「ありがとうございました。またお越しください!」
里の方からいらっしゃったマダム二人を見送る。
まぁこの世界里は一つしかないんで里以外からのお客さんなんていないんですけども、、、
あ、、、意外といるわ、人じゃないけれど
どうでも良いことを発見したところで次の客人を待つ間何をしていようか考える。
「うむむ、昼ご飯は済ませたし、掃除もまだ必要じゃない、おやつにはちと早い、これが噂の八方ふさがりか。」
「まだ3方向しかふさがっていないじゃないか、せめてもう少し考えたらどうだ。」
「これは手厳しいですね、藍さん。」
「ふふふ、そういうな葵、最近お前が後ろに立ってもびっくりしないものだからこうしてからかうしかないんだよ。」
いきなり後ろから声をかけてきたのは俺のもう一人の恩人である八雲藍さん。
ゆったりとした導師服に透けるような金色の髪、恐ろしく整った顔に涼しげな切れ長の目を持つ女性で、若い頃はいろいろな男をたぶらかしていたらしい。
強大な力を持つ妖狐で音もなく後ろに現れてはいつも驚かせてくるのだが、最近は俺がそれになれてしまったことがご不満らしい。
そもそもの出会ったきっかけはこの世界に迷い込んで右も左もわからなかったときにたまたま道ばたであったネコミミの少女に気に入られ獲物として住処にお持ち帰りされたことから始まる。
そこの主に気に入られてから人里に向かうまでの数週間世話をしてくださったのが藍様だった。
というわけで俺にとって先生と並んで頭の上がらない人筆頭がこの藍さんなのだ。
「いらっしゃいませ、藍さんはいつもの緑茶と、、、きょうは桃のグラニデと チェリーパイがありますけどどうしますか?」
「ふむ、ぐらにで、とは外の世界の菓子なのか?」
「はい、外の世界の氷菓子です。もっとも外の世界でもあまり知られていないんですけどね、」
「じゃあそれをもらおうかな、それはそうと」
おっとまずいこれは早急に話題を変えなけれ「寂しくなかったか?ご飯はちゃんと三食栄養のあるものを食べているか?睡眠はとっているか?誰かに意地悪されていないか?また少しやせたような気がする、この世には過労死というものがあってだね、それ(ry、、、、、」
またはじまってしまった。
さっきのクールさはどこへ落としてきたのか、ほっぺたを触ってはしきりに体調面を心配してくる。
さしずめむすこを心配する母親か、都会に行った男を心配する幼なじみといったところだろうか?
藍さんは俺に対して少しばかり過保護なのだ。
「最近は熱中症も心配だし、後で温度調節の札を張り替えてあげるからね?水仕事で手が荒れ気味じゃないか、ああもうもっと早く仕事を終わらせてくればよかった!!」
いやいや結界の管理はしっかり時間かけてやってくださいよ、、、
「まぁまぁ今グラニデをおもちするので話はそれからにしましょうか? ね? ね?」
もはやこっちも必死である。
藍side
彼の出してくれた氷菓子を口に運ぶ、
氷の中に閉じこめられた桃のさわやかな香りがとけだし喉を通っていく感覚、やはりいつ来ても彼の菓子はおいしい。
それにしても
「おいしいですか?」
いつも浮かべている微笑のまま聞いてくる葵、
「ああ、とてもおいしいよ。」(かわいいなぁもう!!)
そう、葵はかわいい、燈はかっこよくて優しいお兄さんだといっていたがそれは違う!!
葵はかっこよくて優しくてかわいいのだ!!
もうなんて云うか守ってあげたい。養ってあげたい。
始めにいっておくがこれは人間というか弱いものへの母性であってけしてこいしているとかじゃないぞ、ほんとうだぞ?
彼を見ているとなんだか心が暖かくなって目が合うと顔が熱くなってしまうだけだ。後ろに忍び寄るのも真っ向からいくのが恥ずかしいとかじゃないぞ?
誰にするでもない説明をしながら私は将来の計画について考える。
もし彼を養うことになったら、
仕事を終えて帰ってくると「お帰りなさい!」なんてまぶしい笑顔で彼が出迎えてくれて、「今日のお味噌汁は油揚げですよ、いっぱい食べてくださいね!」とかエプロンのままいってくれちゃって、
それから、それから!
「お風呂にします?ご飯にします? それとも、、、」テレッ
そこまで考えたところで私の中の何かが切れた。
side葵
藍さんがさっきから固まっている。
グラニデを食べる手も止まってしまっているようだ
おいしくなかったのだろうか?
いや、上々の出来だったはずだし何より彼女がおいしいといってくださっている。彼女は人間相手にお世辞や嘘なんて云わないはずだからその点は信じて大丈夫だろう。
と、今度は自分で自分の体を抱きしめてもだえ始めた、体と一緒に尻尾までフリフリと揺れていて、こういってはなんだが少しおもしろい。
そういえば少し顔が赤らんでいるようにも思える。ここは温度調節ができているから熱中症ではないだろうがもしかしたら夏風邪かもしれない。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけようとしたそのとき
ぼふん!!
そんな擬音が似合いそうな感じで藍さんの顔がいきなり真っ赤に染まった。尻尾の毛は逆立っているし、頭から湯気がでている気がする。これはただ事ではないかもしれない。
「大丈夫ですか!?」
「ふぇっ!?葵!?私たちにまだそういうことはまだ早いと思うぞ!うん!!こういうことはもっとだな、互いのことをわかりあってからだな!!ね?」
やばい、いっていることの意味が全く分からない、もしかして熱でぼーっとしているのかもしれない。
「すいません藍さん!落ち着いてください!」
「あ、あぁすまない、ってああぁぁぁ!!!ち、違うんだ今のは、只の独り言と云いますかなんというか、聞かなかったことにぃぃ!!」
「大丈夫です!現在進行形で何いってるのか理解できていません!!」
「そのだな!!わたしはお風呂でもお前でもなくご飯だ!油揚げのお味噌汁だ!!!だから、味噌汁を作ってくれ!!」
「味噌汁!?それに藍さんは狐です!!風呂でも俺でもご飯でもないです!!」
やばい、話が全くかみ合っていないのがわかる、顔もさっきよりさらに熱く赤くなっているようだし。
「違うからっ!!今の味噌汁は告白とかじゃなくて、願望というか、その、うにゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「藍さん味噌汁になりたいんですか!?すいません無理だと思います!!」
本当にまずいかもしれない、思考回路の混濁ともしかしたら幻覚も見えているかもしれない。
とりあえず熱だけでも確かめておこうと思い彼女の頬に手を当てる。
驚くほど熱くなっている、あぁもう!何で自分の体調不良はおいといて人の面倒を見に来るかなぁ!!
そう思って藍さんの方を見ると
彼女は頬に当てられた手を見て、ぶるりと一度震え
「、、、、、、、、、、、、、、、、、、カハッ、、、!」
鼻血を出して倒れるところであった。
あわてて抱き止め揺すってみるが安らかな顔をしている。
「藍さん!?大丈夫ですか?藍さん?藍さん!!らんさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
この後彼女を部屋に運び込み、ベットに寝かせ、ぬれタオルを額に当てているとしばらくして復活した。
さて、胃に優しいお味噌汁でも作りますかね。
慧音さんと同じくなかなかつらい立ち位置になりそうですねぇ、