異世界転生すると美少女になれるって本当ですか!? 作:DENROK
「んぅ……」
どうやら完全に寝てしまったように見える。いつもなら自動で接続が切れそうだが、まあ、機械の判定なんて分からないか。
「さて、どれどれ」
急がないと、せめてアイテムを手にとって良く見たい。早くしないと全て消えてしまう。
玉座に座って寝ている少女の片足を膝立ちにさせて、身につけている装備を外していく。
さすが
「モモンガ様?」
集中していた。何か聴こえていた気がする。意識して初めてそれが人の声にも聴こえることに気づいた。
それは、装備品というより衣服に近いアイテムを、少女の柔肌から剥がしていた時だ。
豊満な起伏が曝け出されるが、大丈夫。謎の光*1は仕事をしている。
「誰だ?」
ギルドメンバーが戻ってきたのだと思った。本当に最後の最後の瞬間だが、顔を見せに来てくれたことが嬉しい。
脱がしかけの衣服を引っ張りながら、顔をそちらに向ける。
「あの、何をなさっておられて……」
よく見た姿で見たことがない姿だった。よく見た姿だが、見たことがない仕草と、聞いたことがない流暢な声。
白いドレスも、黒い翼も、拘り抜かれた肢体も、金色の瞳も。太い角も、よく見た物だ。
物だったはずの者が、息遣いさえ感じられる仕草で、手をこちらに差し出していた。
「タブラさんの仕掛けか?全く本当に凝り性だな」
となると困ったな。ダブルブッキングしてしまったぞ。仲間からの贈り物なら、どちらも大事にしたい。
「何してんの?」
「ん?」
衣服を引っ張る手に抵抗が加わる。引き剥がそうとしていた手に、小さな手が重なる。
今は丁度、前開きの衣服を正面を裂くように開いて、腕を抜こうとしているところだ。
丁度襟を持って、両手で開いている。
信じられないものでも見る目だと思った。衣服に掛けられた骨の手を凝視していた目が動き、こちらと目線が合う。
ん?目線?それに表情が?
「おはようございます」
せっかく目覚めの挨拶を送ったというのに、返事は言葉ではなかった。
一瞬で取り出された鉄塊が小さな腕に抱きしめられて、まるで定規で測ったように完璧な間合いで、肘を曲げたまま顎に押し当てられる。
「いいいいいいやあああああああああ!!!」
警告なしの一撃はモモンガの脳天を貫き、その衝撃に意識も千切れ飛んだ。
天井まで髑髏が吹っ飛び、床に落ちてバウンドして、そのまま陶器のように砕けて散らばる。
散弾銃を構えた少女は、涙ぐみながら得物をしごいて、次弾を装填する。
「ころす」
力なく横たわる骸骨に再び銃口が向かう。
銃身がブレる程の絶叫によって遮られる。まるでこの部屋全体が震えているようだ。
「なに?」
狂った様に床に散らばる白い物を拾い集める美女が居た。
壁際に控えた白髪の執事が階段を跳ぶように一息で駆け上がってくる。
「どうか、怒りをお収めください」
執事は震えていた。
「なんで?」
震えが大きくなる。
「私の命を代わりに差し出します」
「いらない」
執事に玉座に押さえつけられる。
「はなして」
「なりません」
力では勝てない。装備が足りない。
身体から力が抜けていく。
ナザリックはいつかの戦時体制に匹敵する程にピリピリしていた。
「負のエネルギーを扱える者は急げ!」
詳しい事情は説明されていない。そんな暇はないとばかりに、下僕を統率する立場の者たちは目に見えて焦っていたのだ。
普段なら絶対に立ち入れない領域に召喚された下僕たちは、今はとにかく命令に従うことだけを考える。
「アルベド、本当にここで治療を?」
「下手に動かせないわ。絶対に失敗は許されないのよ」
玉座の間に辿り着いた下僕から熟達度に関係なく負のエネルギーを注いでいく。適当な下僕では焼け石に水だが、だからといって放置など絶対にありえなかった。僅かでも治療の可能性を高められるように、準備が整う前から動き出していた。
「しかしなぜこんなことに?なぜですか!?アルベド!」
「えっとそれはね。痴情のもつれというか」
「は???」
思わず、デミウルゴスの瞳が見開かれた。そのまま首が周り、治療中の至高の御方の近くに佇む、至高の御方のもう一柱に宝石の瞳が向けられる。
痴情のもつれと来たら、男女の話だ。つまりナザリックに残る至高の御方の男女のペアをまず考える。自然な流れであった。
「は???」
知将デミウルゴス、禁断の二度聞きである。
モモンガの頭をふっとばしたのは、ハンドロードされた対アンデッド用のオリジナル弾薬です。「ルクス・カルマ(Lux Carma)」とか、そういう名前をつけてますね。
元々、取り出した散弾銃自体がアンデッド特攻の品なので、そこらの敵にぶっ放す弾丸を撃ち込んでしまいました。