001
模型屋を持ちたい、そんなささやかでもないデカい願いを持ちながら馬小屋にて生活するのは、この俺藻家京志郎である。
この世界に来てからすでに1か月たった、特に問題なく馬小屋と宿屋を反復横跳びする毎日だ。
冒険者に関してはあまりうまくいってない、というよりカエルしか倒してない、冒険者ではなく、アクセルの街のカエルに供給する専門職についている気がする。
だが、ギルドからの苦情はない、むしろ慎重な人なんだなぁと思われているらしい。
そんなことをお供のアストラミリタルムの兵士から聞いた、ちなみに彼はレマンラス戦車兵として呼び出した。
戦車兵さんの仕事は馬車代わりにスペースマリーンの倒したカエルの回収だ、召喚すれば召喚するだけ強いこの能力は雑用代わりにもなるのだ。
まさにチートだが、自分がしたいのはこういうのではないと思う。
やはり模型屋になりたいのだ、まずはウォーハンマーを流行らさねば始まらないのだ、俺の人生は。
ふと悩んでいると目の前に誰かが座る
「はぁー、やっぱりこういうのじゃないんだよな」
「どうしたんですか指揮官殿、どうにもお悩みのご様子、俺にご機嫌取りでもしてほしいので?」
「お前のそういう皮肉屋じみたところには助けられてるよ」
「それはどうも、んでどうかしたんで?」
「いやなぁ……」
そんな悩みに会話をしてくれるのはこの戦車兵さんくらいである、召喚した者はなぜか自我を得る、ボッチを加速させる能力だ。
結局自分同士の会話なのか、仮初の生命でも与えられてるのか、それはわからない、後者ということにしておこう。
ちなみにスペースマリーンは無口な戦士といった感じなので雑談には参加しない、戦闘の時だけ呼び出してくれというのは本人の談だ。
「まずは販売の許可ですかねぇ、何を売るにしてもまずは行動っすよ。」
「行動なぁ」
「こうしてだらだらカエルだけ倒してたらそのまま老人になりそうですよ指揮官殿は」
「手厳しいことを言うね」
「俺がそうでしたんで、このまま農民として死ぬのかなーと思ったらいつの間にか戦車兵っすよ俺」
「ケイディアンだからな君」
さすがに惑星が滅んだとなったら俺も行動に移すくらいはしたいが、とにかく行動かぁ。
よし。
顔をパンと両手で叩く、力を入れるための動作だ。
まずは宗教の像から売ろう、そのために俺はエリス教に許可を得るために歩き出すことにした。
002
その後、それまた数か月後、なんとおっかなびっくり俺は模型屋を持つこととなった。
まぁ馬車のような屋台からだが、これもまた模型屋だろうと思うことにする。
売っているのはスペースマリーンの模型だ、子供の作る暇つぶしにちょうど良いと人気の一品だ。
まだ大人にはあまり売れてない、そもそも似たようなものは既に存在していた。
そこに今までにない遊べるミニチュアゲームというのは、いまだに売り上げがあまりないのが状況だ。
まぁうなぎ上りほどではないが、ゆるやかに伸びているので売れることは売れるのだろう。
まぁ、俺のようにミニチュアを召喚するのにあこがれて、それの技術を真似しようと購入するものもいる。
だがこれはチートが元凶なのでできないだろうな、というのは本音だ。
たまにミニチュアではないオーダーメイドの人形を依頼されることがあるが、これは丁寧に断っている。
ノリがノらないのだ、これは自分の趣味を仕事にしようとしているので致し方なしだろう。
「スペースマリーン!?なんで売ってんの!?というか店員がケイディアンなんだがどういうことだアクア!?」
「さぁ?私が転生させた人間にそういうのが趣味のやつがいたんじゃない?」
そんなことを俺がトイレ休憩の間に騒いでいるのが二人の人型がいた。
まさに今地球の日本から来ましたといったジャージの男と、どことなく神々しい青髪の女がいた・。
「おい、アクア、どういうことだ、この屋台引っ張ってるの戦車だぞ戦車、チートってファンタジーなものだけじゃないのか!?」
「知らないわよ、過去送ってた転生者なんて数多いし詳しく覚えてるわけないでしょ?」
「それだけたくさん死んでるってことじゃねーか!?てめぇだましやがったな!」
「だましてなんかないわよ!そっちが勝手に勘違いするんでしょー!?」
やいのやいのと店の前で騒いでいる男女、今はケイディアンは商売に関してしか反応しないことになっているが、どことなく困っているように見えるのは状況下における印象だけではないだろう。
(上官助けてくれ)
という彼の言葉が聞こえてくるようなのでそろそろ面白がらずに助けるべきだろう。
「おいそこの転生者、俺の店の前で何騒いでるんだ?バイト募集ならギルドで募集中だ」
「バイト募集してんの!?い、いや俺は冒険者になりに来たんだが、あとコイツも」
「それなら道なりにいったとこにあるデカい酒場だ、シュワシュワって飲み物がおすすめだぞ」
「あざっす、よしいくぞアクア!目指せ俺のチートライフ!」
「いやよー!私は信者に囲まれて暮らすの!自堕落な生活を送るのよ!」
大変だなぁと思いながらケイディアンと同時に溜息を吐いた。
「おつかれ戦車兵」
「ほんとっすと、俺本来戦車兵っすよ、なんでオモチャ屋の店員なんすか、もっと巨大なモンスター退治とかに呼んでくださいっすよ」
「んなもん俺が先に死ぬだろうが、上官は生身なんだぞ、コミッサー達みたいな訓練も受けてない一般人だぞ」
「それはまぁそうなんすけど、なんかないんすか、スペースマリーンになれるーとか」
「重ねて言うがな、俺は一般人だ、あんな改造手術に耐えられるとは思えん」
このファンタジーな世界で改造手術ができるのか?と言えばできる、簡単な話だ、したいならメカニカスの連中を呼べばいい、簡単にこの世界を改造手術でいっぱいにしてくれるだろう。
そんなのは俺がごめんすぎる、ので呼ばない、呼ぶとしてもメカのメンテナンスに良識派を呼ぶだけだ。
あと俺は出来る限り生身でいたい、単なるわがままだが、もしなる気ならすぐさまネクロンティール人にでもなっていることだろう。
例外を除いたネクロンが望む生身を捨てる気はない。
「じゃあ異端審問官とかが装着してるパワーアーマーとかは?あと俺とスペースマリーン様はいやでしょうけどゼノの技術から取り入れるとか」
「それは採用だな、なんか使えるのは……タウエンパイアのアレくらいか」
その辺の土をいじる、すぐさま粘土となったそれを円盤型にいじれば完成した、なんと簡素な形なのだろうかと思うが、それは量産されるものすべてに言えることだろう。
「新人のドローンくんだ、なんだったら店員もコイツでいいかもな」
「人間味がなさすぎて逆に売れなくなりそうっすけどね」
「それもそうか、続けて頼むぞ」
溜息を吐くケイディアンをしり目に売り上げを確認する、売れたのはスペースマリーンの設定本とミニチュアセットが二つだった。
これでまた召喚できるスペースマリーンが増えることだろう。
売れば売れる分だけ召喚できる召喚物が増える、それが俺のチートらしいとチュートリアルの女神が言っていた。
スペースマリーン一人とケイディアン戦車兵とレマンラス戦車は初期コストで呼び出せる限界だったらしい。
もっと早く言え。
そんなことを思いながら次のお客様を待っているとこちらに走ってくる二人の人間がいた。
「すみません!バイト募集の紙を見てきたんですが!」
先ほどこちらで騒いでいた地球人ともう一人の女だった。
「あー、冒険者になるんじゃなかったのか?」
「なんか手続きのためのお金が必要だと言われて……」
「アクアなのにぃ、女神アクアなのにぃ」
「なんで泣いてるんだこの女は」
「女神アクアなのに誰も寄付してくれなかったとかなんとか」
「どこのマイナー女神だ、まぁ二人とも採用、冒険者登録のお金稼ぎだけなら短い間だけか?まぁよろしく」
バイター二名が増えました