宇宙世紀0087年3月3日、後にグリプス戦役と呼ばれる地球連邦軍の内部紛争が幕を開けた。
開戦当初は派閥の一つ「ティターンズ」の情報操作等により優位を取っていたが、対する「エゥーゴ」も徹底的に抗戦、ティターンズの非道な作戦を阻止してゆく。そんな中、ジオン残党軍「アクシズ」と手を組んだティターンズであったが、地球最大の要衝であるキリマンジャロ基地を陥落させられ、更にダカールに於いてエゥーゴ側が議会を占拠、クワトロ・バジーナの演説によって非人道的作戦が明るみにされ、形成が逆転する。
追い詰められたティターンズは毒ガスやコロニーレーザーを使用、その行動はより過激になっていく。だが、主導者である「ジャミトフ・ハイマン」が裏切った「パプテマス・シロッコ」により殺害され、ティターンズは少しずつ崩壊していく。ジャミトフの仇を理由にシロッコはティターンズを掌握するが、総司令「バスク・オム」がそれに反発、離反しティターンズ内でも内戦が起こる。
そして、宇宙世紀0088年2月………
バスク・オムの乗艦「ドゴス・ギア」は、シロッコの部下「レコア・ロンド」の駆るパラス・アテネ率いるモビルスーツ隊によって攻撃を受け、窮地に陥る。バスクは迎撃しようと必死に指示を飛ばすが、ドゴス・ギアは次々と武装を破壊され、もはや打つ手は無い。
「正面、シロッコのモビルスーツ隊が………ッ!」
ついにはブリッジ正面にパラス・アテネが接近し、二連装ビーム・ガンを構える。
(私が、こんな所で………ッ!?)
そして、放たれたビームがバスクの体ごとブリッジを焼き、ドゴス・ギアは撃沈した。
バスク・オム。徹底したアースノイド至上主義を掲げ、スペースノイドに対して激しい憎悪を抱いていた彼は、その報いを受けるかのように、人生に幕を下ろした。
「………む、ここは………?」
死んだはずのバスクは、目を覚まし、辺りを見回す。彼は夕暮れに照らされた電車内の座席に座っており、外にはオレンジ色に色づいた都市が見える。
バスク(地球………それも民間車両の中か。私はドゴス・ギアにいたはずだ。それに、あんな都市は地球で見たことがない。ここは、一体どこだと言うのだ………?)
席を立ち、辺りを見回しながらバスク・オムは考え込む。彼は地球についてもそれなりに詳しく、これほどまでの大都市なら一度は目にしているはず。それなのに、バスクの頭の中にこの記憶はない。本来ならありえない状況に、彼はより混乱する。一見冷静に分析しているように見えるが、実際の所かなり動揺しており、冷や汗も垂れている。
………その時
「ッ!?誰だ!」
バスクは突然聞こえた声にいち早く反応し、腰のホルダーから護身用の銃を抜き、声の方向に構える。
そこに座っていたのは、一人の女声。淡い水色の髪に、白で統一された服を纏った女性。よく見ると彼女の頭には
「貴様は誰だ。ここは何処だ。さっきから、何を言っている?」
バスクは警戒を露わにし、銃を構えたまま問う。だが、女性はまるでそれが聞こえないかのように一人で話を続ける。
「………それは、私に言っているのか?私の行いが、正しかったと?」
「責任、だと………?」
「貴様は、初対面である私を信じる、と………いや、それかどこかで………」
「何!?貴様、今私を………先生と呼んだか………!?」
「待て、キヴォトスとは何だ!私に未来を託すだと!?少しはマシな説明をせんか!貴様、待て………!!」
女性はバスクの視界から少しずつ遠ざかっていき、そして、バスクの意識もぷつりと切れた。