ロードバイクに乗るシロコに先導され、トードフラックスに乗るバスク先生はアビドス高校へと辿り着いた。校庭も砂を被っており、砂漠化が相当進んでいることが伺える。
「シロコ、昇降口で待っていてくれ。これを裏手に止めてくる」
「ん、分かった」
一度二手に分かれ、バスクはトードフラックスを裏門付近に止める。ロックモードへと変更し、シッテムの箱を台座から取り、昇降口へと向かう。
「それじゃあ、私達の教室に案内するね」
「いきなり入っちゃうと多分皆びっくりしちゃうから、私が呼ぶまでここで待ってて」
「あぁ、分かった」
[アビドス廃校対策委員会]と書かれた教室の前につき、先にシロコがドアを開けて中に入っていく。バスクは待っている間に、廊下を見回す。
(………外は中々に悲惨だが、校舎の中には砂埃一つとない。隅々まで手入れが行き届いている。愛着があるのか、それとも………)
「………入ってきていいよ」
そうやってバスクが思考を巡らせているうちに、シロコが顔だけ廊下に出し、バスクに声を掛ける。それを聞いて、バスクは襟を正し、教室へと入った。
「………失礼する」
「あらあら、随分とがっしりしたお客さんですね〜☆」
「は、初めまして!」
「………ちょ、ちょっと怖い………」
教室の中心には大きめの長机が置かれており、それを囲むように三人の生徒が座っていた。一人は、ベージュのロングヘアの生徒、次の一人は黒髪ショートにエルフ耳が特徴的な生徒、もう一人は黒髪ツインテールに猫耳を生やした生徒だ。
「………この中に、奥空アヤネという名前の生徒はいるか?」
「あ、は、はい!私ですが………」
バスクの問いにエルフ耳の生徒が答え、椅子から立ち上がる。バスクは彼女に近づき、懐から名刺を取り出し、アヤネに渡す。
「私は、連邦捜査部………シャーレ顧問のバスク・オム先生。君が送った救援要請を受け、補給物資を届けに来た」
「あ、ご丁寧にどうも………って、連邦捜査部!?」
アヤネは流れを読んで名刺を受け取った数秒後、我に返って驚く。それにつられて、他の生徒も喜ぶ。
「わあ☆支援要請が受理されたのですね!」
「良かったぁ………これで補給が受けられます!あ、ホシノ先輩にも伝えないと………」
「私、呼んでくるよ。どうせいつもの場所で昼寝してるんだろうし!」
ツインテールの生徒………セリカはそう言って、勢いよく教室を出ていく。
「………では、君たちの名前も聞いて良いか?」
「あ、はい。名乗ってもらったんですし、こちらも自己紹介しないと」
「私はもうしたから、飛ばして大丈夫だよ」
「それじゃあ私から!私は二年の十六夜ノノミです☆よろしくお願いしますね!」
「私は一年の、奥空アヤネです。よろしくお願いします」
「それと、さっき出ていったのが、私と同じ一年の、黒見セリカちゃんです」
「………で、セリカが呼びに行ったのが、対策委員会の委員長、三年の小鳥遊ホシノ先輩」
「………以上の五名が、アビドス廃校対策委員会のメンバー、並びにアビドス高等学校の全校生徒です!」
「………五人!?全校生徒が、五人だと………!?」
(聞いてないぞアロナ………これでは最早教育機関として成り立っていないではないか………!)
バスクが心の中で理不尽にアロナにキレているそんな時だった。
突如として、校庭から銃声が聞こえてきた。
「銃声!?」
アヤネがすぐに窓から下を見下ろすと、校門辺りにヘルメットを被った十数人の不良たちが集まり、銃を構えているのが見えた。
「あれは………カタカタヘルメット団!救援要請にもあった、不良集団です!」
「あいつら、性懲りもなく………!」
シロコが静かにキレている中、教室の扉が勢いよく開いた。
「先輩、連れてきたよ!ほら、緊急事態なんだから、しっかりして!」
「むにゃぁ………もー、おちおち昼寝もできないねぇ。………あれ、そこの怖い人は誰?」
(怖い人………)
「この方はシャーレの先生です!先生、私達は今から戦闘に入ります。危険ですので、先生はここを動かないでくださいね!」
アヤネがそう言うと共にアビドスのメンバーは走って───ホシノは半ば引きづられる形で───教室を出ていく。
先生の隣に立っていたシロコも、銃を手にとって後に続いていく。
「………いきなり襲撃とは、実に大層なお出迎えだな」
教室に一人残されたバスクは、そんな事を呟きつつ、懐からシッテムの箱を取り出し、起動する。
『先生、なんとなく状況は理解してます!出撃しますか?』
「勿論だ。トードフラックスで出るぞ。良い機会だ、戦術指揮も同時に行う!」
『了解です!シッテムの箱、マルチ演算モードに移行します!』
バスクはアロナとの会話をそこそこに、遅れて教室を出て裏手に止めてあるトードフラックスへと急ぐのだった………。
次回予告
第七話 大人げない戦い