らないなら無視したんだがなぁ……知ってる以上無視したら後味悪いんだよなぁ、なあ霧崎。

 

 

「……」

 

 

 そうだけどさっ! みたいな目でこっちを見てやがる。

 いやーほんとにどうしようか、このままだと俺がすげ替わる展開になった挙げ句中途半端に死ぬ未来が待ってるぞ。

 

 弱さってのは罪だよほんと、俺らに限ってはだが。

 

 

「着いたわ、ここよ」

 

「……面会ってなら、やっぱりここだよな」

 

 

 それか裁判所とかになるかね。

 まあそこはどうでもいい、これをどう乗り切るかだ。

 

 

「ん……ちょっと待っててくれ、電話だ」

 

「早くしてよね、時間あんまりないから」

 

「あいよ」

 

 

 その場から離れて、携帯を確認する。

 ……まあ、ですよねって感じ。

 

 

「よ、霧崎」

 

『よ、じゃないよイッチぃっ!? なーに人が頑張って元通りにしようとした流れをぶっ壊してくれちゃってるのさぁっ!!』

 

「うおっ声でけぇって」

 

 

 耳無くなるぞ、俺の。

 あと周りに聞かれたら意味不明過ぎてダメだぞその内容、それくらい焦ってるってことなんだろうが。

 

 

「悪かったって、いやもう会ってるもんだと勝手に思っててな」

 

『に、してもだよほんっと……イッチはあれ? 神崎さんのメンタルケア的な何か?』

 

「流石霧崎、その通りだぜ」

 

『褒めても許さないからね。全くこの全自動曇らせ製造機は……そんなんだから主人公ポジに嵌りそうになるんだよ』

 

「おい心は硝子だぞこら。……そう言うお前だって意味不明の超能力が生えそうになってんじゃねぇか、そっちの方が主人公っぽいぞ」

 

『愛用の枕を切り裂く主人公なんてこっちから願い下げだよっ!』

 

「だぁからどんだけあの枕気に入ってたんだよお前はっ!」

 

 

 あれか? 違う枕じゃ寝れないタイプだな?

 あれもここまで拗らせると重症もんだな。

 

 

『……とにかく、今からそっちに遠山くん送るから、3人で面会でも……』

 

「アリアによると面会は2人までらしいぞ」

 

『は?』

 

「ついでに、あいつは俺のことをご指名らしい」

 

『……???』

 

 

 携帯の向こうの顔は見れないが、おそらくめちゃくちゃ俺の予想した顔してるんだろうな。

 俺もそんなシステムだとは思ってなかったんだから当然だろう。

 

 

『とりあえずイッチは後で殴るとして……』

 

「何で殴られるんだよ」

 

『理由はもちろんわかってるよね? わざと聞いてるよね?』

 

「そりゃあな」

 

『このイッチめ……!』

 

 

 いや、それ以上に遠山のことを拒絶してる感があってだな。

 なんかめちゃくちゃ険悪になる補正でもかかってんのかってくらい、何故だ。

 

 

『そりゃあまあ……あれじゃない?』

 

「どれだよ」

 

『げんさ……元ネタとここの、被害者の違い』

 

「と言うと?」

 

『あっちじゃ現時点での主な被害者はアリアだよね』

 

「おう」

 

『だから遠山くんがヘマしたって失望するとか過信した自己責任とかくらいで済むんだと思うけどね』

 

 

『神崎さんってわがままだけど、その分己に対してもストイックで割り切るタイプだし』

 

「確かにな」

 

 

 あの性格ばかり印象に残るが、それに裏打ちされた個としての能力はちゃんと持ち合わせてるんだよな。

 まあ原作で言うと相手が悪過ぎて妙に活躍できてない感じしかないが。

 ちゃんと強いんだぞあいつ。

 

 

『でも今回って、遠山くんがヘマしたことで防げたかもしれない他者の犠牲が出たってことになるじゃん?』

 

「……俺か」

 

『そ。即席で作ったとは言えSランクばかりの精鋭揃い、独断専行が目立つとは言えまあ荒くれ者な武偵としての範囲内かな』

 

 

『あんまり強襲科(アサルト)の事情はわかんないけどさ』

 

「否定はせん」

 

 

 実力がある奴って現場判断で解決しがちなんだよなぁ強襲科……。

 作戦考えてもアクシデントですぐおじゃん、って事情はあるがやっぱり危ねえよあの考え。

 

 

『そんな中で、Sランク(イッチ)が瀕死の重傷を負った』

 

「……俺が弱いからだろ」

 

『イッチがどう思うかなんて関係ないでしょ。メインは神崎さんと遠山くんだよ』

 

「……あー……」

 

 

 なるほど、何となく合点がいった。

 

 

「つまりは……」

 

『自分の実力不足・判断の過ちによる自分の怒り、そして最後まで実力を出さなかった遠山くんへの不満……ってところかな? 割合は8:2くらい』

 

 

 険悪なのはそれが理由と。

 ……俺のせいじゃねぇか?

 

 

『良くも悪くも、イッチが人の心に影響力あり過ぎたのが遠因ではあるかもね』

 

「……どうにかできるかねぇ」

 

『できるか否か、じゃなくてしなきゃなんだよ。私達側の不足分が大き過ぎるから』

 

 

『……まあ、今回は諦めて面会行って来たら?』

 

「しかしそれだとな」

 

『遠山くん側は一応話そうって気にはなってくれてるからさ、面会の後にでも神崎さんを連れて来て話をしよう』

 

「それが落とし所か」

 

『ひとまずは、ね』

 

 

『それからのことはまた、話し合って擦り合わせるしかないと思う』

 

「まぁ、そうだよなぁ」

 

『むしろこれくらいが私達っぽいかもね?』

 

「行き当たりばったりってか?」

 

『そうでしょ?』

 

「間違いないな」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。