異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!?   作:DENROK

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9話

 

 

 

 乾いた風が街道を吹き抜ける午後、スレイン法国領の小さな城郭都市“リュナス”に、三人の旅人が姿を見せた。

 道中の旅人にすら滅多に出会えない辺境の地。そんな場所へわざわざ足を運ぶ彼らを、城門の兵士たちは興味深そうに眺めている。

 

「失礼、司教様とはどの様な御方なのか教えて頂いても?」

 雄牛の角のような兜で顔を隠す全身鎧の女性――アルベドが使者に声をかけた。

 その後ろには、漆黒の鎧で全身を覆った戦士“モモンガ”と、パーカー以外は靴さえ身に着けていない少女“インラン”が控える。彼らの装いは辺境の旅人としては明らかに不釣り合いで、並の冒険者にしてはどこか異質な雰囲気を漂わせていた。

 

「司教レオクレス様のことに興味がおありのようですね」

 使者の男が鋭い目線を向けつつ、淡々とした口調で答える。三人が手にしている武具や荷物が、ただの流れ者にしては上等すぎるからだろう。

 

 モモンガは背中から大剣を少し引き出し、使者の前で弄んで見せた。

「……見ての通り、希少な素材を狙うハンターです。たまたまこちらへ立ち寄る機会がありまして」

 一瞬だけ覗く輝きに、使者の顔つきが変わる。成程──ただの“ならず者”でないなら、とりあえず話はできそうだ。

 兵たちが軽い手続きと確認をする頃には、彼らは城門をくぐり抜け、昼下がりの光を浴びて石造りの街へと足を踏み入れた。

 

 

 


 

 

 数刻後──

 リュナスの中心部、神殿のような白亜の建築物がそびえる敷地で、司教“レオクレス”が旅人の一行を出迎えていた。

 三人が街の入口で足止めをされていると、司教から面会の申し出があったのだ。珍しい素材を扱う旅人ならば、一度言葉を交わしておきたい――そんな体裁で呼び出されたに過ぎないが、司教の本音はまだ見えない。

 

「お待たせさせていたようで申し訳ない。この街はどうですかな?」

 神官はそう語った。その表情に何かを試すような薄い期待が混ざり合っている。

 アルベドは冷たい鎧の見た目に相応しく滔々と言葉を返す。

 

「お招きに感謝いたします。この街は独特の息吹を感じさせますね」

 当たり障りのない感想に司教は笑顔を深めた。

「それはよかった。皆で何とかやっていますからな」

 

 司教はアルベド以外にも興味を向けて手を向けた。話の流れとして順番が他のパーティメンバーに移行するのは自然だ。

「お二人もご紹介して頂けますかな。我々としても優秀な人間のことは知っておきたいのです」

 アルベドもその流れには逆らわず、残る二人の紹介に入ろうとして、動きが固まる。それは司教も同じだった。

 

 この部屋は先程まで司教が仕事をしていた部屋であり、激務の中で細やかな甘味も用意されていた。勿論、司教のための物だ。

「うま!うま!うまい!うまい!」

 皿に掴みかかり、甘味を貪る少女が居た。

「うわあああ!ずるい!ずるいですよ!」

 それを至近距離で頭を抱えながら悶絶する漆黒の戦士が居た。この部屋に来るまでは鍛え抜かれた戦士らしく仕草一つで周囲を魅了していた人物とは思えない醜態だ。

 

 皿に並べられていた細やかな甘味を、まるで人生で一度も食べられない絶品の如く貪る姿。まさに“ならず者"。

 招かれたのは彼女たちなのだ。甘味は彼女たちに供されたものだと思うのも無理はない。──部屋に入るなり挨拶も抜きに飛びつくのは、さすがにどうかと思うが。

 

 此処がどういう場なのか忘れているのか、まさかそこまでの魅力が甘味にあるとでもいうのかのように甘味に少女は齧り付き続ける。赤く粘土の高い液体がシロップの様に掛かっていたが、皿に垂れた分も丁寧に舌で皿を磨くように舐め取っていく。一頻りそうすると頬を押さえてうっとりする。

「この甘い蜜は毒ね」

 

 この感想は司教としても受け入れやすいものであった。

「おや、お分かりになるとはさすがですね。ここだけの話にしていただきたいですが、その赤い液体は甘味ではありますが猛毒でして、毒への耐性の訓練に私が食べるためのものなのです」

 司教は関心した仕草をする。まるで本当に心の底からそう思っているかのようだ。

 

 その時に初めて少女は司教を視界に収めて存在を意識した様だ。唾液に塗れた皿を掲げると呆然としている。

「え?毒なのこれ?ただ甘いだけよ?」

 

 それは少女にとっては純粋な疑問だったのだろうが、ある意味で失言だった。特に司教にとっては、彼はこの城郭都市を収める司教である。この国での高い地位とは有能であることと同義だ。

「この罪血花*1という物はある程度の毒耐性があれば普通の甘味にもなるので、分からないのも無理はありません。もしくは──」

 そもそも只の旅人がいきなり司教と面会できるなどありえない。伝令に報せを受けてから司教はこの三人に特別な注意を払っていた。

 

 もったいぶるようにして、レオクレスは腰を下げて少女に目線を合わせる。

「人でなければ関係ない話でしょう。これは血に対して作用する毒物です」

 他の二人は全身鎧の作りの良さは確かに目を引くが、一見して得られる印象はその程度。レオクレスが注目したのは違う。

 この少女は特別だ。神の如き美貌、まるで作り物の様な透明感のある素肌。陽光の影として生きてきた自分には馴染み深い神秘の感覚。ひと目見た時から、敬虔なレオクレスには確信があるのだ。

 

 

 

*1
罪血花。花のエキスを抽出した赤い液状毒。血を凝固させる効果がある。味に甘味があり、シロップとして混入しやすいので、デザートや果実酒に混ぜられがち。“罪の血を止める”という宗教的な言い回しで、法国内ではこっそり使われている。




 これまでの軽妙なパートから大幅に文体を変更しておりますが、これは意図的なものであり、決して作者の精神状態に変化が生じたわけではございません。
 また、この大幅な文体変更にあたり、執筆補助としてChatGPT o1モデルの助力を得たことをここに記しておきます。
 特に冒頭の数行については、ChatGPTが約4秒間のプロセスを経て下地を作成したものをそのまま使用しております。その性能の高さには感銘を受けるばかりです。
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