救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第三話 見抜く者、燃える者

「ふぅ……何とかなりましたか。これでヒルウァ様の犠牲も無駄にはならない」

 

 ロティスの家を出たアインは玄関を出たすぐ先で空を見上げ、少しの間黄昏ていた。

 人を騙し、惑わし、欺く存在の魔族が正面から人に頼みごとをしたのだからいくらアインといえども油断していたのかもしれない。

 

「ま、ぞく?」

 

「!?」

 

 声の方向に振り向くアインの目に映ったのは、小柄な少女だった。

 

「そこは、ロティスの家のはず。どうして魔族がでてくるの?」

 

 驚き身構えたアインだったが、少女の態度はどうやら思っていたものとは違ったようだ。

 

「……なぜ、私が魔族だと?」

 

「私には……見えるから。覆い隠されたものの正体が」

 

 それを聞いてアインには思い当たる節があった。

 

「なるほど……あなたが月の眼ですか」

 

「……私を知ってる?」

 

 今度は少女が驚く番だった。

 その呼び名を知っているのは自分の家と深いつながりのある者だけのはずだから。

 

「まあ、私も少し王都に伝手がありまして。それより彼に用ですか?なら早くした方がいいかと。今ならまだリビングにいるはずですから」

 

 それだけ言い残してアインは煙となって闇に解けていった。

 

「あっ……。なんなの?あのへんな魔族。もしかして魔族ってみんなああなのかな?」

 

 魔族にあったというのに物怖じ一つしない少女はロティスの家の扉に向かって歩き出した。

 

 ◇◇◇

 

「のう、ロティス。王都にはいつごろ向かうのじゃ?」

 

 早くも王都に興味津々になったユメが待ちきれないと言わんばかりに聞いてくる。

 

「う~ん、とりあえずミリアが帰ってきてからだな……もしヒルウァクラスを相手にするなら無限も持っていた方がいいし」

 

 それに黙って行こうものならミリアとエモニがどうなるか分かったものじゃない。

 

「む……まあ、確かにあの刀もそこそこ悪くはないからの。それでもワシの方が上じゃが!」

 

 フン!と胸を張るユメの頭を撫でながら、恐ろしい想像をかき消す。

 すると、またも玄関のドアをノックする音が響いた。

 

「ん?アインがなにか言い忘れて戻って来たのか?」

 

「いや、あやつの気配ではないのう。……女じゃな」

 

 ジトっとした目で俺を睨むユメ。

 ……全く身に覚えはございません。

 

「と、とりあえず出てみるか」

 

「フン!」

 

 せっかくご機嫌になったのに……いったいどこの誰だ?

 エモニならミリアが居ない今日は飛び込んで入ってくるだろうし、エリアさんとか知り合いの女性ならユメがこんな反応をするはずがない。

 

 今日はなんなんだという思いで少し億劫に感じながら扉を開いた。

 

「あっ……こんばんはロティス」

 

「はいはいこんばん……え?だれ?」

 

 扉を開けた先に居たのはどことなく見覚えのある少女だった。

 うーん……どこで見たんだっけ?

 このちまっとした感じとか髪型も見覚えあるんだけど……。

 

「中、入れてほしい」

 

「……ちょっと待って、誰だっけ?」

 

「む……今日の昼にこっち見てたくせに」

 

 今日の昼?

 今日は朝から変装してギルドに居て……昼にはエモニに見つかって……って、ああ!

 

「……王都から来たコントラクターたちと一緒にいた、えっと……クラリスちゃん?だっけ?」

 

 その顔をしっかりと見てようやく気がついた。

 今家にやって来たこの少女は、ギルドでライが絡んでいた王都のコントラクターたちのうちの1人だ。

 昼に見た時はメガネをかけていたが、今はかけていないせいで余計に分からなかった。

 

「そう。私はクラリス。わかったからもういいでしょ?」

 

 ……何がどういう理論でいいのかよく分からないけど、まあワケありっぽいし……エモニに見つかったら厄介なことになりそうだからもう入ってもらうか。

 

 もうすぐ夕飯を持ったエモニが突撃してくる時間のため、早く片付けてしまわないと面倒事になるには目に見えていた。

 

「はぁ……まあいいよ。何も無いけどどうぞ」

 

「うん、お邪魔します」

 

 ◇◇◇

 

 何故か隣に座りたがるクラリスをユメの反対側の椅子に座らせてテーブル席なのに公園のベンチのような状態の中クラリスが話し始めた。

 

「ロティス、王都に来て」

「また、唐突な……」

 

「ロティス!まずはワシにこの女を紹介せい!」

「はぁ……」

 

 エモニが来なくても十分に厄介な状況になっていた。

 

 ◇

 

 何とかユメに説明したあと、本題に入る前にひとつ気になっていることを確かめることにした。

 

「なあ、クラリスちゃん。なんで俺の家がわかったんだ?ギルドで誰かに聞いたとしても、あのクラリスちゃんのボディーガードみたいな男が1人で来させるとは思えないんだけど」

 

「クラリスでいいよ。あとその質問に答えるにはロティスが協力を約束してくれるのが条件」

 

 ふむ。なかなかに厄介事の予感がする。

 

「ああ、わかったよ。じゃあ先に話を聞かせてくれ」

 

「うん、わかった。今王都では救世主を探してる。だからロティスが必要。これでいい?」

 

「うん。いいわけがないよね?なんで救世主を探してるの?」

 

 これは……長引きそうだぞ……。

 エモニ、まだ来てくれるなよ……。

 

 ◇◇◇

 

 今日もいつも通りロティスにご飯を持っていこうとして、家を出た。

 今日はミリアさんがいないから、いつもよりちょっと早めに出たんだけど、そのせい、いやそのおかげで私は決定的瞬間を目撃してしまった。

 

「誰?あの子???なんでロティスの家に入っていったの?」

 

 ……いや、待って私。

 見かけない顔だったし、道に迷ったのかも。

 ロティスはなんだかんだで優しいから、すぐに出てきたら許してあげよう。

 

 ………………

 ………………

 ………………

 

「遅い、遅すぎる!絶対道に迷ったとかじゃない!」

 

 私の心に炎が灯った。

 

「問いたださなきゃ!!」

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