「………こんにちわ、各学園からここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会………その他暇を持て余していた皆さん。こんな暇そ………大事な方々がここを訪ねてきた理由はよくわかっています。今、学園都市に起きている混乱の責任を問うため………そうでしょう?」
リンは出来る限り丁寧に対応しようとしているが………所々に棘が混じっている。
「そこまで分かってるならなんとかしなさいよ!連邦生徒会でしょ!?」
「矯正局で停学中の生徒達も、一部が脱獄したとの情報もありました」
「スケバンのような不良達が、登校中の生徒を襲う頻度も、最近になって急激に上昇しており、治安の維持が難しくなっています」
「戦車や戦闘ヘリなどの出所のわからない武装の不法流通も2000%以上増加しました。これでは、正常な学園生活に支障が生じています」
「………」
各校の生徒が抗議する中、リンはただそれを静かに聞いていた。そして、隣に立つバスク・オムも、情報を頭の中で整理していた。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしてるの?どうして何週間も姿を見せないの?とにかく会わせて!」
「………なるほど、状況は理解した。そういう事だったのだな、リン行政官」
その時、会話に割って入ってきたのは、ただ静観していたバスク・オム先生。これまでの会話から出てきた情報を、整理しきったようだ。
「………察していただけたようで、助かります」
「な、なんですか急に………というか、貴方は………」
「まず、何週間も顔を出さない連邦生徒会長とやら。甚大な被害状況から見て、恐らくこれまでのこの組織は生徒会長による実質的なワンマン運営だったのだろう。それがストップしたとなると………大方、失踪でもしたのではないか?」
「「「「………ッ!?」」」」
「………仰る通りです。連邦生徒会長は現在、行方不明となっているのです」
バスク先生の的確な考察、そしてそれが正解であったという事実に、訪問していた生徒は驚愕する。
「サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなってしまった為、現在の連邦生徒会には行政権がありません。………そして、こちらにいらっしゃるバスク・オム先生が、この状況を変えてくださるフィクサーになってくださるはずです」
「………成る程(連邦生徒会長とやらに呼び出されたのはそういう事か………)」
現状、そして自身の置かれた状況を把握したバスク先生。少しずつ、状況を理解してきていた。
「待って、この………バスク・オム先生、はどうしてここにいるのよ?」
「キヴォトスでないところから来たようですが………先生だったのですね」
「こちらの先生は、これからキヴォトスで働く先生であり、失踪する前に連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「………私は、何も聞かされていなかったのだがな。ともかく………私はバスク・オム。ここに来る前は、ティターンズで総司令官を………早い話、退役軍人とでも思ってくれれば良い」
「た、退役軍人………(怒らせないようにしよ………)」
(なるほど、あのプレッシャーはそういう………)
(この厳格な雰囲気………どことなく風紀委員長に似ているような………?)
バスク先生の自己紹介に、生徒達は少し気圧される。本人の声と風格のせいなので、仕方ないことではあるのだが………。
「先生は、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活動の顧問としてこちらに来ていただきました」
「部活動………?私に子供達とただ遊んでいろというのか?」
「いえ、そういう訳ではありません。先生に所属してもらうのは、連邦捜査部S.H.A.L.E………通称、シャーレです」
「シャーレ………どういった部活で?」
「単なる部活動ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒を、制限なく加入させることすら可能、各学園の自治区で、制限のない戦闘活動も可能です」
「………私からすれば、一種の治安維持組織といった風に見えるが」
「現状、なぜ連邦生徒会長がこれほどまでの組織を作ったのかは不明ですが………。ともかく、シャーレの部室はここから30km離れた外郭地区にあります。そして、その地下にはとある物が運び込まれています」
「とある物………?」
「はい。先生のこれからの活動に必要なもの、と聞いています。ヘリを手配しますので、少しお待ちを」
リンはバスク先生にそう告げ、少し離れていく。その間に、訪問してきた生徒と話すことにした。
「………と、いうわけらしい」
「もう何がなんだかさっぱりよ………ノアにどう説明すれば………」
「それにしても、先生は軍人だったのですね。前線に立ったことは?」
「いや、私はどちらかと言うと指示を飛ばす側だったのでな。最前線で戦うなどは士官達に任せていたよ」
バスク先生はしばらく生徒達と話していたが、ふと我に返る。
(なんだ………?私は、なぜこうも気さくに子供たちと話している………?)
バスクは自分自身の言動と行動に疑問を抱くが、ここでリンが戻ってきた為、思考を切り替える。
「リン行政官………大丈夫かね?」
「いえ、平気です………少し、想定外の問題が発生しただけですので………」
そう言いつつ、リンのこめかみはピクピクしており、何かを堪えているのは確かだ。そんな中、リンは訪問してきた生徒達の方を向く。
「な、何………?どうして私達を見つめるのよ」
「………丁度、各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、心強いです。キヴォトスの正常化に皆さんの力が必要です、行きましょう」
リンはそう言い、その場から歩いてゆく。バスクもそれに着いていき、ユウカ達も慌てて後について行くのだった………。
次回予告
第三話 前線指揮