救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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予告通りエモニの視点です。


第十二話 【Side:エモニ】衝撃の朝

 早朝、日が昇りかけ程の時間に目を覚ました私は、昨日熱を出して寝込んでいてぐっしょりとかいた汗を流すために水浴びをしていた。

 ロティスの編み出した火属性魔法と水属性魔法を合わせて温かい水を出す魔法で桶に温水をためる。

 

「それにしても寝込むほど熱を出すなんて……一体いつぶりだろう?」

 

 ここ数年ほとんど体調を崩さなかったこともあってか、温かい水で体を流しながら思ったことがそのまま口を出た。

 まあ、一日で熱は引いてくれたし、頭痛とかが残ったりもしてないから大したことはなかったんだろうけど……。

 

 そんなことを考えながら続いて石鹸で丁寧に頭から足の先まで洗っていく。

 私たちは二人でじゃないとクエストを受けてはいけないとミリアさんに言われている。

 ロティスに迷惑かけちゃったかな……。

 

 しっかりと全身を洗い流し、熱や寝汗でべたついていた髪や肌をさっぱりさせた。

 

「よし!昨日は行けなかった分、今日はちょっと早く起こしに行っちゃおうかな!……と思ったけどせっかく早起きしたし、朝ご飯を持って行ってあげよう」

 

 うちはこの街一番の八百屋を自称する八百屋だ。

 町一番かどうかはともかく新鮮な野菜や果物には自信がある。

 早起きした私よりもっと早起きしていたお父さんに声をかけて野菜をもらった。

 

「ロティスって何故かお肉にはすごいこだわりがあるんだよね……」

 

 サンドウィッチようにパンを薄めに切って、野菜などの具を乗せていく。

 不思議なほどお肉には辛口なロティスのことを考えて、長い付き合いの中から導き出したロティスの反応が一番良かった切り方焼き方、味付けのお肉を野菜の上に乗せ野菜をかぶせてパンで挟み込む。

 

 そうして出来上がったサンドウィッチに上から少し圧力をかけて整形した後ナイフで半分に切る。

 

「三人分だから、いつもより多めに作って……これでよし!」

 

 私が朝食の準備を終えたころには、ちょうどいつもロティスを起こしに行くくらいの時間になっていた。

 

「お父さん!お母さん!今日もロティスのとこ行ってくるねー!」

 

「おう!気をつけろよ!」

「行ってらっしゃいエモニ!」

 

 今日も元気に早朝から働く両親に見送られながら、私は道を挟んで隣の家に向かった。

 

 コンコンとドアをノックする。

 いつもなら対応してくれるミリアさんの反応が今日はなかった。

 ミリアさんもまだ寝てるのかな?と思いながら扉に手をかけると私の魔力に反応して扉が開く。

 

「あっ……勝手に入っちゃった。まあ、いいか。おーいロティスー、ミリアさーん朝ですよー」

 

 呼びかけながらロティスの部屋の扉を開けて少し嫌な予感がした。

 ロティスがいない。

 部屋の隅々を見渡し、ベッドの下やタンスの中まで覗いてみるもどこにもいない。

 もしかして――――――

 そう考えた瞬間私の頭には数多くの最悪が駆け巡る。

 頭がキリキリと痛み、体が昨日熱を出していた時以上に熱くなる。

 

 いやだいやだいやだいやだいやだいやだ。

 

 でもなんとかその思考を振り払い、隣りのミリアさんの部屋の扉を開けてみた。

 そしてそこで見た光景に私は絶句していた。

 

「……な、な、なんで抱き合って二人で寝てるのよ!!!」

 

 目の前に広がっていた光景。

 それはロティスとミリアさんがひとつのベッドの中で抱き合ったまま寝ている光景。

(エモニちゃんには抱き合って見えていますが、実際にはミリアがロティスを抱きしめているだけ。つまりいつも通り) 

 

「……ウラヤマシイユルセナイ」

 

 右手に魔法を準備する。

 

「水属性下位魔法『ウェーパ』」

 

 ロティスの顔がぐしょぐしょになるくらい、かつ他のものは濡れない程度の量に調整した水を幸せそうにミリアさんの胸に抱き着いている(主観)ロティスに放つ。

 

「うぇっ!?えっ!うっ……なに!?」

 

 いきなり顔に水をかけられたロティスはとても驚いた様子で飛び起きた。

 

「んぅ?どぅしたの?ろてぃす?」

 

 そのロティスにつられてミリアさんも目を覚ましたようだ。

 どさくさに紛れてロティスが離れないように腰に手を回している。

 うらやま――ンンッ。はしたない!

 

「あれ?エモニ?今日は早いね?……というか体調は大丈夫?」

 

 ロティスは袖で顔をぬぐいながら聞いてくる。

 だが、ミリアさんの腕が腰に回っていることを気にする素振りはない。

 これはきっと私の知らないところでやられ慣れてる。

 今度は私もロティスのベッドに入ってやろう。

 

「……大丈夫だよ。朝になったらすっかり熱も引いてすっきりしてた」

 

「よかったね。そんなに重たくなくて」

 

 そう言いながらミリアさんは今度は起き上がってベッドの上に座っていたロティスの太ももに頭を乗せて膝枕をされている。

 許せな――ンンッ。

 

「私も膝枕されたい!」

 

「え?」

 

「ふふっ。それはダメよエモニちゃん。まだ小さいロティスの膝に二人は狭いからね」

 

 思わず本音が出てしまった。

 だが、ミリアさんは真正面から対抗してくる。

 

「じゃあ、同い年の私に譲るべきです!ロティスもミリアさんのこと重いって思ってますよ!」

 

「なっ!そんなことないよ!確かにまだ私の方が背は高いけど、ロティスは力持ちだもん!」

 

「力持ちだろうがなかろうが重いものは重いんですよ!」

 

「重くない!」

「重い!」

 ………………。

 

 私とミリアさんの言い合いが堂々巡りになったところでロティスが一言。

 

「全然重くないし、狭くてもいいならエモニもどうぞ?膝枕くらいならいつでもするから、そんなことで喧嘩しないでよ」

 

「「ロティス……!」」

 

「え?なに?俺今そんな感動されるようなこと言った?」

 

 私とミリアさんは二人同時に感動して、お互いに顔を見合わせる。

 そして――

 

「やっぱりエモニちゃんにロティスを渡すわけにはいかないわね」

 

「ロティスは私のですから!」

 

 ――争いの火蓋が切って落とされた。

 

「えええ……なんか感動してる雰囲気だったのに何でぇ……」

 

 だからロティスのつぶやきは全く耳に入って来なかった。

 

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