「カズマ、お前どうだった?」
「最高だった……まぁ夢の内容に関しては言いませんけど、店長さんは?」
「俺エロい夢じゃなかったからいうが、思いっきりケイオス勢を召喚する夢だったな、いやー総会だった、夢の中だからコスト度外視でタイタン級とか呼べたし」
「あーあの十何メートルくらいあるロボでしたっけ、買った人いたから召喚できるけど場所に困るってやつ、どうでした?」
「最高だな、夢の中だからタイタンの頂上に上って高笑いもできる、安全面から絶対にできないやつだ、まぁ一つ後悔はあるが」
「あー……」
「「カニ……食えなかったな」」
宿屋の前で握手したまま項垂れている男二人という光景を訝しげに見る者もいる中、二人はちょっとした後悔に苛まれていた。
サキュバス店を利用するということで一度宿屋に泊まることを報告する際のことである。
なんと新居祝いというべきものがダクネスの父親から届いていた、それがカニ、日本でいう海に住んでいるカニである。
この世界にもカニはいる、森に住んでいたり川に住んでいたり山に住んでいたりするが、そのどれもが希少性が高い。
カニ漁師という存在もいるが、長年そういう道にいる者ですらハイリスクハイリターンな職業だ。
だが美味いのだ、これでもかと美味い。
それは食ったことなくても食ったリアクションを見ればわかる、俺はカズマを連れて置手紙と共に涙ながら抜け出した。
はたしていつでも行けるサキュバス店といつでも食えるかわからないカニ、どちらがよかったのか。
それは考えないようにしている。
「まぁそんなことで諦める俺ではないがな」
「えっ何がっすか」
「俺が模型屋とは別にマイ貯金をしているのは知っているな?」
「そんなのしてたんすか店長」
「まぁヘソクリというやつだな」
「ま、まさかそれでカニを!?」
「買ってやるよ、ククク、俺とカズマと俺のミニチュアたちだけの秘密の飯会だ。」
「んで今どこに向かってるんです?」
「いや、カズマは知らんかったがこの街にゃウィズ魔法店ってとこがあるんだが、そこにカニがあったんだ、そう、あのウィズの」
「ウィズって、あの?」
「カズマがゾンビメーカーの仕事失敗したって聞いたからまさかとは思ったが、やはり知ってたんだな」
普通の日常会話を繰り返しながら到着したのはウィズ魔法店と呼ばれる場所であった。
ウィズ魔法店という看板がついている以外は普通の内側に商品が並んでいる店という様子だ、扉のガラス越しで見える限りは。
だがこの中で恐るべき人類転覆という作戦が行われているのかもしれない、まぁ今買おうと思ってるのはただのカニなので特に心配はしていない。
まさか客商売なのに毒入りなどを食わせることはないだろう、そうでなければすぐさま王都から何か凄い軍団が来ているであろうし。
怪しいが逆に安全というやつだ。
「ごめんくださーい、今やってます?」
シーンという無音が聞こえるかのような、何もない音がする、誰もいないのであろうかと錯覚するが、正面扉には開店と書かれている。
怪しんだ藻家はポケットからミニチュアを複数人召喚する、建物中なのでスペースマリーンは使えないのでタウの面々だ。
ケイディアンも考えたが、あの面々はウィズを見たらアンデッドだと看破した瞬間撃ちそうだからダメだ。
勝てない存在に喧嘩売るほど馬鹿ではない、なにせ、リッチーとはアンデッドの王である、騎士は比べ物にならないのだ。
「内部に反応はありますがテーブルに突っ伏しています、緊急事態でありましょうか?」
「リッチーが倒れるほどの存在に勝てるとは思えないが……報告義務はあるよな」
「俺逃げていいっすか」
「カズマには俺らがダメだった時に報告する義務があるからダメだ」
「逃げさせてくれ!」
タウの兵士が扉の両側につき、右の兵士一命が表面に立つ。
「カズマチームだ!ドアを開けろ!」
「武装勢力はただちに抵抗をやめよ!」
「大善大同のために!」
ガァンとドアをけ破って入っていくストライクチームの後に続く。
俺の名前を使わないでくれというカズマの悲鳴と共に入っていく。
「へうぇっ!バニルさん!まだお金はできてないですよ!?」
口元によだれを垂らしながらウィズが起き上がる、どう見てもアンデッドでありながら墓場で出会ったときは顔色は普通だったのに今は顔色が若干悪い。
アンデッドなのに顔色がいいとはどういうことなんだとは思いつつ、何もなかったようで何よりだ。
バニルという名前にどこか聞き覚えはあるが、まぁ今はいいだろう。
「あ、生きてたんすねウィズさん、表から見たらつっぷしてたんで死んで……リッチーだから死んでるか、活動状態になかったんでなんかトラブルでもあったんかと」
藻家は召喚したタウの兵士をミニチュアに戻しながらウィズに話しかける。
そんなときも彼女の言ってたバニルという言葉にどこか覚えがないか記憶を探るが、どこかでの雑談レベルの話だったのだろう、思い出すことは不可能だった。
「店長、ウィズ生きてます?」
「リッチーだから死んでるだろ元から」
「生きてますよ!?リッチーだって生きてるんです!」
「死者の王がなんか言ってら」
そんなことを言いながら藻家はウィズ魔法店を物色していた。
初心者冒険者の街にふさわしくない完全回復薬、百万エリスと書かれている値札を見てそっと棚に戻す。
次の棚を見る、爆発ポーションと書かれている、棚にそっと戻す。
モンスターよけのモンスター吸引機、自爆する魔法杖、中にいる人ごと水浸しにするトイレ。
その他何の役にも立たない、むしろマイナスになるしか効果がない品々、それに気づいたカズマもドン引きな感情を隠しもしない変な顔をしている。
「……テロ専門店か?ここは、それか仲間を合法的に殺人するための店か?」
「ひ、ひどい!バニルさんにもそこまで言われ……たこともあったような気もしますけど!」
「ウィズ、すまんが俺も同意見だ、なんだこの唯一役に立つのが爆発物って!」
「回復ポーションだって役に立ちますよ!?」
「誰も買えねぇもんは店先に吊るす看板と変わらん、そしてその看板は買えない商品なんじゃどうしようもねぇよリッチー」
わかった、このリッチーに商才というものはない、むしろマイナスに突っ切っている、やればやるほど金が吹き飛んでいくタイプのリッチーだ。
リッチーでなければ死んでる。
「ウィズ……失礼なことを言うがウィズは人間時代どうやって生き残っていたんだ?悲劇の死からこうなったパターンか?」
「リッチーって凄腕の魔術師じゃないとなれないらしいっすよ店長」
「戦闘能力と人格に全突っ張したパターンだったか……」
「勝手に納得した!?」
「だって倒そうとした人間を見逃してくれるアンデッドなんてそうそういねぇもん、というかいねぇよそんなお人よし」
「これでも現役当時は氷の魔女って言われたこともあったんですからね!?ちゃんと冒険者してましたよ!怖いって言われるくらいでしたけど!」
「第二の人生楽しんでるようで何よりだよ」
そんな会話をしつつ目的のカニを探しえた俺はそのまま会計に進む。
予定の出費だったがかなりのエリスはかかった、だがその価値はあったことを証明しておこう
「「うますぎる!!!」」