救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第一話 当然の来訪者第一話

「なんだよ、厄介ごとって……」

 

「む?その顔、信じておらぬな!?ワシの忠告を聞かんと痛い目を見るぞ!」

 

「そう言われてもなぁ……厄介ごとがひとつ片付いたばかりなのにそんな、ゲームの主人公みたいなことになるかねぇ……」

 

 含みを持たせるように言うユメを軽くあしらいながら玄関へ向かう。

 

 コンコンと何度も繰り返される催促のノック。

 

「あ~はいはい、今出ますよ!」

 

 ガチャリと音を立てて扉を開ける。

 

 目の前に現れたのは怪しさが人の形を模ったとでも言い表せるような男。

 

 元の世界でもやたら綺麗なスーツを着てる奴ってすごいシゴデキかちょっと怪しい奴だったからな……気を付けよう。

 

「ちょっと込んだ話がありまして……中へ入れてはくれないかな?ロティスくん?」

 

「その声は……まさかお前!?」

 

「まあ、詳しいことは中で……ね?」

 

「入れるわけないだろうがよ!もうお前らの侵攻拠点だった教会の像もミリアが破壊済みだ!今ここで引導を渡してやる!」

 

 扉を開けた俺達の前に現れたのは三年前までギルドマスターに化けていた魔将ヒルウァの部下、アインだった。

 

「ユメっ!」

 

「ほれみろ!言わんこっちゃない!」

 

 刀の姿になったユメが叫びながら刀に宿る。

 

「魚谷流刀術――」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!ヒルウァ様を殺したキミに私が勝てるわけがないだろう!」

 

「問答無用!『空じ』」

「まてまてまて待ってくれ!ここじゃ、キミの家も壊れるんじゃないかねっ!?」

 

 確かにここでは玄関ごと斬ってしまう。

 

「……何の用だ?」

 

「少し込み入った話だから入れてくれないかい?さすがにここでは他の人に見られるとまずいだろう?」

 

 確かに、魔族だということに気づかれなくとも、夜に玄関でスーツにグラサンの怪しい男と口論していたなんて噂をされては困る。

 

「……おかしな動きを見せたら即刻斬る」

 

「それで構わないよ」

 

 ユメの柄からは手を放さずに、アインを家に入れることにした。

 

 ◇◇

 

「ほう、これが救世主の育った家なのか……」

 

 入るなり家の中をじろじろと見始めるアイン。

 軽くユメを抜いて見せるとすぐにテーブルに着いた。

 

「それで?込み入った話って?」

 

「ああ、それはね……」

 

 件の話に触れた途端、アインは佇まいを正し、こちらにまっすぐ向かい合った。

 

「こんなこと、頼める義理ではないんだけど……魔王様を救ってはくれないか?」

 

 そして、傍から見ても必死さが見て取れるような表情で言い切った後深々と頭を下げた。

 

「……どういうことだ?」

 

 魔族は人を欺く者、それはよく理解しているつもりだ。

 だが、今のアインからは誠実さしか感じ取れない。

 もしここまでコントロールできているのだったら、もうお手上げだ。

 

 とりあえず今は話しを聞くことにした。

 

「言葉のままだよ。三年前、魔族内での対立について少し話したことは覚えているかい?」

 

「ああ、ストイがどうのこうのって話だったな?それがどうかしたのか?」

 

「ああ、その話だよ。詳しくは魔族内の貴族と魔王様との対立なんだ。魔族内の貴族……魔貴族とでも呼ぼうか。彼らは自分の支配域を持つ存在だ」

 

 アインは滔々と語り始めた。

 

「魔族は皆、魔王様の配下であることに違いはない。しかし、自分の支配域を持っているものは魔王様の支配力に対抗する力を持つんだよ。それに比べて、どれだけ強い力を持っていても魔将は魔王様の支配力に逆らうことができない。忠臣だからね」

 

 語るアインの表情はどうしようもなく暗い。

 厚いサングラスがそれに輪をかけているようにも感じる。

 

「ある日突然魔王様がヒルウァ様を自分の城へ呼びつけた。そしてそこで支配力を発揮されヒルウァ様は魔族伯爵ストイの領地への侵略を命じられた。当然ヒルウァ様は反対なされた――が、その支配力に逆らうことができず、私を含めた数人に勇者を探すように言い残して、10年ほど力をつけるための閉関修業に入られた」

 

「その間にお前がこの街に来ていたってことか」

 

 どうやら魔王がご乱心ということらしい。

 

「その通り。そして、三年前のあの日ついにヒルウァ様が閉関修業から出て来られた。正気を失った状態で……。その日からヒルウァ様による魔族伯ストイへの攻撃が始まってしまったんだ。あの時キミが倒してしまったハイコボルトはそのことを私に伝えるための伝言役だったんだよね」

 

「それで、あの反応だったってわけか」

 

 いつもなら何かを言ってきそうなユメも今回ばかりはおとなしくしている。

 

「まあ、結果として状況は伝わったから、問題はなかったけどね。そして、そんな中キミはダンジョンで転移魔法を植え付けられたグレムリンと戦い、その刀を持ち帰った。その時に思ったんだ。キミは救世主なんじゃないかって。だからキミにかけてみることにした。その最終段階がこの間のヒルウァ様との戦いだったわけさ」

 

 なんとも信じがたい話だ。

 要するにこいつは俺が三年で俺が魔将ヒルウァを倒せるだけの力をつけることにかけたと言っているんだ。それ以上にすべてを三年前に見越したうえでそれを実現して見せたわけだ。

 ……こいつは一体――

 

「三年間苦労したんだよ?ストイは死ぬし、敵味方問わず壊滅的な被害を受けたし……三年間あのダンジョンの5階層にヒルウァ様を閉じ込めておかなきゃだったからね」

 

「なっ!?ヒルウァと三年間戦い続けていたってことか?」

 

「まあ、そうとも言うね。最後の方はヒルウァ様も理性を取り戻してくれたけど……」

 

「そう言えば確かにヒルウァはちゃんと意思を持ってそうだったな……その支配力とやらはどうしたんだ?」

 

「魔王様からのヒルウァ様への支配力の行使はストイ伯領地への侵攻まで。それが終わってしまえばそこまでの洗脳はなかったからね。そして最後には私の計画に乗ってくれたし」

 

「計画?なんの話だ?」

 

「勇者を覚醒させるための計画だよ。まあ、うまくはいかなかったけどね」

 

 アインの口から発せられたのは衝撃的過ぎる一言だった。

 

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