救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第五話 炎、弾けたり

「え、エモニっ!これはだな……クラリスの冗談で……」

 

「なに言ってるの!私は本気だよ!」

 

 ちょっとクラリスちゃん?

 こっちのことは全部読めちゃうのに空気は読めないのかな?

 

「ん~ロティス?なんか本気とか言ってるけど?というかその体勢はなんなの?ねぇ?どうして膝に座らせてるの?ねぇ?説明してくれるよね?」

 

 あーまずい、非常にまずい。

 助けを求めようと横目にユメを見るも……どうやらこの子もまた不機嫌になっているみたいで――

 

「そこはワシのポジションじゃ!今すぐ降りんか!クラリス!」

 

 ……確かにユメも膝に座るのが好きだったな。

 

「ちょっとユメちゃん?今の話しどういうこと?まだ私も座らせてもらったことないんだけど?」

 

 エモニさん?なぜ俺の膝に座ることが普通みたいな言い方をしているんですか?

 

 ジリジリバチバチと火花を散らすエモニとユメ。

 それを楽しそうに眺めるクラリス。

 最悪だ……この状況を解決する手段が全く思いつかない。

 

 あれやこれやと考えているうちに怒りの矛先が俺の方へ返ってきた。

 

「ねえ、ロティス?」

「のう、ロティス?」

 

「私を膝に座らせて!」「ワシを膝に座らせるのじゃ!」

 

 え、そこなの?

 

 ◇◇◇

 

 現在俺は限界まで股を開いて椅子に座っている。

 そして片膝にエモニ、もう片方にユメ、そしてその間にクラリスを座らせていた。

 

「それでロティス、その真ん中の子はなんなの?」

 

 満面の笑みからは考えられないほどドスの効いた声でエモニが詰問してくる。

 

「ああ、この子は――」

「私はクラリス。よろしくねエモニ!」

「あなたには聞いてない。今私はロティスと話してるの」

 

 俺に紹介される前に自己紹介をしてみせるクラリスと黙りなさいとでも言わんばかりのエモニ。

 

「この子は王都から来たコントラクターたちの中に居たクラリスちゃん。俺に頼みがあって家を訪ねて来たらしい。な?」

 

「うん。私ロティスとユメと一緒に王都に帰るの!」

 

 ………………

 ………………

 ………………

 

 おいおいクラリスちゃん?なんて恐ろしいことを言ってくれちゃってんの!?

 

「ロ、ティス?私から離れるの?そんなことそんなことそんなこと」

 

 エモニからあの時のような赤黒い魔力が溢れ出る。

 その奔流はあの時以上のものだ。

 

「絶対に許さない」

 

「のう……ロティス。エモニもこれほどの力を持っておったのか?」

 

「ああ、でも俺はエモニにこの力を使わせたくないんだ。鎮めるから協力してくれ」

 

「それはいいが……傷つけぬように鎮めるのは厳しいのではないか?」

 

「問題ない。エモニ、落ち着いてくれ!」

 

 そう声をかけながら救世主《ヘラクレス》を発動する。

 俺の銀色の魔力でエモニ自身をも飲み込もうとする赤黒い魔力を包み込んでいく。

 

 俺の力は救世の力。

 これは完全な予測に過ぎないが、この力は聖神の側に位置しているものだと思う。

 ヒルウァとの戦闘時、ヤツの再生が異常なまでに強くなっていたのはきっとこの力に聖神の魔法を強くする力があるからではないかと考えたのがその根拠だ。

 対して、エモニが発しているあの力。

 あれは明らかに聖神の力とは対極に位置する力だろう。

 ならば俺達の力はおそらく……

 

 そうして俺の魔力がエモニを完全に包み込もうとしたとき、水素に火を近づけたときのような破裂音と共に俺達の魔力が相克を起こし、互いの魔力が弾け飛んだ。

 

「エモニ!」

 

 その一瞬を見逃さずエモニに駆け寄り、その肩を抱く。

 

「王都に行くのは本当だ。けどもちろんエモニにも一緒に来てもらいたいと思ってる。エモニ、俺と一緒に来てくれるか?」

 

 これは一種の賭けだ。

 だが、俺はこの賭けには自信があった。

 

「ほん……と?」

 

 サァーっと音がするようにエモニの魔力が収まっていく。

 光を失った瞳にも生気が宿り、いつものエモニに戻った。

 

「私も、一緒に行っていいの?」

 

「ああ、もちろんだ。エモニが良いならついてきて欲しい」

 

「うん!うん!私、ずっとロティスと一緒にいる!」

 

「ああ、頼むよ。……ん?一緒に行くじゃなくて、一緒にいる?」

 

 たった一言の違いだが、この違いにはスルーしてはならない違いがある気がする……。

 

「確かに、エモニにも来て貰った方がよさそうだね!まさかロティスと同じレベルの力を持っていたなんて!」

 

 おお、さっきの状況に全く動揺していないとは……クラリス、恐ろしい子。

 

 ◇◇

 

「でもなんで急にロティスを王都に?」

 

 きちんとナイフを収納し、四人でテーブルに腰を落ち着けるとようやくエモニが話を聞く体勢になってくれた。

 

「ああ、どうにも良くない予言みたいなものがあるみたいでな。それをなんとかできるのが俺らしい」

 

「そんなあやふやな情報だけで?さすがに早計過ぎない?もしかしてクラリスちゃんに惚れて……」

 

 ゴゴゴっと先ほどの気配が顔をのぞかせる。

 

「違うよ、違うって。ユメと色々なとこを見に行こうって約束してたし、王都方面にちょうど用事も出来たし、クラリスに頼まれなくても王都へは行こうと思ってたんだ」

 

「そうじゃぞエモニ!ロティスはワシのために王都行きを決めたようなものじゃ!」

 

「へぇ?……でも私にもついてきて欲しいみたいだし、まあいいや」

 

 ……よかった。

 怒りの無限ループなんて冗談じゃないからな。

 

「むぅ…………私はついでってこと?」

 

 今度はこっちの子ですか……クラリスさん。

 

「違うよクラリスの助けにもなるって言っただろ?」

 

「ふふっ、なーんてね!ちょっと困らせてみただけだよ!」

 

 ……クラリス、この数十分で印象が全然変わったな。

 人見知りだけど打ち解けると早いってところか。

 

「さて、クラリス。宿の場所を教えてくれ。送るからさ」

 

「?なに言ってるのロティス。私泊まるって言ったよ?」

 

「え?ほんとに本気で泊まるつもりだったの?」

 

 確かに本気とは言っていたけど、クラリスの性格的に冗談冗談、じゃあ帰るね~みたいな流れになると思ったんだけど……。

 

「え?うん。だって戻っても息苦しいし」

 

 なるほど苦労してるのか……。

 でも――

 

「ロティス?どうするの?」

 

 ああ、エモニの目が笑ってない……。

 

 ◇

 

 この後もうひと騒動あって、結局エモニごとうちに泊まることになったのはまた別のお話。

 

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