001
「これよりベルディア討伐報酬である三億エリスを冒険者に授与します!おめでとうございます!」
ずおっ、と重い三億エリスの重みを体感しながら何故か俺が受け取ることとなった、これでもかと大量の金貨を受け取る。
「おぉ、これが……いや、手を離してください、これは参加してくれた冒険者に配るんで」
「もうちょっと……!もうちょっと体感させてください!」
「力が強い!」
ふんっと奪い取る形になってしまったが、そんな感じで俺ら冒険者一同は三億エリスを手にしたのであった。
俺はあくまで代表として受け取っただけなので、このあと複数の小袋に分けて渡されることとなる。
三億エリスかぁ、これを独り占めできたらどれだけ素晴らしいことか。
まぁそんなことをしたらこの世界から抹消されるまでボコボコにされることだろう。
そんな訳で配るまで少し時間がかかった、時間にして一時間ほどであろうか。
適度に配れたと思うが、これで不安がないといいなという希望的観測を持ちつつ配りは終えた。
「これが一億エリスの重みか……いやおっも」
「店長さんはそれをどうするんですか?アクアはこれまでのトラブルの借金を返したあとしゅわしゅわを山ほど飲むつもりのようですが」
「あー、貯金かなぁ、俺模型屋やりたいだけだし」
「欲がないですねぇ、なんかないんですか?魔王を倒したいとか有名になりたいとか」
「俺は俺が生きていける最低限があったらいい」
めぐみんはそんな俺を珍しいものを見る目のままに離れていった、アクアの金はカズマがリーダー特権で預かるとか、借金がちょうどその額で止まっていたなどのすったもんだが向こうではあるのだろう。
俺の金は本来ならスペースマリーンたちが受け取るべきなのだが、彼らは一向に受け取ることはせず、俺が好きに使うことを望んでいた、召喚物と召喚者の関係なんてそんな感じらしい。
なお護衛ケイディアン達は酒をこれでもかと飲んでいる、俺も混ざりに行こうと思った。
このままトラブルがなければいいなぁ、なんて考えがあるが、たぶんそうはならないだろうと思った。
002
「あ、店長おつかれさまっす」
「おう、おつかれ、最近馬小屋にいないようだがどうしたんだ?宿屋にしては俺とは別の宿屋のようだが」
賞金が入ってからというもの、銀行のようなものに預けることはせずインパルサー装甲車の中に金庫を置く形で管理している、そして夢の宿屋暮らしとなっているが、たまにカズマパーティが心配になり馬小屋を見るようにはしている。
「あー今日内見なんすけど家を手にいれたんすよ、なんでもアクアの浄化が必要なお化け屋敷らしくて、その分の報酬ももらったんすよね。」
「ほう、いいじゃないか、おめでとう」
「なんだったら店長も住みます?」
「ほう?いいのか?俺にできるのなんて金庫番くらいだが。」
「部屋もありあまってるしいいっすよ、アクアが勝手に金を使わないようにけん制する相手が必要なんすけど、スペースマリーンならちょうどよいかなって」
「スペースマリーンがやんなかった場合は俺がやればいいのか?」
「そうっすね、店長怒ったら怖そうだし」
「怖いつもりはないんだがな」
今日の売り上げを確認し、運転席に移動したスペースマリーンを確認する、カズマと一緒に乗組員席に移動し、俺たちはカズマの内見を一緒にすることとなった。
003
街はずれギリギリまで移動したことと、そこにこれでもかと大きい貴族の屋敷があることを確認し、驚嘆する、でけぇしスキルにより認識できる幽霊的なオーラがやべぇと。
さすがに悪魔が関係しているか、というレベルではないが幽霊的なオーラがかなり見える、事故物件としかいいよいうがないが、それを認識できているのはアクアくらいだろうなと思う。
そんなアクアは今訳の分からラない言葉を連呼しながらその場から動いていない、なんでも貴族の残された娘がどーのこーのとか。
そんなアクアをしり目に館に入るカズマ、めぐみん、ダクネスと共に屋敷へと入る。
「上官、ピュリティシールが震えています、悪魔ではありませんがだいぶ汚染は進行しているようです」
運転手のスペースマリーンがそう言った、俺もそう思う、認識した幽霊が細かく集まらないうちに退治するのが一番だろう。
「とりあえず要所要所にこれを撒いていこう、アクア印の聖水だ」
俺はスペースマリーンと護衛のケイディアンに水の瓶手渡す、これを適切な場所に撒いておけば最低でも一年は幽霊が寄り付かないだろう。
ゾンビに振りかけてもアンデッドスケルトンに振りかけても効くから凄いアンデッドや悪魔退治が楽になるのだ。
「了解しました上官、ケイディアンよ、各々のピュリティシールを確認し行動を開始しなさい」
「了解しました死の天使様!」
館に散っていくケイディアンを見ながら一階、二階を見渡すが特に異常ない、護衛のスペースマリーンもそれを認識したのかしてないのかは不明だが、どちらにしても警戒は解いていない。
二階から外を見るとまだアクアが語っていた、なにをそんな語ることがあるんだと思いつつ、俺はアクアを放置した。
キッチンがあり、暖炉があり、皆が集まれるスペースがあり、寝室が複数あり、少しは汚れているが問題ないは愛の家具があった。
これを問題解決すればタダでもらえるとは、なかなか素晴らしいのではないか?と思う。
そういえばカズマは幸運地が高かったなというのも思い出したが、幸運地が高くてあの仲間か、というのも改めて認識して少々苦笑いをしてしまった。
まぁ面白いのは間違いないだろう、こんな修羅の異世界で面白おかしく冒険できるほうがおかしいのだ、その点俺とカズマの幸運は高いのだろう。
「さて、そろそろ夕飯時か、キッチンが動作するか確認せねば」
そんなことを考えつつ、各々の寝室にアクア印の聖水を撒き終える、キッチンに向かえば先にキッチンの様子を確認していたケイディアンとダクネスがいた。
「そういやカズマパーティって誰が飯を作ってるんだ?」
「基本的にアクア以外が順番だな、特に料理が苦手というものはいないな、アクアは出汁とかそういうのすら水に戻してしまうからな」
「ダクネス殿、火の回りを確認しましたが特に不備はありませんでした」
「ありがとうケイディアン殿、さて、今日は……確かカズマだったか?」
「呼んだかダクネス?あ、そろそろ飯か、アクアも呼んで来い、アイツまだ外にいるぞ」
「この屋敷の何が気になるのかはわからんが、なぜああも長く語ることがあったのだ?」
「俺が知るか、今日は何にするかなー」
「カズマ、俺はそろそろ日本食が恋しい、コメの気分なんだがコメってそもそもこの世界にあるのか?」
「あー確かなんか収穫の時にマシンガンみたいに連射してくるのを収穫するとかかんとか、であるっすね、じゃあ今日はコメだな」
「やはりこの世界は頭がおかしくないか?」
004
「やはり日本人にはコメだな、コメ」
夕飯を食ったあとは風呂に入って寝るだけなのだが、一応見回りをする、なんせ原因がしっかりしてないのだ。
なぜこの屋敷に大量の幽霊が来るのか、というのがしっかりしていないあたり、ここに何がかあるのか、それとも外部原因なのかすら不明だ。
うーんどういうことなんだろう?
そんなことを考えながら廊下を歩いていると、ふと視線を感じる、今は家の中だという理由でパワーアーマーもミニチュアを入れるカバンも持っていない。
あれ、地味に危ない状況だな
冷汗が流れる、瞬間的動作により後ろを向けば、そこには少女趣味とした人形があった。
スッとこっちを見ている、こちらから見返すが特に状況変化はない。
なんだあれ、と思いつつポケットの中に入っていたピュリティシールが震えているのを確認する。
なるほど、あれがゴースト現象か、しかしどうやら牢屋にしか存在できないらしい。
うかつだった、寝室などの重要箇所には撒いておいたが廊下などの通路には撒いていない。
数秒にらみ合ったが状況が好転せず、俺は一歩前に出た、だが人形は動かない。
数歩前に出た、人形は動かず。
人形を拾う、特に何の変哲もない西洋人形だが、ここにあること自体がおかしいのだろう。
めぐみんの私物か?と思ったがあの中二病がそんなかわいい趣味を持っているはずもない。
というか紅魔族は大体が旅に出て見聞を見て聞いて感じるらしいので、大体は実家においてある、はずだ。
「あれ、上官もそれ拾ったんですか?」
ふと視線と声を感じたので横を見ると、そこには同じく人形を拾ったのであろうケイディアンたちがいた。
初期コストで召喚した五人それぞれが別の色をしたり、形が変わっている人形を手に取っていた、どうやらケイディアン達も同じ現象に遭遇したようだ。
「あぁ、どうやらゴーストの何からしいんだが、なんも反応してこないのが逆に怖いんだがそっちは?」
「一応浮いたりしてたんですが、つかんだら普通の人形に戻っちまったみたいです」
「我々も同じです、一度ラスガンで撃ち落としたらなんか普通に戻りましたね」
「えっ撃ったの?」
「上官も真後ろを見たら急に突っ込んでくる人形を見たら撃ち落としたくなりますよ、マジで怖かったですからね!」
「まぁわかるが、ならこいつらはどうしたもんかな、全部燃やすか?」
ガタガタガタと人形が震え始めた、どうやら抵抗しているらしいが、既に俺の手に握られていたり、ケイディアン達に握られているので逃げだすことは出来ず、無駄な抵抗だ。
「しかしこういうときに大騒ぎしがちなアクアがどこにいったんだ、ていうかアクアに任せればいいか、ケイディアンよ、アクアはどこだ?」
「確か今日は新居祝いの酒盛りよ!とかいってリビングで酒を飲んでましたね」
「んじゃそこにいくか、警戒しながらついてきてくれ」
「「「「「了解!」」」」」
005
「おーいアクア、いるかー」
リビングに向かいアクアを探す、するとそこでは意外な人物たちが酒を飲み交わしていた。
「だーかーらー!私の名前はアクアって言ってるでしょ!異端の神なんて呼ばないでさー!りぴーとあふたーみー!アクア!」
「うるさいですよ異端の神、なぜ私がここにいるのかは自分でもわかりませんが異端の神と酒を飲み交わしている時点で異端審問官に見つかれば私は処刑です、そんなリスクを背負って酒を飲み交わしているんですから名前呼びなんてした日には私が私を許せなくなるので」
「なんでよー!」
なんとうちのスペースマリーンとアクアが酒を飲み交わしていた、彼の信仰対象と現在の状況を見るにかなり譲歩していることがわかる。
なぜこんな状況になっているのだろうか?いや聞けばいいか。
「スペースマリーン、なぜアクアと酒を飲んでいるんだ?あとアクアに用があるのだが、今いいか?」
「異端の神に酒に付き合えと言われただけです、上官殿の仲間なので付き合っているだけです、こんな状況異端審問官に何を言われるか……」
「残念ながらそいつは皇帝レベルではないにしろ惑星レベルの神だ、諦めろ、それとアクア、この人形について知らないか?」
俺とケイディアン達は人形をテーブルの上に置く、するとアクアは溜息を吐きながら口を開いた。
「これはここの屋敷の幽霊の子の人形ね、たぶん隠し部屋か何かから出てきたんじゃない?というか屋敷中に私の聖水を投げたでしょ?なら大丈夫じゃない?」
「いや、大丈夫ではない」
「えっ」
「さっきからピュリティシールの震えが弱いが止まらん、永遠とゴーストがわいてくる場所なのか?ここは」
「そんなの墓地に私がした結界で自然消滅するはずよ?」
「ふむ、ちょっと待て、確かめてくる、スペースマリーンはついてきてくれ、代わりにケイディアンはここに待機だ」
「「「了解」」」
俺は墓地へと向かった、ついでに部屋に置いておいたパワーアーマーを装着して。
そうしてそのパワーアーマーはアクアへのゲンコツへと使われることとなった。