救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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エモニ視点です。


第三十八話 【Side:エモニ】決意と旅立ち

「もうダメだぁぁぁ」

「天災じゃぁぁぁぁ」

 

「皆さん落ち着いてください!!大丈夫です!ギルドなどの頑丈な建物へ避難を!動けるコントラクターは集まって森へ向かいましょう!」

 

 地震による混乱が渦巻く街の中を声を張り上げながら走り回る。

 ギルドのミナさんを筆頭とした受付嬢やギルドマスターもすぐに対応を始めてくれたおかげで、数分でひどい状況からは脱することができた。

 

 あとは助けが必要な人が居ないかだけ――

 そう思ったとき少し離れた所から不意に名前を呼ばれ立ち止まる。

 

「エモニ!?」

 

「お母さん!早く、ギルドまで行って!もしかしたら家が崩れたりするかもしれないから!!」

 

 私の名前を呼んだのはお母さんだった。

 他の人と同じように声をかける。

 

「違うの!あの瓦礫の下に子どもが――」

 

 酷く焦った様子のお母さんの指がさしていたのは崩れた小屋だ。

 だいぶ古くなっていたが、作業道具置き場のような扱いになっていたその小屋は特に修繕もされないままに放置されていたみたいだ。

 

「分かった!すぐ助けるから離れてて!」

 

 私はお母さんを振り返る間もなく身体強化魔法を発動すると慎重に瓦礫を退かし始めた。

 形も残らないくらいにボロボロに崩れていた小屋を見て、周りの家が崩れなくてよかったと思う。

 

「ウゥゥ、お母さん……」

 

 周りの瓦礫がこれ以上崩れないように、バランスを見ながら撤去作業をしていると中から男の子の泣き声が聞こえて来た。

 

「大丈夫だよ!ボク!お姉さんがすぐに助けてあげるから!」

 

 声かけで生存確認をすることが重要だといつしかロティスの言っていたことを思い出しながら懸命に作業を続ける。

 そうして数分もかからないうちに、無事男の子を救出することができた。

 

「お姉ちゃん!ありがとう!」

 

 先ほどまで泣いていた男の子の表情は打って変わって、前面に感謝を表している。

 

「いいんだよ。それより怪我はない?私のお母さんと一緒にギルドまで行けるかな?」

 

「うん!大丈夫だよ!ありがとう!お姉ちゃん、勇者様みたいでかっこよかったよ!」

 

 そう言う男の子をお母さんに任せ、他に救助が必要な人が居ないかを探して回る。

 それにしても……勇者様か。

 私はそんな柄じゃない。

 それに勇者なら、街で人助けをしている私より、すぐに問題解決に向かったロティスの方だろう。

 

 昔から強くなるための努力は欠かさず、自分に対して攻撃をしてきたコントラクターにも恩情を見せて、なんだかんだ暴走しがちな私たちをまとめてくれる。

 

 勇者というならロティスしかいない。

 少なくとも私はそう思うし、異を唱える奴がいるなら分からせてやりたいとも……。

 

 おっと、いけない、いけない。

 こんな病み思考をしている場合じゃない。

 

「誰かー!いませんかー!動ける方はギルドへ!救助が必要な方が居れば声を上げてください!!」

 

 声をかけながら魔力探知も行う。

 基本的に自分で魔力を操れる人は救助が必要な状況にはならなさそうだが、念のためだ。

 

 ◇◇

 

 こうして街中をひとしきり見て回った後、ギルドに集まったコントラクターたちで遠征部隊を組んだ。

 この街で私の次にクラスの高い「ライ」とかいうクラス4のコントラクターが張り切って仕切っていたから、そっちのことは彼にほとんど任せた。

 

 さて、私は早くロティスのとこに行かなきゃ。

 

「エモニ……森へ行くの?」

 

 遠征部隊と駐留部隊に分かれる件でコントラクターたちが騒いでいる中、私は一人でギルドの外に出ると避難してきていたお母さんに呼び止められた。

 

「うん。ロティスが先に行ってるから」

 

「……止めても、無駄なのね?」

 

 私を見るお母さんの目は辛そうだった。

 その顔は最近よく見るようになった顔。

 私がコントラクターをはじめた頃はすぐ飽きると思っていたのだろう。

 何かを言ってくることはなかったが、クラス3になってからは凄く心配してくれていた。

 

「……ごめん。でもロティスに任せたまま帰りを待って、もし、後悔することになったら私、耐えられないから」

 

 今まではこの活動に何かを言われそうになるたびに、ロティスたちの家に逃げ込んでいた。

 もし否定されたら、自分がお母さんに何か酷いことを言ってしまうんじゃないかと思って。

 でも、逃げてばかりじゃいられない。

 今は、一刻も早くロティスのところに行きたいという思いが背中を押して、お母さんに正面から言葉を伝えられた。

 

「……そう。決めたのね、エモニ。あなたは自分の道を」

 

 震える拳を握り締め、絞り出すようにお母さんは言葉を紡いだ。

 

「うん。私はロティスのいるところに居たい。それが私の生き方」

 

 はっきりと言い切った。

 なんだかんだで有耶無耶にしてきた感情。

 ロティスの周りにはミリアさんが居て、知らない間に私より息ぴったりなユメちゃんも居て、どうしても一歩引いてしまっていた。

 でも、もうやめる。

 私は一歩後ろじゃなくてロティスの隣に立ちたい。

 

「そう……分かったわ。もう、成人だものね。こんなことになっちゃってるけど、エモニ。成人おめでとう。あなたは貴女の生きたいように生きなさい。でも、親より先に死ぬなんてことは許さないからね?」

 

 下唇を噛み締めて、強くそう言い切って見せたお母さん。

 その目には大粒の雫が溜まっていて、思わず私も泣きそうになった。

 

「うん!絶対無事に帰ってくるから!」

 

 それだけを伝えると私はお母さんに背を向けた。

 こんなところで涙を見せて、締まらないなんて笑えない。

 泣くなら、全部終わった後だ。

 

「じゃあ、行ってきます!」

 

 目に捉えるのは正面だけ。

 今は振り返っている時じゃない。

 ロティスのいる森を目指して、私は走り出した。

 

 ◇◇◇

 

「大きくなったわね……」

 

 走り去るエモニの後姿を見つめながら、エリアが隣の男に話しかける。

 

「オォォォォン……エモニィィィィ……」

 

「ちょっとあなた!泣きすぎよ!せっかくしみじみと感動していたのに、私の感動が吹き飛んだじゃない!!」

 

「ウオォォォン……エリアァァァ……エモニがぁぁぁ……」

 

「はいはい……でも泣くのは帰ってからにしましょう?ここじゃ恥ずかしいわよ」

 

 口ではそう言ってみるも娘の旅立ちを旦那と見送れている現状に満足げな顔を浮かべるエリアだった。

 

 そのあと恥ずかしげもなく大声で泣く大男を見て、避難してきていた子供たちがまた泣き喚き、混乱の第二波が起きたのはまた別のお話。

 




どうやらエモニちゃんは感情を抑えていたそうです……?
次回はミリアとエモニの視点です。
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