どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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失うは早く

「制圧任務ねぇ……」

 

 

 Sランクとなり、送られる任務の『言われることのない最大戦力としてのプレッシャー』に翻弄されつつもこなす日々。

 強いことは前提、って暗に言われてるの中々重いなこれ。

 

 

「死ねっ!」

 

「死にたかねぇよ、こんなとこで」

 

「うがっ!?」

 

 

 向けられた銃口と刃物をそれぞれ避けて逸らして弾きつつ。

 こっちの向けた銃口と、放たれた弾は確実に当てる。

 

 

「……こんな銃(もん)よく使ってんな遠山」

 

 

 中々に使い勝手が悪いというか、なんというか、デザートイーグルではないけれど。

 今俺が使っているのはLAR Grizzly MarkV、デザートイーグルと同じ.50AE弾を使用できるタイプのハンドガンだ、まあグリズリーで良いと思われる、もしくはウィンマグ?

 

 なんでそんなもん使ってる、と言われると霧崎のせいである。

 『Sランクになったんだし、主人公たちの領域の体験してみたら?』ということらしい、どう言うことだよ。

 まあ慣れるまで、ということなのだろうか。

 使いこなせたら心強い武器……だとは思う、持ち運びが容易だしな。

 

 

「と。……制圧終了か?」

 

 

 今日は比較的マシな方だったか、というか相手の練度がまちまちだ。

 なんというか、突出して面倒なのがいない。

 

 

「そうそうそんなのに遭遇してられないがな、そもそも」

 

 

 なんて。

 油断……とまでは行かな……いや、油断だな。

 まあ昨日も一昨日も、これより面倒なのを相手にした後だったってのもあるんだが。

 潜む刺客に気付けなかったらしい。

 

 

「……うおおおおっ!!」

 

「! やべっ」

 

「せめてお前だけでも   !

 

 

 なぜ叫ぶ、とも言ってられない状況になり、被弾もやむなしか、と思った次の瞬間。

 

 

     タァン!!!

 

 

 相手の銃口から、弾が放たれることはなかった。

 

 

「なぁっ!?」

 

「っ!」

 

 

 弾かれた。

 おそらく狙撃……なんて言ってる場合じゃない!

 

 

「動くなよ。動いたら撃つ」

 

「っ〜! クソっ、クソォっ!」

 

 

 膝から崩れ落ちる、相手。

 ……またとないチャンスを逃せば、そうもなるか。

 にしても、狙撃か。

 

 

「……今回の任務に、狙撃科(スナイプ)なんていたっけな」

 

 

 

 

 

「は、レキ?」

 

「ああ、彼女が不意に現れたんだよ、ほんとにいきなり」

 

 

 『風が言っていました』と、なんでやねん。

 ほんとにその言葉言ってるんだと思う反面、今何故ここでと思わなくもない。

 

 

「わかった、とにかくありがとな。あと任務お疲れ様」

 

「あ、ああ。そっちこそ、頼もしかったぜ」

 

 

 ……レキ、探さなきゃならんのだが。

 普段どこにいるんだあいつ、狙撃科でいいのか?

 

 

「ロボット・レキ、か」

 

 

 

 

 

 不思議と誰もいない冬の街、その目下。

 寒空の元、抱き合う男女が2人……と、男の方は泣いてるな。

 

 

「死んだか、遠山金一は」

 

「死んだね、あの正義の味方が」

 

 

 そう。

 『武偵殺し』の魔の手が、正義の味方の首元に届いたのだ。

 

 

 なんてな?

 

 

「主人公の関与しないところで進む話ってのは、やっぱ面倒臭いな」

 

「まあ、前日譚みたいなものだし?」

 

 

 被害者遺族もとい遠山キンジ、彼はつい先日、責任を押し付けられメディアの注目の的となる……のは、流石に避けたが。

 別に辛い目に遭わせたいわけじゃないんだよ、俺たち。

 しかし彼の兄の死亡、これに関しては原作を知っていてもどうにもならない以上素通りするしかなかった。

 

 

「俺たちが助けに行ったって、足手纏いになるだけで」

 

「そもそも助ける相手がいないからね、あれ」

 

 

 そういうことである。

 遠山金一が例の犯罪組織に加入する、というだけのための偽装工作(フェイク)、それが真相だ。

 

 

「そんなこと、遺族には関係ないんだけどね」

 

「残された側はたまったもんじゃないな」

 

 

 案件が案件なだけに、伝えるのも憚られるというのは死んだ側の事情だ。

 いろいろ割り切ってぶっちゃけるなら、それでも伝えて欲しいというのが残った側。

 

 

「とばっちりを受けるのは大抵こっち側だ、やるせがねぇよ」

 

「死んでないけどね、今回は」

 

「そう思わせてんなら違いがない」

 

「それはそう。……全く、どうしてああも関係ない他人ってのは介入しようとするんだろ」

 

「知らん、金になるからじゃないか?」

 

「世の中金かぁ」

 

「他人の不幸は金の味」

 

「ちょっとイラっとするからそれやめて」

 

「言ってて胸糞悪いわこんなん」

 

 

 スマホほど手軽にネットでどうこう言われるわけではないものの。

 あまり気分が良いものではない。

 

 

「よくスレ民してたねイッチ」

 

「そっくりそのままお前に返すぞスレ民。そういうのじゃなくて二次創作概念を眺めるタイプだったんだよ俺は」

 

「おー、おんなじだ。まあそれくらいが楽しいよね」

 

「だな」

 

 

 ……ああ、くそ、風が寒いな今日は。

 主人公を確認するためとは言え、屋上なんぞ来るべきじゃなかった。

 

 

「そろそろ行こうぜ。これ以上は野暮だろうし」

 

「そうだね」

 

 

 その場をひっそりと離れる。

 

 

「あ、そう言えば」

 

「?」

 

「レキさん、探してるんだっけ」

 

「あー……」

 

 

 この前、助けられた彼女。

 狙撃科に行ってもタイミング悪く不在だと言われ、Sランク2人が任務で一緒になることなんて滅多にないため出会う機会がなかった。

 

 

「礼を言わなきゃなんないんだが、運が悪くて会えてないんだよな」

 

「逆主人公補正、みたいな?」

 

「なんだそりゃ」

 

「女の子に出会うんじゃなくて全然出会えないってこと」

 

「随分と限定的な補正だな」

 

 

 そもそも主人公補正ってのは女の子に遭遇することでもないでしょうが。

 それにあっちも俺も忙しいんだよ。

 

 

「まあ長期任務とかに入ってたらそうそう会えないよね」

 

「そうでなくとも、狙撃科のSランクなんて引く手数多だろうしな」

 

「そうかも」

 

 

 狙撃は、状況は選ぶとは言え超遠距離から相手を無効化できたり、バックアップになれたりとできることが多い。

 彼女自体そう意欲的に趣味で動く訳でもないだろうしな、ワンチャンもう単位揃ってたりするんじゃないか、卒業まで。

 

 

「あと一石くんにも絡まれてるんだよね?」

 

「うげ、やめろやめろ思い出させるな」

 

「Sランクにモテモテだねー? ふふ」

 

「笑うな、いや嗤うな、ちくしょう」

 

 

 意欲的過ぎるあいつはよく俺に絡みに来て意見を求めてくる、なんで俺か、と言うと俺が作戦で負かしたからだそうな、なんであいつに勝ちに行こうとか考えたんだろうな当時の俺。

 

 

「男の子ってほんと負けず嫌いだよね」

 

「言ってろ。この学校の女子も負けてねぇよ、強襲科(アサルト)とか特にな」

 

「確かに。……どうなるんだろうねぇ、この先」

 

「ん?」

 

「本筋は筋書き通りに進んでるのに、細かいところが私たちのせいで歪んでるなーって」

 

「どうあっても、やることは変わんないぞ」

 

「そうなんだけどね? やっぱりそのせいで犠牲が出るんじゃないかとか考えると、ちょっと怖いよね」

 

「怖いけども、どうあれ最初に死ぬのは俺たちだろうよ。実力不相応だし。後のことなんて考えても辛さしかねぇさ」

 

「死者に影響するのは、死ぬ直前までの要素だからな」

 

 

 死後の云々は、残されたものたちの解釈でしかないんだからな。

 

 

「それが、怖いんだよ」

 

「なんか言ったか」

 

「なんにも。……寒いしさっさと行こ!」




メリークリスマスです。
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