救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第四十話 俺の物語

 俺が無限を抜刀するとその瞬間、ミリアの姿が消えた。

 

「ミリアっ!?」

 

「ハッ、仲間にも逃げられたか?そのような曲芸、私に通用すると思うなよっ!!!」

 

 嘲るような言葉と共に、回復した爪で俺へ向かってくるヒルウァ。

 

「一刀でも優勢だった俺が二刀になった途端に不利になるはずがないだろう!」

 

 救世主の魔力を纏わせた二振りの刀で応戦する。

 ミリアのことは気になったが、今は気にしている場合じゃない。

 とそう思ったとき、頭の中にユメではないがなじみ深い声が響いた。

 

「久しぶり!ロティス!また私を使って!!」

 

「え?」

 

 その声はここに来てから初めて聞いた肉声であり、これまで当たり前に聞いてきたあの声。

 

「ミリ……ア……?」

 

「うん!実は刀でしたー!ってさすがにびっくりした?」

 

 斬った傍からまるで再生するように回復してくるヒルウァを斬り続けながら、何時にも増してテンションが高めのミリアと会話する。

 

「ミリアが『無限』だったってことなのか?昔から」

 

「そうよ。あなたが茂から私を受け取ったときにあの刀に宿った意思。それが私」

 

 ……なるほど?

 いや、確かに?確かに良い刀には意思が宿るって話を聞いたことはあるけど……そもそもどうやって俺の転生についてきたんだ?

 実家に置いていたはずなのに……最後に振ったのは24の正月に帰った時……。

 

「ロティスっ!ワシを除け者にして話しを進めるでないっ!これはどういうことなのじゃ!!」

 

「あ、ユメちゃん。ごめんね、ロティスの愛刀ポジションには私がもう25年以上前から座ってるの。だからまあ、そう言うこと」

 

「何がそう言うことじゃ!!!何を言っているのかは知らんが、ロティスの愛刀は誰が何と言おうとワシじゃ!」

 

「いやいやいや、私だから!」

 

 ……なんだか見慣れた光景だな。

 今は二人とも刀になっているのに言いあっている光景が如実に目に浮かんでくる。

 でも、この調子のおかげで意外とすんなり衝撃の事実を受け容れることはできた。

 

「まあまあ二人とも、そろそろ集中してくれよ?あいつを倒しきるには、二人と俺の力を揃えないとなかなか厳しそうだ」

 

 どれだけ斬っても次々に再生してくるヒルウァに、致命打を食らわせるには二刀流の最大火力をぶつけるしかないだろう。

 それには二人の協力が必要不可欠だ。

 

「ふ、フンっ!まあ、ロティスが言うなら……」

「私はロティスのためなら何でもするわ!」

 

 まだまだいがみ合っていそうな二人だが、力を合わせる分には問題なさそうだ。

 下手に従順すぎるより、こうやって自分の意思を持っている二人の力を合わせられる方が力が出る……気がする。

 

「貴様……私との戦いに集中していないのか?先ほどから太刀筋に鋭さが消えているぞっ!!」

 

 鋭い爪の一突きが頬を掠める。

 ヒルウァの聖魔法は驚異的だ。

 どういう訳かこの魔法の底も見えない。

 先ほどから、聖魔法による持続的な回復+圧倒的な膂力で俺が押されそうになることも増えてきている。

 

 集中しろ……こいつは正史では俺の、ロティスの命を奪っている。

 この世界でもそう言った強制力が働かないとも限らない。

 

 ふぅっ――と大きく息をつく。

 ヒルウァの猛攻を受けながらでは、型を作っている暇はない。

 だとすると――

 

 俺は隙を見て上空の様子を窺う。

 透き通った闇がどこまでも続くような濃紺の夜空が広がっている。

 

 ヒルウァが両の爪を刺すようにして突き出してくるのをわざと救世主《ヘラクレス》の魔力を外したユメと無限(ミリア)で弾き上げる。

 

「ぬぅっ!救世の力は打ち止めか?」

 

 ずっと斬られていた爪が突然弾かれたことによって、ヒルウァの猛攻に一瞬ラグができる。

 そして俺はこの一瞬を見逃すほどヤワなゲーマーでも剣士でもない。

 その一瞬の隙に風魔法で俺は上空に大きく飛び上がる。

 

 この一手で、決める。

 

 飛び上がった上空で刀を構えなおす。

 足腰が入らない分は重力で補う。

 

「魚谷流二刀術『竜頭龍尾』」

 

 一刀目で竜をも上回るような一撃を放ち、一刀目の勢いが落ちてきたところで二刀目を叩き込むことで、はじめの勢いを超えた威力を生み出すこの技。

 一刀目にはユメを二刀目には無限を振るう。

 

「これで……終わりだっ!!」

 

 気合いと全力の魔力を込めた渾身の一撃。

 

「この私が……負けてなるかぁっ!!」

 

 ヒルウァも聖魔法を全開にして受け止めようとする。

 しかし――

 

「残念だけど、もう間に合わないわ」

 

 俺の中のミリアが言い切る。

 

「私に宿った能力……それは無数の斬撃。昔のロティス風に言うなら、いわゆるスリップダメージ。それも解除不能の、ね」

 

 絶対的な自信が感じられるミリアの発言。

 自信の通り、その効力はすさまじく――

 

「私の回復が……間に合わないっ!?」

 

 ミリアの能力は再生を超えるスピードでヒルウァの身体を斬り刻んでいく。

 ヒルウァも何とか再生しようとしているが、圧倒的な物量にはさすがに追いつけないみたいだった。

 

「チッ、この……私が……救世主とはいえ……人間ごときに敗れるとは……。ハハハッ!いいだろう……この勝負……私の負けだ。見事……だ。今代の救世主よ!」

 

 なぜか最後には満足そうにしているヒルウァを見つめる。

 灰が舞っていくように体が崩れていくヤツを見て実感が湧いてくる。

 

 人語を介す魔王軍の将軍の一人、魔将ヒルウァ。

 ゲームでは絶対に倒せなかった無敵のイベントボス。

 

 そいつを倒したんだ!

 

 改めて周囲を見渡すと、ミリアが倒したのであろう魔物や魔族の夥しいほどの魔核が散らばっている。

 そして、俺の視線は一人の女の子を捉えた。

 いつの間に来ていたのだろうか。

 すごい勢いでこちらに駆け寄ってくる彼女。

 

 でも、俺は救ったぞ……俺の命を、幼馴染の闇落ち展開を。

 

「う、うわぁぁぁ!ロティス、ロティス!!凄い!すごいよ!!」

 

 ああ、努力した甲斐があった。

 俺はこの笑顔を守りたかったんだ。

 

「エモニ、顔がすごいことになってるぞ」

 

 涙や鼻水でぐしゃぐしゃな幼馴染。

 でも、その奥には一点の曇りもない満面の笑みがあった。

 

「だって、だってぇ……みんなもうダメだって!さっきミリアさんも急にいなくなっちゃうし」

 

 街の対応を任せきりにしてしまったせいで大分不安にさせてしまっていたみたいだ。

 

「でも、勝っただろ?」

 

「ゔぅ……うん!がっごよがっだぁぁぁ」

 

 ぐちゃぐちゃになった酷い顔で、それでも最高の笑顔で飛びついてくるエモニを受け止める。

 

 この笑顔を目に焼き付けようとジッとエモニを見つめたあと、ふとエモニから目を外すと、クラス7を示す赤色の大きな魔核が転がっていた。

 

 これを見ると段々と実感が湧いてくる。

 こうして、俺はゲームではどうやっても無理だった、ロティスの生存とエモニの闇落ち展開を避けるという目標をやり遂げた。

 

 さて、こうしてやり遂げたわけだが……一体これからどうなるんだ?

 

 本来ならここでエモニが勇者覚醒を果たして、魔族を殲滅し、世界は平和にエモニはより孤独になっていく物語。

 

 だが、今しがた俺が、その勇者覚醒のフラグを叩き折ってしまった。

 だって死にたくなかったから……。

 エモニの顔が曇るのを見たくなかったから。

 

 結果として魔将ヒルウァを討伐することは出来たものの、この世界に勇者は誕生していない。

 

 まあ、先のことは明日の俺に任せればいいか!

 この先がどうなっていようと、俺達が未来への可能性を掴んだことに間違いはない。

 それに今はこの余韻に浸っていたい。

 

 人の姿に戻ったユメとミリア、泣き止み、涙を拭うエモニ。

 三人の顔を改めて順番に見ていく。

 彼女たちのおかげでここまでやってくることができた。

 

「力を貸してくれてありがとうみんな!」

 

 心からのお礼。

 俺一人じゃ、どうやってもあの魔将ヒルウァを倒すことは出来なかった。

 

「私はまたロティスに振るってもらえて嬉しかったわ!」

 

 なんと前世の愛刀『無限』だったミリア。

 正直そこはまだ全然理解が追い付いていないけどな……。

 

「フンっ!ロティスの愛刀はワシじゃ!身の程をわきまえよ!ミリア!!」

 

「いやいや、ユメちゃんはもう()()()()()()だって頭が納得してたけど、今ミリアさんどこから出てきたの!?ミリアさんまで刀だったってこと!?しかもまたって、ロティスはミリアさんが刀だって知ってたの!?」

 

 俺のお礼に反応してくれたのはミリアだけで、もういつもの俺達のような騒がしい一幕が訪れる。

 

 まあ、原作があれだけバッドエンドだらけだったんだ。

 俺の物語(オリジナルストーリー)はこのくらいがちょうどいいだろう。

 

 ◇◇◇

 

 ひとしきりわちゃわちゃと騒いだ後、後続で向かって来ていたコントラクターたちが俺たちのいるダンジョンゲート前まで追いついてきた。

 

「俺達も加勢するぞぉぉぉ!……って――」

「「「ええぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」」」

 

 可憐な少女たちの笑い声の中に、野太い男たちの驚愕の声が混ざる。

 

「お、おい!この魔核……一体いくつあるんだよっ!?」

「まてまてまて、ありゃあ俺の見間違いか?黄色の魔核が見えるんだが……」

「み、見間違えじゃねぇっ!これを……あの四人が……!?」

「み、ミリアちゃんはまだしもあのロティスとエモニちゃんはクラス4だろ?それにエモニちゃんよりも小さい女の子もいるぞ!」

 

「あー、これは後処理が大変そうだな……」

 

 彼らの反応を見て、めんどくさいことになる未来が頭に浮かんだ。

 それにしても、この数の魔物や魔族を屠ってからヒルウァと一人で戦っていたミリア……うん、強すぎる。

 

「私にはロティスへの愛があるからねっ!このくらいなんともなかったよ」

 

 そんなことを考えていると俺の思考を読み切ったようにミリアが胸を張る。

 

「あの魔族には手も足も出ていなかったヤツが何を言っておるのか」

 

 そんな様子のミリアに呆れ半分、嫉妬半分な表情で皮肉るユメ。

 

「でも、あの魔族を倒したのは私の斬撃だよ?ユメちゃん?」

 

「なんじゃと、あれはワシの一撃あってこそじゃろう!」

 

 どちらかが手を伸ばせばすぐにでも取っ組み合いが起こりそうな距離でにらみ合う二人。

 あーあーまた始まってしまう……。

 

「二人とも、後のことはあの人たちに任せて俺達は帰ろうぜ。な、エモニ!」

 

「え、あ、うん!さぁ、帰ろう?今日はほんとならロティスと私のお祝いの日なんだからっ!!」

 

 見たことのない表情でゲートを見つめて固まっていたエモニに声をかけ、この場を後から来たコントラクターたちに任せて、俺達は先に街へ戻ることにした。




ここまで読んでいただきありがとうございます!

今話を持ってヒルウァを倒し、冒頭のシーンまでつなげることができました!!!
正直自分でも難しい書き方をしてしまった……と少し後悔していたのですが(苦笑)そこそこうまくいったかな?と思っています。

今話で第一章は終わりとなりますが、ロティスの物語はこれからが本番です。
と言っても、この先の展開はまだまだ思考中なのですが……。
とりあえず何話か閑話をはさみつつ、続きも書いていこうと思います!

この先の展開も楽しみにしていただける方。
愛の大きな三人とロティスとの関係が気になる方。
それ以外にもここまで読んでくださった方、皆様の評価やコメント、お気に入り登録を見るたびににやけております。本当に感謝です!

一章完結記念に評価をいただけると小躍りしながら喜びます(笑)
今後とも応援をよろしくお願いします!
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