「ありがとうございました~」
人里からのお客さんがひと段落した。
人里からは少し歩くのに来てくれるのは正直うれしい
つくるものや店内の雰囲気がまた来るに足りると物だったということだろう。
「さてと。」
今日はもう夕方でお客さんも来ないだろうし少し早目の店じまいをしてもいいだろう。
ケーキももう2つしか余ってない。
一つは自分で食べるとして残りの1つをどうしようか…
大量に余ったりどうしても日持ちがしないもの以外は捨てないのがモットーだ
よし、胃袋に頑張ってもらおう!
店の片づけからはじめようと席を立ち
「お邪魔するぞー。まだやっているか?」
「ひゅいっ!?」
とつぜんきこえてきた声と響くドアベルに小さく飛び上がったのだった
「いやタダでいただいてしまって悪いな。それで今日はお前に一つ頼みがあってだな」
「はいはい?」
どうせ捨ててしまうはずだった……ということにして出したケーキを食べながら話をする彼女。
自分もフォークで口に運ぶ。今日のケーキはオレンジの皮から作ったママレードを使って少し苦めの大人の味に仕立てたブラックチョコレートケーキだ。今回も自画自賛できるレベルには仕上がっているようだ。
彼女の名前は上白沢慧音、人里の長で普段は寺子屋を営んでいる。人間とハクタクの中間のワーハクタクという種族らしく、もう何百年と生きているらしい。だが彼女の外見は青い髪を持つ二十歳ぐらいの美しい女性でハクタクなんて聞いたこともなかったので初めてその事実を知った時には「は、はぁ。」と気の抜けた返事しかできなかったのはここだけの話だ。
この世界に連れてきてもらったばかりでまだ右も左もわからない時に住むところやこの店を建てるまでの仕事を紹介してもらった恩人だ。
「何でも言ってくださいな。慧音先生は大事な恩人ですからね!自分にできることなら何でもやっちゃいますよ。」
「恩人なんてやめてくれ『お前と私の仲』なら当たり前じゃないか。
そっそれにそんな固いしゃべり方じゃなくてもいいというか呼び捨てでもいいというか
そっちの方がいいというか呼ばれたいというか…うぅ」
そういってうつむいてしまう慧音さん
最後の方はよく聞こえなかったが、恩人にだからと敬語を使っていたのが気になったのだろうか?やさしい方だとおもう。別に無理して敬語にしているわけではないのだが…
それに『お前と私の仲』をいやに強調していた気がするがどういう意味だろうか、友人なんて恐れ多いし…そういえば前に「里に住むものはみんな私の子供のようなものだ」なんて言っていたな。
「そうですね家族のようなものですものね。」
「くぁwせdrftgyふじこlp!!??」
声にならない声を上げて立ち上がる慧音さん。顔は真っ赤に染められ、手はぶんぶんと虚空をかき回している。…あれ?違ったかな?名推理だと思ったんだが。
「あ、あああああ、葵?それはつまりあれみたいなことか?私があれみたいなものでおまえがそのあれみたいな感じなのか?」
よくわからないが、母親と息子みたいなことを言っているのだろうか?あれが多くてよくわからない。
「慧音先生が前におっしゃっていたのでたぶんそうかと…」
「へっ!!??わ、私は以前そんなことを言っていたのか!?過去の私に会って殴りたい!!それと土下座して感謝したい!!」
なんだか今日の慧音先生は慌ただしい。目はぐるぐるとまわっているし半分ハクタク化し始めている。それにしても
「慧音先生はお優しいですね。俺だったらとても里の人全員を自分の子供なんて言えませんよ。」
「ひょっ!?……………………………………………………………アハ、アハハハハハハハ、アハハハハハハ、ぐすっ、あはははは」
なんだかフリーズした後に笑い出した…なんだか口から魂が漏れ出している気がする
その後なんだか疲れた様子の慧音先生から用事を聞くころにはすっかり夜だった。
後日、
寺子屋の前に立つ。慧音先生の頼みを要約するとこうだ。
「新しく妖精や知性のある妖怪に授業をしてみたいので臨時講師兼三時のおやつ担当に来てほしい」
だそうで店が休みの日に予定を合わせて来たわけだ。予定では今日は妖怪が2人来るそうだ。
取りあえず中に入る。中には少女が2人と慧音先生が話している
「こんにちは。臨時講師を務めることになった蜜瀬葵です。これからよろしく。」
笑顔ととともに挨拶をすると元気な挨拶が返ってくる
「よろしくなのかー」
彼女はルーミア、宵闇の妖怪で、本来はもっと強力な力を持っているが封印されているらしい。金髪のかわいらしい少女だ。人食い妖怪だが里と協定を結んで人を食べない代わりに食料をもらっているそうだ。
「よろしくお願いします~♪歌って仲良くなりましょー。
妖精たちが!夏をしげぇきする~ 生足へそ出し」
「「マァメイドッ!!ヘイ!!」
いきなりよくわからないテンションで意気投合したのは夜雀の妖怪、ミスティア・ローレライ。ウナギの屋台をやっているらしい。ぜひ食べに行きたいものだ。
そんなこんなで始まった授業は、超!エキサイティングだった。
数学
「7つのリンゴを2人で分けると一人当たりどれだけ食べられるでしょうか」
「1人と7個なのだ~」
「YES人間NO人食い!!」
歴史
「圧倒的な今川義元の軍勢の前に織田はどうしたでしょう」
「歌った~♪」
「まさかの現実逃避?」
そんな授業をずっとにこにこしてみていた慧音先生の姿が印象的だった
あとで聞いてみると
「なんだか家族みたいであったかかったんだ。お前には教える才能があるみたいだ!!二人で本格的に寺子屋をしないか?」だそうだ。
まあとっても満ち足りた表情をしていらっしゃたのでこっちも働いたかいがあったというものだ。
慧音さん すまない、、、