どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!?   作:銀の弾丸

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"S"の衝突

 結局逃げれませんでしたぁっ!!!

 

 

「ルールは普通の模擬戦。どちらかが負けを認めるまで……でいいんだよな」

 

「ええ、問題ないわ」

 

 

 いやね、こっちも努力はしたんですよ、穏便な方で。

 神崎の実績からわかる通り、逃げの一手は極端に不利だ、99回の連続強襲(アサルト)で、しかも一発成功って字面以上にやばい功績だからな。

 でもまぁ口の方が達者というわけでもないんでね、なあなあで闘技場(コロッセオ)にいましたよ。

 悲しきかな。

 

 

「……」

 

「なによ。えらく不機嫌ね」

 

「別に。……開始の合図は?」

 

「それはうちがやったるわ、なんや面白いもん見られそうやからなぁ〜」

 

 

 げっ、蘭豹。

 

 

「……お願いします」

 

「不機嫌な理由、教えなさいよ」

 

「そこまで気になることかよ」

 

 

 何をそんなに気にかけてるのやら。

 んー、でもまあ理由なんて簡単でしょう。

 

 

「単に任務帰りで疲れてるってのが1つ、んで   

 

 

 静寂の中に、俺の声がよく響く。

 ……流石に野次馬の奴らも、S同士のガチ模擬戦となると静かになったりするのかね。

 遠山の兄の時は結構騒がしかった気がするが。

 

 

「模擬戦ってのが、あんまり好きじゃないだけだ」

 

 

 

「始めぇっ!!!」

 

 

 

 お互いに、銃を構える。

 正直、真っ当な近接拳銃戦(アル=カタ)じゃあ善戦すら怪しいというのが、今の俺の実力だろう。

 だがある一点、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、武偵同士の模擬戦なら尚更だ。

 

 

「っ!!!」

 

 

 神崎の発砲を避けつつも、当たれば御の字とこちらも撃ち返し続ける。

 

 

「あんた、自分で言ってるより全然動けてるじゃないのっ」

 

「そりゃありがとよっ!」

 

 

 そりゃあ、まあそこそこの実力でもなければ強襲科(アサルト)でSにはなれませんよと。

 とにかく隙を与えるな。

 

 

「ぐぬっ……!」

 

 

 とは言え、正確無比な弾幕を捌き切れるわけもなく。

 いくつかの凶弾が俺の身体に突き刺さる。

 

 

「……おらぁっ!!!」

 

 

 防弾制服様々だねぇ!

 死ななきゃ安いし模擬戦(これ)じゃ死なん!

 

 

「ってあんた正気っ!?」

 

「正気も正気っ! 俺は   

 

 

 俺が唯一威張れる長所にして、Sとしての実力の担保にならない欠点。

 

 

「我慢強さは、誰にも劣らねぇんだよっ!!!」

 

 

 附属中学の頃、足の骨が折れたまま犯人を追いかけたことがある。

 それより小さな子供の頃には、素足で延々と砂利道を走って周りを怖がらせたことだってある、血出てたし。

 俺自身も流石にやばいと思ったが、それが俺の長所。

 痛みへの耐性だ。

 

 

「っ!」

 

「まだまだっ!」

 

 

 どんな状況状態でも、身体に命令さえできるのなら動かせる力、と言ってもいい。

 

 ……撃ち続け、少しずつ近付いていく。

 俺の勝ち筋は2つ、銃で相手を戦闘不能にするか格闘で制圧するか。

 どちらも無謀だが体格差なら後者が正しい。

 しかしそれは   

 

 

「……ならっ!」

 

「ちぃっ……!」

 

 

 相手にも、神崎にも言えることだ。

 

 

「ぐお   !」

 

 

 体格差がある相手に、投げられる。

 ……そうだ、これがあるから勝ち目がないんだこんちくしょうめ。

 なんでもアリの格闘技(バーリ・トゥード)、聞き馴染みのある言葉ならばバリツか。

 

 

「あがっ、くそっ……!」

 

 

 抵抗しようと、もう遅い。

 関節技を、決められる。

 

 

「……俺の、負けか」

 

   そこまでやっ!」

 

 

 やはり、Sという場所は果てがない。

 

 

 

 

 

「流石ね、ヨリト」

 

「……こっぴどく負けたがな」

 

 

 一応、言い訳をしておくとするのならば。

 万全の状態の神崎に勝てる学生武偵の方が少ないだろう、と。

 

 

「いいえ、射撃だって正確だし、格闘戦も流石の一言だったわ」

 

「そのことごとくを負かされた上で言われても、なんだが」

 

「あたしだってあそこで関節技を決められなかったら危なかったわよ、何よりあの特攻は意表を突かれたし」

 

「……そりゃどーも」

 

 

 真正面から称賛されるとむず痒いものがある。

 

 

「っててて」

 

「大丈夫?」

 

「ああ、気にすんな。模擬戦で俺が俺を最大限活かした結果なんだ、お前が配慮すべき怪我じゃない」

 

 

 捨て身とあんまり変わらんからなあれ。

 

 

「……それが、模擬戦は嫌いって言った理由?」

 

「ん?」

 

「言ってたじゃない、模擬戦は嫌いだって」

 

「ああ」

 

 

 そういや聞かれたっけ。

 

 

「そうだ。普通の模擬戦ってのは、本物の戦闘の訓練であるべき……なんだろうが」

 

 

 お互いに殺せない戦いで、しかも武偵は頭を狙わないときた。

 

 

「死なないとわかってる戦いなんて、こんなもんだろ」

 

 

 俺みたいな特攻が勝ちの手段の1つになるようなバカにひたすら有利で、迎え撃つ側とて参考にはあまりならないときた。

 

 

「ふーん。……そういうものなのね、あんたには」

 

「そうさ。そういう持論でね」

 

 

 神崎はそっか、と納得したように頷いている。

 

 

「……あと、任務帰りに挑んでごめんなさい。あたしも色々と焦ってたわ」

 

「いや、任務帰りだからと言い訳にはできないってのは俺だって納得したさ。謝らなくていい」

 

「それでも公平(フェア)じゃなかったわ。貸し1つってことにさせて頂戴」

 

「しかしな」

 

「あーだこーだ言わないっ! あたしが受け取ってって言ったんだからあんたは受け取ればいいの!」

 

「……おうわかった。ありがとな」

 

 

 ……いかん違和感がすごいなこの神崎。

 喧嘩している場面ばかりが印象に残っているからだろうか、こうやって冷静に話されるとこれじゃない感がすごい。

 俺的にはありがたいけど。

 

 

「で、神崎」

 

「アリアでいいわよ」

 

「……じゃあアリア、なんで俺と模擬戦しに来たんだ。ただ戦いたかったなんてことじゃねぇんだろ」

 

「ええ、まぁね」

 

 

 まあ知ってるってのはそうなんだけど。

 模擬戦した理由まではほんと知らん、俺が不幸なだけ?

 

 

「あたしは今、優秀な人を集めてパーティを作ろうと思ってる」

 

 

「ヨリト、あんたもそこに入りなさい」

 

「……中々に強引なお誘いだな、そりゃあ」

 

「当然よ。あんたは……まあ、悩むまでもなく前衛(フロント)ね。あたしと一緒に前線を張りなさい」

 

「質問しても?」

 

「いいわよ」

 

「あの模擬戦が俺の実力を測るためってのは理解した。しかし優秀なのを集めて何がしたい?」

 

 

「ものにもよるだろうが、Sレベルでないとどうにもならない任務があるのか?」

 

「……そうね、あんたには話しておきましょうか」

 

 

「あたしが今追ってる犯人の1人は、『武偵殺し』よ」

 

「そいつ、犯人捕まんなかったか」

 

「それが誤認逮捕だからよ」

 

「なるほど」

 

 

 正直に言おう。

 事情知ってるから納得できるけど、何も知らない状況でポンとこれだけ言われても多分納得できない。

 いや、しない。

 が、まあ知ってるから納得できはする。

 

 

「となると、ヤマは相当大きいな。その口振りだと1人じゃなさそうだし」

 

「当たり。あんたは話が通じやすくていいわ、好きよ」

 

「……俺とて納得行ってないところは多々あるがね」

 

「なんか言った?」

 

「いいえ何も。パーティには誰か他にも誘ってんのか?」

 

「これからよ。次は狙撃科(スナイプ)のレキね」

 

「……いいコマをよく知ってらっしゃることで」

 

 

 この時点でかなり調べてるのはあっぱれという他ない。

 この行動力もSとしての要因の1つなのだろうか。

 

 

「パーティの件、俺は構わんのだが、少し考えさせてくれ」

 

「何よ、なんか都合が悪かったりするわけ?」

 

「いや、正直二つ返事で了承してもいいが……あんたのことをあまり知らんのでな、双剣双銃(カドラ)のアリア?」

 

「……あんたこそ、よく調べてるじゃない」

 

「耳が早い知り合いがいてな。Sランクの転入生ともなればすぐ、だ」

 

 

「まあ情報を精査する時間が欲しいってだけさ、構わないか?」

 

「ふーん。いいわ、また今度来るからその時に頂戴」

 

「おう」

 

 

 そう言い残し、部屋を出て行くアリア。

 ……ふう。

 まあ、霧崎やら峰やらに現状報告するだけなのだが。

 

 

「ヨリト」

 

「ん? なんだ」

 

「あんたのこと、気に入ったわ」

 

「……そりゃあ、どうもありがとう」

 

「どういたしまして。……それだけよ」

 

 

 ……あかん。

 これこのまま仲良くなると俺の立場が危うい気がする、それは流石に命がいくつあっても足りん……!

 

 

「どうにか、遠山が少なくとも協力してくれるようになってくれればいいんだが……」

 

 

 

 

 

「わーボコボコにされてたなー……」

 

「先輩たち、かっこいい……!」

 

「あれって」

 

 

「……まあ、彼なら大丈夫かな。うん、知ーらないっ!」

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