どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!? 作:銀の弾丸
「3分とはまた、えらく長い時間を貰ってるじゃねぇか」
「……」
「んー……」
気まずいなんてもんじゃない。
アリアはだんまりだし、周りの警察は尋常じゃないくらいの圧を放っている。
「……ヨリト」
「おう」
「あんたは、これからもあたしに着いて来てくれる?」
「そりゃ、イギリスにってことかい」
また難しい判断をさせる。
原作序盤は大体日本で起こるし、それに関して霧崎との連携も取りにくくなる。
しかしほんとに帰るとなると……。
「こっちでも良い」
「ん?」
「あんたが来てくれるなら」
「えらく受身な判断をする、らしくないぜアリア」
おかげで調子が狂いまくりだよ。
原作ならまだまだ強気だったろうからな、全然考えられん。
「あたしらしくないってのはわかってる。でも……いや、これは後で話すわ」
「今は、面会を優先しましょう」
「誰と会おうってんだ?」
「ママよ」
……何で俺が会うことになってんだろうかねぇ。
思わず天を見上げてしまいそうだ、そんな暇ないけど。
そんなアホなことを考えつつも、面会室の中へと足を踏み入れる。
そこにいたのは
「あら、アリア。その人は彼氏さん?」
「違うわママ、パートナー候補よ」
「まあ」
さらっととんでもなく大切なこと言われなかったか?
「……石川頼人です。アリアとは武偵のチーム組んでます」
「 石川」
「?」
「いえ、何でもないわ。私は神崎かなえ、アリアの母です……ごめんなさいね石川君、アリアが沢山迷惑をかけたみたいで」
「いえ、そんなことは」
「その傷、まだ治り切ってないんでしょう?」
「っ、そうなのヨリト!?」
「いやもうほとんど……ってかそんなことより面会だろ面会」
待て待てなんでバレたんだ、霧崎を誤魔化せるだけの実績はあったんだが!
「……もうっ! 後できっちり聞き出すからね!」
「ママ、今ヨリトと一緒に『武偵殺し』を追ってるの」
「もう三件目になるわ、奴は必ずシッポを出す。だからあたしは予定通り奴を捕まえる」
「そうやって奴の件だけでも無罪を証明すれば、ママの懲役864年が一気に742年まで減刑される! そして 」
「 他の、ママをスケープゴートにした連中を全員ここにぶち込んでやるッ!」
「アリア……」
神崎さんがこちらを見やる。
「あなたの才能は遺伝性のもの、でも……よくない面も遺伝してしまっているのよ」
「プライドが高くて子供っぽいところ、だからパートナーが必要なの」
「……ヨリトがいるわ。あたしが早くても着いて来てくれたヨリトが」
「アリア」
「パートナーは、都合のいい道具ではないわ」
「え……?」
「理解してくれるだけじゃダメ。あなたも理解してあげないと」
「ぁ……」
「ふふ、人生はゆっくり歩みなさい。早く走る子は転ぶものよ」
……あっという間に諭したな、アリアを。
俺のいる意味。
「石川君」
「はい」
「アリアのこと、よろしく頼むわね」
「……俺のできる限りは」
「十分よ、ありがとう」
そう微笑む神崎さん。
……調子が狂う、初めて出会うタイプだこの人。
「ご両親によく似てる、いい子に育ったのね」
「 はっ?」
何て?
「一度だけお会いしたことがあるの、あなたのご両親に」
「お話ししたのは奥さんだけだったけれど……」
「俺の両親を……」
「知って、いるのか」
「……」
「大丈夫?」
「ん、ああ……いや、まぁ大丈夫だ、うん」
予想外の言葉に面食らっただけだ。
……しっかし、良いところで切られたからなぁ、どうにも消化不良と言ったところか。
「割り切ったって、思ってたんだけどなぁ」
「……それって」
「ああ、俺の両親だよ。俺が物心つく前に死んだって伝えられてんだ」
幼い頃から苗字しか知らず、最近になってようやく名前がわかったかもしれない人達。
「意外と動揺してんだぜ、これでも」
「ヨリト……」
「……ダメだな、俺は弱いんだ。こんなことで揺らいでちゃ 」
「ヨリトッ!」
「ん、どうした」
「どうしたもこうしたもないわよっ! あんたはなんでそこまで!」
「どうして、そこまで
捨ててるつもりはないが。
まあ無理ばっかりだしそう見えるってもんか?
「……ただ、負けたくないんだ」
「何に」
「俺を取り巻く全てに」
こうなってから、いっつもそうだ。
両親はいない、爺さん達変な集団の下で碌でもない訓練をさせられる。
主人公の未来は変わってる、俺以外の何かによって。
ふざけんな、と。
全部、全部跳ね除けてやる、ああ、俺の手前勝手さ。
「俺は、理不尽なんぞに俺の運命を委ねるつもりはないんだ」
「お前もそうだろ、アリア」
「……それはっ」
「だが、俺には足りんものが多過ぎる、だから使えるものは使うだけってな?」
「捨ててるんじゃないよ、だからな」
「それじゃあ、いつか死ぬかもしれないじゃない!」
「死ぬつもりはねえっての」
「あんたにその気が無くても、そうなるって言ってんの! 無茶が多過ぎる!」
「あたしなんかに着いて来たのもそう! あんたは断れば良かったのっ、どれだけあたしが強引だって、あんたは 」
「卑下すんな、お前はしっかりしてる」
俺と同い年とは思えんくらいのすごい結果残してんだ、武偵としてな。
「あたしが悪いのよ!? ……焦ってたって強引に、あんな……!」
「俺は強引に誘われたって程でもないだろ、俺も二つ返事で了承した覚えがある」
「その前!」
あれは……まぁ、うん。
良い経験だったよ、戦闘。
「しっかりなんてしてない、自分のことで手一杯で、あんたを使い潰しかけるような弱い奴なのよ……!」
「そうよ、こんな私じゃ、パートナーなんてむ 」
「ストップ」
「むぐっ!?」
それ以上はまずいと、アリアの口を手で塞ぐ。
「むご……ぷはっ! な、何すんのよっ!」
「無理、疲れた、面倒臭いは可能性を押し留めるよくない言葉、なんだろ」
「それ……」
「ああ、お前の言葉だ。良い言葉だって個人的には思ってるぜ」
可能性を信じてるのは嫌いじゃないからな。
「お前は母親の864年なんて途方もない罪の無罪を証明したい、俺は俺で……そうだな」
原作に軌道修正したいとか言えん。
どう言ったものか。
「……乗りかかった船に乗じて強くなりたいってとこか?」
「何よそれ、それで死にかけてるのに……馬鹿みたいじゃない」
「お互い様だろ、馬鹿なのは」
「……そう、ね」
お、なんか色々呆れて諦めた顔してるな。
「ヨリト、今までごめん」
「唐突だな」
「無理をさせてたのは事実だもの」
「そして、それを承知の上で、あたしとおんなじ馬鹿に頼むわ」
「お願い、あたしのママを助ける為に、一緒に戦って」
「ああ、同じ馬鹿のよしみでちゃんと遂行してやるよ」
「……ありがとっ!」
……ん?
あれなんかまずいか?
……考えが纏まんねぇな、後で霧崎と相談するか。
いしかわは こんらん している!