どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!? 作:銀の弾丸
「うは〜……あれすっごーい」
彼を初めて『この世界の
「Sランクのやばい人だった覚えがあるんだけど……」
一石マサト、将来Rランクにすら挑む化け物の一人。
その行動力の高さは縁もゆかりもない私すら耳にするほどだからね。
しかし今目の前に広がる光景からは、実力の高さを感じこそすれ、圧倒的かと言われるとそうでもない様に感じてしまう。
「対してあっち……んー、誰だろう」
決して余裕な訳じゃないのは明白だ。
現に今も、苦しそうに苦しそうに、ボロボロになりながらも一石くんを追い詰めている。
……正直、ああいうのはとてもかっこいいよね。
「でもそれくらいだなぁ」
おかしい、緋アリ転生する前散々読んだ筈。
あれでモブなのかな? それとも私の死後に登場予定だったか。
まだまだ続きそうだったし。
「流石の一石くんでもまだまだ発展途上だった……とか?」
あり得なくはないと思う。
それだったらあのAランクの人が押している理由にもなる、けど。
「……もしかしたら私と、おんなじだったり……」
……。
なーんてね、脳内掲示板はそんなに使ってないけど、知る限りじゃ彼の様な境遇の語り手はいなかった。
「まあ、ROM専仲間だったら当てにならないんだけど」
そもそも掲示板のチャンネル一緒? そもそもこれどういう基準で分けられてるの?
うん、疑問が尽きない転生得点だね。
「London Bridge is……」
……止ーめた。
歌う気分じゃないかも。
「誰だか知らないけど、この学校で不用意に血を流し過ぎちゃダメだよ」
転生者じゃなくても、あの根性が例のアイツに受け継がれる可能性とか嫌だしね。
今夜こっそり片付けちゃおうかな?
「うぇっほんとに同類だった……」
しかも巻き込まれたし! 何でぇっ!?
……今日ほど脳内掲示板を恨んだ日はないかもしれない。
「しっかし、彼かぁ」
話の流れ的に、今話題の彼だろうことはわかった。
気にしてなくてもすっごい噂聞くからね。
……あれ、名前誰だったっけ?
そう言えばあの時も今現在も、確認した覚えがない。
「あの日以来怪我してないみたいだし」
そこは良かった。
けど、これからはそうは行かないのかもしれない。
「……やるしかない、のかぁ」
この後彼と、イッチと集まる予定になっている。
まあ、参加しなきゃならないのはそう、その点ではイッチも被害者だ。
だって知らない間にハーレム主人公が既成カップルになってるんだもん。
こんなの探偵でも驚きの事実でしょ……あれ、予測済みかも。
「うあー……私の目標が……」
言ってても仕方がない、とりあえず集まろう。
「イッ……石川くん、とどういう関係なのか?」
「そうそう!」
「霧崎さんの担当じゃん? しかもすっごく仲良さそうだし気になっちゃって!」
原作修正作戦(今命名)を開始して3ヶ月が経った。
……彼の生傷が絶えなくなって3ヶ月、でもある。
「んー……特に? 親しい友達的な、叱る看護師と悪びれない患者みたいな関係だよ」
「ええー!?」
「うっそだぁ、本当のことを言ってよ〜」
「いや、本当のことだからね」
何勘違いしているのだろうか。
……まあここは血生臭い武偵校、とは言え彼女たちは華の女子高校生でもある、恋愛には敏感なお年頃だよね。
「今の石川くん、そういうのに構う余裕はないだろうからね、私が邪魔するわけには行かないでしょ?」
「私もその気はないし……だから、そういう事実は一切ありません」
事実を当たり障りのないレベルで伝える。
実際、今恋愛とかにうつつを抜かす余裕はお互いない。
転生者だからか余裕はあるし?
「「……」」
「ん、どうしたの?」
「イヴっちから家で帰りを待つ圧倒的強者妻感を感じる」
「こっこれがっ、持つ者の余裕……!」
「こらこら〜?」
峰さんの互換みたいな性格してるんだよねこの子たち。
何が言いたいのかというと、こういう時の対処に困る。
……そんなことしてる場合じゃないんだから。
「そんな……」
それから結構な日数が過ぎて、イッチはSになった。
……なのに。
「神崎さんとはまだ、ここまで差があるの……!?」
作戦勝ちだったと言っても、一石くんにすら勝ち星を挙げたんだから、多少喰らい付けて然るべしだと思っていた。
ともすれば善戦できるんじゃないかって、楽観視してた。
「……違うっ」
楽観視? 私が彼のことを?
……違う、ふざけるな。
彼は文字通り血反吐を吐いてSランクになったんだ、それを私は見てきたんだよ!?
なのに、何でこんな……。
「……落ち着け、私がどうこうしたってどうにもならない、足手纏いなんだから」
戦闘能力が足りないBランクの今の私じゃあ、あの場所で横に並び立てない。
だからこそ、知恵を回すんだ。
だから、私の中のどうしようもないモヤモヤを、ぐちゃぐちゃにして押し潰せ……!
そんな風に思っていると、とある人物たちが目に付いた。
「わーボコボコにされてたなー……」
「先輩たち、かっこいい……!」
「あれって」
間宮、あかり。
緋弾のアリア
記憶の中の人物より多少まだ幼さがあるけど、間違いない。
それで見つめる先は当然神崎さん……ん、先輩たち?
あれ、ちょっとそれは……。
「……まあ、彼なら大丈夫かな。うん、知ーらないっ!」
外伝はそこまで本編に影響を与えない筈……それに彼女が戦闘スタイルを学ぶとしたら、背格好的に神崎さん一択だから。
悲報、お気に入りの枕が弾け飛んだ。
いやなんでっ!?
「頭痛いから早めに寝ちゃおうと思ってたのに……」
医者の不養生とは言うけど、私はそこに当てはまっちゃダメ。
身体を張らない奴が倒れてたら、身体を張る人が倒れられなくなる。
「……枕どうしよう……」
さっきのことが衝撃的過ぎたのか、今は頭痛が気にならない。
しかしこれもしかして……。
「え、超能力?」
だとしたら今更過ぎる気がしなくもない。
だってこういうのって……いや、いい。
今には関係ない。
「これに関しては明日イッチに話して要相談かな、うん」
……いや、枕どうしよう……?
「イッチ……」
彼は今、意識不明の重体だ。
また怪我してる。
今度はAK、防ぎきれなかった弾が何発も貫通してた。
「……遅過ぎた、よね」
自分がまだそう言う役目ではないというのは、イッチとの話し合いで理解している。
でも、現状は明らかに、彼の負担が大き過ぎるのだ。
「謝ったらダメ」
話し合って、お互いの合意の上での、覚悟の上での現状だ。
謝ることは、許されない。
「……恨めしいなぁ」
超能力らしきものを持ってるのに活かせてない自分が。
他にも方法はあるのだけど、それは私たちの目的から大きく逸れた方法なんだよね、厳しいな。
「はぁ」
今一番問題なのは、イッチも私も、遺伝という名の……転生特典、才能を完璧に把握してなくて、活かしきれてないということだ。
「……」
石川五右衛門の子孫らしきイッチと……私は何なんだろうね。
霧ってことでジャック・ザ・リッパー? うーん想像が難しい。
「ああもう、頭痛い……」
なんか、私が軌道修正しようとしたらイッチがいた。
……ちょっと待って処理が追いつかないから。
「大丈夫か、えーっと……」
「霧崎だよ、遠山くん、あと大丈夫」
「……ちょっと用事思い出したから、電話してくるねっ!」
とか言って電話したらしたで、何やら致命的な所でやらかしていたらしい。
とりあえずもうなっちゃったことは仕方がないと結論付けてイッチを行かせたけど、流石に不味い気がする。
「……あ、ごめんね待たせちゃって」
「問題ない、でも……なんだってあいつらはこんな所に」
「んー、こんなとこにある用事なんて、一つじゃない?」
「……まさか」
流石遠山くん、頭の回転速いね。
「そう、面会……だよ、おそらく神崎さんのね」
……はぁ、情けなさ過ぎて頭痛くなってきた。