どう頑張っても主人公がフェードアウトしてしまうんだが!? 作:銀の弾丸
「んで、一体どういうことだよ。超能力か
「今までと違う感覚になったんだよね、ちょっと前」
「今までとって、曖昧だな」
「しょうがないじゃん今まで認知してなかったんだから」
「……とりあえず経緯を説明してくれ、意味がわからなさ過ぎる」
「周りから『雰囲気変わった」って言って避けられまくってた話になるけど、それでいい?」
「そうなのか?」
意外だなそりゃあ。
なんだかんだ人脈が広いイメージがあったんだが。
「そうなの。なんかよくわかんないんだけど、怖いやらなんやら〜って一時期めちゃくちゃ避けられてたんだよ私」
「いつの話だ」
「1週間前」
「……そんな変だったか?」
「そりゃあイッチは気付かないよ。任務に忙殺されてたあの時だし」
「は? ……ってああ、あの時かよ」
アリアと戦ったのが昨日の話になるのだが。
実はその3日前くらいまで長いだけの任務に注力してたんだよな、面倒だったなあれほんと。
「……あれ、まだ1週間経ってなかったんだな」
「うわ、真っ黒な発言こわーい」
「やかましい。任務はやれる時にやっとくもんだろ」
「その心意気は素直にすごいと思うけどさ、全く」
「それなのに今度は神崎さんと勝負してぼこぼこにされてたし……もしかしなくてもバカだよね、イッチって」
「根性だけが取り柄なもので」
「あ、それも気になる……のは一旦置いとくとして、私の話だよ私の」
すぐに話がそれちゃうなぁ、なんでだろとぼやいている。
「それでその時、条件はわからないんだけどね、その……」
「その?」
「……なんというか、うん。すごくなんでもできそうな感覚が湧き上がってきた時があった」
「万能感に包まれた、ねぇ」
「ほんとにちょっとだったんだけどね。でも結果は言った通り、なんか怖いって敬遠される数日間でしたっ」
「ご愁傷様」
「ほんとにねっ! 私が何したってのさー!」
本気で愚痴ってる辺り、どうやら本当に割と苦労したらしい。
しかし万能感ねぇ。
「ヒステリアみたいなものってなら、
「それが……」
そう言い淀んで、霧崎が取り出したのは……何かの残骸。
……残骸?
「これがどうかしたのか」
「これ、万能感に襲われるまで私の枕だったものだよ」
「は?」
「これ、元々、枕。あんだすたん?」
「あいどんとあんだすたん。……言われてみればなんか枕みたいな感じがしなくもないが、何したらこんなことになるんだよこれ」
霧崎が枕だと言った物体は、おそらくその一部なのだろうが……ぱっと見じゃわからないレベルで……なんだこれ、切り刻まれてるのか、それとも爆発したのか?
「抱いてただけだけど」
「……どんな怪力で?」
「万能感に襲われた時に、その前から抱いてたのっ! 私にそんな力ないからねっ!?」
「おうわかったから落ち着け」
そんな捲し立てて言うほどのことかよ。
しっかしただ抱いてただけ、ねぇ……いや、そうはならんやろ。
「本当に何したよこれ、よく見たら学校服と同じ防弾仕様じゃねえか」
「お気に入りの枕をわざわざこんなことにしたいと思うような人間に見える???」
「わかった、お前がその時のことを根に持ってるのはよくわかった」
落ち着け落ち着け。
枕が変わったら寝れないってのは共感できるが、今はそこじゃないだろう。
「こうなるってことは、何かしらに作用する特殊な力……短絡的に考えるなら、超能力があるって考えるのが妥当でしょ」
「……まあ、そうなるな」
「ということは、霧崎は複合型もしくは、親のいいとこを受け継いだ天然物の
「ややこしいね」
「間違いない」
「言っとくけど、私の親にこんな心当たりはないからね」
「じゃあ本物の異端児」
「忌み子扱いやめてよねー?」
「ま、要因なんてのはどうでもいい話か。重要なのはその能力のスイッチだろ」
「うん、また枕を切り刻むことになったら嫌だし」
「そこもだろうがそこじゃねえよ。一旦枕から離れろ」
どんだけ気に入ってたんだよその枕。
「そんなに気に入ってたんなら修復、試してみるか?」
「え、できるの?」
「一応俺は
「……うーん、じゃあ一応頼んでもいい?」
「言っといてだが、いいのか?」
「ダメで元々、代わりの枕は用意してあるし観賞用にでもするし」
「じゃ、今度その残骸の残り持って来てくれ。共犯割引ってことで安くはしとく」
「平賀さんの弟子だし信用できなさそうだなー?」
「ぼったくるほどの技術は、俺にはないな。努力はするが」
「そっか。……ありがとね」
「どういたしまして」
「にしてもこの先どうするか、だが」
あの密会から数日。
任務をこなしたり訓練したりで過ごしてはいるものの。
正直、先の見えなさに辟易している自分がいる。
「まだ三学期も中頃なんだがな」
レキに謎の介入をされ、アリアが戦いを挑んで来た。
その上で、遠山に加えて星伽が武偵を辞めようとしている。
うーん、頭痛い。
「できることをするしかない、がそれだけじゃ心許ないってのも事実じゃある」
「あなたは強いですよ、ヨリトさん」
「そう思えるんなら、こんなに困っちゃいないのさ」
突如として背後に響く、凛とした声。
俺は、この声を聞いたことはないが、知っている。
「なんだ、随分といきなりなタイミングで来たんだな。結構これでも探してたんだぞ、俺」
「この瞬間までは会うべきではないと」
「何の話だ」
「風の言葉です」
「……」
ああうん、よーく知ってる。
微妙な噛み合わなさとか、映像として見て聞いた声とか。
推しだもの、聞き覚えくらいあるわな。
「じゃあ、用件を聞いてもいいか? なあ 」
声のする方向……後ろに、振り向く。
やっぱり、な。
「 レキさんよ」
「……」
最後のピースは揃ったって?
残念ながら、終わったっていう達成感より、終わりが始まったっていう絶望感のが強いぜ、俺的には。
「まあまずは言わせてくれ。この前は助かった」
「あれがなきゃ、下手したら死んでたかもしれないからな」
「礼には及びません。風の言葉に従ったにすぎませんから」
「命令だろうが、俺が助けられたのはお前だぞ。素直に受け取ってくれよ」
「……」
ああうんわかってましたとも。
少なくともこの状態のレキに、こういう言葉はあまり響かなさそうだ。
「で、何の用事だよいきなり」
「……風の命令です」
「はい?」
「私とコンビを組んでください」
「……は? 今から?」
「はい」
……?
ッスー……はぁ。
……んんん???
「いやお前、アリアからパーティ誘われてるよな、俺もだが」
「はい」
「だったらそれでいいよな」
「だめです」
「なんで?」
「風の命令だからです」
「んー……いや、何で今? てかなんで俺だよ」
風が単純な武力を欲しがったのだとしても、俺じゃないだろう。
略奪を是とするウルスの一族が、星伽に怖気付くわけもないのだから、余計にわからん。
直前まで会うなって避けられてたみたいだし。
「 風は」
「?」
「風は、あなたを取り巻く凶風を懸念しています」
「凶風て」
意味不明だわ、俺の負けだこんちくしょう。
原作でも1番よくわからんのがレキのとこの神様だしなぁ……深く考えるだけ無駄なのかもしれん。
「……お前とコンビになった上で、アリアとパーティを組むのは?」
「……」
これ以上変に捻じ曲げられないとは思わないのだが、一応な。
「……構いません。
「要は、お前と無期限で任務に行けという話だと?」
……頷いた。
いやますますわからなくなって来たなこれ。
アリア、レキ、俺+遠山やその他でパーティを組むだけというのはダメで、レキと俺が組んだ上で、アリアたちとも組む、というのはオッケー。
何が違う、と言われると何らかの理由でパーティが分解してしまった時の手続きが変わってくるな。
前者の場合は、一旦全員個別の武偵になる。
後者の場合は、俺とレキはコンビだと言うのは変わらない。
まあ契約手続きとかはない以上、イメージというか、想像するものの違いなのだが、ごめんよくわからん。
……この通りあまり理解はしてないが、この差を懸念していると言うことでいいのだろうか。
「ヨリトさんの考えで間違いはありません」
「思考を読むなよ。全く……コンビを組んだら、何をしなきゃならないんだ俺は」
「特にありません」
「はぁ」
「私はヨリトさんの行く任務に着いて行きます」
「お前の任務は?」
「お互い、支障ない程度の単位は集まっている筈です」
「それはそうなんだがな」
バカみたいに任務行ってるからな、俺。
詳しい事情は知らんが、アリアが卒業までの単位を集めたと言っていたし、集まってはいる……と思いたいな、うん。
「あなたを守ることが、私の役目になります」
「いや言葉にされるとますます意味わっかんねぇな?」
どうすんのさこれ、収拾はもう俺にはつけられないが?
ヘルプミ霧崎。