救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第四話 幼馴染エモニ

 この世界で再び目を覚ましてからどのくらいがたったのだろうか?

 正確な時間は分からないが、俺が歩けるようになっているあたり多分3歳くらいだろう。

 目を覚ました時も言葉にはならなくとも意志を持った音を出せていたのだから2歳くらいの時に転生してきたのではないかというのが今の俺の考えだ。

 

 さて、今日の俺はと言うと……。

 

「ロティス!はい、あーん」

 

 形や色の問題で売り物にならないとかの理由で余っていた果物を使ったおままごとをエモニと一緒にしていた。

 

「エ、エモニ。さすがにもうお腹いっぱいだよ」

 

 多分りんごであろうその果物を次々に食べさせられ、ちょうどこれでまるまる1個分になろうかという勢いだ。

 3歳児にしては頑張った方なのではないだろうか。

 

「む、確かに。パパに貰ったりんごがもうないや。じゃあこの最後の1個はロティスが私にあーんして」

 

 そう言ってエモニはりんごの刺さったフォークを俺に渡してきた。

 

「わかったよ。はい、あーん」

 

 ハムっと音が聞こえてきそうな可愛い口でリンゴを食べるエモニ。

 ああ、ゲームが始まる前の、過去イベ回収助かる〜。

 

 物心ついた時からずっと一緒にいた幼なじみがいきなり殺されたらそりゃ闇堕ちするよな……でも安心してくれエモニ、俺はこの世界を知り尽くしている。

 俺は死なずにエモニの笑顔も守る、きっとそのために俺は転生してきたのだから。

 

 久しぶりに思い出した過去イベという言葉でこの世界がゲームの世界だということを再認識する。

 とはいえセーブもなければ、インベントリなど各種機能も存在しないそんな世界で俺は現実では不可能だったことをやり遂げなくてはならない。

 

「エモニ、次はおままごとじゃなくて魔法の練習してみないか?」

 

 この世界を生き抜く、さらには攻略不可能だったあいつを倒すための特別な手段は無い。

 そんなことはこの世でも前世でもきっと俺がいちばんよく知っている。

 だったら俺はあいつを超えるほど強くなるしかない。

 そのためにはやはり魔法だ。

 この世界における実力のほぼ全てを担うと言ってもいい魔法。

 魔法を鍛えないことには新しいエンディングにはたどり着けない。

 

「まほー?」

 

「そう。魔法だ。使えたらかっこよくないか?」

 

 エモニは多分まだ魔力を知覚していないのだろう。

 いや、知覚はしていても意識していないのか。

 でも、エモニにはかっこいいの一言で充分だったようだ。

 

「やるっ!」

 

 勝手な想像で女の子はかわいいの方が喜ぶものだと思っていたが、可愛いの対象にあたるものが極端に少ないこの世界ではかっこいいの方が小さい子には男女問わず反応がいい。

 

「パパ~ロティスと裏庭行くねー」

 

 かっこいいという言葉でやる気を出したエモニは八百屋の店番をしていたお父さんに声をかけ、誘った側の俺の手を引いて自宅の裏にある庭へ連れ出した。

 

 エモニの家の裏にはそれなりの広さの畑がある。

 ここはゲームでは訪れることができなかった場所なので絶望勇者の廃ゲーマーとしては感動ものだ。

 

「この辺なら広いし、魔法使っても大丈夫そうじゃない?」

 

「ああ、これだけの広さがあれば十分だ」

 

「でも、魔法って難しいんでしょ?ロティスできるの?」

 

「できるよ。きっとエモニもすぐできるようになるからちょっと見てて」

 

「うん!」

 

 さて、どの魔法を見せようか……。

 エモニの得意魔法は勇者魔法だから、五大属性魔法の適性はゲームでも明言されてなかったんだよな。でも、俺が全属性を使えるってことはエモニも使えそうだし、何でもいいか。

 

「よしじゃあ、行くぞ!土属性下位魔法『ガンジュ』」

 

 右手を上に向けて手のひらサイズの土の塊を魔法で生み出した。

 使った魔法は土属性。

 ミリアの得意魔法で今までも何度も見て来たから、今では俺にとっても一番使いやすい魔法になっている。

 

「ロティスすごい!お団子魔法だ!」

 

「お団子?」

 

 そう言われて、改めて自分の作りだした土の塊に目を向ける。

 ……すげえ、俺泥団子づくりの才能でもあったのか?

 

「すごいすごい!どうやったらいいの?私もお団子作りたいっ!」

 

「よし、じゃあ手を貸してくれ。魔法を使えるようになるには魔力に実際に触れてみるのが一番だからな!」

 

 魔力に触れることは実際に一番重要なことなんだと思う。

 俺も日々ミリアに背負われて、戦闘について行っていたおかげで俺の魔力への適応力は上がったのだと思う。

 

「はい。これでいいの?」

 

「いいぞ。じゃあ、いくからな。右手に集中だ!」

 

「うん」

 

 神妙な面持ちになるエモニの様子をしっかりと確認してから、魔力を流す。

 

「わっ!なにこれ!なんか、変な感じ」

 

 慣れない感覚なのか、少し顔をしかめているがやはりすぐに魔力を感じ取ることができたようだ。

 

「この変な感じが魔力だ。これを自分で使えるようになれば、さっきの泥団子も作れるようになるぞ!」

 

「!分かった!どうすれば私もロティスみたいに使えるの?」

 

「うーん、そこが難しいんだよな~。あ、でも詠唱するといいのかもしれない」

 

「えいしょー?」

 

「そう。さっき俺が土属性下位魔法『ガンジュ』って言っただろ?あれが発動する魔法を選択する鍵になっているんだ」

 

 詠唱はある程度の魔法のイメージを固めるためにあるものだと思う。

 実際に慣れてくると詠唱なしでも火を出してみたり風を吹かせて見たりすることはそこまで難しくない。

 

「がんじゅ?」

 

「そうそう。それがさっきの泥団子を作った土属性下位魔法の名前なんだ」

 

「そうなんだ。じゃあ私もやってみる!」

 

「おう!頑張れ!」

 

 俺はミリアの魔法をさんざん見てから使うようになったけど、エモニはどうだろう。

 

「土属性下位魔法『ガンジュ』!!」

 

 一瞬使えないかも、と思った俺の心配は杞憂だった。

 畑の土が大きく盛り上がり、俺達の全身分はありそうな土の塊が目の前に出現した。

 

「これは……」

 

 さすがは主人公と言ったところか。

 確かに勇者なら魔法の扱いに手間取ってるイメージってないしな。

 

「ええ!?なにこれ!?全然お団子じゃないよ!」

 

「最初からこれだけできればすごいさ!練習すればすぐにできるようになるよ!」

 

「ほんと?」

 

「もちろん!だから練習しようぜ!」

 

「うん!」

 

 こうして綺麗な泥団子づくりを目指すエモニによって、ちょうど作物の植えられていない部分の畑が荒れに荒らされ、様子を見に来たエモニのお父さんに非常に怒られたのは言うまでもない。

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