救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第十八話 魔族とダンジョン

「魔族伯爵ストイの斥候って……一体どういうことです!?」

 

 確かにゲームの知識として魔族伯爵ストイの存在は知っていたが、魔族って斥候とか使って情報集めとかしてんの!?というのが今の俺の素直な心情だ。

 

「ああ……そうだよね。これは非公開情報だから内密に頼みたいんだけど……ダンジョンって実は魔族の領地なんだよ。正確にはダンジョンゲートによって魔族の領地と繋がっちゃったって言う方が正しいんだけど」

 

 ギルドマスターは俺の反応を見て、ダンジョンのことを知らないと思ってくれたようだ。

 俺は相槌をうちながら、ギルドマスターの話を聞く。

 

「それで各ダンジョンの最高層には魔族における貴族の居城があるんだ。ちなみにダンジョンの規模は治めてる貴族の階級によって違いがあって、ウチの1番近くの光閉ざす森のダンジョンは伯爵領だから5-6階層って言われてるね」

 

 ここはゲームの通りだな。

 ちなみに『絶望勇者』におけるダンジョン攻略はいわゆる無双ゲーのようなイメージでエモニがひたすらに殲滅を続ける。

 クリアすると焼き滅ぼされている魔族領を背景に目からハイライトを失って佇むエモニが映ったリザルト画面を見ることができる。

 ……うん、やっぱり絶望しかないなあのゲーム。

 

「で、ここからなんだけど……どうして斥候っていう話しになるかと言うと、最近王都サンシャインの近くのダンジョンでも、似たようなことがあったらしいんだよ。明らかに基準クラスとは違う魔核を持った魔物が出るっていう……それで向こうの頭のいい研究者とかは魔族領から来た斥候なんじゃないかって結論づけたみたい」

 

 なるほど……ギルドマスターの話だけでは一体何を根拠にと思ってしまう内容だが、頭のいい研究者が言っているならその可能性はあるか。

 

「でもなんで魔族が急に斥候なんて?」

 

 この問題の核心はそこだろう。

 もし、魔族が侵略を企てているなんて話しだったらとんでもない事態じゃないか?

 

「そこは結論が割れてるらしいんだよね。でも魔族が直接出向いて来た訳では無いから、すぐに侵略を始めるってことはないんじゃないかな……それでも対応する必要はあるけどね。実際に王都は本格的なダンジョン攻略に乗り出したみたいだよ」

 

 ふむ、確かにゲームでもダンジョンを統べる魔族の貴族を倒せばダンジョンゲートは閉じていたが……王都近くのダンジョンじゃ攻略は難航しそうだな。

 ゲームでの知識でそう分析しているとギルドマスターのメガネが一瞬、怪しく光ったように見え、何故か嫌な予感がした。

 

「ということでロティスくん。キミの実力を買って、ダンジョンの探索を頼みたい!」

 

「えっ!?俺にですか?ミリアじゃなくて?」

 

 嫌な予感は意外とアリな方向で的中した。

 

「ああ、キミだロティスくん。最近のミリアちゃんはここの領主に気に入られちゃって、遠出の度に護衛依頼を指名されてるんだ。だからミリアちゃんにこれ以上負担をかける訳にはいかなくてね……」

 

 ギルドマスターはせめてミリアちゃんと同じくらいのコントラクターがもう1人、2人居てくれれば……とボヤいている。

 確かに最近のミリアは遠征依頼で頻繁に行ったり来たりを繰り返していると思っていたが、そういうことだったのか。

 

「でも俺、クラス2ですよ?」

 

 俺がさすがに体裁的にどうなんだ?と言おうとするとギルドマスターはその質問を待っていたと言わんばかりにポケットから小さいリング状の何かを取り出し、まるで見たまえ!とでもいうかのように俺に見せびらかす。

 

「これは変装の指輪っていうアイテムでね。クラス4の魔核を加工して作られた指輪なんだ。その能力は名前の通り変装、しかもちょっとやそっとじゃ気付かれない優れものさ!もし引き受けてくれるならこの指輪を報酬の前払いとしてあげちゃおうかな!」

 

「……具体的にどのくらいの変装ができるんですか?」

 

「うーん、ロティスくんならクラス4のコントラクターには見えるようになるんじゃないかな?」

 

 ふむ。これは結構大きいんじゃないか?

 どっちにしても近いうちにダンジョンには行こうと思っていたのだ。

 それをギルド公認件、指輪の力で誰にもバレずに行うことができる。

 

「よし!分かりました!その依頼やらせていただきます!」

 

「よかった!キミならそう言ってくれると思っていたよ」

 

 俺は満足そうに右手を差し出してくるギルドマスターの手をガシっと掴んで固い握手をした。

 

「俺はいつからダンジョンには入ったらいいですかね?」

 

 さすがに今日すぐに行けと言うことではないだろう。

 俺も今のままダンジョンに特攻しても、不測の事態全てに対応できるとは思わない。

 

「そうだなぁ……確かにウチに知らないクラス4コントラクターが突然現れたら悪目立ちしそうだし、一週間後。一週間後に王都から調査員としてコントラクターが送られてくるって話をギルド内に流しておく。そしたら変装した姿でロティスくんにギルドに来てもらって、そこから少しづつ調査してもらう感じで、どうかな?」

 

「分かりました。エモニと依頼もこなさないといけないので毎日という訳にはいきませんが、何とか隙を見てダンジョンの探索してみます」

 

「うん、それでいいよ。じゃあ、よろしくね!」

 

 そう言うと俺に変装の指輪を渡してくるギルドマスター。

 それをありがたく受け取って、執務室を出ようとしたところ背後から声がかかった。

 

「あ~そうそう。その変装、ミリアちゃんには意味ないと思うからくれぐれもバレないように気を付けてね!」

 

「はっ?」

 

 その声に扉に手をかけたまま、振り返る。

 ギルドマスターのメガネがキラりと光る。

 その奥の目は、それはもう最悪なくらいにニヤニヤと笑っていた。

 

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