救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第四話 妹みたいな子

「なんで救世主を探しているのか?そこを知りたいんだけど?」

 

 何でもないことのようにあっけらかんといいのけるクラリスに冷静に突っ込む。

 

「あ、救世主ってことは否定しないんだ」

 

 ……そう言えばそうだった。

 アインに救世主救世主言われすぎて、なんとなく自分でも周知のことのように思ってしまっていた。

 

「ンンッ、じゃあそっちから聞かせてくれるか?どうやって俺が救世主だってことを知ったんだ?それを知っているのはごく一部の人と魔族だけだと思うんだが」

 

「それは私の魔法、天眼通《ヘカテー》のおかげ。私には隠し事ができない」

 

「なんだその魔法?俺の救世主みたいなものか?」

 

 天眼通って名前的にすべてを見通す力ってところだろうけど……。

 ってか元日本人としては……めちゃくちゃ憧れる力だな。

 救世主もかっこいいけど天眼通は刀を扱うものとしても憧れる。

 

「うーんと、ちょっと違う……かも?」

 

 実態についてはクラリス自身もよくわかっていないらしい。

 まあ、俺も救世主の力がどういう物かよくわかってないしな。

 

「で、その天眼通で俺のことを見抜いたってわけか?」

 

「うん、そうだよ。だからロティスが違う所から来たことも知ってるよ」

 

「!?」

 

 とんでもないことをさらっと言ってくれたな。

 でも確かに天眼通ならそうか……。

 

「それを聞いてというか見て?クラリスはどう思ったんだ?」

 

「どうって?別にそうなんだって感じだよ?歴史上でも何人かロティスみたいな人はいるし」

 

「そうなのか!?」

 

 それは初耳だ。

 俺がこの世界に来たのはひとえに『絶望勇者』のスーパーヘビープレイヤーだったからだと思っていたが、そう言うことでもないのだろうか?

 

「うん、昔にも救世主がいたらしいよ。その人は変な名前だったんだって!」

 

「変な名前?どういうことだ?」

 

 俺がそう聞くと、「えーっとね……」と呟きながら肩から下げている鞄を漁り、紙とペンを取り出したクラリス。

 そこに俺にはよく見慣れた文字を書いてくれた。

 

「これ確かシゲルって読むんだったかな?」

 

 そう言うクラリスが書いてくれた文字は漢字で「茂」というものだった。

 

「これは……漢字、だよな?」

 

 答えを求めるものではなく、ただただ自分の中で反芻するだけの確認。

 だが、その響きと漢字という言葉にユメが反応を示した。

 

「ほう、またえらく懐かしい名じゃの。それに漢字を知っておるとは、ロティスお主も日本とやらの出身なのか?」

 

「ユメ?なんでユメまで日本を知ってるんだ!?」

 

「む?言っておらんかったか?ロティスの前にもあの6階層に来た者がおったのじゃ。ヤツはワシの元に来るまで2年もさまよっておったがの」

 

「俺以外にも?それはいつの話だ?」

 

「……細かい時間は覚えておらぬ。ヤツはワシを抜くどころか触れることすらできんかったからの。そして気付かぬうちに消えておったわ」

 

 遠い昔を懐かしむようにしみじみと言うユメ。

 もしかしてこののじゃロリ口調もその日本人由来だったり……しないよな?

 

「そういえば、あなたは……」

 

 俺がユメと話しているとユメに興味を示したのかクラリスがユメのことをジッと見つめた。

 するとクラリスの目が淡く光った。

 

「え?刀なの?え?なんで人型に?」

 

「そうじゃ!ワシは高名たる夢幻刀陽炎!呼び名はユメじゃ!人化はワシのように強い魔力を持ったものであればできるのではないか?」

 

「できないよ!すごいね!ユメ!」

 

「フン!そうじゃろう!そうじゃろう!ワシはすごいんじゃ!」

 

 おお、なんだか敵意むき出しだったユメも仲良くなってくれたみたいだ。

 よかったよかった……じゃない!

 話がどんどん逸れてしまっている。

 

「ンンッ!それで、本来の救世主を探してる目的の方を教えてくれるか?」

 

「ああ、そうだった。でもロティス、これを聞いたらもう絶対に協力してもらうよ?」

 

 これまでののほほんとした捉えどころのない雰囲気からは一変した様子で言ってくるクラリス。

 

「もし、断ったら?」

 

「ロティスが魔族と会ってたって王様に言う」

 

 ……アインの奴め。

 まあ、天眼通相手じゃ一目見られただけでアウトだから仕方ないとは思うが。

 というかクラリス、王様にも伝手があるのかよ。

 でも、その程度なら別に……。

 

「それに、エモニって子の力のことも――」

「クラリス、それだけは許さない」

「ッ!」

 

 クラリスの口からエモニの名前が出た瞬間、自分でも驚くほど冷たい声が出た。

 どこで見たのかは知らないがまさかエモニの力まで知っているとは。

 

「分かった。俺にできることなら協力する。だからエモニの力のことは心の内に留めておいて欲しい。頼む」

 

 座ったままの姿勢でクラリスの方に頭を下げる。

 

「う、うん。わかったよ。このことは誰にも言わない。約束する」

 

 少しおびえた様子でコクコクと頷くクラリス。

 

「ああ、ごめん。ちょっと冷静じゃなかったよな。それさえ約束してくれれば今まで通りに接してくれていいから」

 

「う、うん。やっぱりロティスも戦士なんだね……すごい迫力だったよ」

 

 ちょっと、イイかも……とかいう呟きは聞こえなかったことにしよう。

 

「うむ。さすがはワシを振るうだけの男じゃな。なかなかすさまじい気迫じゃった」

 

 ははは……まあ、エモニの笑顔を守ることが俺がこの世界に来た意味だからな。

 今でこそ、ミリアやユメなど他にも守りたいものができたが根底が変わったわけではない。

 

「それで、クラリス。結局なんで俺が必要なんだ?」

 

「ああ、そうだった。あのね、私のお姉ちゃんフィネレって言うんだけど……そのお姉ちゃんにも私みたいな力、星詠《アポロン》があって未来が見えるの。それで見えたのがすべてが焼け果てたこの国の終焉。そしてそれを救えるのがロティスなの」

 

 クラリスが語ったその終焉に、俺は覚えがあった。

 すべてを焼き払いその焼け跡に一人たたずむ勇者エモニ。

『絶望勇者』正規エンドのひとつだ。

 どうやらチュートリアルの勇者覚醒を防いでも、まだエモニが覚醒する未来はあるみたいだ。

 なら話は早い。

 

「いいぞ。その未来を到来させないために、俺も力を尽くそう」

 

「ほんと?まだ何をするかも決まってない漠然とした話を信じてくれるの?」

 

「話を聞いたら絶対に協力してもらうって言ったのはクラリスだぞ?それにちょうど王都方面に用事もあったしな」

 

 俺がそう言うとクラリスの表情がみるみる明るくなっていく。

 

「ありがとう!ロティス!」

 

 そして感謝を述べながらクラリスが飛びついてきた。

 

「お、おいっ!クラリス!急になんだよ!」

 

 首に抱き着くように飛び込んできたクラリスを抱き留め、俺と向かい合うようにひざに座らせるとなんだか妹ができた気分になった。

 

「私、ロティスのこと気に入っちゃった!王都に行くんでしょ?私もロティスと一緒に行く!」

 

「え?でもクラリス。一緒に来たコントラクターとかあの面倒そうな護衛はどうするんだよ」

 

「護衛?ああ、ユーリのこと?いいよ。私、あの人好きじゃないし!」

 

 俺の不安をユーリとか言う護衛ごとバッサリと切り捨てるクラリス。

 関係性はよくわからないけど、ご愁傷様ユーリ君。

 

「さて、もういい時間だ。クラリス、多分黙って出て来ただろ?面倒ごとになる前に帰れよ?送ってやるから」

 

「え?私、今日ロティスの家に泊まるよ?」

「「なっ!?」」

 

 衝撃発言に俺とユメの反応が重なる。

 そして――

 

 ガチャリと音がする。

 

「誰が、どこに、泊まるの?ねぇ?ロティス?納得のいく答えがあるんだよね??」

 

 一点の雲もない夜空から覗く月光が反射して黒光りする、如何にも鋭そうな包丁を両の手に握り締めたエモニが玄関に立っていた。

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