救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第十七話 ギルドマスター

 派手ではないが、確かに格式の有る厳かな一室。

 滅多なことがないと一般コントラクターが訪れることのない部屋であるギルドマスターの執務室。

 俺は今そんな部屋に来ている。

 

 「さて、ロティスくん。昨日は申し訳なかったね。そんな昨日の今日でこれまた申し訳ないんだけど、ことが事だったからね。話を聞かせてもらえないかな」

 

 エモニに引っ張られて家に帰らされた翌日、俺は朝からギルドの呼び出しを受けてギルドマスターと対面していた。

 ギルドマスターの装いは服こそゲームの立ち絵とそっくりだったが、顔は全くの別物でメガネの似合う苦労人と言った風貌だ。

 

「話と言われましても……報告した通りですよ。ただいつもより森の魔物が明らかに多くて強くなっていて、ハイオークが森の入口付近まで来ていたというだけで」

 

「いやいやいや、だけってレベルで収めて良い話じゃないよね!?魔物が強くなっていたってどのくらい?」

 

 この様子を見るに、ギルドマスターもダンジョンブレイクの可能性に行きついているのだろう。

 

「そうですね。いつもなら不意打ちの下位魔法一発で倒せるオークが二発当てても倒せず、振り返って反撃をしようとしてくる程度ですね」

 

「ほうほう……ん?いつもなら不意打ちの下位魔法で一発?ロティスくんクラスいくつだっけ?」

 

「クラスですか?昨日エモニと一緒に2に上がりましたよ?」

 

「2ぃぃぃ!?オークを不意打ちの下位魔法一発で倒せるコントラクターがクラス2!?そんな馬鹿な話があってたまるかっ!」

 

 いや、あるんですよ。

 しかもあなたのお膝元であるここのギルドで。

 

「ンンッ。すまない、取り乱した。まあ、ハイオークを撃退するほどだ。そのくらいの実力はあるのだろう」

 

「いえ、それで話はこれだけですか?」

 

 なんだか無性に嫌な予感がして、早々に話を切り上げようとするもそううまくはいかない。

 

「まあ、そう急がないでくれ。ロティスくん、昨日キミが討伐照明として提出してくれた魔核にね。いくつかクラス3のものに色が近いものがあったんだけど……」

 

 ……魔核の色の差が分かるのか。

 俺の目にはどれも同じように見えたが、やはりこれは。

 

「この現象ってダンジョンブレイクの前触れだったり、ダンジョンの階段の守護者が倒されたときに見られる現象なんだよね」

 

 ……え?

 てっきりダンジョンブレイクの話が来ると思って油断していたが、まさかの情報だ。

 

 ダンジョンの階段の守護者。それは間違いなくあいつのことだろう。

 俺が階層主だと思って戦ったあのハイコボルト。

 

 俺が反応しないことを聞き入っていると勘違いしたのかギルドマスターは休まず話し続ける。

 

「ダンジョンって面白くてね。上の階層に行くと同じオークでも強さが全然変わるんだ。ダンジョンの外に出てきてる魔物は1階層から出てきた奴らだったり住み着いてる奴だったりするわけで、ギルドとしても仕事の対象は基本的にその外に出てきてる魔物だから基準はそこなんだけど……」

 

 矢継ぎ早に繰り出されるダンジョンの話を俺の耳は早々にシャットアウトした。

 

 それ以上に気になることがあった。

 ってことは森の外に魔物が増えてるのもひょっとして俺のせいか……?

 いや、ひょっとしなくても俺のせいで間違いない。

 

「……そういう訳で階段の守護者が倒されると、次の守護者が現れるまで別の階層の魔物まで出てきちゃうから外の魔物が強くなっちゃうんだよ」

 

 ちょうど同じことを言っていたギルドマスターの話しが聞こえる。

 

「でね、最近階段の守護者を倒した人はいないんだよ。ダンジョンに入るためにはギルドで届け出を出す必要があるからこれは確認されてる。……ところで」

 

 ……おっと、良くないな。

 非常に良くないぞ。

 

「ところで最近、ミリアちゃんが『ダンジョンの入口でロティスくんを助けた』と報告してくれてね。その時に何があったのか聞かせてもらえるかい?……いや、回りくどい質問はやめよう。もしかしなくてもロティスくん、階段の守護者を倒していないかい?」

 

「………………」

 

 途端に目つきの鋭くなったように見えるギルドマスターの追求に、思わず言葉が止まってしまう。

 

「その無言は肯定ってことでいいかな?ああ、でも心配しないで。別に今回は改まって取り締まろうとも思っていないから」

 

「……その階段の守護者ってやつは基準ランクより強い魔物なんですか?」

 

 もう、変に隠しても仕方がないと思い、気になっていたことを聞いてみることにした。

 

「ん?いや、どうだろう。基本的に基準ランクと同じ魔核が取れるはずだよ?階段の守護者から取れた魔核がどうかした?」

 

「そうですね……これなんですが」

 

 そう言って俺はあのハイコボルトを倒してからずっと持っていた黄緑色の魔核をギルドマスターの前に差し出した。

 

「これはクラス4の魔核だね?ってことはあのダンジョンの最近までの階段の守護者はハイオークだったわけか」

 

 納得納得と頷くギルドマスターに一言。

 

「いえ、違います。ハイコボルトでした」

 

「ハイコボルト……?」

 

 ギルドマスターが繰り返す。

 その言葉には信じられない、いや信じたくないという色が濃く含まれている。

 

「ハイコボルトでした」

 

 念を押すようにもう一度告げるとギルドマスターの顔から血の気が引いていくのが見て取れる。

 

「そ、れは……間違いないのかい?」

 

「はい、間違いありません。それと……魔法をかき消す武器も持っていました」

 

「魔法をかき消す武器!?魔法耐性持ちの武器を魔物が?一体どうなってるんだ!?」

 

 頭を抱えたギルドマスターは、息を荒げながら机を叩いた。

 だが、次の瞬間には冷静さを装った声で言葉を続ける。

 

「……ロティスくん。その魔物は階段の守護者なんかじゃない。それよりもずっと厄介な……確実に上層から降りて来た魔物だ。クラスが基準の一つ上と言うことは……5階層だ!」

 

「つ、つまり……?」

 

 明らかに不味そうな単語の羅列にさすがの俺も冷汗が背筋を伝うのを感じる。

 

「ロティスくんが倒したそのハイコボルトは……」

 

 ギルドマスターの声は震えている。

 

「そいつは……魔族伯爵ストイがこちらに派遣しようとした斥候だった可能性が高い!!」

 

 その言葉が耳に入り、頭が理解する一瞬の間に反射的に全身が強張っているのが分かった。

 

「……嘘、だろ!?」

 

 話のスケールが想定の数倍以上に膨れ上がってしまった。

 俺の予想など軽々と超えて、事態は悪い方向に転がり始めていた。

 

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